(創刊:2001年8月23日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                           メール・ニュース vol.7(3) 発行:2002年5月29日
                                                         登録者数:316人
                                http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html


■もくじ■

〈今回送信分〉

1.板垣竜太さんによるNHK裁判第5回口頭弁論傍聴記

2.奥村悦夫さんによる愛媛新聞「意見広告」のその後と支援のお願い

3.編集後記

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■NHK裁判第5回口頭弁論の傍聴を終えて■
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                                        板垣竜太(メキキ・ネット事務局)

 VAWW-NETジャパンがNHKらを訴えている裁判で、5月15日、東京地方裁判所にお
いて第5回口頭弁論があった。11時から法廷で10分ほどのやりとりがあった後、
原告側弁護団の説明会があり、夜にも公開学習会が開かれた。前回の第4回口頭
弁論では被告三者がそれぞれいくつかの事実について認否をおこない、原告側の
見解に対する反論がなされたが、今回はそれを受けたものだった。しかし、法廷
に提出されたのは、ドキュメンタリー・ジャパンの元ディレクターである坂上香
さんの陳述書(原告側証拠)のみであり、法廷論争の進展はなかった。
 しかし、表面上の進展はなかったものの、裁判自体はいま重要な一歩を踏みだ
そうとしている。というのも、今回原告側が準備書面を提出しなかったのは、こ
れまでの信頼利益侵害と説明義務違反という主張に加えて、新たな法律構成を準
備しているからである。説明会と公開学習会ではこの新しい法律構成について、
弁護団との間で密度の濃い議論が交わされた。本来はその議論を詳細に紹介した
いところであるが、原告側はまさに新展開の準備書面を構成している最中にあり 
(6月21日が提出締切と設定されている)、現時点でその内容をメルマガに流すこ
とは、場合によっては原告側を不利にさせるかもしれないので、控えておきたい。
 その代わりここでは、公開学習会の場でも話題にされ、今後も銘記しておくべ
き枢要な論点について、確認しておきたい。
 NHKはこれまで「当初の企画」なるものの存在を強調し、企画の方針変更はな
かった、女性国際戦犯法廷(以下、「法廷」)の活動をつぶさに追うことは番組
の目的ではなく、あくまでも「和解」の取り組みの一つと考えていただけだ、そ
の点に誤解があったかもしれないが権利侵害はなかったのだ、という主張を組み
立てようとしてきた。たとえばその実例は以下のとおりである。

VAWW宛て公開書簡:「今回のシリーズは、世界各地の和解への取り組みを紹介し、
様々な見解の対立を踏まえた上で、それを乗り越え共生を実現するための手がか
りを探ろうという意図で企画しました。…なお、『人道に対する罪』を巡る世界
の動きや歴史的経緯とともに、『法廷』の問いかけるものを紹介し、日本とアジ
ア諸国の和解への道を探ることの意味を考えるという番組のねらいから、『法廷』
の『判決』内容については触れませんでした。」

NHK準備書面:「第2回分『問われる戦時性暴力』について採用された提案内容
は、和解への取組の一つである女性国際戦犯法廷を紹介して、戦時性暴力を裁く
ことの難しさを明らかにするとともに、日本とアジア諸国の被害者が、どのよう
なプロセスで和解を目指すべきなのかを考えるというものであり、女性国際戦犯
法廷の記録をつくるというものではない。」

 しかし、「法廷」の大前提は、慰安婦問題において厳正な裁きと責任者処罰の
ない和解はあり得ないということにある。仮に和解が前提となった番組だったと
するならば、「法廷」の全面的な取材協力に応じることはあり得なかった。実際、
取材の過程でも番組の方針に関する説明には「和解の『わ』の字も出てこなかっ
た」 (松井やより氏の談)。ところが、蓋を開けてみると、あたかも何ごとも起
こらなかったかのように、「和解」が「当初の企画」だったとされてしまった。
だが関係者の告発で判明した事実からしても、放映の3日前である1月27日段階の
映像ですら、米山リサさんの発言や、天皇有罪を判断した「法廷」の判決シーン
などから、「法廷」が和解を前提としたものなどではなく、責任者処罰を核心と
した企てだったことが辛うじて伝わる内容となっていた。つまり、番組の制作現
場もそうした「法廷」の核心を了解したうえで作業を進めていたのである。だと
すると、放映直前になってはじめて、突然「当初の企画」なるものが上から降っ
てきたことになる。明らかに奇妙なことである。
 NHK裁判における頭の使いどころは、このおかしさをどのように法律上の文法
に乗せるのかにある。とくに(1)表現の自由を抑圧するメディア規制の論理とは
明確に一線を画さなければならないこと、(2)いかにNHKが制作会社であるドキュ
メンタリー・ジャパン(DJ)に責任を押しつけることを阻止するかが思案のしどこ
ろである。(2)については、被告三者の一体性を立証して、「共同不法行為」を
主張するというような形で進行している。より難しいのは(1)であり、被告側は、
原告に内部での制作過程をとやかくいわれる筋合いはないとして争いを避けよう
とし、また、思い通りに編集されなかったからといって権利侵害だといわれるの
は、表現の自由の侵害であるというような一般論で争ってくる。問題は期待通り
かどうかという一般論などではない。番組自体が「法廷」を最重要の素材としつ
つも、そもそも「法廷」を適切に評価するための最低限必要な情報すら(手のな
かに持っていながら)伝えようとはしなかったことにある。しかも、そうした情
報が放映直前まで辛うじて含まれていたとするならば、実際に表現の自由を抑圧
したのは、むしろNHKの「上層部」であるのは明らかだ。この転倒したNHKの主張
の構造を踏まえつつ、メディアの一般論には単純に解消できないレベルでいかに
闘えるのかを考えることは、わたしたちにとっても課題となる。
 なお、5月12日には「法廷」の「判決」を実現させるための国際シンポジウム
が明治学院大学で開かれた。その場では、各国から「判決」の実現に向けた取り
組みの経過と今後の方向性が報告された。また、5月13日には「法廷」関係者が
外務省に赴き、川口外相に判決文を手渡すとともに、国際刑事裁判所(ICC)の設
置条約の早期批准を求めた(*1)。「法廷」そのものには強制力はなかったが、
「判決」に実効性をもたせるための取り組みは、かくして世界各地で繰り広げら
れつつある。このような取り組みが進展するにつれて、NHKが「戦争をどう裁く
か」というシリーズで、肝心の「法廷」の「どう裁くか」を明確に伝えようとし
なかったことの問題性はますます浮き彫りになっていくことだろう。

次回(第6回)口頭弁論:7月10日11時〜(東京地裁)
次々回(第7回)口頭弁論:9月4日11時〜(東京地裁)

(*1) 判決文の外務省提出行動については、『朝日新聞』5月14日、『週刊金曜日』
5月17日に記事が掲載されたほか、『沖縄タイムス』、『熊本日日新聞』、『東
奥日報』、『宮崎日日新聞』の各紙でも報道された。全国紙での報道の低迷ぶり
に比べると、地方紙の健闘は注目に値する。


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■メディアへの意見広告の有効性は?■愛媛新聞「意見広告」の試みに支援を!
     ―──────────────────────────────
    奥村悦夫(愛媛の「つくる会」教科書採択撤回を求める意見広告を出す会)

 わたしたちは、愛媛新聞(愛媛の地元紙としてはもっとも購読者が多い)に全
面意見広告を掲載した(3月18日)。意見広告の内容は、「採択を撤回し再審
議を求める」ということだった。
 昨年8月、愛媛県教育委員会は、「つくる会」歴史(扶桑社)教科書を県立養
護学校などで使用すること(採択)を決定した。この採択への抗議が沸き起こり、
撤回を求める行動へと発展し、採択撤回署名運動が始まったのである。
 「つくる会」の運動は、日本の社会を、人権よりも国権を重んじる社会に、
「戦争する、できる国」に変えることが目的だ。「戦争する、できる国」を完成
させるためには「かけがえのないひとりひとりの人間よりも国家を重んじ、国の
ために死ぬことを厭わぬ兵士」「戦争を肯定する『大量の』国民」が必要であり、
このような「国民」を学校教育によって作りだすことが、「つくる会」教科書の
目的である。
 「こんな教科書も社会もまっぴらだ」と、ない知恵を絞ってでてきたのが意見
広告戦術である。掲載時期は、前記の署名が教育委員会で審議(3月20日)さ
れる直前とした。掲載費は何と三百万円…。しかし、清水寺から飛び降りるつも
りでエイヤーと決定したのが、掲載予定日の一ヶ月前だった。
 この意見広告の効果は大きかった。それは、この委員会での異常な警備体制
(約80人)とマスコミの注目度に表れていた。しかし、結果は「採択撤回する必
要がない」という代物だった。わたしたちは、この結果にも諦めずに『採択無効
確認請求』を松山地裁に起こし、さらに、加戸愛媛県知事(元文部省官房長でリ
クルート汚職の罪責で辞職、森元首相など自民党タカ派とも太いパイプを持つ人
物)が、この採択の張本人(『「つくる会」教科書がベスト』と教育長に発言)
だとして、『損害賠償請求訴訟』を本人訴訟として準備中。
 『採択無効確認請求』も愛媛では、大きくマスコミで報道され、意見広告に匹
敵するアピールになった。地道な日常の運動とマスコミへのアピールを主にした
行動が重要ではないかと考えて起こした提訴だった。
 しかし、意見広告は費用がかかるため、どのようなタイミングでどのようなメッ
セージを掲載するのかが、重要である。このような判断で、時期を逃してはと急
遽掲載したため、掲載費の当てがあったわけではなかった。そのような理由があ
り、掲載費の半分の約150万円しかカンパが集まっていない。
 最後になったが、ぜひカンパをお願いしたい。

●カンパ振り込み先●
郵便振込口座 意見広告ネット 01630−6−9861
愛媛の「つくる会」教科書採択撤回を求める意見広告を出す会(奥村悦夫)
なお、この意見広告は
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/zxvt29/
から見られます。

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[編集後記]
 やっと7−(3)号をお届けします。板垣さんの第五回法廷傍聴記は、簡潔に
して要領を得たレポートです。奥村悦夫さんには、愛媛大学の市民たちが企てた
意見広告戦術がどれだけの効果があったかを報告していただきましたが、同時に
150万の赤字を抱えてしまった問題も率直に書いていただいています。要請に
こたえて、みなさんもぜひカンパをお願いします。
 浅野健一さんの連載を楽しみにされた方も多いかと思いますが、ともあれ今回
は休載。次号には間違いなく出ますから、お楽しみに。

7号編集担当 岩崎稔(東京外国語大学教員)
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■みなさんからの御意見・御感想、なにより投稿をお待ちしています!
                     (vol.7編集担当=岩崎稔)

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│発行= 2001年5月29日  発行所=メキキ・ネット事務局                │
│                                                                    │
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