(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                        メール・ニュース vol.5(1) 発行:2002年1月19日
                           登録者数:288人
                            http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html
                 《↑HPが引越ししました。ご注意を!》


 みなさん、始まったばかりの2002年をお元気でお過ごしでしょうか。
 メディアに注目してみると、新年早々どうなっているの?と首を傾げたくなる
ことばかり。
 1月7日の読売新聞には「神棚」を背景に立つ石原都知事のインタビュー記事。
しかもその写真が「東京都庁の知事室で撮影」となっているのだからおどろくじゃ
ありませんか。
 知事室にしつらえた神棚を背景に写真を撮らせる知事も知事なら、その写真を
平気で一面に載せる新聞も新聞。 だれに向かって、どういう立場で何を発信す
るのか、そこには責任を負う立場の表明がつねにあるはずです。わたしたちの感
覚はこういう当たり前のことに対して、いつからこんなに鈍くなってしまったの
でしょうか。
 そういえば、本マルマガ読者のお一人、「藤原って云うか〜」さんから、狂歌
が届いていますので「お目直し」にご紹介しましょう。

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         日本呆燥狂歌彙(にほんほうそうきょうかい=略称NHK)
                                                      藤原って云うか〜選

狂歌:旗の色は移り逃げるなぁいたずらに
    また妙(みょう)に振る流れて仕舞い
                  -----斧鋸燐寸(おののこマッチ)詠
>  本歌:花の色は移りにけりないたずらに
>      我が身世にふるながめせしまに
>                    -----小野小町

狂歌:向き見れば意地にもそこを話してぇ
    war(ワー)紙一重のアジに終わらねぇぞ
                  -----O・N千本安打詠
>  本歌:月見れば千々に物こそ悲しけれ
>      我が身一つの秋にはあらねど
>                    -----大江千里

狂歌:過度の怨み口に出して見栄は白タイの
    ブッシュの高音に首は振りつつ  
                  -----上辺若い子詠
>  本歌:田子の浦に打ち出(い)でて見れば白妙の
>      富士の高嶺に雪は降りつつ
>                    -----山辺赤彦

   *:・'゜★゜'・:*。.:*:・'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:* *:・'゜★゜'・:*

 笑いつつ余計に腹が立ってきたという方は、今回の目玉、昨年メキキが主催
した「9・11報道を考えるジャーナリスト・シンポジウム」の報告をぜひ読ん
でください。こうして活字化されてみると、またしみじみと考えさせられる内容
でした。

                                   ◇

《もくじ》

〈今回送信分〉

1.「9・11報道を考えるジャーナリスト・シンポジウム」(12月22日
   東京ウィメンズ・プラザ) 報告記(1)
                                李孝徳

	今回は太田昌国さんの基調報告についての報告記です。

2.[情報欄](最近の出来事、イベント情報)

〈次回送信予定〉

◆「9・11報道を考えるジャーナリスト・シンポジウム」報告記(2)

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1.「9・11報道を考えるジャーナリスト・シンポジウム」(12月22日 
   東京ウィメンズ・プラザ)報告記(1)
                                李孝徳

 2001年12月22日、メールマガジンでお知らせした「9・11報道を考えるジャー
ナリスト・シンポジウム」が東京ウィメンズプラザで行われました。年末の忙し
い時期にどれだけ集まってもらえるのか、ずいぶん心配したのですが、 140名ほ
どの方に参加していただけました。以下、その様子を私(李)の感想を交えつつ
簡略にまとめます。なお字数の都合上、あくまでも私の視点から整理され、再構
成されたものである旨断っておきます。

◆太田昌国さんの基調報告
 小さな出版社に所属し、ミニコミのようなミニ・メディアの発行に携わる自分
のような人間は、組織に属さないだけ大手新聞やTV局のような大きなメディア
に関わる人間よりも自由がある。その小さなメディアに関わる自由な立場から9.11
報道がどのように見えるかを報告したいと、ゆっくりとした口調で話を始められ
たのが印象的でした。

 報告の内容としては、9.11に関して一番印象に残っている「報道」番組として、
 9.11から1〜2週間たった頃のTBSのラジオ番組「土曜ワイド 永六輔 その新世
界」(毎週土曜日8:30-13:00)を挙げ、そこから現在のマスメディアの問題点
と今必要な報道のあり方について問題提起するというものでした。永六輔のラジ
オ番組を挙げたのは、ラジオという(映像に比べて直接的なインパクトは弱いが、
それだけに反省・内省する機会を持ちやすい)メディアならではの(日本の聴取
者に対する)番組作りをがやっていたからとのこと。
 そのラジオ番組の内容は(1)イスラムの経典コーランの朗唱、(2)以前、日本で
活躍していた「外国人」タレント故ロイ・ジェームズ〔*注1〕が敬虔なムスリ
ムであったという指摘、(3)石川啄木「ココアのひと匙」の朗読、(4)昔歌手活動
をやっていて現在は精神科医をやっている北山修との対談。そして印象に残った
のは以下のような理由からとのこと。

(1)9.11が、キリスト教vsイスラムといった宗教対立で語られ始められるなか、
日本社会ではほとんどの人が接することのないイスラム、ムスリムについて、具
体的にコーランの朗唱を行うことで「具体性」を持たせようとしていること。

(2)イスラムが過激でおぞましく人殺しを厭わないものとして宣伝されていた時
期に、ロイ・ジェームスという(永六輔にとって)親しい知人を挙げることで、
異なる見方を具体的に持たせる契機を提供していること。

(3)「ココアのひと匙」は啄木の死の直前(1911年)に書かれたもので〔*注2〕、
ナロードニキ、安重根による伊藤博文の銃殺(1909)、大逆事件(1910)といった時
代状況下で、「われは知るテロリストの悲しき心を」とテロリストの立場に共感
しつつ詠まれた詩である。番組でこの詩を全文朗読することで、9.11以後世界に
広まった現象としての反テロリズムに対し、9.11が起こった理由や歴史的背景を
落ち着いて考えさせる作業を聴取者にもたらしていること。

(4)報復戦争に対して疑問や疑義がさしはさめなくなっている9.11以降の反テロ
リズムの風潮はおかしいのではないかという北山修の発言があり、それに永六輔
が応答して議論が行われたこと。

 太田さんは、この永六輔のラジオ番組が持つ印象深さ・意義を、アルカイダや
ビン・ラディン、犯人をかくまっているアフガニスタンへの報復戦争によってし
か9.11という「凶悪な事態」に立ち向かっていけないという熱狂・興奮を大きな
メディアとりわけテレビが組織しているとき、ラジオの音声を通じて落ち着いた
意見が流れてくると、一歩引いて客観的にこの事件の意味を考えることができる
ようになるから、と分析。そして、このラジオ番組は大きなメディアにはない可
能性を示したものであったが、こうした冷静な報道がもっとあれば現在の状況も
違ったものになったのではないか、と問題提起。

 そして、9.11事件の社会的・政治的・歴史的背景を考察し、その悲劇性を9.
11だけの問題とせずに客観視し、世界史的に見ることがメディアの役割であるは
ずだ。しかし現実には、米国大統領が主導する意見に、米国そして世界のメディ
アが賛同し、世界の政治家も軍人も批判勢力になりえなかった。そうして熱狂・
興奮に対する客観視や冷静さが圧殺される雰囲気が現在作られてしまっている、
と現在のメディア状況を批判しつつ、こうしたメディア状況に対して個々人は冷
静に対応することが重要である、と指摘されました。

 最後に、メディアで報道されているほどこの「戦争」が賛同を集めているとは
思えない。植民地支配の後遺症を作り上げている英米が主導するこの「戦争」の
理不尽さへの怒りは必ず社会にあるはずだ。だから翼賛的に戦争をあおる報道を
行っている大きなメディアの内部にいる人々と協同して、ひどい現在のメディア
状況をどう変えるかを議論したい、と話を結ばれました。

〔*注1〕ロイ・ジェームズ
 べらんめぇ調の日本語を巧みに使う米国人で、テレビ・ラジオの司会や映画
俳優として日本の映画界・テレビ界で50-60年代に活躍。

〔*注2〕石川啄木「ココアのひと匙」
  われは知る、テロリストの
  かなしき心を─
  言葉とおこなひとを分ちがたき
  ただひとつの心を、
  奪はれたる言葉のかはりに
  おこなひをもて語らむとする心を、
  われとわがからだを敵に拠げつくる心を─
  しかして、そは真面目にして熱心なる人の常に有つかなしみなり。

  はてしなき議諭の後の
  冷めたるココアのひと匙を啜りて、
  そのうすにがき舌触りに、
  われは知る、テロリストの
  かなしき、かなしき心を。
                      <1911.6.16 Tokyo>

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2.[情報欄](最近の出来事、イベント情報)
 
■最近の出来事

 2001年12月22日、メキキ・ネットver.2001.9.11<「9・11」報道を問う>
を立ち上げ後、初めてのシンポジウムをメキキ事務局主導で開催し、今後も9・
11報道を多角的に検証する場を作っていきたいと考えていますが、ver.2001
「NHK「法廷隠し」番組改ざんを問う」のほうでもあらたな動きがあります。
まもなく、放映から一年を迎えることになりますが、この問題をメディアへの警
鐘として鳴らし続けるために、出演者の一人である米山リサさんが有能な弁護士
さんの全面的協力のもとに、BRO(放送と人権等権利に関する機構)への申し
立てを準備中です。近々詳細をご報告できると思いますので、ご期待ください。
もちろん、「BROってなに?」というご質問にお答えする内容も盛り込みま
す!

■NHK裁判第3回口頭弁論の傍聴を!

日時:1月30日(水)午後1時半開廷
場所:東京地方裁判所103号法廷

 奇しくも問題の番組放映からちょうど1年目に開かれる口頭弁論です。
 大法廷を埋め尽くしましょう!

■イベント情報

《NHK「女性国際戦犯法廷」改ざん番組放映一周年記念集会》
                          主催 「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク

日時:1月30日(水) 18:30 (開場18:00)
場所:江戸東京博物館一階会議室 (JR・地下鉄両国駅下車徒歩5分)

【プログラム】
 ◎NHK第三回裁判報告 (弁護団)緑川由香弁護士
            (VAWW-NETジャパン代表)松井やより
 ◎NHK ETV2001特集「問われる戦時性暴力」上映
 ◎NHK裁判の意味を考える
  ・論評 尹貞玉 (「女性国際戦犯法廷」国際実行委員共同代表)
     「NHKは「慰安婦」被害女性をどう傷つけたか」

  ・講演 吉見俊哉 (東京大学社会情報研究所教授)
     「日本のメディアは「女性国際戦犯法廷」をなぜ報道しなかったか」

【資料代】700円
【連絡先】tel/fax 03−5337−4088


◎みなさんからの御意見・御感想、なにより投稿をお待ちしています!

                     (vol.5 編集担当=吉田俊実)

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│発行= 2001年1月19日                                              │
│発行所=メキキ・ネット事務局                                      │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html         │
│ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp                      │
│ FAX: 020-4666-7325                                          │
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