(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                          メール・ニュース vol.3(1) 発行:2001年11月12日
                           http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/index.html

 みなさんこんにちは。たいへんお待たせしました。vol.2(1)でお知らせした10
月3日の討論会「『表現の自由』は誰のもの?」の報告をようやくおとどけしま
す。

《もくじ》
〈今回送信分〉
1.メキキ・ネット主催「NHK第1回裁判報告会+討論会:
   『表現の自由』は誰のもの?」(2001年10月3日)の報告

     実際にジャーナリズムに携わる方々を交えて討論することができました。
     その内容を簡単にお伝えします。より詳細な記録は、下記URLにもアップし
     てあります。あわせてご覧下さい。
         http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/ver2001.htm
        上のページの「活動記録」から入って見てください。

2.NHK第1回裁判口頭弁論(2001年10月3日)傍聴記

     NHK側の弁護士の多さにギョッ。本号編集担当の河かおるが報告します。

3.[情報欄](最近の出来事、イベント情報、編集後記)

〈次回送信予定〉
4.メキキ・ネットver.2001.9.11〈「9・11」報道を問う(仮)〉
    たちあげについて
5.「9・11事件報道を考えるジャーナリスト・シンポジウム(仮)」開催
     (2001年12月22日)のお知らせ
6.[情報欄](最近の出来事、イベント情報、編集後記)

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【1.メキキ・ネット主催「NHK第1回裁判報告会+討論会:
     『表現の自由』は誰のもの?」(2001年10月3日)の報告】

◆◆NHK裁判報告会◆◆
 10月3日、ETVの番組改竄に関する第1回目の裁判について、飯田正剛さん(弁
護団)、松井やよりさん(VAWW-NETジャパン代表)、西野瑠美子さん(VAWW-NET
ジャパン副代表)が報告されました。以下、御三方の報告を私(李)の感想を交
えつつ簡略にまとめます。

〇飯田弁護士の報告
 飯田さんの報告で、私が何よりまず驚いたのは、裁判というのは「主張−立証
−判決」の三段階を踏むもので、この手の事案だと主張の段階だけでも2年(!)
くらいかかる、ということでした。やはりこの裁判は長期戦になる模様です。地
道で、息の長い支援が何より必要とされているということをあらためて感じまし
た。
 それから飯田弁護士自身が驚いていたのはNHKの「意気込み」でした。とい
うのも、今回の法廷では被告側(NHK)が意見陳述が行われたのですが、通常
こうした裁判ではNHKのような大組織は意見陳述を行わないのだそうで、NH
Kのこの裁判に対する並々ならぬ<戦う姿勢>が感じられるそうです。13人から
なる大弁護団を準備したのもその証左なのでしょう。
 それからNHK側の言い分で驚かされたのは、「表現の自由」を守るため、取
材・編集過程はそもそも争点にならない、審理の対象として認否しないというこ
とでした。ひとえに自己保身から番組改竄しといて「表現の自由」を守るなんて
よくいうなあ、鉄面皮ってのはこのことだ、と正直、怒りを通り越して呆れた次
第です。
 一方、原告(松井やよりさん&VAWW-NET ジャパン)の法廷闘争での係争のポイ
ントは、NHKが被取材者(松井やよりさん&VAWW-NET ジャパン)への信頼利
益あるいは期待利益を裏切ったというものです。大雑把に言えば、被取材者が取
材者に前提する「信頼」や、取材に協力した以上報道される番組に抱く「期待」
は、一定以上裏切られてはならない被取材者の「利益」であるということです。
ただし信頼利益も期待利益も、新しい法概念であり法解釈なので、この裁判を通
じて枠付けされ、確立されるべきものだということです。つまりこの裁判は、い
わゆる係争としてだけではなく、「法」そのものを問い、「裁き」それ自体を改
める戦いでもあるということになります。

〇松井やよりさん(VAWW-NET ジャパン代表)の報告
 報告会で松井さんが強調されたのは次の2点でした。(1)NHKが番組で取り上
げなかった女性国際戦犯法廷の意義、(2)NHKが松井さんに話していた企画内
容と実際に報道された番組内容の犯罪的とも言うべき格差、です。さらに女性国
際戦犯法廷がまともに取り上げられない日本のジャーナリズムやNHKが犯した
番組改竄に関しても声が予想以上にあがらない現状を、メディア・ファシズムと
呼んで厳しく批判しつつ、そうした状況を変えるためにもこの裁判は重要なのだ
と強く支援を呼びかけていました。

〇西野瑠美子さん(VAWW-NET ジャパン副代表)の報告
 松井さんは今回の裁判の原告の一人として報告されましたので、西野さんは
VAWW-NET ジャパンの立場から報告されました。報告で西野さんが強調されてい
たのは、次の3点です。(1)女性国際戦犯法廷の番組制作に対してVAWW-NET ジャ
パンがNHKに対して行った特別待遇とも言うべき協力の内容、(2)NHKがそ
の協力をいかにないがしろにし、VAWW-NET ジャパンの信頼や期待を裏切ったの
かという事実関係、(3)NHK、NHKエンタープライズ、ドキュメンタリー・
ジャパンという番組制作者の、番組制作協力者であるVAWW-NET ジャパンへのア
カウンタビリティの徹底した欠如、です。松井さん同様、現況のメディア状況を
厳しく批判し、その変革を強く訴えておられました。
 
  各陳述書は以下のwebページ中、「裁判情報」から入ってご覧下さい。
 http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/ver2001.htm
                                                             (李孝徳)

◆◆討論会◆◆
○問題提起
 (1)ジャーナリズムの倫理、(2)表現の自由・知る権利、(3)日本的「編集権」と
は何か、(4)NHKの欺瞞性、4点にしぼって問題提起をしました。まず(1)について
は、NHKが当初に示した番組企画・方針に賛同してバウネットが取材に協力したに
もかかわらず、一方的に番組内容を変更したこと、および出演者の発言内容をコ
ンテクストを無視して発言の趣旨を損なうように編集したことなどが、ジャーナ
リズムの倫理の面から問題であることを述べました。(2)については、そもそも
NHKなどのマスメディア事業者の表現の自由とは、視聴者・読者が社会的存在とし
てさまざまな問題について正確な判断ができるための材料をマスメディアが提供
するために、「特に権力者からの不当な干渉を受けることなくメディアが表現で
きる自由」として認められているのであり、今回のように視聴者・読者が知って
おくべき事実(昭和天皇の戦争責任など)を隠蔽したことは、メディアの表現の
自由の範疇には含まれない点を指摘しました。そして今回特に問題となっている
(3)に関しては、NHKをはじめとするマスメディアの経営者が提唱する「編集権」
とは法的な権利でなく、所有権から演繹的に導き出されたものに過ぎず、また提
唱の社会的背景から考えても、きわめてイデオロギー色の強い日本独自の考えで
あることを示した上で、特にNHKという視聴者の受信料で運営されている事業体に
おいて、視聴者は「外部」の存在として、NHKの「編集権」主体から排除されるこ
とが妥当なのかどうかの検討をする必要性を指摘しました。最後に(4)について
は、NHKという事業体が、放送法によって予算や人事に関して国会の承認を必要と
していることもあり、構造的に国会議員、とくに自民党議員に対して弱い立場に
あり、これまでも会長人事や番組内容などをめぐって自民党議員からの不当な干
渉に屈してきた、あるいは積極的に自民党の意向を代弁してきたことを述べまし
た。
                                                              (野原仁)
○討論
 さまざまな立場から、メディア内部の問題点や情報の受け手の心構えなどにつ
いて討論されました。メディアの内部にいる方からは、今のメディアはジャーナ
リストであるよりも会社員となっていて、「無難な」報道をして自己規制してい
る面がある、受け手は情報を疑ってかかる目が必要と指摘。一方で、実際に左遷
される現実がある時にそう言ってもはじまらない、この裁判は何を獲得目標とし
ているのかとの疑問も提示されました。メディア内部からの変革を生み出す場を
つくる可能性については、ご自身も以前メディア内部にいた野原さんが、労働組
合やメディア問題に取り組む市民団体と連携した息の長い闘いが必要となるだろ
うと指摘しました。
 法の問題としては、今日の司法の反動化にどのように変革を生み出す可能性が
あるのかという質問に対して、原告弁護団の飯田弁護士は、この裁判はむしろ法
をつくっていく法実践になるとの展望を述べました。
 第1回目の裁判を受け、メキキとしてはほぼ始めての市民集会を行うにあた
り、どのような集まりにするかということで、それなりに事務局で頭をひねった
のですが、「討論会」と名付けたこの企画で、野原さんの明快な問題提起にも助
けられて、文字通り率直な討論を交わしていただだくことができて良かったと思
います。明確な「結論」が導かれたわけではありませんが、市民とメディアをつ
なぎ対話する場をつくるというメキキ・ネットの役割の重要性を再認識した集会
でした。
                                                            (河かおる)

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【2.NHK第一回裁判口頭弁論(2001年10月3日)傍聴記】

 朝10時に東京地方裁判所に行くと、くじ引きの列が出来ていました。メキキ事
務局メンバーで来る予定だったもう一人は、事故で地下鉄が動かなくなり、間に
合わないと電話。他にも来られない人がたくさんいるようでした。それでも傍聴
席は満席で、入れずに部屋の外で見守った人がたくさんいました。私は傍聴する
のは初めてでしたが、報道者席として空席があるのに一般の傍聴希望者を入れて
くれないなど、「ケチだなぁ」と思いました。
 まず原告松井やよりさん本人が陳述し、その後、原告VAWW-NETジャパンとして
西野瑠美子副代表の直接の陳述は認められず、大沼弁護士が代読しました。だか
ら原告席には陳述する松井さんしか入れず弁護団5人と原告松井さんの6人でし
た。それに対し、被告側は弁護士だけが来ていましたが、全部で13人!!NHK側の
弁護士も意見陳述をしました。
 内容については上記の「NHK裁判報告会」についての李孝徳さんの上記報告記事
に譲ります。
 次回は11月28日(水)15:10〜(東京地方裁判所第101号法廷)で
す。被告側は「表現の自由」を楯にそもそも審理対象として認知しないという論
理のようですが、報道機関が「表現の自由」を道連れにして「自殺」しないよ
う、しっかりと目を利かせましょう。
                                                           (河かおる)

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【3.情報欄】
◎ホームページの内容をかなり更新しました。現在も更新準備中で、近日中にま
た変わります。さらなる充実にご協力ください。アイデア、情報等をお待ちして
おります。関連したリンク先も教えてください。
 
《最近の出来事》
○日本マスコミ学会ワークショップ「戦時性暴力の表象と公共放送の危機をめ
ぐって」(2001年10月8日)が開催され、VAWW-NETジャパンの西野瑠美子さんと
日本ジャーナリスト会議の石井長世さんが発表しました。

《今後予定されていること》

◎ NHK裁判第2回口頭弁論
  日時:11月28日(水)15:10〜
  場所:東京地方裁判所第101号法廷 (千代田区霞が関1-1-4)
    ※部屋が前回と異なります。前回より大きな、100人近く入る部屋です。
  交通:地下鉄丸ノ内線・日比谷線「霞が関駅」徒歩2分
              有楽町線「桜田門駅」徒歩3分

◎ 報告集会と学習会「編集権」とは何か
  日時:11月28日(水)18:30〜
  場所:日本教育会館701号室(地下鉄神保町駅下車徒歩5分)
  内容:裁判報告:飯田正剛弁護団長
        編集権について
        ――弁護団から:中村秀一弁護士
        ――専門家から:服部孝章(立教大学教授)
  参加費:700円
  主催:VAWW−NETジャパン
  連絡先:tel/fax 03−5337−4088

◎ 「9・11事件報道を考えるジャーナリスト・シンポジウム(仮)」
                                          (メキキ・ネット主催)
  日時:12月22日(土)18:00開場、18:15開始
  会場:東京ウィメンズプラザ大ホール
          東京都渋谷区神宮前5−53−67
          JR山手線・東急東横線・京王井の頭線:渋谷駅下車徒歩12分
          営団地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線:表参道下車徒歩7分
          都バス(茶81系統・渋88系統):渋谷駅からバス4分
                        「青山学院前」バス停下車徒歩2分
          ホームページ(交通案内)
    http://www.tokyo-womens-plaza.metro.tokyo.jp/womens/frame_trafic.htm
 ※内容の詳細は次号までしばらくお待ち下さい!※

【編集後記】
○ 発行が遅くなった割には、〈9.11〉新バージョンの立ち上げ準備で事務局が忙
しく、本号の内容が、予定していたよりも簡単なものになってしまいましたがお
許し下さい。
○ 考えてみると事務局の「顔」が皆さんには見えないだろうと思いますので、口
火を切って簡単に自己紹介します。私は大学で助手をしていて朝鮮近代史が専門
です。先日三十路に入りました。メディアの問題については全く素人ですが、自
分の専門分野や関心から目を利かせていきたいと思います。
○ 事務局宛にいただいたメッセージは、メキキ・ネットへの期待の大きさや多様
性をうかがうことができ、ありがたく読ませていただいています。ただ、事務局
の情報発信能力には限界があり、メール・ニュースでそうした思いに十分応える
ことができるかは心もとないものがあります。そこで事務局からお願いがありま
す。
・)原稿を募集します!メキキ・ネットへの投稿、お待ちしています。分量は本
号を目安にしていただければと思いますが、融通はききます。長い場合は分割配
信も可能です。原稿料のようなものはございませんので、悪しからず..。
・)まだまだ情報のアンテナがたりません。関連した情報を教えてください。
                                            (vol.3 編集担当=河かおる)
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│発行= 2001年11月12日                                           │
│発行所=メキキ・ネット事務局                                     │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/index.html  │
│ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp                    │
│ FAX: 020-4666-7325                                        │
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