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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                        メール・ニュース vol.2(2) 発行:2001年10月25日
                           http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/index.html

《もくじ》
〈今回送信分〉
4.社会情報研究所文化研究プログラム+メキキ・ネット共催ワークショップ
  「徹底検証:ETV2001改竄問題とメディアの現在」の報告

5.テロ事件とマスメディアの危機  中野敏男(在ニューヨーク州イサカ)

6.テロ関係リンク集

7.最新情報

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【4.ワークショップ報告】

 去る2001年9月13日、東京大学社会情報研究所にて、同研究所文化研究プログ
ラムとの共催で「徹底検証:ETV2001改竄問題とメディアの現在」と題したワー
クショップが行われました。会場はメディアに携わる方々やメディア研究者の
方々など、150%くらいの入りで、熱気に溢れかえっていました。これだけでも
ETV2001改竄問題や、メディア全体の状況に対する関心の高さがうかがわれま
す。

 発言者は元ドキュメンタリー・ジャパンのディレクター坂上香さん、アジア・
プレス・インターナショナル代表の野中章弘さん、メキキ・ネットからは河かお
るさんの三人。坂上さんは番組作成に至る経緯と改変の経緯を分かる限りの範囲
で説明され、そのお話は番組製作の主導権が現場から目に見えない「NHK上層
部」へといつの間にか移っていく過程を克明にたどるものでした。外圧による改
変と、制作者の側の自主規制の両方が問題であるとの指摘もされ、現場の状況が
生々しく伝わってくるものでした。また、野中さんは改竄問題に関して、右翼の
圧力によって改竄されたとすればそれは信じがたいことであり、この事件はNH
Kの局内民主主義の不在、NHKと製作会社の関係の問題などを浮き彫りにして
いると訴えました。続いて河さんは、改竄問題が表面化する過程で市民による署
名運動が起こり、3千名あまりの署名に結実してNHKに提出したこと。そし
て、VAWW-NET Japanの提訴をきっかけにより広く持続的な運動を行うためにメキ
キ・ネットを立ち上げた過程などを紹介されました。

 質疑応答も長時間にわたって行われ、圧力や自主規制によってメディアの社会
批判が封じられている状況、VAWW-NET Japanの提訴の意義などについて熱した討
論が行われました。ここにその詳細をお伝えする余裕がないのは残念ですが、改
竄問題が投げかける問題の重大さ、それに対する関心の高さが実感されるワーク
ショップとなりました。

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【5.テロ事件とマスメディアの危機】

                   中野敏男(在ニューヨーク州イサカ)

 事件から二週間が経って、いま、アメリカの中にもブッシュの戦争政策に対す
る対抗的な動きが、ようやく少しずつ目に見えるようになってきている。たしか
に、街角には星条旗がはためき、銀行やスーパーや商店の入り口に、そして住宅
の玄関にも大小とりどりのその旗は掲げられていて、「新しい戦争」に向かうア
メリカの「使命」を支持しようという社会的雰囲気はとてもはっきりとした姿と
なっている。しかし他方で、大学のキャンパスには大量のピースマークの落書き
(なんか「久しぶり」という感じでした)が現れ、「憎しみの連鎖を断とう」と
いう主張の集会とデモもささやかながら行われた。町の中学校でも「No More
Victims!」という市民たちの集会があり、その一部はいま車を連ねてワシントン
DCに向かっている。この土曜には首都で平和のためのちょっと大きなデモがあ
るのだ。事件直後の衝撃を経て、いまその意味を考え議論し行動する人々が出て
きている。

 それにしても、このような状況が生まれてくるまでに、テレビや新聞などマス
メディアが果たしてきた役割はあまりにも問題の多いものだと言わなければなら
ない。もちろんまだ事態は動いているが、これこそが現前している「メディアの
危機」に違いないから、われわれはその観点からもしっかり「目」を凝らしてお
きたい。

 突然の「理不尽」な暴力として人々を襲ったこの事件が、まずはあまりにも
「衝撃的」な映像をもってわれわれに知らされるというのは、もちろん不可避だ
った。しかし、これを始めから「戦争」というレトリックをもって語りだし、
「英雄」の雄々しい犠牲に始まる「国民的な悲劇」に仕立て上げたのはマスメデ
ィアであり、ブッシュ政権の傲慢で危険な「報復攻撃」の準備を「アメリカの新
しい戦争」という聖なる使命に祭り上げているのはマスメディアである。そして
この「国民の悲劇」の語りは、絵に描いたような常套手段で感傷に訴えながら、
本当に犠牲になった人々の痛みには実に鈍感で傲慢にみえる。

 思えば、これほどの大事件で、しかしその被害者の実像が置き去りにされたま
ま、「悲劇」の語りばかりが一人歩きした例は珍しい。「国民の悲劇」が最初か
ら声高に語られ、事件の3日後には早々と「国民の祈りと追憶の日」の儀式が荘
厳に挙行されてしまう。それなのに、救助の現場では被害者は「死亡」ではなく
「なお不明」なのだと強調されていたのだし、その数もどんどん増えている。世
界貿易センターだけで6450を越えていた行方不明者の中には、中米・南米を
中心におそらく2000人を越える合州国以外の国籍をもつ人々も含まれてい
る。するとあの儀式で、どんな人が、どれほどの人が、被害者として追悼された
のか。と考えてみると、マスメディアが語ってきたのは、つねに匿名である多数
の死。そして、それを一括して代理表象させる、何人かの選ばれた「無垢な市
民」と「英雄的な消防士」の生と死。そこには、個人は消されて「国民」が際だ
ち、事件の悲劇性と英雄性に人々を陶酔させるナショナリズムの道具立てが、い
かにも揃いすぎている。

 この事件がなぜ起こったかについても、単調で断定的な報道は続いた。いわ
く、狂信的な「イスラム原理主義者」、「お尋ね者」の犯罪者。そして、それに
よって全く理不尽なテロ攻撃を一方的に受けてしまった無垢な被害者としてのア
メリカ。かくて、ブッシュの「報復攻撃」は、かつてドイツや日本のファシズム
をやっつけたと同じように、「テロリズム」と闘うアメリカの世界史的使命とし
て語られるようになる。この時に、もちろん完全に欠落していくのは、何故、わ
が身の死を賭してまでアメリカという国に一矢を報いんとする人が出てくるのか
ということへの真剣な問いかけであり、アメリカが矛先を向けようとしている彼
方にどんな生活があるのかということへの曇りのない視線である。

 もっとも、今回の事件でもマスメディアの問題は、書いたことより決して書こ
うとしないことの方にむしろあると言うべきかもしれない。声高に「報復」が叫
ばれ、ナショナルな一体性が強調される中で、それに疑問をもち平和な解決を求
める声は、またその一体性からはじき飛ばされてしまう人々の声は、いつもかき
消されてしまう。そしてマスメディアが伝えないこの声を繋げ、流れに抵抗しよ
うとするものを勇気づけているのは、アメリカでも深く広がっているメーリング
リスト等でつながる情報の
ネットワークである。イサカでも、DCのデモに行けない人はそのつながりで今
日(金曜日)集まってCommunity Singの会を開く。わたしも参加してみようと思
うが、そのMLの気分を共有してもらうために、最後に、そこでいま流されてい
る心の言葉を紹介しよう。

"Through violence you may murder a murderer, but you cannot murder
murder.
Through violence you may murder a liar, but you cannot establish truth.
Through violence you may murder a hater, but you cannot murder hate.
Darkness cannot put out darkness. Only light can do that."
  -- Martin Luther King Jr., 1967, in "Where do we go from here?"

                                (アメリカ東部時間9月28日午前11時)

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【6.テロ関係リンク集】

 中野敏男さんの報告にもあるように、この度のテロ事件の報道に私たちは油断
なく目を光らせておかなければばりません。その一方で、マスメディアにはのら
ない貴重な情報を与えてくれるのが世界に広がるネットです。今回は田口裕史さ
んのリンク集とインディペンデント系のメディアサイトを紹介します。

<オルタナティヴ・メディア、声明等>

戦争責任に関する発言と運動を続けてこられた田口裕史さんのホームページの
「9月11日の米国事件関連各地の声明等へのリンク」です。
   http://member.nifty.ne.jp/htaguchi/archive/010911seimeishuu.html

Our Planet-TV:注目のインターネット放送局です。9月21日の国際反戦デーに、
「メディアに何を求めるのか」と題して、テロ事件とメディアの可能性をめぐる
番組を放送しました。
   http://www.ourplanet-tv.org/

The Arab American Action Network
   http://www.aaan.org/

Globalvison News Network
   http://www.mediachannel.org/

Independent Media Center
      http://www.indymedia.org/

パキスタンニュースサービス
   http://paknews.com/


<日本における関連運動>

Anti War
      http://antiwar.jca.apc.org/

反戦・平和アクション
      http://peaceact.jca.apc.org/

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【7.最新情報】

○ 去る10月3日、NHK裁判の第一回口頭陳述が行われ、同日にメキキ・ネ
ット主催による報告会と討論会が行われました。その報告は次号のメルマガをお
待ち下さい。次回の公判日程のみお伝えします。

 次回:11月28日(水)15:10〜
    東京地方裁判所第721号法廷

○ 雑誌『ダカーポ』(マガジンハウス)479号に、メキキ・ネットの活動が紹
介されました。「マスメディア信用度調査」という特集で、9月11日事件の報道
に関する検証を行っており、大変おもしろい内容になっています。同誌は継続的
に個人情報保護法の問題などを特集してきています。

○ver.9.11準備中!
 今回は小特集という具合でしたが、テロ報道に関する新ヴァージョンを準備中
です。12月に「9・11事件報道を考えるジャーナリスト・シンポジウム
(仮)」を開催予定です。この詳細も追ってお知らせしますが、みなさんの積極
的参加をお待ちしています。ご意見、情報提供など、どしどし事務局までお寄せ
ください。

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【編集後記】
○「2号の前半が来て以来音沙汰なしだけど、どうしたの?」と思われていたこ
とでしょう。大変遅くなりまして申し訳ありません。お待たせしました!事務局
の自転車操業ぶりが少し露呈したかとは思いますが・・・

                        (第二号編集担当=河野)


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│発行= 2001年10月25日                         │
│発行所=メキキ・ネット事務局                    │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/index.html    │
│ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp             │
│ FAX: 020-4666-7325                      │
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