(創刊:2001年8月18日)
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            メール・ニュースvol.22(6) 発行:2006年6月20日
                           登録者数:324人
               http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html


 三回連続でお届けしてきた「野島ストーリー余禄」がいよいよ完結いたしま
す。

 また、月刊『創』の7月号には、自民党の山本順三議員が参議院総務委員会
で問題視した3月22日の裁判での永田証言がほぼ再録されています。いった
い、番組放送直前に何か起こったのか。永田浩三・元チーフ・プロデューサー
が語った「事件の真相」を11ページにわたり生々しく再現していますので、
ぜひお手にとってご覧ください。

 裁判も大詰めですが、裁判以外でも「不穏な動き」が活発化しています。
 6月15日に開かれた参議院総務委員会におけるNHK決算にかんする質問のな
かで、柏村議員は、東京都における国歌・国旗の強制をテーマにした「クロー
ズアップ現代」(2005年3月28日放送)を取り上げて、「偏った放送」と批判し、
NHKの放送内容に介入する発言をしています。
 その模様はビデオ録画されていますので、メルマガ巻末にそのURL(衆参議院
HPのビデオライブラリー)を掲載いたします。
 柏村議員の発言にご注目ください。


 ■もくじ■

1 野島ストーリー余録(その3)
     ―新事実の証言から見る国会担当局長
                      和田悌二(一葉社・編集者)



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         [野島ストーリー余録](その3)
         新事実の証言から見る国会担当局長

                       和田悌二(一葉社・編集者)


 今回の主尋問の冒頭部分で野島氏は、「(総合企画室国会担当局長の職務で)一番
重要なのは、国会に対してというか国会議員に対して、NHKの放送業務・放送事業を
説明し、理解を得ること。NHKは国民の受信料で設立・維持されているので、その国
民の代表である国会議員がNHKの予算を審議し承認することを通じてはじめてNHKが国
民の共同の利益を守るということになる。国会議員の説明はそういう意味で重要であ
る」と証言している。この証言を、これまで見てきたようなことから意訳・拡大する
と、次のようになりはしないだろうか。

 ――現制度下での「公共放送」のNHKとしては、“国民”の大勢の支持を得ている
“重きをおく政治家”の意向を特にうかがい、場合によってはそれら政治家の意向を
先取りしてでも、放送事業にできるだけ反映させるように努めざるを得ない。現実的
には、予算も含めてそうすることでしか「公共放送」であるNHKの存続をはかり発展
させていくことはできない、ひいては“国民”の公共の利益を守れないシステムになっ
ている。だからこそ、(実は偏頗きわまりない)「公平公正」と「多角的な視点」を
錦の御旗に、“重きをおく政治家”に神経を使いながら、不断の働き掛けや御用聞き
を繰り返さざるを得ないのが、NHKの国会担当局長のいちばんの仕事であり何よりの
使命・責任である――と。

 うがった味方をすれば、野島氏は国会担当局長という職務についたときから、本気
でそう思い込むしかない、思わざるを得ないと覚悟したのかもしれない。だとしたら、
もちろん個人的な資質や程度差もあるにはあるだろうが、野島氏一人の特異性や個性
にすべてを帰せても、問題はいっこうに解決しないのではないだろうか。

 わたしたちは、かなわぬ夢かもしれないが、野島氏から本当の証言を得て、より事
実に近づくためにも、国会担当局長であった野島氏をいまだ縛りつけているシステム
から彼を解放しなければならない。それには、まずNHKを変える――特に政治との距
離を厳格に置かせることである。具体的には、公正取引委員会などのように政府から
独立した機関・組織に、NHKのいっさいの監督権を移させることである。それが、や
はりその一番の近道であり、第一歩だと思う。そうすれば、国会担当局という部署自
体の必要性もなくなり、第二第三の野島氏も生まれにくくなるだろう。

 と同時に、わたしたち一人ひとりが“公共”の根本的な捉え直しを試みることであ
る。“公共”がますます権力側の一方的な独占物となり、多数や大勢と同義語になり
つつある現在、“公共”という言葉の持つその陥穽から目を反らさず、主体的に足も
とから検証し直さなければならない。それには、常に少数者、それも圧倒的な少数者
の立場に、想像力のすべてを駆使してまず自分の身を置くことだろう。そうすること
によってしか、わたしたちは“公共”を取り戻すことはできないような気がする。

 二度とこのような事件を起こさせないためにも、そして取り返しのつかない不幸な
事態に再び至らないためにも、その“性癖”の拠ってきたる「公共放送」NHKの制度
的な構造全体を、この野島氏の証言を反面教師に、もう一度根本から、自分自身の問
題として見つめ直していかなければならない。そして、NHKの在り方について、真に
人びとの側に立った“公共性”のあるシステムを考えて、その実現策を不断に働きか
けていかなければならないだろう。

(完)

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参議院総務委員会(6月15日)のビデオ録画のURLは、以下です。

参議院HPのビデオライブラリー/柏村武昭(自民)のところをクリックしてください
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/library/reference.php?page=1&cd=1544&tx_mode=consider&sel_kaigi_code=0&dt_singi_dat

 「NHK受信料支払い停止運動の会」が中心となって「国会審議に名を借りた柏村武昭
議員のNHKに対する政治介入発言に抗議し、発言の撤回・訂正を求める申し入れ書」を
準備中。
 山本順三議員の場合もそうでしたが、安倍晋三議員をはじめ、国会議員はNHKを「国
営放送」と勘違いしているのではないでしょうか。
 どうもそうとしか思えません・・・あまりにも寒々しいですが。

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                       (22号編集担当・吉田俊実)

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│発行= 2006年6月20日                       │
│発行所=メキキ・ネット事務局                   │
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