(創刊:2001年8月18日)
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             メール・ニュースvol.22(3) 発行:2006年5月7日
                           登録者数:343人
                http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html 

 4月17日、野島直樹NHK総合企画室・国会担当局長(当時)の証人尋問が
東京高裁101号法廷で行われました。今回の傍聴記はメキキ事務局・鈴木香織
がお届けいたします。

 ■もくじ■

1 NHK裁判控訴審第11回口頭弁論(第4回証人尋問)傍聴記
                    鈴木香織(メキキネット事務局)

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   4月17日月曜日、嘘で塗り固めた裁判を傍聴してきました。
                                                鈴木香織

 あまりにも悩みが無い。公共放送NHKと政界を橋渡しする役職にありながら
番組制作の現場に介入した過程を問われているというのに、野島直樹国会担当局
長の答弁には、ためらいも葛藤も、思いつめた様子さえも無い。政治介入を否定
するときだけ声がでかい。あとはキャッチボールのように「記憶にありません」
という答弁を投げ返しているだけだ。

 放送前の番組が国会議員のあいだで噂されるという異常事態に、彼は適切に対
処しただけだと言いたいらしい。番組試写に同席したのも、制作現場に居残って
話を聞いたのも、議員との面会で話題になったときに備えて、番組の企画趣旨を
知っておきたかったからだという。そんな自らの判断が他人から見てどのように
映るか、考えもしなかったとか。

 担当局長というポストは、専務理事を兼ねる局長より下位に位置するそうだ。
だから、松尾放送総局長や伊東番組制作局局長をおさえて、己の判断を押し通す
ことなどできるはずがないと言い張る。改変を主導したのは野島氏だったという
長井暁デスクや、永田浩三チーフプロデューサーの証言は全否定。「信頼すべき
上司から聞いた」という長井証言も、長井氏が嘘をついているか騙されているか
だと断定し、「そこまで言ってるのだから、その上司の名前を出してもいいので
はないか」と言い放った。

 鉄面皮という言葉からは想像しにくいが、野島氏はなかなか鋭い。カーナビで
もついているのか(!)常に自分が置かれた位置を読み取り、態度に表す。開廷
直後はうつむきがちでボソボソ話していたが、原告側の反対尋問が進むにつれて
肩の力が抜け、「ふん!」と鼻で笑う場面さえあった。権力の匂いにも敏感そう
だ。

 おそらくNHK側は、野島氏に仕込んだ証言で乗り切ったつもりだろう。しか
し、およそ理屈の通らない証言を並べ立てたわけだから、証言記録を精査すれば
矛盾が露呈するに違いない。ここでは一点だけ指摘しておこう。

 野島氏によれば、放送前日の1月29日午前に、彼は松尾放送総局長のオフィス
を訪れ、前日にアポイントをとっておいた官房副長官・安倍晋三への予算説明に
同行するよう求める。放送前に国会議員のあいだで、NHKが四夜連続で「女性
国際戦犯法廷」特集番組を放送するという噂が流れていたので、誤解をとくには
番組制作の総責任者である松尾氏の説明が必要だと判断したそうだ。そんなもの
はテレビ番組を見ればわかることじゃないかという質問に、彼は「新聞のテレビ
欄をご覧くださいと言うわけにはいきません」と答えた。VAWW-NET側が雑誌のテ
レビ番組のコピーを示したところ、彼は「こういう本を私は知りません」。法廷
内に笑いがこぼれた。

 なぜ新聞のテレビ欄なのだろう。いまどき番組表といえば巷にあふれる雑誌の
ほうなのに。察するところ、四夜連続放送の噂が引き金だと主張している野島氏
が番組表の存在を無視しえないために、新聞のテレビ欄は見ても雑誌のほうは知
らないという話をでっちあげたのではないか。野島氏が永田町の噂話を持ち帰っ
た1月26日の時点で既に、翌週分(1/27〜)の番組表を掲載した雑誌が発売中だっ
たのだから。彼は実際には、2001年1月29日朝刊のテレビ番組欄を見ていないか、
記憶にないのだろう。この日、安倍氏に面会してから数時間のちの午後10時、四
夜連続シリーズ「戦争をどう裁くか」はスタートした。新聞に掲載された第一夜
のタイトルは「戦勝国フランス 自らを問う」だ。ほんとうに番組欄を見ていた
なら、松尾氏に同行を求めた29日午前には、四夜連続の「女性法廷」特集番組と
いう“噂”は“嘘”になっていたはずだ。それに、ほんとうに番組の趣旨説明が
目的なら、番組欄も確認せずに、公共放送の幹部が与党大物政治家を訪問したり
するのだろうか。
                                      (役職はすべて放送当時のものです)

  次回口頭弁論 6月19日(月)午前10時30分より


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 鈴木さんの眼に「ためらいも葛藤も、思いつめた様子さえも無い」と映った野島
氏の答弁。予算承認前に国会議員に事前説明にまわることを職務とする「国会担当
局長」、今回の事件を通じてその存在を初めて知ったという方が、私を含め少なか
らずいるのではないでしょうか。
 以前、メルマガに掲載された板垣竜太による「野島ストーリー」をおぼえていらっ
しゃいますか。
 次回メルマガでは和田悌二さんによる「もうひとつの野島ストーリー」が寄稿さ
れることになっています。
 どうかお楽しみに!
                
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                       (22号編集担当・吉田俊実)

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│発行= 2006年5月7日                         │
│発行所=メキキ・ネット事務局                    │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html         │
│ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp                      │
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