┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓ ★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛ メール・ニュース Vol.1(2) 発行:2001年8月23日 http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/index.html 《今回送信分》 3.VAWW-NETジャパンは何を訴えるのか(鈴木香織) 4.VAWW-NETジャパンの提訴シンポ報告(河かおる) 《以下はVol.1(1)で予告していなかった記事です》 付1.転載について 『メキキ・ネット通信』で配信される記事の転載等に関する注意書きです ので必ず一読ください。 付2.速報 女性国際戦犯法廷の国際実行委員会からの申立てが、BRCで討議されまし た。 ──────────────────────────────────── 【3.VAWW-NETジャパンは何を訴えるのか】 表現の自由が無ければ「女性国際戦犯法廷」は在りえなかったでしょう。でも、 憲法が保障する自由があるというだけで民衆法廷なるものを市民が創れるわけで はありません。性奴隷性(日本軍従軍慰安婦制度)が女性に対する犯罪であり、 特に植民地の女性に被害者が多かったのに対して、司法も含めて権威・権力は男 性中心的はたらきます。半世紀ものあいだ放置された犯罪にメスを入れて、加害 を明るみに出し被害者救済の道をさぐる民衆法廷が、揺るぎない正統性をもつに は多くの人々の支持が必要でした。 ところが、国際的なネットワークを形成するほど成長した女性運動の中から提 案された「法廷」を世界が注目する中で、日本のマス・メディアの多くは沈黙し ていたのです。孤軍奮闘と呼ぶにふさわしい記者たちの努力で記事になったこと はあります。でも、ある記者によれば、「天皇の戦争責任をも取り上げる」と書 いた個所が紙面では削られていたといいます。こうした話に、怒りは感じても驚 かなくなってしまうほど、凄まじい自主規制がはたらいていました。 「法廷」を取り上げ天皇の戦争責任を報道するETV番組制作者たちも、同じ ような圧力にさらされていたはずです。事実、改ざん番組放送後、関係者を取材 したフリージャーナリスト、竹内一晴氏によれば番組企画が通るよう周到な根回 しがされたということです。ところが、放送直前の大改編が報道されてもNHK は説明責任を放棄し制作責任者たちもこれに追随しています。これでは逆でしょ う。今こそ、何が起こったのか明らかにして報道機関の自主規制に歯止めをかけ るチャンスだと思います。だから、NHKの7月30日付回答を読むと、表現の 自由を道連れにした自殺行為としか思えません。 VAWW−NETジャパンは裁判で番組改ざんの真相究明と損害の回復を求め ていきます。企画の提示を受けて協力したのに、全く別の内容に変えて放送され 信頼(期待)利益を侵害されたことが一つ。二つ目は、NHKが企画変更に先立っ て説明義務違反を怠ったための損害。市民社会で保障されるべき知る権利や表現 ・言論の自由、報道の自由をどう守るかが明らかにされることを望んでいます。 また、「法廷」が明らかにした加害責任を広く知らせ、被害女性の正義と人権 の回復を実現するために、この裁判が役立つことを願っています。加害の歴史を 記録と人々の記憶に残すことは、戦争ガ出来ル国に作り変えようとしている右翼 や国家権力に抵抗するために役立つでしょう。そのためにも、言論・表現・報道 の自由や知る権利を守りたいと思います。 (鈴木香織) ──────────────────────────────────── 【4.VAWW-NETジャパンの提訴シンポ(7.24)報告】 会場は定員200人がほぼ満席でした。はじめに提訴の原告となった松井やより さん(VAWW-NETジャパン代表)と弁護団が裁判提訴とBRC(放送と人権等権利に 関する委員会)への申立の意義について述べました。「伝えられるべきことが伝 えられなかった」。これが今度の提訴のポイントの一つです。従来の「伝えられ るべきでないことが伝えられてしまった」報道被害裁判とは異なります。 シンポでは中山千夏さん(作家)の出された二つのエピソードが、問題の所在 を端的に示していて印象深いものでした。一つは、友人の俳優が昨年末の番組で、 20世紀とはどういう世紀だったかという質問に「戦争が一番忘れられない出来事 でした」と答えたところ、即座に若いディレクターが降りてきて「戦争の話はダ メで〜す!」と言ったという話。もう一つは、世界水泳大会の中継を見ていたら、 「日本最強の日の丸軍団!」「燃えろ大和魂!」「たくましき日本の大和撫子」 と若いリポーターが叫ぶのが不愉快この上なかったという話。一方では戦時のキャッ チフレーズが連呼され、他方では「戦争の話はダメ」と消される。無感覚・無責 任な言葉の氾濫と、「伝えるべき」言葉の消去は同じ問題のコインの両面です。 「伝えられるべきことが伝えられない」とは即ち私たちの「知る権利」が侵さ れていることに他なりません。仮に私たちが「目利き」たることによって氾濫す る情報がおかしいことは見抜けたとしても、何が消されたかを知ることは、一市 民にとって極めて困難です。「消す」ことが如何に罪深いか、今回のETV特集改 ざん問題に抗議する署名運動の中で如実に感じました。 この「知る権利」に関連して、竹内一晴さん(フリージャーナリスト)が今回 の件でNHKが盾に取っている「編集権」の問題点について、桂敬一さん(日本 ジャーナリスト会議代表委員)が、最近の政府によるメディア規制関連法案・構 想の問題点について述べ、政府・メディアが市民の「知る権利」に背を向けてい ることへ警鐘を発しました。 今度の提訴は、訴訟の中でこそ原告は限られていますが、広く市民の「知る権 利」の回復に、そして「伝えられるべきこと」の中味である、被害女性の証言、 戦争責任の問題への正当な評価につながる提訴であることを感じました。 (河かおる) ──────────────────────────────────── 【付1.転載について】 先に送ったVol.1(1)で、小倉利丸さんの原稿およびニュース全体に著作権表記 をしましたが、これを取り消させていただきます。必要な情報は広く共有される べきだという観点から、メキキ・ネット事務局はニュースの発行を独占しないこ とにし、原則として転載可とします。ただし、転載の場合には基本的に内容の改 変をしない、引用する場合には典拠を明記するなど、一般にテキストを利用する 際の倫理に準じて取り扱うことをお願いします。 小倉さんには、ご本人の意向(=copy-left)を確かめずに、copy-right表記をし てしまったことを、この場を借りてお詫びするとともに、ご指摘に感謝します。 また、新しい著作権のあり方の参考として、GNUというものを紹介していただき ましたので、参考までにそのURLを示しておきます(1)。 なお、今後、書き手の意向や内容によっては転載不可が望ましい場合もあるか もしれません。そのような場合は「転載不可」を明記した号外を発行するなど、 柔軟に対応していこうと思います。 今後もこのように参加者の意見を取り入れつつ運営していきたいと思います。 ご協力をお願いします。 (1) http://www.sra.co.jp/public/doc/gnu/gpl-2j (メキキ・ネット事務局) ──────────────────────────────────── 【付2.速報】 8月21日、第55回「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)が開かれ、女性国 際戦犯法廷の国際実行委員会からの申し立てを審理の対象とするかどうかが討議 されました。しかし、今回は結論が出ず、次回9月18日の定例委員会で決定する ことになりました(1)。特に、「申立人は個人又はその直接関係人とする」「係 争中のものは扱わない」と規定している運営規則との関係が議論された模様です (2)。 なお、東京地裁に提訴したのはVAWW-NETジャパンおよび松井やよりさん個人で あり、申し立てた国際実行委員会とは別です。そうした点からしても、審理とし て取り上げられることを望みたいと思います。 (1) 『東京新聞』8月22日朝刊13面を参照のこと。 (2) http://www.bro.gr.jp/news/n-kujou.html (メキキ・ネット事務局) ◇──────────────────────────────────◇ │発行= 2001年8月23日 │ │発行所=メキキ・ネット事務局 │ │ ホームページ: http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/index.html │ │ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp │ │ FAX: 020-4666-7325 │ ◇──────────────────────────────────◇ |