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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                         メール・ニュース Vol.1(1) 発行:2001年8月18日
                           http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/index.html


【創刊の挨拶】

 わたしたちは、表現し説得することばの力を信じています。多様なことばの豊
かな行き交いと、それを可能にする空間の意義を、どこかで愚直に信じています。
だからこそわたしたちは、制度化した言論の惨状を目の当たりにし、腹の底から
憤りを感じました。メディアに忍び寄る危機に、名状しがたい悲しみすら覚えま
した。
 《メディアの危機を訴える市民ネットワーク》は、女性国際戦犯法廷に取材し
たETV2001の番組が、権力によって不当にねじ曲げられた事件に対する抗
議署名運動をきっかけに生まれたものです。しかし、ネットワークの存在理由は
この問題にとどまりません。わたしたちは、さらに普遍的に、マス・メディアの
内部でゆっくりと進んできた根深い腐敗と頽落そのものを凝視し、それに抗って、
積極的に介入していきたいと考えています。
 わたしたちは自分の頭で思考し、自分のことばを紡ぐためにそのつど呻吟しま
す。そうして、ときには頑なな一言居士に、またときには大胆な分析者になって、
その目を利かせようと思います。だからこそ、略称してメキキ・ネット と名乗
ることにしたのです。
 わたしたちの最初の声を、ここに創刊号としてお届けします。会員同士の意見
が往来する広場として、このニュースが定着し広がっていくことを願ってやみま
せん。そして、みなさんもまた、わたしたちに手をさしのべてください。その声
を届けてください。


【創刊号の内容】

《今回送信分》

1.[投稿記事]電波メディアを解放しよう(小倉利丸)
	「報道の検閲や改竄に対して、裁判や抗議運動を起すだけでは市民が正し
	い情報を手にできるとは限らない。では市民が正しい情報を得るには、現
	在何が必要とされているのか。」
	現在のメディアが抱える問題とオータナティヴ・メディアの可能性につい
	て、小倉利丸さんに文章を寄せていただきました。

2.[情報欄](最近の出来事、イベント情報、編集後記)

《近日中送信分》

3.VAWW-NETジャパンは何を訴えるのか(鈴木香織)
	VAWW-NET Japanはどのような観点から、何を目的にしてNHKを告訴したの
	か。10月3日に開かれるVAWW-NET JapanのNHK提訴第1回公判を控え、その
	狙いを説明します。

4.VAWW-NETジャパンの提訴シンポ報告(河かおる)
	7月24日に、VAWW-NETジャパンによる提訴シンポジウムが行われました。
	その様子を報告します。

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【1.電波メディアを解放しよう】

 私は、NHKによる改竄=検閲問題は、現在の日本のマスメディアが抱える根本的
な問題を顕在化させたものだと思う。一つには、私たちにとっては、女性国際戦
犯法廷の意義は非常に大きなもので、戦後日本の民衆の運動のなかでも特筆すべ
き出来事の一つであると評価するにもかかわらず、なぜ改竄や検閲が行われ、総
じてマスメディアはこの報道に消極的であったのか、という問題である。もう一
つは、公共放送が正確な報道を行わず、意図的にか過失によってかを問わず誤っ
た報道を行った場合に、私たちが正しいと考える内容を視聴者に伝えるためのもっ
とも効果的な方法とはどのようなことなのか、という問題である。

 私たちは、テレビなどの報道が、市民運動などの運動の動向を詳細に報道する
ことなどありえないと感じている。これは、事実認識としては正しいが、ここで
考えなければならないのは、私たちの立場にたった報道などありえないというこ
とを、私たちはいったいどのような理由で甘受しなければならないのか、という
ことである。私は、いかなる意味においても、私たちの運動が報道に値しないよ
うな些末な出来事であるとは考えていない。うんざりするようなCMや政権党内部
の内輪揉めの報道に比べたらずっと報道されるべき価値のあるものだと、運動に
関わるだれもが感じているはずだ。にもかかわらず、報道されないことで被るデ
メリット、あるいは私たちが伝えたいメッセージを的確に伝えられないマスメディ
アの報道に、私たちは歯痒い思いをし続けてきた。マスメディアに報道してもら
えるようにさまざまな配慮をすることが市民運動にとって欠かせない仕事のひと
つになっている。私たちはなぜ、マスメディアに依存し、私たちの自由にならな
いメディアの環境に我慢を強いられねばならないのだろうか。

 他方で、検閲や改竄によってゆがめられた報道に対して私たちに何ができるの
だろうか。裁判の闘いや抗議の運動は、報道機関の違法、不当な行為をただすう
えで、必要なものだが、こうした行為によって、検閲され改竄された報道に接し
た視聴者に正しい情報が伝達されるというわけではない。相変わらず視聴者たち
には、検閲され改竄された情報しか与えられていないのである。たとえ、訂正放
送が行われたとしても、それが果たして文字通りの「訂正」といえるものになる
かどうかはわからない。なぜならば私たちには編集権はなく、マスメディアは検
閲を編集権と言いくるめられる特権を持ち続けているからだ。

 インターネットはだれもが情報発信可能な双方向メディアという特性をもつた
めに、その普及によってマスメディアの不正確な報道や意図的な悪意ある報道に
たいして異議申し立てできる余地が大きく広がった。このことが、マスメディア
に対して一定程度の規制力になっていることは確だと思うが、だからといってこ
れで上記のようなマスメディアの問題が相殺されたというわけではない。

 上記の問題をもっとも有効に解決する唯一の方法は、私たち自身が電波のメディ
アをもつことだろう。女性国際戦犯法廷の模様をもっとも正確に伝えたのは、主
催者が立ち上げたインターネット中継だった。しかし、いくらブロードバンドの
時代とはいえ、何十万という人たちがこのインターネットの中継にアクセスする
ことはできない。テレビやラジオといった電波のメディアはその点で極めて有効
な伝達手段である。同時に、私たちが自前の電波のメディアを持つことによって、
たとえ検閲=改竄された報道がマスメディアで行われたとしても、それを最も有
効に訂正する力を私たち自身がもつことになるだろうし、こうした対抗的なメディ
アの報道によって、ステレオタイプなニュース報道を相対化することも可能にな
る。

 このようなことを書くと、非現実的と思われがちだが、そのように思わせられ
てきただけなのではないか。むしろ多くの国や地域では、自立した電波メディア
が重要な役割を担っている。合州国でも常に商業化の危機にさらされながらもリ
スナーに支えられたパブリックラジオや自由ラジオがある。韓国でもNGOなどが
テレビの一定の時間枠を確保して番組を制作放映する権利がみとめられ、NGO 主
導のメディアセンターの設置などが進められている。

 インターネットの双方向性や自由な情報発信は、ミニコミなどの紙媒体、自由
ラジオなどの電波メディアとの相乗効果のなかで自由な情報発信が確保されるも
のであって、インターネットだけの自由などというものはあり得ないのだ。私た
ちはもはや視聴者という受け手に甘んじていてはならないと思う。電波メディア
もまた私たちにとって不可欠な情報発信のためのメディアであり、コミュニケー
ションの権利が市民的な権利であるとすれば電波メディアの発信の権利もまた市
民的な権利であるという原則から運動を組み立て、構想することが是非とも必要
になっていると思う。
                                                              (小倉利丸)

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【2.情報欄】

《最近の出来事》

7月24日
 VAWW-NETジャパンが、NHK、NHKエンタープライズ21(NEP21)、ドキュメンタリー
・ジャパン(DJ)を相手取り、東京地裁に提訴しました。同時に法廷の国際実行委
員会が、BRO(放送と人権等権利に関する委員会機構)へ申し立てました。
 これらに関連したホームページは以下の通り。

VAWW-NET Japan  http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/
NHK http://www.nhk.or.jp/  ->  ETV2001 http://www.nhk.or.jp/etv21c/
NEP21 http://www.nep21.co.jp/
DJ http://www.documentaryjapan.com/index.html
BRO http://www.bro.gr.jp/

 同日、VAWW-NETジャパンが主催して、NHK提訴シンポジウム「メディアは何を
恐れているのかーNHK女性国際戦犯法廷番組改ざんの責任を問う」が開催され
ました(河かおるさんの報告参照)。

7月25日
 VAWW-NETジャパンの提訴について、『朝日新聞』『毎日新聞』等各紙が報じま
した。昨年の「法廷」の開催を無視していた『読売新聞』も、提訴について報道
しました。

7月26日
 『東京新聞』テレビ&芸能欄(朝刊16面)で、「問われるNHKの製作責任」と
して、この問題が大きく取り上げられました。特にNHK労組の岡本直美書記長
の談話として、「個人が大メディアに異議申し立てをする新しい時代。訴えを重
く受け止め、本気で議論していきたい。天皇や戦争責任などタブーを恐れて萎縮
しないよう現場を後押しする」と報じられているのは注目に値します。

7月31日
 NHKへ「わたしたちの見解と要望」として2878名の署名を提出し、それに対す
るNHKの回答が大変不十分であったことから再回答を求めていた件で、この日、
NHK番組制作局長からの再回答が届きました。以下のページを参照。

http://www.jca.apc.org/~itagaki/nhk/whatsnew.htm


《今後予定されていること》

◎ 東京大学社会情報研究所で、ETV番組改ざん問題についてのワークショップ
を開きます。詳細は追って配信します。

社会情報研究所文化研究プログラム + メキキ・ネット共催ワークショップ
「徹底検証:ETV2001改竄問題とメディアの現在」
 日時 9月13日(木) 17時〜20時
 場所 東京大学社会情報研究所 6階会議室(満員の場合は、2階教室を予定)
 報告者 坂上香さん(元ドキュメンタリー・ジャパン)
 司会 吉見俊哉 + 岩崎稔

◎ VAWW-NET JapanのNHK提訴、第一回公判の日程が決まりました。

日時:10月3日(水)10時30分開始
場所:東京地方裁判所


《編集後記》

○ ようやく創刊号発行にこぎつけました。まとめてみたら長くなってしまった
ので二分割することにしました。次回配信は間もなくです。
○ 事務局宛にいただいたメッセージは、メキキ・ネットへの期待の大きさや多
様性をうかがうことができ、ありがたく読ませていただいています。ただ、事務
局の情報発信能力には限界があり、メール・ニュースでそうした思いに十分応え
ることができるかは心もとないものがあります。そこで事務局からお願いがあり
ます。
・)原稿を募集します!メキキ・ネットへの投稿、お待ちしています。分量は本
号を目安にしていただければと思いますが、融通はききます。長い場合は分割配
信も可能です。原稿料のようなものはございませんので、悪しからず..。
・)まだまだ情報のアンテナがたりません。関連した情報を教えてください。
・)ホームページの充実にもご協力ください。アイデア、情報等をお待ちしてお
ります。関連したリンク先も教えてください。
                                                (創刊号編集担当=板垣)


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│発行= 2001年8月18日                        │
│発行所=メキキ・ネット事務局                    │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/~lee/mekiki/index.html    │
│ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp             │
│ FAX: 020-4666-7325                      │
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