(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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メール・ニュース vo.18(6)  発行:2005年7月24日
                            登録者数:375人
http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html

■もくじ■

1.混迷きわめるNHK裁判――第5回口頭弁論傍聴報告
                    鈴木香織(メキキ・ネット事務局)

2.NHKオンラインへの準備書面の一部掲載についての抗議と公開質問状
                 「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク


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混迷きわめるNHK裁判――第5回口頭弁論傍聴報告
――――――――――――――――――――――――――――――――
                  鈴木香織(メキキ・ネット事務局)

 控訴審も5回目を迎えた7月20日、東京高裁101号法廷。裁判長が口火を切った。
「裁判所も構成が変わったことですし...」。裁判官が一人異動になり、後任判
事が記録を読んでいないため、双方の主張を整理するだけにしたいという。

 原告側は新たにNHKに対して1000万円の追加請求。政権の中枢を占める政治家
に事前に番組内容を説明し、彼らの圧力に屈する形で改変したNHKの不法性を問
うたのだ。一方、NHKら被告三社も150ページを超える準備書面、陳述書を提出し
ていた。書面の不備を整えるために、さらに何ページもの差し替えバージョンが
直前まで飛び交っていたという。

 放送直前まで番組に加えられた、ドタバタ改ざん劇を思い起こすじゃありませ
んか。しかもNHKは、裁判所に書面を提出した後、7月13日には記者会見まで行っ
ている。「準備書面を提出しました」と。判決が出たとか、控訴したとかならい
ざしらず、準備書面を提出したくらいでの記者会見は前代未聞とか。

 しかも、NHKのウェブサイトにその準備書面が掲載されているではないか!
 www.nhk.or.jp/pr/keiei/news/050720.html
「政治介入は無かった」というNHKの公式見解に沿ったストーリーの展開には、
裁判所に対する圧力さえ感じる。どんな判決を出そうが、それを「報道」するの
はNHKだと言わんばかり。

 さて、裁判では証人申請の数の開きも明らかになった。原告側は番組制作に関っ
たNHK職員や、松尾武放送総局長(当時)らNHK幹部、安倍晋三氏、中川昭一氏な
ど自民党国会議員を申請している。デスクとして番組に関り、今年一月、政治介
入を内部告発した長井暁氏も当然、これに含まれる。NHK側は、唯一人、松尾氏
を申請。長井告発を裏付けるかたちで安倍氏との面談を認めながら、朝日新聞が
記事にした途端に居直った、あの松尾氏だけでは真相究明にならないはずだが。

 証人の採否は次回に持ち越されたが、少なくとも長井氏の証言は必要だ。いや、
長井告発によって、NHKが散々否定してきた政治との繋がりが暴露された今、NHK
側の証人たちを証言台に呼び戻す必要がある。チーフプロデューサーを務めた永
田浩三氏。教養番組部部長として編集過程の試写を繰り返した吉岡民夫氏。

 忘れてならないのは、彼らの口を封じる権力を握る人々を証言台に立たせなけ
れば、彼らはまた、同じ過ち――臭い物に蓋をする――を犯すということ。その
ことによって傷つくのは、孫請け制作会社の社員のような、弱い立場に置かれた
人たちなのだから。

★次回控訴審は10月3日午後1時半です。★

...ところで。松尾武氏の消息をご存知の方、ご一報ください。番組改ざんでの
働きを認められ、NHK出版の社長に収まっていた氏が異動した模様です。今月は
じめに発売のNHK生活人新書『沖縄「戦後」ゼロ年』(目取真俊著)の奥付を見
て気がつきました。発行者として記される社長の名前が、松尾じゃない。昭和天
皇の戦争責任に関して、ズバズバ言及したこの本に、バサバサ切り刻んだ男の名
前が記されるのを見たかった、とは思います。

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 傍聴報告記でもふれたように、NHKは準備書面の一部をホームページに掲載し、
かれらの一方的な主張をあたかも事実であるかのごとく公開しています。これに
対してVAWW-NETジャパンが、7月22日、下記のような抗議声明・公開質問状を発
表しました。メキキ・ネットもNHK準備書面の内容を検討し、然るべき対応をと
る所存です。


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日本放送協会会長 橋本元一様
NHKオンラインへの準備書面の一部掲載についての
抗議と公開質問状

 7月20日、貴協会は貴協会のホームページに、ETV番組改変に関する控訴審
に貴 協会が提出した準備書面の一部「編集過程を含む事実関係の詳細」を掲載
しました。 係争中の裁判の内容について、一方当事者である貴協会の言い分の
みを、国民に圧倒 的な影響力をほこる巨大メディアとしての立場を利用して、
確定した真実であるかの ような体裁で不特定多数の市民に一般公開することは、
公共放送を使命とする貴協会 として、報道の「公平・公正」の原則の観点から
不当であると言わざるを得ないもの と考えます。

 掲載された準備書面の内容は今後、裁判において反論を行い、審理されるもの
で す。にも関わらず、どのような事実関係について争っているのかの説明もな
いまま事 実に反する部分や事実を曖昧にし、自己の主張のみを展開した準備書
面を巨大メディ アの力を以って一方的に流すことは、いかにも不公平・不公正
であって、報道機関と しての倫理を逸した行為であると考えます。

 仮に事実を報道するという趣旨であれば、裁判の争点や控訴人の反論も掲載す
べき です。

 ETV番組改編問題については、現在、東京高等裁判所で係争中の事案であり、
司 法の場で双方の主張立証に基づいた判断がなされることとなっています。こ
のような 係争中の事案であるにもかかわらず、貴協会が自らの一方的な主張の
みを巨大メディ アである貴協会のホームページを利用して広く流す行為は、自
分たちの主張を「事 実」として流布させ、既成事実化を図る効果を生じさせる
ものであることは明らかで す。裁判の経過や事実関係の争いの詳細を知らない
多数の市民は、この一方的な貴協 会の主張のみを読み、誤った認識を与えられ
ることになります。

 一体なぜ、今、このような形で準備書面の異例な公表をされたのか、掲載意図
を私 たちに分るように説明してください。
また、私たちはこのようなやり方を容認するわけには行きません。即刻、謝罪
文と ともにホームページから削除することを求めます。


即刻、ご回答いただきますよう、お願いします。

2005年7月22日

「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク
(VAWW-NETジャパン)

共同代表: 西野瑠美子・東海林路得子

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戦争と女性への暴力日本ネットワーク
    (VAWW-NET Japan)
Violence against Women in War-Network Japan
112-0003 東京都文京区文京春日郵便局局留
 TEL/FAX 03-3818-5903
 E-mail vaww-net-japan@jca.apc.org
http://www.jca.apc.org/vaww-net-japan/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 この抗議声明についてのお問い合わせはvaww-net-japan@jca.apc.orgまでお
願いいたします。

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                     (18号編集代理・鈴木 香織)

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│発行= 2005年7月24日 │
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