(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                       メール・ニュース vol.16(9) 発行:2004年4月12日
                           登録者数:391人
                             http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html
■もくじ■
1.[読者投稿]       関西圏ドキュメンタリーの上映情報MLのお知らせ

2.[NHK裁判続報 ]   国会でも、判決が取り上げ...られちゃった!
                     記録:鈴木香織(メキキ・ネット事務局)

3.[編集後記]       ジャーナリズムに命を!『DAYS JAPAN』創刊

[1]********************************************************[ 読者投稿 ]

◆関西圏ドキュメンタリーの上映情報ML(KDML)のお知らせ

このたび、関西圏におけるドキュメンタリーの上映・製作・展示情報を交換する
MLを開設しました。マスメディアには載りにくい、しかし意義のある多数のド
キュメンタリー映画・映像作品がもっと広がる一助となれば、と思い開設します。

とりあえず、自由参加制とし、1年間の試験運用をしてみます。お気軽にご参加
・投稿ください。広く上映会の宣伝・告知などにご自由にご利用ください。

今後の運用について、協力申し出やご意見があれば、ぜひお気軽にいただければ
と存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

ぜひ上映情報を当MLにお寄せください。また、友人・知人に当MLをご紹介い
ただければ大変幸いです。お気軽にご参加ください。下記ホームページより自由
に登録できます。
http://www1.vvjnet.biz/kdml/
過去ログは下記に公開されるように設定していますので、広く利用ください。
http://www.freeml.com/ctrl/html/MessageListForm/kdml@freeml.com
メールが多く来て大変だという方もいらっしゃると思いますので、登録せずとも
利用できる形態にしてあります。(投稿先… kdml@freeml.com)(ウイルス対策
のため、添付ファイルやHTMLメールは投稿できない設定になっています)

また、下記 担当者(管理者)あてに情報をいただければ、代わって担当者がM
L宛に投稿します。

運用に関する問い合わせ・ご意見その他は、
暫定管理者 木村 < vein@mx.vvjnet.biz >までよろしくお願いします。

[2]**************************************************[ NHK裁判続報 ]

 「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」を特集したNHK−ETVの番組が、放
送直前の異常な編集により改ざんされたとして、取材に協力した日本側「法廷」
主催団体、VAWW-NETジャパン(以下、バウ)がNHK等を訴えていた裁判に、3月
24日、判決が下されました。この判決がもたらした反響を追ってみました。
                                     <鈴木香織・メキキ・ネット事務局>

               ■ 3月24日夜、バウの判決報告集会 ■
               ───────────────―――──
 ヤフーのニュースが「一部勝訴」と報道していたころ、原告や支援者は「全面
敗訴」に打ちのめされていました。参加者のコメントを紹介します。

◆驚くべき判決。政治部記者だった私から言わせれば「秘書が、秘書が」と言う
のと同じ。[Kさん、NHKのOB]

◆原告の信頼利益が認められたのは良いけれど、なんと、だから内部資料(番組
提案票)を見せてバウに期待を抱かせたDJが悪いという結論。これは弁論主義に
も違反で、主張していないところで勝てた。[Iさん、原告弁護団]

◆特に不当だと感じるのは、取材があったから番組があったのに、この2つの関
係を完全に無視していることです。..いま、ドミニカ移民の裁判でも弁護をして
いて、これはドミニカが良い所だと思って移民したのに惨憺たる状況に放りこま
れたことを争っているのですが、それは国が宣伝した責任があると認められそう
で、つまり、国と移民は「契約類似の特別な接触関係」があったと認められる。
バウとNHKも、特別な接触のある社会関係があった。[Oさん、原告弁護団]

◆裁判官たちは悩んだと思う。原告を負けさせるわけにはいかない。被告を勝た
せるわけにはいかない。裁判官に責任を負わせてしまった。[Hさん、朝日新聞
記者]

◆最悪の判決。全面敗訴といってよい。心配していたことが現実になった。NHK
はホクホク。DJはバラバラになっていくだろう。控訴することになると思うが、
もっと証言を集める必要があるのでは。例えば、右翼だって自信を持ってやった
ことだろうから、証言を求めれば応じてくれるのではないだろうか。既に2年も
経ち、内部告発の可能性は消えたと言ってよい。[Hさん、立教大学教授]

◆動揺していて上手く話せないと思う。原告側の証人だが、松井さんの映像を改
ざんしたことによって被告側で事件に関わったという複雑な立場にいる。判決を
傍聴した。DJに100万円と聞いて、自然に、じゃあNEP、NHKも問われるだろうと
思った。気持ちが昂ぶって涙が出そうになった。ところが、NHKには無し。天か
ら地に落ちたような感じ。何も手につかない。私がいけなかったということ。私
がやってきたこと、全てがいけないと言われたよう。ささやかな抵抗も否定され
た。朝日の記事を見た。複雑(な気持ち)。今までやってきたことは何だったの
か。非常に憤りを感じている。川崎さんの『NHKと政治』を読んだ。同じことが
繰り返されているのがわかった。20年前には内部の闘いがあったとわかった。私
が辞めてからは無いが。今は大学でメディアについて教えている。今年は一人、
メディアに進む。育てる側になった。この判決をどのように教えていけばよいの
か。君たちは何の権利も無い恐ろしいところで働くんだよと言うのか。
[Sさん、元ドキュメンタリー・ジャパン]

◆制作会社間で交わす契約書には必ず、NEPやNHKが合格と認めた番組なら放送す
ると書いてある。それはつまり、NHKは番組に責任があるということのはず。
[Sさん、テレビマン・ユニオン]

                 ■ 3月30日、参議院総務委員会 ■
                 ───────────────―――
 質問を待ち構える参考人席の真ん中で、ふん反り返る海老沢NHK会長。

八田:日本共産党の八田ひろ子です。今日は放送倫理についてうかがいます。わ
たしは放送によって人権が侵害されることはあってはならないと、これはNHK、
民放、法曹界も一致した意見だと思います。ですから、放送と人権を監視する
BRCという委員会を設立していると伺っております。NHK教育テレビで2001年に放
送されました、『ETV2001 問われる戦時性暴力』の番組改変問題について、番組
にコメンテーターとして出演されたカリフォルニア大学準教授の米山リサさんが
BRCに申し立てをされて、昨年3月31日に出されましたけれども、総務省、結論を
簡潔にお知らせください。

タケチ情報通信政策局長:ポイントはニ点ございます。一点目は、NHKが申立人
への説明や了解を得ないまま、編集を行ったため、コメンテーターとしての申立
人の人格権に対する配慮を欠き、放送倫理に反する結果を招くことになった。ニ
点目は、本決定の主旨を、少数意見を含め、放送するとともに出演者の権利と放
送倫理に一層配慮することを要望すること。

八田:この放送倫理に違反したということを受けてNHKとしては、どうしてこう
いうことが起きたのかという検証をどのようにされたか。それから放送倫理向上
のために、どのように具体的な取り組みが行われたのか、また米山さんに対して
はどうなのか、お詫びとか誠意をお示しになったと思うんですが、その三点につ
いて、簡潔にお示しください。

関根参考人:ご案内の番組については提訴されておりまして、今月24日に東京地
方裁判所で判決がありました。判決の要旨がありますが、「本件番組は、公平性、
中立性や多角的な角度からの編集が必要とされたものであったことから、NHKが
行った編集は放送事業者に保証された編集の自由の範囲内と認められる」という
判断が下されています。ご質問のBRCの決定を受けた我々の対応でありますけれ
ども、私どもの放送総局という部内に、今局長クラスからなる放送倫理委員会と
いうのがあります。ここでBRCの決定が出た後、BRCから指摘されました「出演者
との関係をより一層配慮する」ことを放送現場に指導するということを申し合わ
せると同時に、放送現場でいろいろ議論する場を設けたということです。それと
出演者の説明、連絡についても指摘されていますので、今後議論を重ねながら、
こういった問題が起きないように、いろいろな角度から検討を重ねているという
ところでございます。

八田:NHKのホーム・ページには、「放送倫理のため、放送と人権等権利に関す
る委員会BRCの見解を重く受け止め、自主的に対応します」というふうに書かれ
ていますが、本当に真摯に受け止めておられるのかな、と思います。NHKのガイ
ドラインは、「制作過程であらかじめ、取材相手に伝えていた目的や内容に変更
が生じた場合は、改めて取材相手に十分説明しないといけない」と書かれていま
す。どうしてガイドラインのようにできなかったのか。

関根参考人:米山さんと連絡を取る努力をしてきたつもりですけども、結果とし
て連絡は取れなかったということであります。

八田:結果的にできなかったとおっしゃいますけど、それを怠ったのは明らかな
んですよ。どうしてガイドライン通りにできないんですか。編集の自由、放送の
自由を尊重することは無論でございます。しかし、放送倫理を無視して、どんな
自由も認められることはないと思うのですが、海老沢会長どうなんでしょうか?

海老沢参考人:私ども、番組を毎日120本ほど作っておりますが、できるだけ多
角的に取材をし、その中から公平さ、客観性を持って、編集する。そして出たも
のが、ひとつのNHKの意思として証明されるわけでありますから、去年も証言し
ましたが、その中で、取材で約束したからどうのこうのではなくて、私どもは出
たものがすべてだ、そこに編集の自由、表現の自由があるんですね。そこをひと
つのものをつかまえて、けしからんという理屈でしょうけれども、ある意味で、
放送倫理にもとるようなことがあったかもしれませんが、全体的にみれば、この
前の東京地裁の判決にありますように、NHKの編集の自由は認められたわけです
ね。その放送倫理に反して、十分説明できなかった点については、我々は現場と
して対応(?)しなければならないでしょうけれども、この問題全体を考えれば、
私はNHK勝訴の判決を下したように、編集の自由が保たれたと、認められたと、
認識しております。

八田:会長!私は、放送倫理違反を指摘されて、それについてどうですか、とい
う質問をさっきからずっとしているんですが、それについて真摯にお答えになっ
ていないと、私には受け取れるんです。裁判の中では、番組の中身は当初の企画
と相当乖離しており、取材される側の信頼を侵害したと明確に言っていますよ。
孫受けの会社は手を引いて、NHKが独自に改ざんした、取材要請に協力している
人々にとって放送内容が侮辱的だと。 BRCでは、人格権の配慮を欠いていたとい
う状況を作り出しているんですよ。右翼の圧力に屈したさまざまな報道もあり、
裁判でも証言されています。いかなる政治的圧力にも屈せず、民主主義の立場か
ら事実を報道する姿勢こそが、編集の自由を守る、国民からの信頼回復になる。
何よりも放送倫理違反というようなことを言われないように。私はこれを、重く
受け止めて対応していただきたいと申し上げて、今日の質問を終わります。

関根参考人:BRCの結論ですが、「番組として不自然な感は否めないが、企画の
趣旨・意図が変更されたとまでは言えない。」となっています。

        ■ 3月30日、被告ドキュメンタリー・ジャパンの見解 ■
        ───────────────―──―――───――─―
 「2001年1月放送番組『問われる戦時性暴力』に関する損害賠償請求訴訟におい
て 2004年3月24日に言い渡された東京地裁判決に対する見解」と題する文書で、
同社は、判決への不服と控訴の決意を表明している。最終的な「編集権」や「決
定権」のない番組制作会社の責任を問うことの不当性を、訴えていくようだ。

 http://www.documentaryjapan.com/Golive/kenkai.html

         ■ 4月1日、原告VAWW-NETジャパンも控訴を決めた ■
         ───────────────―──―――───―・

[3]********************************************************[ 編集後記 ]

 「ハゲワシと少女」という写真を覚えていますか?ハゲワシに狙われた少女が
一人、地面にうずくまっていたのを。飢餓のスーダンで撮影され、ピュリッツァ
賞を受賞。でも、「写真を撮るより助けるべきだった」という非難にさらされた
撮影者が自殺して、話題になった一枚です。発売中の『DAYS JAPAN』創刊号で、
フォトジャーナリストの広河隆一さんが取り上げ、「報道か命か」というジレン
マに答えているのを読んで、いよいよ、忘れられなくなりました。
 だって、撮影の実際がわかってみれば、「ハゲワシと少女」を撮影した人間を
非難することはできない。できないんだけれども、でも、シャッターを切るのを
優先して、命を助けることができたのに助けなかったら批判するという理性は、
捨てたもんじゃないです、決して。(か)

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 宛先 mekikinet-owner@egroups.co.jp 
                       16号編集担当・鈴木香織)

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│発行= 2004年4月12日                                              │
│発行所=メキキ・ネット事務局                                      │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html         │
│ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp                      │
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