(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                       メール・ニュース vol.16(7) 発行:2004年2月29日
                           登録者数:395人
                             http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html

■「共謀罪」なるものが作られようとしていることは、前号<vol.16(6)>でお伝
えした。「情けないけどスケジュール闘争ですわ」と、ある野党議員。参議院選
挙を控える今国会の会期延長は無い。他の法案より後回しにしておけば、時間切
れで「共謀罪」法案は廃案になる、との読み。それなのに、法案は提出されてし
まった。
 共謀などといえば、いかにも危険で凶悪な犯罪を企んでいるように響く。しか
し法案は、「“最高刑懲役4年以上の犯罪”にあたることを2人以上で共謀した」
とみなせば、事件が無くても「犯罪をやろうとした罪」をでっちあげ刑罰を加え
ることができるようにするものだ。これは、557の罪に共謀罪を新設すること
を意味し、障害共謀罪、強要共謀罪など、私たちの社会生活・社会運動を対象と
している。
 共謀罪を立証するために、警察の盗聴やおとり捜査が常套手段となることは、
容易に想像できる。また、「仲間を裏切れば減刑(または免除)」としているこ
とから、密告、でっち上げ、スパイによる冤罪が作り出される結果になろう。
 「共謀罪」ができてからでは遅い。話し合うことが罪になる社会で、どうすれ
ば人は人と連帯し、生命と人権を守り、平和を創って行けるのだろう?
                                           (16号編集担当・鈴木香織)

■もくじ■
1.[イベント情報]   戦争と監視社会を考えるシンポジウム    <3/14 東京 >
                                           ★ 賛同も受け付けています ★

2.[メディア・ウォッチ]  「不法占拠」報道に異議あり!
       ◆ 東京朝鮮第二初級学校フィールド・ワークに参加して
          報告:吉田俊実(メキキ・ネット事務局)

[1]*****************************************************[イベント情報 ]

◆戦争と監視社会を考えるシンポジウム

  http://www1.jca.apc.org/nishoren/campaigns/040314%20hankansi.html

  ●3月14日(日) 13:30開場 14:00開始 18:00終了
  ●国民生活センター(JR品川駅徒歩5分)
  ●参加費 1000円

  ─────内容─────
  ●基調講演「小泉改革と監視社会」
  予定 斉藤貴男さん(ジャーナリスト)
  ※取材によりキャンセルの場合あり
  ●特別報告 「9.11以降のアメリカの監視」
  マルシア・ホフマンさん(電子プライバシー情報センター)
  ●報告「日本で進む外国人への監視」
  佐藤信行さん(在日韓国人問題研究所)

  有事法制の制定、イラクへの自衛隊派兵、そして「北朝鮮」への敵意扇動
  と、日本がひたすら「戦争のできる国」づくりにはしる現在、その一貫と
  して、一般の市民をもターゲットにした「監視社会」づくりが進行してい
  ます。

  そもそも「戦争のできる国」と「監視社会」とは深い関係があります。む
  しろ、人々の主体的な言論・行動の自由を奪い、単一の方向に向かわせる
  「監視社会」こそ、「戦争のできる国」への第一歩だと言ってもよいでし
  ょう。つまり、「戦争のできる国」と「監視社会」は同根であり、「監視
  社会」づくりをくい止めることが、「戦争のできる国」づくりを止めるひ
  とつの大きな手だてになるのです。

  このような考えから、住基ネット・監視カメラ・Nシステム・盗聴法など、
  「監視社会」の問題に取り組む市民団体では、「戦争のできる国」づくり
  との関係から「監視社会」の問題を訴えようと、下記のようなシンポジウ
  ムを企画しました。

  「監視社会」がどのように「戦争のできる国」を招くのか、「戦争のでき
  る国」づくりがどのような「監視社会」を呼ぶのか、皆さんと一緒に考え
  たいと思います。

  ぜひ、ご参加下さい。

  ●呼びかけ団体 (2004年1月30日現在)
  反住基ネット連絡会/一矢の会/監視社会に反対するネットワーク
  /JCA-NET/盗聴法に反対する市民連絡会/日本消費者連盟/プラ
  イバシ-アクション/やぶれっ!住基ネット市民行動

  ●ご賛同もお願いします!
  http://www1.jca.apc.org/nishoren/campaigns/040314%20sando.html

  ●主催 戦争と監視社会を考えるシンポジウム実行委員会
  ●連絡先
  日本消費者連盟 TEL 03-5155-4765
  プライバシーアクション TEL 090-2302-4908
  反監視ネットワーク TEL 070-5553-5495

[2]*************************************************[メディア・ウォッチ]

       ■ 東京朝鮮第二初級学校フィールド・ワークに参加して ■
       ───────────────―――──────────
                               吉田俊実(メキキ・ネット事務局)

「江東区の都有地(約4140平方メートル)を東京朝鮮学園が不法占有」、
そんな新聞記事がたしかに頭の片隅に残っていた。

以下は朝日新聞の記事。
  東京都監査委員は6日、江東区の都有地(約4140平方メートル)を東京
 朝鮮学園が不法に占有しているとして、来年3月末までに占有の解消などに必
 要な措置を講じるよう石原慎太郎都知事に勧告した、と発表した。都は売却か
 貸し付けの方向で学園と交渉を続ける方針だが、まとまらない場合は提訴も検
 討するという。
  同区の住民から請求を受けて監査した。監査結果によると、学園は都と都有
 地の貸し付け契約を結び、55年から初級学校などを運営したが、90年に契
 約が切れた。都は学園に土地を購入するよう求めたが、金額などが折り合わず、
 少なくとも8年10カ月間、交渉が中断。この中断には合理的理由がないとし
 ている。                                   (10/06 20:48 朝日新聞報道)

 マス・メディアが中心となった一連の「北朝鮮バッシング」が続くなかでこの
記事もなんだか胡散臭い。「不法占有」という文字だけが印象に残ってしまうが
本当にそうなの?ネットで確かめることもできるのだろうが、いちいち確かめる
人がどのくらいいるかしら?そんな手段を持たない人は?

  そこで、1月17日に行なわれた「一橋民受連」主催の「東京朝鮮第二初級学
校グランド不法占拠」にかんするフィールドワークに参加してみた。

 フィールド・ワークで配られた資料をもとに事実関係だけを追ってみると、校
舎の土地はすでに1963年12月に東京都から払い下げを受けて購入済み。校
庭は学校が建てられた経緯を踏まえて1972年に20年間の無償貸与契約が結
ばれた。使用期間満了後は「協議し改善」することになっていて、91年から始
まった交渉はいったん物別れになったものの、2003年に再開され7月24日
まで行われていた。

 東京都が態度を一変させるのは、8月に都に提出された住民監査請求を受けて
からのことである。都監査委員は、10月6日、学園が都所有地を不法占有して
いるとして都知事に対して不法占有の解消と都がこうむった損害を補てんするよ
う勧告。
(くわしい情報は http://www5d.biglobe.ne.jp/~mingakko/net031021.html )

 たしかに校庭の「交渉中断」は9年近くになる。しかし、この9年近くの「交
渉中断」中も枝川(学園所在地)の住民約200戸(朝鮮人40%、日本人60
%)と都の間で行われた、校庭以外の居住地払い下げは円満に解決されていて、
学園周辺の土地も学園の駐車場として学園に払い下げられている。

 この事実関係と上記の「記事」の落差は詳細であるかどうかではない。この問
題のわかりにくさを理解するためには「学校が建てられた経緯」が重要なキーと
なるからである。そしてそれが「記事」からすっぽり抜け落ちている。
 なぜ、朝鮮人学校が枝川1丁目に建てられたのか。
 なぜ、都は使用期間満了後の「協議し改善」を約束して20年間の無償貸与を
行ったのか。

 そもそも枝川1丁目は日本朝鮮植民地支配により日本に渡ってきた朝鮮人を強
制移住させた地であった。1940年に開催することになっていた第十ニ回オリ
ンピックや万博のための関連施設予定地だった浜園、塩崎などのバラックに住ん
でいた朝鮮人が枝川に集められた。その数は1000人以上にのぼり、枝川簡易
住宅に住むことが強要される。
(当時の簡易住宅の一部は学園を見つめながらいまだに残っていて住民が生活を
営んでいる)

 戦後、都は枝川の土地管理を放棄、当時の朝連に委託。現在は枝川管理委員会
が受け継いでいる。当時の枝川は埋め立てを終えただけの荒地で住民たちはハエ
と悪臭に悩まされながら、自力で排水、下水などの整備をせざるをえなかった。

 付近を歩いてみると、川の護岸工事が枝川に差し掛かるところ迄しかなされて
いなかったり、笑ってしまうような「差別の視覚化」に出会う。歩いてみれば、
「現実」は「記事」より奇なり....

 外界は朝から雪の舞い散る真冬日。参加した数人と遅い昼食をとるために、学
園付近の食堂に入る。中華丼、カツ丼、酢豚定食など豊富な張り紙を前に悩む私
たちに有益な「サジェスチョン」をくれたのは、食堂のおばさん。会計もおばさ
んが大きな声で「指示」を出し、混乱を回避。笑いにつつまれながら、仲間の大
半が食堂から出たとき、おばさんがちょっと声を潜めてたずねた。

 「あんたたち、同胞?」
 「全員じゃなくて、日本人も。混じっています。」
 「そう、いまではもうわからないよ。私たちのころはすぐばれたけれど、
  ほんと、わからないね。」

 そのやりとりを聞いた奥の男性の顔がパッと明るくなってこっちを見上げた。

―― おばさん、私のなかには混じっていますよ、「日本」も「朝鮮」も。
   「すぐばれる」ことを恐れながらきっと生きて来られたのでしょうね ――

その恐怖はいまだに克服されてはいない、と認めざるをえないけれど。

 かつての「悪臭の土地」も銀座に近いとあって、枝川周辺では、何棟もの高層
マンションの建設がすすんでいる。工事現場の壁に書かれた広告のうたい文句は
「安全セキュリティ」。排除の構造を含んだ「安全」が新たな「恐怖」しか生み
出さないことに、いつ気づくのだろうか....

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                      (16号編集担当・鈴木香織)

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│発行= 2004年2月29日                                              │
│発行所=メキキ・ネット事務局                                      │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html         │
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