(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                          メール・ニュース vol.14(4)発行:2003年 5月27日
                                                         登録者数:364人
                                http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html


                       【前回送信分=Vol.14(1-3)】

(1) 第11回NHK裁判(第2回証人尋問)報告
(2)「北朝鮮」「拉致」報道を批判的に読み解くために−検証記事目録Ver.1.0
(3)戦争とメディアを考える集まりの案内2つ
(4)抄録「イラク戦争の真実と情報操作・報道統制」
(5)特別掲載:ビデオ「検証・反国労キャンペーン」スクリプト

                       【今回送信分=Vol.14(4)】

(6)戦後補償裁判上告一斉棄却をメディアはどう報じたか
                                    梁澄子(在日の慰安婦裁判を支える会)

	 3月末、最高裁は戦後補償裁判の上告を一斉に棄却した。しかし、こ
	の日本の戦後補償史上の「事件」は、米英のイラク攻撃に関する報道に
	まぎれて、まったく周辺的な扱いしかうけなかった。そこで忘却された
	のは何だったのか。長い間、在日の慰安婦裁判を支援してきた梁澄子さ
	んに、記事を書いていただきました。

                            【次回送信予定】

 国立大学の独立法人化法案とマスメディアの問題について、この法案の反対運
動にねばり強く取り組んでおられる岩崎稔さんに記事を書いていただく予定です。
こうご期待!


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                                 【6】

            戦後補償裁判上告一斉棄却をメディアはどう報じたか

                                    梁澄子(在日の慰安婦裁判を支える会)

 アメリカのイラク侵攻が大々的に報じられていた3月末、最高裁は6つの戦後補
償裁判の上告を棄却した。3月25日の関釜裁判(第3小法廷)に始まり、27日には
静岡・もと朝鮮人女子勤労挺身隊訴訟および対日民族訴訟(第1小法廷)、翌28
日にも江原道遺族訴訟、金順吉三菱造船損害賠償請求訴訟、在日の元「慰安婦」
訴訟(第2小法廷)の上告を立て続けに棄却したのである。かつて日本が他国を
侵略した際、植民地朝鮮から駆り出され、戦後は何らの補償も受けることなく放
置されて来た人々が、1990年代初から日本国を相手どって起こした訴訟に、司法
が最終的な結論を出したことに対する報道は、決して十分とは言えないものだっ
た。
 私が10年間支援してきた宋神道さんは93年4月に提訴。10年間、その言動と裁
判は社会の関心を集めてきたと言っていいだろう。しかし、地裁・高裁判決を大
きく報道したマスコミも、敗訴確定の報をきちんと報道したとは言えない。朝日、
毎日、日経、東京が棄却の事実を報道したが、産経、読売は事実すら無視した。
4月16日には6裁判の原告団と弁護団、支援団体が共同記者会見を開き、最高裁に
対し共同抗議声明を発表したが、これについても、地方紙(西日本新聞、南日本
新聞、佐賀新聞など)が共同電を扱い、山口放送が報道、統一日報、民族時報、
女性ニューズなどが大きく報道したが、中央紙については朝日がベタで数行の扱
いをしただけだった。
 それは、イラク侵攻真っ只中という当時の状況が作用してのことだったのかも
しれない。また、何の前触れも無く、棄却の理由もなんら示されない定型文の
「決定」という形で出されたため、用意の無い記者らにとって書きようが無いと
いう事情もあったのかもしれない。しかし、最も大きな要因は、アジアの被害者
らが日本社会に投げかけた問題提起の重要さに対する認識の欠如にあると思う。
 原告らの問題提起は、戦争被害者らの存在を無視して「平和ボケ」してきたと
いう日本社会に対し真に貴重な問いかけであったはずだ。原告らは、「汚れた存
在」あるいは「日本の戦争協力者」として自国内においてさえ無理解にさらされ
る半世紀を経て、「このままでは死んでも死にきれない」と、さらなる苦難をも
覚悟で名乗り出て、その後のたたかいの中で自らの体験を普遍的な平和への訴え
へと昇華させた。原告らが訴えてきたこと、そして存在そのものが、日本の過去
(戦時だけでなく、彼らを無視してきた戦後も含めて)を照射してみせただけで
なく、イラク戦争に易々と協力を表明し有事法制の成立を急いで再び戦争ができ
る国へとひた走る日本で、真の平和の意味を、そして日本社会のありようを示し
てくれていた。
 そのような意味で、中東の地で再び平和が侵されている時だからこそ、戦争が、
武力行使が生む被害の甚大さを、そして被害回復と平和を訴える原告らの主張を
報道するべきだった。そして、原告らの10年におよぶたたかいが日本社会に何を
もたらしたのか、未だ彼らに対し責任を取らないこの国のありようを含めてきち
んと検証しなければ、日本は再び同じ間違いを繰り返すことになるだろう。  

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                            《《お知らせ》》

■ VAWW-NET JapanのNHK裁判の第12回口頭弁論(第3回証人尋問)と報告集会
は、下記のとおり開かれます。今回は原告側の尋問です。傍聴をよろしくお願い
します。

○NHK裁判 第12回口頭弁論
 日時:2003年6月2日(月) 午前10:30〜
 場所:東京地裁1階103号法廷
 証人:VAWW-NETジャパン共同代表 西野 瑠美子さん(放映当時、副代表)
      同          東海林 路得子さん(当時、事務局長)

○報告集会
 日時:2003年6月2日(月)午後6時30分〜
 場所:早稲田大学国際会議場第2会議室
 (JR高田馬場駅下車、早大正門前行きバス西早稲田下車徒歩4分・地下鉄東西
 線早稲田駅下車徒歩10分)
 参加費(資料代):700円

 報告集会は、原告側弁護団による証人尋問の報告と分析、原告側証人による報
 告と解説を内容としています。


■みなさんからのご意見・ご感想、なにより投稿をお待ちしています!

                     (メキキ・ネット事務局一同)

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│発行= 2003年 5月27日                                             │
│ 発行所=メキキ・ネット事務局                                    │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html         │
│ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp                      │
│ FAX: 020-4666-7325                                          │
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