(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                          メール・ニュース vol.14(3)発行:2003年 5月11日
                                                         登録者数:359人
                                http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html


                       【前回送信分=Vol.14(1, 2)】

(1) 第11回NHK裁判(第2回証人尋問)報告
(2)「北朝鮮」「拉致」報道を批判的に読み解くために−検証記事目録Ver.1.0
(3)戦争とメディアを考える集まりの案内2つ
(4)抄録「イラク戦争の真実と情報操作・報道統制」

                       【今回送信分=Vol.14(3)】

(5)特別掲載:ビデオ「検証・反国労キャンペーン」スクリプト
        (企画:納得いく解決を!国鉄闘争女性応援団、協力/ビデオプレス)

	「怠け者の国鉄職員」というイメージがどのようにつくられ、分割民営
	化の過程における首切りを正当化する言説が形成されていったのか?小
	泉改革が進行するいま、このプロセスの検証はきわめて重要な意味をもっ
	ています。先日おこなわれたシンポで上映されたビデオは、それをとて
	もわかりやすく伝えています。今回は特別にそのスクリプトを掲載させ
	ていただきました。


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                                 【5】
                               特別掲載
              ビデオ「検証・反国労キャンペーン」スクリプト

ビデオ「検証・反国労キャンペーン」(10分)
 企画/納得いく解決を!国鉄闘争女性応援団  協力/ビデオプレス
 動画で見られます→ http://www1.jca.apc.org/ouen/douga01.html

 「国鉄職員は働かない、首になっても仕方がない」−1982年に猛威をふるった
メディアによるキャンペーン、それが国鉄分割・民営化の下地をつくった。当時
の新聞資料などを検証したこのビデオは、2003年4月5日「反国労キャンペーンか
ら20年−マスメディアを問うシンポジウム」で上映された。
 今回、長編ドキュメンタリー「人らしく生きよう−国労冬物語」の制作者でも
あるビデオプレスの松原明さんのご厚意により、この短編ビデオのスクリプトを
メキキネットのメルマガに掲載することを承諾していただいた。ここに記して謝
意を表したい。
 反国労キャンペーンの実態は、想像以上のものがあると同時に、そこで露わに
なった構造、すなわち政府とマスメディアが連携プレーをおこない、そこでおき
る世論をバックにさらに政策が進められていくという構造は、このキャンペーン
だけにとどまらない根深いものがあると思わざるを得ない。
 なお、このシンポジウムについての報告は下記のページにあり、合わせて参照
していただきたい。

 http://www1.jca.apc.org/ouen/030405report.html
 http://www.jcj.gr.jp/forum.html

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 2002年5月、「納得のいく解決を!国鉄闘争女性応援団」が生まれた。国
鉄闘争女性応援団は、その名の示すとおり、国鉄分割民営化でJRに不採用とさ
れ、今なお職場復帰をもとめて闘う人々を応援する女たちのグループである。
 8月には、集会「女たちが語る国鉄闘争」を開催した。国労の組合員、井角操
さんが、四国から駆けつけてくれた。

「そして、第二臨調ですね。たたかれました、ずいぶん。嫁ぎ先といいますか、
夫の母と一緒に住んでるわけですけれども、あんたらはいよいよ悪いことしよる
んやねぇって、もう、日に日に新聞に出るたんびに、テレビに出るたんびに、週
刊誌に出るたんびに、何か叱られ続けてきたように思います。」

 私たちが、マスメディアを問うシンポジウムの開催を思い立ったのは、このと
きの発言がきっかけだった。

タイトル:「検証 反国労キャンペーン」

 草野厚著『国鉄改革』のなかに、1982年当時の国鉄不祥事にかかわる新聞
報道の件数がグラフ化されている。これを見ると、3月から4月にかけて、報道
量が急増しているのがわかる。
 その報道がどういうものであったのか、私たちは図書館に通い、記事を集めた。
82年1月から5月までの間に、朝日、読売、毎日、サンケイ4社で、その数は
218にのぼった。

 こうした報道の先鞭をつけたのが、81年12月のこの記事だった〔81年12月
12日付「国鉄労使 悪慣行の実態」という読売記事〕。読売新聞社は、国鉄本社
職員局がまとめ、臨時行政調査会に提出した部外秘文書を入手し、報道した。
 82年にはいって、まず『サンケイ新聞』〔1月15日〕が、前年の11月末、
大阪鉄道管理局が、労働組合宛にだした申入れ書をもとに、「国鉄、職場規律の
乱れ正せ」という見出しの記事を1面トップに掲載した。
 つづいて『朝日新聞』〔1月20日〕が、朝刊1面トップで、ブルートレインの
ヤミ手当報道を開始した。同時に社会面トップでも、写真付き記事が出た。同じ
日の『朝日新聞』夕刊は、国鉄がヤミ手当の慣行を認めたとする記事を掲載。
『読売』も同じ内容を報道した。
 2月5日、自民党は、国鉄基本問題調査会の下部機関として、労使関係の調査
を目的に「国鉄再建小委員会」、いわゆる「三塚小委員会」を発足させた。三塚
小委員会の調査、審議は速いペースで進み、3月4日には中間報告が提出された。
この日の前後約1週間にわたって、記事が集中する。

見出しの映像:
 「国鉄、欠員分にも超勤手当」
 「国鉄、ヤミ休暇も」
 「またか!!浪漫国鉄 大盤振る舞いヤミ超勤」
 「ヤミ手当三億円に」
 「国鉄はほんとうに必要なのか」
 「仕事は半分、職員は倍増」
 「今度は「欠員超勤」」
 「欠員の駅にヤミ手当」
 「国鉄ヤミ手当は全国的」
 「国鉄、ヤミの逆噴射」
 「国鉄、悪慣行廃止へ総点検」
 「国鉄こんどは"異常運転" 非常ブザー無視」

 『読売新聞』は、3月9日から「病める国鉄 どう立て直す」というタイトル
で、座談会をシリーズで掲載。この座談会には、国鉄の分割民営化の実現に決定
的な影響を与えた臨調第4部会座長の加藤寛も参加していた。加藤は、分割民営
化のためにマスメディアを最大限利用したことでも知られている。
 3月15日、名古屋駅で機関車連結作業の事故が起こる。『読売新聞』は、1
面トップ写真付き、社会面でもトップ記事として大々的に報道した。『毎日新聞』
『サンケイ新聞』も、同様な記事の扱い方になっている。この日以降、ほぼ連日
報道が集中する。
 3月18日、三塚小委員会メンバーが、甲府駅などを抜き打ち視察した。新聞
各社が同行取材をおこない、翌19日には一斉に報じた。『朝日新聞』は、「見
ただけでは「荒れた職場」という雰囲気はない」としながら、見出しでは「荒廃」
を強調している。
 3月25日、三塚小委員会は、再びマスコミ同行のうえ、東京付近の職場を視
察した。その日の夕刊で、朝日、読売、サンケイ各紙が、一斉にとりあげる。
 同じ3月25日、国鉄当局は現場総点検中間結果をまとめ、運輸大臣に報告。
翌26日の朝刊で報道された。「広範な悪慣行」として、「ヤミ休暇」「ポカ休」
「管理職つるし上げ」が非難された。
 4月2日には、国鉄の全管理者3257名を対象にした職場実態把握アンケー
トの結果が公表され、4月23日には、国鉄当局から職場総点検報告が出された。
職場労使慣行への非難が1面トップに並んだ。

 この一連の報道の特徴の一つは、三塚小委員会や国鉄当局からの情報提供の動
きに沿って、新聞が一斉に記事を書いていることである。また、『読売新聞』
『サンケイ新聞』に特に顕著なセンセーショナルな見出しの付け方も大きな特徴
だ。一方、『毎日新聞』は事実報道のみで、このキャンペーンには参加していな
かった。これらは各新聞社ごとに、温度差があったことをものがたっている。

 こうした新聞報道の裏に、見え隠れするのが臨調(臨時行政調査会)の存在だ。
大嶽秀夫著『行革の発想』には、「臨調第4部会幹部は、国鉄内部の改革派から
貴重な資料や内部情報を入手することができた」という記述がある。
 さらに、臨調の参謀といわれた瀬島龍三は、のちにこう述べている。

「私どもは、会談の内容を意識的、無意識的に外へ漏らしていくという行き方を
とった。マスコミがこれをとりあげて、いろいろ書いてくれる。それがまた国民
に問題意識をあたえ、そして一つの流れができていくと判断したのである。」

 もう一人の主役、加藤寛も、後日メディア工作の実際を語っている。

「城攻めをやるために、第一にやらなければならんことは、シンボルがなきゃい
けないということ、そのシンボルをつくれ。そこで土光さん〔土光敏夫・第2臨
調会長〕をシンボルにしようとしたんです。そこでNHKにお願いしましてね、
ぜひ土光さんの日常生活を描いてくださいと。で、そこで「メザシの土光さん」
(*)が出てきましたね、メザシを食べるところがでて、もう一本ほしいなんておっ
しゃってね。ところが、あれ本当はね、土光さんってのはなかなか食べるのに贅
沢なところがあるんですよ。お昼のご飯なんかね、ヒラメのムニエルなんか出る
と、大好きなもんですから全部食べちゃう。私が食べないでお昼残してきちゃう
と、土光さん見てね、そんな君残すのかと。私は食べれませんというと、だめだ
よ君、外ではね、おいしいものが出るんだから、家ではまずいものを食べなきゃ
と、こういうわけです。私はそういうことばを土光さんから聞くと思わなかった
んですけどね。そういうようなことでね、非常にそういう意味では、いろんな方
がいろんな経験をやったけども、とにかくシンボルをつくらなきゃダメ。」

 「メザシの土光」の対局に位置づけられた、マイナスのシンボルが国鉄労働者
だった。
 臨調はこの年の7月30日、国鉄の分割民営化を答申した。

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(*) NHK特集「85歳の執念 行革の顔 土光敏夫」 (44分/1982年)
ちょっと一言:NHKは、最近('03.4.7)、アーカイブスでこの番組を再放送し
た。NHKは、ホームページで「妻と二人暮しの夕げは、メザシに麦飯。国民に
「メザシの土光さん」のイメージを定着させたのは、この番組からであった」と、
「イメージを定着させた」ことをさも自慢げに語っている。いまNHKに必要な
のは、このようなイメージがどのように創られ、どのような効果を及ぼしたのか
を批判的に検証することではなかったのか?

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■みなさんからのご意見・ご感想、なにより投稿をお待ちしています!

                     (メキキ・ネット事務局一同)

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│発行= 2003年 5月11日                                             │
│ 発行所=メキキ・ネット事務局                                    │
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