(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                          メール・ニュース vol.14(1)発行:2003年 5月 3日
                                                         登録者数:357人
                                http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html

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【Vol.14のはじめに】

 メキキネットのメルマガは編集長を輪番でやってきましたが、創刊から1年半
あまりでようやく一巡しました。メキキネットは、NHKの番組改ざん事件をきっ
かけに「メディアの危機」を予感して立ち上がりました。その後、2001年9月11
日、2002年9月17日、そして米英のイラク攻撃という大きな「事件」を契機とし
ながら、ますます危機的な状況は深刻なものとなっています。しばしば「攻撃」
ということばはレトリックとして使われがちですが、イラク攻撃の過程では、つ
いにジャーナリストに銃口が直接向けられ、現実の弾が発射されました。もはや
「メディアの死」は修辞でも何でもないのかもしれない..、そんな思いにすら
とらわれました。
 その一方で、確実にマスメディアのオルタナティブが育っていることも私たち
は感じることができました。たとえば「倒されるフセイン像」というイメージが
いかにつくられたものであるか、インターネットのメディアは克明に検証してい
ました。受動的に操作される「大衆(マス)」を想定してメディアが無批判に情報
を送り出すということは、ひょっとすると20世紀の歴史的産物にすぎず、もはや
黄昏をむかえているのかもしれない、そんなことも少し考えてみたりもしました。
 とはいえ、まだ希望を語るにはあまりに絶望が大きすぎます。だからこそ危機
のなかから、ポジティブな批判のことばを紡ぎ出していかなければならないのだ
と、思っています。
                                                                (板垣)

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                             【今回送信分】

(1) 第11回NHK裁判(第2回証人尋問)報告
                                                              河野真太郎

	今回証言台に立ったのは、元ドキュメンタリー・ジャパンの二人。何が
	語られ、何が明らかになったのか?また、3月末に出されたBROの判
	断は、裁判にどのような影響をおよぼすのか?

(2)「北朝鮮」「拉致」報道を批判的に読み解くために−検証記事目録Ver.1.0
                                                      板垣竜太・鈴木香織

	「北朝鮮」報道や「拉致」報道、何だかおかしい、でも何でこんなこと
	になっているんだろうか?そのような問いに答えるような検証記事を紹
	介します。


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                                 【1】
           第11回NHK裁判(第2回証人尋問)報告集会の報告
                −4月23日@東京芸術劇場5階中会議室−
                                                              河野真太郎

 去る4月23日、VAWW−NETのNHK裁判、第二回目の証人尋問が行わ
れました。残念ながらメキキ・ネット事務局は傍聴に行くことができませんでし
たが、同日に行われた報告集会の報告をもってかえさせていただきたいと思いま
す。
 今回はシリーズ第二夜のディレクターであった元DJ(ドキュメンタリー・
ジャパン)の甲斐亜咲子さん、そして当時DJの取締役社長であった広瀬涼二さ
んが証言台に立ちました。前回は原告側の証人尋問でしたが、今回は被告側
(NHK側)の証人尋問です。
 それにもかかわらず、VAWW弁護団の大沼和子弁護士の報告によれば、証人
は二人ともジャーナリストの良心に従って誠実な応答をし、原告側に有利な証言
が数多く飛び出したそうです。以下、重要な点に絞って報告いたします。

《放送後にNHKの指示で、DJが作成した「報告書」の存在》
 当該番組の放映後、NHKの指示によりDJ内部で聞き取りなどが行われ、あ
のような改変が起こった経緯の報告書がNHKに対して提出されていたそうで
す。その報告書の具体的な内容はまだわかりませんが、甲斐さんは、NHKの指
示のねらいはDJへの責任転嫁であった、と証言しました。。今後、この報告書
が裁判でどのように明らかにされていくのか、注目です。

《「さまざまなプレッシャー」の存在》
 この改変事件の背後には、右翼による明白なプレッシャーのほかにも政治家な
どによる有形無形の圧力の存在がささやかれており、この裁判でそれがどれだけ
明るみに出せるか、という点は重要です。
 今回、甲斐さんへの尋問ではその点についてある程度踏みこんだ尋問がなさ
れ、今後の展開が注目されます。右翼の攻撃に関しては具体的にNHKからDJ
に対して警告があり、政治家の関与についてはそのような「雰囲気」があった、
という証言にとどまりました。

《契約書の「日付」問題》
 法廷に証拠として提出されている、NEP−DJ間の「業務委託契約書」は、
その日付が2001年1月23日になっています。つまりこれは、1月19日に
一回目の「部長試写」が行われた後、1月24日に2度目の試写が行われ、番組
の編集が完全にDJの手をはなれてしまう直前の日付です。
 一般的に、こういった契約書はかなりいい加減に作成されるらしく、このよう
に放映直前に結ばれることもあるそうですが、本件にかぎっていえばどうにも怪
しい日付です(つまり、DJに責任を転嫁するためにあわてて結んだ? と疑い
たくなります)。
 この点については、今後より深くつっこんでいくそうです。

《その他》
 他、DJが取材のためにVAWWにさまざまな便宜を受けていたこと、番組の
趣旨が初期の「番組提案票」から一貫したものであったことなどが確認される尋
問になりました。また、広瀬さんへの尋問では、DJが編集を「放棄」した際
に、当時教養部長であった吉岡氏と、チーフプロデューサーの永田氏との間に相
当の見解の相違を感じた、これはもうNHK内部の争いで、どうしようもない、
という判断をした、ということも明らかにされました。

《BRO決定との関係について−山下弁護士》
 また、報告集会では米山リサさんの代理人としてBRO申立にあたった山下幸
夫弁護士が招かれ、BRC決定について報告されました。決定内容はお伝えした
通り、相当に踏みこんだ内容ですが、場合によっては裁判では被告側に有利に
なってしまうような内容でした。その点について山下弁護士から興味深い指摘が
ありました。
 曰く、BRC決定で「人権侵害」が認められなくても、それが裁判でひっくり
返る事例はある(その一例が、帝京大学ラグビー部暴行事件報道に関する決定。
BRCは「見解」を出しましたが、裁判では人権侵害が認められたそうです)と
のこと。報道による人権侵害を認めるハードルは、実はBRCの方が高い、とい
うことです。

 以上、非常に簡単で、しかも直接傍聴したライブ感のない報告になってしまっ
たのが残念です。実際、今回は傍聴席に空席が目立ったそうですから、今回傍聴
できなかったみなさんも次回はぜひ傍聴しましょう! ということで、次回予告
です:

第12回裁判(第3回証人尋問)
2003年6月2日 午前10:30〜 東京地裁
       証人:VAWW-NETジャパン共同代表 西野 瑠美子さん
            同          東海林 路得子さん

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                                 【2】
             「北朝鮮」「拉致」報道を批判的に読み解くために
                        −検証記事目録 Ver.1.0−

                                                     板垣竜太・鈴木香織

 友人の研究者が、大学での朝鮮語の授業の初回にアンケートをとった。「あな
たの知っている朝鮮(韓国)の人名5つを書いてください」「あなたの知っている
朝鮮語の単語5つを書いてください」。前者のトップは「金正日」、後者のトッ
プは「喜び組」だったという。ちょっと前であれば、BoAとかユン・ソナとか、
あるいはキムチとかカルビとかいう答えがトップとなり、あぁその程度の認識か
とがっかりもしただろう。しかし今となってはBoAやキムチの方がずっとずっと
健全な気がする。それにしても、なぜ「金正日」や「喜び組」が「朝鮮」の代表
選手となってしまうのか。ここに現在の「北朝鮮」報道の問題の本質があるよう
な気がしてならない。
 マスメディアの報道は自然にはできあがらない。マスメディアは、数多くの人
々が関与してできあがる巨大なシステムである。なぜこのようなイメージが形成
されるのか、なぜ「救う会」の主張があたかも唯一の解決策であるかのようにメ
ディアを埋め尽くしてしまうのか、そうした問題は、それ自体検証に値する問題
である。その手がかりとなるような検証記事を集めてみた。まだまだ不完全なも
のであり、重要なものを落としているかもしれない。Ver.1.0としたのはそのた
めである。こういうものがあるという情報を寄せていただければ幸いである。

【単行本】

◆人権と報道・連絡会編『検証・「拉致帰国者」マスコミ報道』(社会評論社、
2003年1月)
 I 「拉致報道」が隠すもの
  山際永三: 「拉致帰国者」報道の「犯罪」
  浅野健一: 欧州で考える「拉致」報道
  山口正紀: 拉致一色報道が隠す〈未清算の過去〉
  大庭絵里: 帰国報道と個人・家族・国家
  浅野健一: 『週刊金曜日』が問題なのか?
  片桐元 : 「現地」から見えるもの
 II 日録・「拉致帰国報道」ドキュメント (中嶋啓明)

 いちはやくこの問題をまとめた単行本として注目される。ドキュメントもよく
整理されており、必読書。
 また、昨年来の報道の問題ではないが、その報道の基調を形成している「知」
の領域を検証したものとして、同時期に出た以下の本も注目すべき。

◆和田春樹・高崎宗司編著『北朝鮮本をどう読むか』(明石書店、2003年2月)

【署名記事】(順不同)

◆小田桐誠(ジャーナリスト)
 ○「拉致報道最前線でのメディアの攻防」(1)〜(4)(『創』2002年12月号、
  2003年1・2月号、3月号、4月号)

◆丸山昇(フリーライター)
 ○「拉致報道で試された雑誌メディアの牙と知恵」(『創』2002年12月号 拉
  致報道と集団的過熱取材)
 ○「時事通信社は誤報をどう総括したか」(『創』2003年1・2月号 これでい
  いのか!拉致報道)
 ○「検証「拉致報道」:自由で真実の報道はできているか」(『世界』2003年
  5月号)

◆山口正紀(読売新聞社)
 ○「外部の圧力で「記者職」剥奪」(『週刊金曜日』2003.1.24、444号)
 ○「〈被害者の立場〉の二重基準」(『週刊金曜日』2003.2.7、446号)
 ○「新聞記者の〈言論の不自由〉」(『創』2003年5月号)
註:『週刊金曜日』444号に収録された内部告発記事に対して、読売側も同誌誌
上で反論した。楢崎憲二(読売新聞東京本社広報部長)「読者の混乱を招いた
「記者」の肩書き」(『週刊金曜日』2003.3.21、452号)

◆中嶋啓明(共同通信社記者)
 ○「公安の手で踊る別件報道」(『週刊金曜日』2003.2.14、447号)
 ○「メディア・ファシズムを生み出すメディア・スクラム」(『市民の意見
  30の会・東京ニュース』76号、2003.2.1)

◆篠田博之(『創』編集長)
 ○「『週刊金曜日』袋叩きの意味するもの」(『創』2003年1・2月号 これで
  いいのか!拉致報道)

◆神保哲生(ビデオジャーナリスト)
 ○「映像が煽る感情的世論と世論に呑み込まれるテレビ」(『論座』2003年2
  月号)

◆日下部聡(サンデー毎日記者)
 ○「週刊金曜日問題で大困惑 筑紫哲也キャスターの弱点」(『サンデー毎日』
  2002.12.15)*1
◆筑紫哲也
 ○「会わなくてよかった"拒否リスト"の新顔」(『週刊金曜日』2002.12.13、
  440号)*2
註:*1への反論が*2。

【取材班記事および匿名記事】

○『噂の真相』特別取材班「『週刊朝日』地村夫妻独占取材での全面謝罪の舞台
裏で「救う会」が暗躍」(『噂の真相』2003年3月号)

○「『週刊金曜日』曽我さんの家族を取材」(『朝日新聞』2002.11.15朝刊)

○『金曜日』編集部「曽我さん家族インタビュー なぜ私たちは掲載したのか」
(『週刊金曜日』2002.11.22、437号)

○『週刊金曜日』取材班「北朝鮮報道を考える」(『週刊金曜日』2002.11.29、
438号)

○Public split on abductee's family interview(拉致被害者家族のインタビュー
に世論は分裂)(『the Japan Times』2002.11.17)

○「北朝鮮報道をめぐる「メディアへの提言」」(『論座』2003年2月号)


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■みなさんからのご意見・ご感想、なにより投稿をお待ちしています!

                     (メキキ・ネット事務局一同)

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│発行= 2003年 5月 3日                                             │
│ 発行所=メキキ・ネット事務局                                    │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html         │
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