(創刊:2001年8月18日)
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★メディアの危機を訴える市民ネットワーク┃メ┃キ┃キ┃・┃ネ┃ッ┃ト┃
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                      メール・ニュース vol.11(2) 発行:2003年 1月30日
                            登録者数:329人
                              http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html


    ▲▲▲1月30日 NHK・ETV2001改竄番組放映から2年!▲▲▲
▼▼▼▼                           ▼▼▼▼

■もくじ■

〈今回送信分〉

1【報告】NHK裁判:最後の口頭弁論もそこそこに法律家たちは...― 鈴木香織
2【寄稿】反戦争パフォーマンスをやるということ     ―イトー・ターリ
3【お知らせ/訂正/一言】2.9「NHKやらせ裁判に判決予定」/前号の訂正とお
     詫び/NHK改竄番組放映から2年            ― 事務局

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 NHK裁判・第10回の報告 
■ 最後の口頭弁論もそこそこに法律家たちは... ■
                      ――――――――――――――――――――――――
                      鈴木香織(メキキ事務局/VAWW−NETジャパン運営委員)

 「あともう一回」の原告側要望により行なわれた口頭弁論は、それに続く裁判
進行協議を主戦舞台とする法律家たちが踏むスタートラインだった。
 1月22日午前11時、東京地裁103号法廷。今回から故松井やよりさんに替わり、
VAWW-NETジャパン共同代表のひとり西野瑠美子さんが原告席に座った。遺言によ
り受け継いだ原告の座。傍聴席には黒衣に赤いアクセサリーの女性たち。松井さ
んが好きだった色だ。原告弁護団は松井さんの陳述を録画したビデオテープを証
拠申請し、法廷での上映許可を求めた。入院しても諦めなかった松井さんは、病
院内で尋問できるよう段取りをつけたものの体調悪化により断念、その数日後息
を引き取った。しかし、彼女は陳述書を作成し、またそれを口頭で述べた記録ビ
デオを残している。反対尋問が適わぬので「証人尋問」とはならないが、せめて
「証拠」として法廷に登場する松井さんを待ちたい。
 たった5分で終わった口頭弁論の中で原告側が最も強く主張したのが上記ビデ
オの件だが、裁判長からは書面(被告側への反論など)の催促が矢のように降っ
た。それは次回までに出すとして、問題は証人尋問をどう行なうか。松井さんの
ビデオ上映のほか、証言者の順番、元ドキュメンタリージャパン社員として制作
に関わった坂上香さんの尋問範囲をどこまで認めるか等々、難問山積。進行協議
は延々と続いたらしい。坂上さんについて裁判所は、時間内であれば尋問内容に
制限は設けないという見解を示したそうだ。
 なお、同夜ひらかれた裁判報告集会で興味深いビデオが上映されたという。ビ
デオ塾の青野恵美子さんによる『戦争に沈黙しない人々‐9.11から1年後のニュー
ヨーク』だ。あの日からアメリカに何がおこっているのか、メディアと市民を取
り上げた作品。私は惜しくも見逃してしまいましたが、ご覧になった方から感想
などお寄せくださると嬉しいです。

【NHK裁判の今後の日程】
 3月17日 午前10:30〜午後4:30
         原告側証人坂上香さん、小柳暁子さんの証人尋問
 4月23日 午前10:30〜
         被告DJの証人甲斐亜咲子さん、広瀬涼二さんの証人尋問
 6月 2日 午前10:30〜
         被告NEP21の林勝彦さんの証人尋問
 7月16日 午前10:30〜
         被告NHKの吉岡民夫さん、永田浩三さんの証人尋問

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■ 反戦争パフォーマンスをやるということ ■
            ――――――――――――――――――――――――
			         イトー・ターリ(アーティスト)

 つい最近、「Mardiyem 彼女の人生に起きたこと」という海南友子さんが撮っ
たドキュメンタリー映画を見た。13歳で「慰安婦」にさせられたインドネシアの
元「慰安婦」のマルディエムさんは現在日本政府に謝罪と補償を求める運動と共
に、次の世代に問題をきちんと伝えたいと歴史の証言者としての活動を展開して
いるという。強制連行したにも関わらず、今だに慰安婦が売春婦で本人の意志だ
ったと主張する日本人がいると訴えている。事実を事実として認めなければ、歴
史は繰り返されてしまう。
 昨年の8月にソウルで行われたナヌムの家歴史館4周年記念式典で、パフォー
マンスをやる機会を得た。ハルモニたちが自らの体験を癒すために描かれた絵画
を、衝撃を持って見たときに、表現が人々を結び、それが問題を明らかにしてゆ
く力になることを知った。だから今回の機会を得たことに興奮した。元慰安婦の
ハルモニたち7名と韓国の支援者約80名、そして日本からツアーを組んで参加し
た30名程の女たちの前でのパフォーマンスは、私にとって、またアーティスト
としても深く心に残るものとなった。
 私はパフォーマンスの中で、生ゴム色の薄いラテックスで作った衣装を着て、
ジェンダーにからめとられた自らの体験を剥ごうとする行為を行った。そのうち
に、実際にその衣装(皮膚)を脱ぐ衝動が沸き上がってきて、そしてゴムをひき
ちぎりながら脱いだ。私は私のリアリティの中でそのような行為を選んだ。自分
の中では選びきれても、同時にハルモニたちの視線を受け止めなければならなか
ったのだ。私は自分の意志でまとっているものを脱いだけれど、ハルモニたちは
強制的に男達によって脱がされたのだ。この違いは決定的なものだ。剥ぐという
行為の中には、ハルモニや女たちとシェア出来る共通の感覚があるはずだという
思いがあった。しかし、彼女たちが加害者である日本人の女の上半身裸になると
いうライブ行為をどのように見たのか心配になった。
次の日の交流の場で、金順徳ハルモニから感想をきくことが出来た。「勇気があ
るね。玉葱のように皮をむいていくんだね。」と語ってくれた。
ほっとすると同時に、ハルモニたちの苦痛や怒りの計り知れない深さを再び想像
した。彼女たちの怒りはむいてもむいても解消しないのではないか。
ハルモニたちのことを想像し、二度と絶対にあってはならないと皮膚に刻み込む
ことだ。
震災の時、竹やりを持って口々に朝鮮人を罵倒して行く人々を見たという祖母の
話、中国に兵隊として行った父に詰め寄って慰安所の存在を聞いた。それらは決
して遠い昔の話ではない。そしてそれらは身近かにあった事実なのである。
 ハルモニたちが2003年を生きているように、私もこの日本で生きている。そし
て、今、危機感を煽りながら軍備を拡大してゆく日本政府に危うさを強く感じて
いる。誰のために戦争に加担しようとするのだ。油まみれの手で人を殺していく
ことに私は加担したくない。私に何ができるのか。

◆ イトー・ターリパフォーマンス公演 ――――――◆
「おそれはどこにある 反戦編vol.2
 ・2月9日(日)5:00pm
 ・会場/東京バビロン(北区豊島7-26-19)地下鉄南北線王子神谷下車徒歩10分
 ・入場料/3000円(予約される方は2500円になります)
 ・お問い合わせ・ご予約/TelFax 042-301-6672 
  tari@gol.com(イトー・ターリ)


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■ お知らせ・訂正・一言 ■
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			            メキキ・ネット事務局

◆◆ NHKやらせ裁判に判決 ◆◆ 

 「支局長がやらせをやっておいて、やらせをやった本人と会社が講談社を名誉
毀損で訴えるとは、NHKはほんまにすごい」と言われたあの裁判に判決が下さ
れます。NHKが月刊「現代」を訴えていたこの「やらせ爆弾漁法」訴訟につい
て、当メールニュースは浅野健一さんのレポートを連載し( vol.6(3)、vol.7
(1)、 vol.8(1))、推移を見守ってきました。読者のみなさん、ぜひ傍聴をお願
いします。なお、やらせを告発したインドネシア人記者もジャカルタで、「NH
Kを恨み、金をとるために、やらせをでっちあげた」と主張するNHKを名誉毀
損で訴え、漁民に爆弾投擲させたことがインドネシア国内法に違反したとして警
察に告発する構え。
詳しくは浅野ゼミのホームページを参照してください。

 http://www1.doshisha.ac.jp/~kasano/FEATURES/2002/nhk030204.html

裁判は、2月4日午後4時30分から東京地方裁判所631号法廷です。


◆◆ 前号の訂正とお詫び ◆◆

 前号vol.11(1)で掲載した前田年明さんからの寄稿「「煽情的」北朝鮮報道の
なかから希望を掘り起こそう!に、一部訂正・追加があります。正しくは以下の
通りです。お詫び申し上げます。(編集部)

【誤】
 第3に、メディア自身の側からの北朝鮮報道の自己検証の動きであり、11月26
日付『毎日新聞』は「検証・北朝鮮報道40年」を見開きで特集しました。
 私はここにメディアの再生への希望を見いだします。「部分を全体に広げるレ
トリックがいけない」などという無力な評論でなく、私はこの三つの小さな光を
繰り返し繰り返し全体に広げていきたいとおもいます。

【正】
 第3に、メディア自身の側からの北朝鮮報道の自己検証の動きであり、11月26
日付『毎日新聞』は「検証・北朝鮮報道40年」を見開きで特集しました。その後、
人権と報道・連絡会編『検証・「拉致帰国者」マスコミ報道』が社会評論社から
刊行されました。
(2003年1月刊、ISBN4-7845-1425-2)
 私はここにメディアの再生への希望を見いだします。右派言論にうち勝つため
には「部分を全体に広げるレトリックがいけない」などという無力な論評ではな
く、事実行為としての三つの小さな、希望の光を繰り返し全体に広げていきたい
と私はかんがえています。


◆◆ 本通信の転載について ◆◆

 前号vol.11(1)では、読者の皆さんから転載について問い合わせをいただきま
した。転載・引用に関しては、わたしたちの原則は次の通りですので、よろしく
お願いします。
 「必要な情報は広く共有されるべきだという観点から、メキキ・ネット事務局
はニュースの発行を独占しないことにし、原則として転載可とします。ただし、
転載の場合には基本的に内容の改変をしない、引用する場合には典拠を明記する
など、一般にテキストを利用する際の倫理に準じて取り扱うことをお願いします。」
「なお、今後、書き手の意向や内容によっては転載不可が望ましい場合もあるか
もしれません。そのような場合は<転載不可>を明記した号外を発行するなど、
柔軟に対応していこうと思います」(vol.1(2),2001/8/23)


◆◆ 一言:あれから2年! ◆◆

■沖縄・名護市の女性が生まれて初めて制作に関わった、ビデオ『基地はいらな
い・命の響き―名護・辺野古の記憶と記録』を見た。上映後のトークで体験から
得たものは何かと問われ、口篭もりながら彼女は「自分にもなにか創れるんだと
わかったこと」と答えた。基地建設の賛否で揺れた街はすっかり静かになり、完
成したビデオも冷ややかに受け止められているという。でも、だから、創りつづ
けてほしい。メキキネットのメルマガもシツコク続けてゆきたい。(鈴木香織)
■2年前の今日、わたしはETV2001は無事始まったことを確認しただけで安心し
てしまい、他の雑用に追われて見ていなかった。その後、ビデオに録画していた
番組を何度も見直し、編集過程で大変な改竄が起こったことに気づいて、夜中に
ぞっとしたことを思い出す。番組制作の過程が徐々に明らかにされるにつれて、
様々な人々の怒りが一気に巻き起こり、署名運動を展開後、8月18日メキキ・ネッ
ト通信第1号が創刊された。あれから2年。「それどころじゃない」状況がどん
どん進む、だからこそ、わたしはやめたくない。(vol.11編集長・北原恵)

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■みなさんからの御意見・御感想、なにより投稿をお待ちしています!

                     (メキキ・ネット事務局一同)

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│発行= 2003年 1月30日                                             │
│ 発行所=メキキ・ネット事務局                                    │
│ ホームページ: http://www.jca.apc.org/mekiki/index.html         │
│ 電子メール: mekikinet-owner@egroups.co.jp                      │
│ FAX: 020-4666-7325                                          │
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