『番組はなぜ改ざんされたか』(一葉社)、ついに発刊!

設立趣旨と参加の呼びかけ

 2001年1月30日、NHK教育テレビETV2001「シリーズ 戦争をどう裁くか」の第二夜は、日本軍性奴隷制を人道の罪として裁いた女性国際戦犯法廷(2000年12月開催、以下「法廷」)をつぶさに伝えるはずだった当初の内容を大幅に改変し、いわば「法廷隠し」ともいえる改ざんの経緯を経て放送されました。このNHKによる改ざん問題には、今日、さまざまな権力によってメディア全体を覆い尽くそうとする、「報道の自由」「表現の自由」「知る権利」へ制限が、象徴的に集約されています。

 そこで私たちは、右傾化する日本社会における「メディアの危機」に抗して、「メディアの危機を訴える市民ネットワーク」(略称 MEKIKI-Net メキキ・ネット、英語名Citizens for Responsible Media、略称CRM)を設立しました。NHKの番組改ざん問題にとどまらず、教科書問題や日の丸・君が代強制の問題、排外的・人種差別的な外国人犯罪報道など、メディア全体が権力や暴力に対する批判的機能を萎縮させ、「検閲」や「自粛」によって表現の自由が犯され、現場のジャーナリストの自由が経営者によって奪われ、結果的に社会全体が右傾化していく、という深刻な事態に対抗することを共通の目的とし、各々の現場で起きる具体的な問題と取り組んで行くために、ひろく意見や問いかけを共有できる場としたいと考えます。

 なお、「メキキ・ネット」という略称には「目利き」、つまり自ら物事の真偽を見分けるというメディア・リテラシーの意味をかけています。また英語名の中のレスポンシブルには、責任あるメディア、ということと、市民からのうったえに応えるメディア、という両方の意味を込めています。

 メキキ・ネットでは、NHKの改ざん問題を出発点により広く問題をとらえていこうという趣旨に基づき、その時々の中心的な取り組みを「バージョン○○」としてサブタイトルに掲げることにしました。最初の「バージョン2001」は「NHK「法廷隠し」番組改ざん問題」として、法廷の主催者バウネットによるNHK裁判を側面から支援していくことを具体的な課題としたいと思います。今後、いくつもの深刻な事態が起きてくると予想されますが、そのなかで、メキキ・ネットにおいて共同で取り組むに相応しいという判断にいたった場合、それぞれ新しくバージョンを設けてとりあげてゆく方針です。

 メキキ・ネットの基本的な活動は、当面電子空間でのコミュニケーションをつうじて行います。今のところ、メールによるニューズレターやホームページを通じた目下取り組み中の問題の経過報告(Ver.2001ではバウネットNHK裁判支援などが中心となります)、メディアのあり方を考えるシンポジウムの企画、状況に応じてのカンパ活動、などを考えています(なお、FAXや郵送によるニューズレターの発行に関しては検討中です)。また、メキキ・ネットは、参加者ひとりひとりが積極的に意見やアイデアや情報をもちより、メディアの危機に対抗するさまざまな戦略や思想的基盤を鍛え上げてゆくことを理想としています。

 政治家によるメディアへの規制の動きに疑問を感じている方、偏狭なナショナリズムに基づく報道のあり方に不信を感じておられる方、右傾化したメディアがおかしいと感じておられる方、NHKという「公共メディア」のあり方に疑問を感じておられる方、ぜひネットに参加して力と知恵を出し合ってゆきましょう。

 2001年7月23日

 「メディアの危機を訴える市民ネットワーク」事務局