国賠ネットワーク 2005年 秋期シンポジウム
      国賠裁判を通してみる外国人の人権

2005年10月23日(日) 午後1時30分〜4時30分
渋谷勤労福祉会館 第二洋室 渋谷区神南1-19-8

1.はじめに (シンポ開催の趣旨) 
磯部 忠(国賠ネットワーク)

2.人種差別禁止法 〜なぜいま必要か〜 
東澤 靖(霞ヶ関総合法律事務所)

3.人種差別撤廃の不作為について国賠提訴 
有道 出人(人種差別撤廃不作為国賠原告)

4.中国に遺棄された毒ガス・砲弾被害の国賠 
大野 友也(China-Japan Network=未来巡業)

5.難民認定支援活動中の外国人にかけられた冤罪事件
周 香織(ジャマル救援会)

6.東京都の職員国籍差別裁判と今後(資料のみ)
鄭 香均(管理職選考受験資格確認等請求国賠 原告)

7.討論 


1.はじめに (シンポ開催の趣旨) 

■ 国賠裁判と国賠ネットワーク
警察官にひどい暴力を振るわれたら、無実の罪で逮捕され何年も拘置所につながれてしまったら、あなたはどうしますか。怒りや無念さはどう晴らせばいいのでしょう。自分の身にそんなことは起こらないと思うかもしれません。しかし間違った逮捕や起訴は決して珍しい話ではありません。
国家賠償法は国や地方公共団体が違法に損害を加えたときに国などの賠償責任を定めています。その賠償を求める裁判が国賠(コクバイ)裁判です。国の過ちを認めることになる国賠裁判はなかなか勝てません。メンツを懸ける国の巨大な組織。法務省の意向が気になる裁判官たち…。
国賠ネットワークはこのような現状を打破すべく、国賠裁判に関心を持つ諸個人の、ゆるやかな繋がりをめざして1990年にスタートしました。人権に関わるNGOの一つです。当初は冤罪事件の被告にされた者が国などの責任を追求し被害補償を求める国賠訴訟が主でした。司法に関する課題を源流として相互に傍聴、経験交流を進めてきました。その後、様々な国賠裁判の当事者が加わって、幅広い交流が行われています。

■ 外国人の人権
 国家賠償法は外国国籍の人たちが被害を受けた場合にも適用されます。アジア諸国の人たちから戦後補償を求める国賠裁判が提訴されています。太平洋戦争で朝鮮半島、中国大陸、東南アジアでの被害を問う裁判です。90年代に入って数多く提訴され、その数は70件を超えています。03年に韓国の人たちが訴えていた裁判が、次々と最高裁で棄却されました。現在は中国人の被害者を原告とする裁判が中心となっています。その被害は、人体実験、虐殺、「従軍慰安婦」、遺棄毒ガス兵器・砲弾、無差別爆撃、強制連行・強制労働など、多岐にわたります。一部で国家無答責の原則の適用を排斥したり、時効・除斥の適用を制限する判決が出され、一審または二審で勝訴した例もあります。
また、最近、人種差別をなくす事をめざす新たな国賠訴訟が提訴されました。1996年に発効した「人種差別撤廃条約」にともない日本は差別撤廃法を「遅滞なく」制度化をする必要があり、それをしない政府、国会などを訴える人種差別撤廃法整備不作為の国賠裁判です。法律や条令の新設、国連機関への働きかけなどとも併せて、差別を撤廃して「あらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由」をめざす運動の一環です。

■ 互いの理解とそれから
 今回、国賠ネットの秋期シンポジウムのテーマを「国賠裁判を通してみる外国人の人権」とし、3つの国賠裁判の例と1つの刑事弾圧について報告して頂きます。いずれも外国人の人権に関わる訴訟です。それぞれに特徴があり共通の課題はさほど多くないかも知れません。これまで国賠ネットワークに集まって交流してきた国賠裁判とも異なる点が多いように思えます。しかし道筋は違っても、人権の獲得、人間としての尊厳の確立という目標は同じであろうと思います。
 そこで、報告された実例につき質疑・応答を通じて互いの理解を深めたいものです。それはこの国の外国人の人権状況について理解を深めることになります。いくつかの共通性が見つかり、協同の可能性を見渡すことができるかも知れません。国などの違法な行為について賠償責任を果たし、それらを正す国賠裁判の本来の機能を実現するヒントがあるかもしれません。
今秋は日本政府が国連の規約人権委員会(HRC)へ市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)に基づく第5回報告を提出する時期になっています。1,2年の内には規約人権委員会でこの政府報告が審議されます。それらに対応して私たちのカウンターリポートを用意し改善を迫ることも想定されます。
広い範囲の交流と協力がますます必要です。そのキッカケをつくるシンポジウムとなるよう期待します。