H05.01.25 第二小法廷・判決 平成1(オ)548 損害賠償

◆ H05.01.25 第二小法廷・判決 平成1(オ)548 損害賠償


判例 H05.01.25 第二小法廷・判決 平成1(オ)548 損害賠償(第47巻1号310頁)


判示事項:
  逮捕状の更新が繰り返されている時点における捜査機関又は令状発付裁判官の判断の違法を理由とする国家賠償請求の許否

要旨:
  逮捕状の更新が繰り返されている時点で、逮捕状の請求、発付における捜査機関又は令状発付裁判官の被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったとする判断の違法を主張して、国家賠償を請求することは許されない。



参照・法条:
  国家賠償法1条1項,刑訴法199条

内容:
 件名  損害賠償 (最高裁判所 平成1(オ)548 第二小法廷・判決 棄却)
 原審  H01.01.24 東京高等裁判所


主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         
理    由

 上告代理人有賀信勇、同横田雄一、同駒場豊、同一瀬敬一郎の上告理由第一について
 
所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、原判決の結論に影響のない説示部分につき、原審の認定しない事実に基づき又は原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。
 同第二、第三について
 逮捕状は発付されたが、被疑者が逃亡中のため、逮捕状の執行ができず、逮捕状の更新が繰り返されているにすぎない時点で、被疑者の近親者が、被疑者のアリバイの存在を理由に、逮捕状の請求、発付における捜査機関又は令状発付裁判官の被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったとする判断の違法性を主張して、国家賠償を請求することは許されないものと解するのが相当である。けだし、右の時点において前記の各判断の違法性の有無の審理を裁判所に求めることができるものとすれば、その目的及び性質に照らし密行性が要求される捜査の遂行に重大な支障を来す結果となるのであつて、これは現行法制度の予定するところではないといわなければならないからである。右と同旨の見解に立ち、上告人らによる国家賠償の請求は許されないことを理由として、上告人らの本訴請求を棄却すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうものにすぎず、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官 藤島昭、裁判官 中島敏次郎、木崎良平、大西勝也