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地球温暖化問題に関する今井会長メッセージ

温暖化問題へ冷静で粘り強い交渉を求める

2001年6月15日

(社)経済団体連合会

会長 今井 敬

 ブッシュ政権が6月11日に公表した温暖化への取組の中で、京都議定書には致命的な欠陥があると述べたことを受け、わが国国内では、EU各国とともに米国抜きでの議定書発効を目指すべきとの声が高まっている。

 深刻化する地球温暖化問題に対し、6月下旬から予定されているCOP非公式環境閣僚会合、7月下旬のCOP6再開会合は、COP参加各国が京都議定書の精神に立脚して、唯一の国際的枠組みとその達成手段を合意できる正念場となる。今回の国際交渉において、再び先進国が分裂する事態が生じれば、地球温暖化を有効に防止する手段を失い、将来世代への責任を放棄することになる。

 以上の観点から、今もっとも求められていることは、まず先進国間で、将来的には発展途上国も参加しうる、環境十全的な国際的枠組みとその達成手段を合意し、1日も早くその発効を目指すことである。必要とされるのは、冷静に交渉し、温暖化対策を着実に実施することであり、政府、産業界、国民それぞれに以下の対応を強く求めるものである。

1.日・米・欧が参加する国際的枠組みに向けた努力を続ける

 世界のCO2排出量の約1/4を占める米国が参加しない地球温暖化対策の枠組みは温暖化防止に実効 性を持ち得ない。また、米国の不参加は、途上国が将来の取組みを拒む論拠となる。日本政府には、米国が参加し、実質的に効果のあがる国際的枠組みとなるよう、引き続き努力を続けていただきたい。

残念ながら、日本政府は、米国を議定書交渉に引き戻すための交渉カードを一つも示せていない。このことは努力をしてきたはずの3月末からの日本政府の行動と米国の反応で明らかである。7月のCOP6再開会合が正念場となるからこそ、それ以前の何時かの時点で米国の参加を断念し、次善の策としての米国抜きの議定書発効へと方針転換するという決断が必要なのである。

 更に、日本の米国抜き批准の意思表明(そのことにより米国が孤立すると示すこと)は米国を議定書交渉に引き戻すための最も効果的なカードなのである。このカードを切らないで、最善の努力を尽くしたとは言うべきでない。

 京都議定書には数値目標が定められる一方で、その達成手段が合意できていない。日本政府は、EU各国に市場メカニズムの活用やシンクの重要性を、米国には数値目標の必要性を強く訴え、環境十全的で唯一の国際取極めの実現を図るべきである。

市場メカニズムの「活用」やシンクの「重要性」については、日本政府は、国内のNGOに対してすら、その立場を理解させることができていないし、ハーグ会議の報道を見れば国内の新聞各社にも理解させることができてない。

 正直に、日本向けの政治的妥協をEUに求めているものであることを認めるべきである。これらが日本向けの特別扱いであることを経団連が明示して紹介してこなかったから、未だに国内産業界からは日本の特別扱いを求める声が出てくるのである。

2.産業界は温暖化対策の手を緩めるべきでない

 経団連としては、温暖化自主行動計画を策定し、これに基づいた対策の実現を図るとともに、毎年フォローアップを行ってきている。産業界は、国際交渉の進展に関わりなく、着実に自ら課した目標の達成に向け努力を続けなければならない。最近増加が著しい民生業務、運輸部門についても、業界の自主的努力によりCO2の発生増加を抑制する必要がある。また、国際的排出量取引など市場メカニズムを活用した温暖化防止対策には、一層前向きに取り組む用意がある。

90年代は、省エネ対策の面でも「失われた10年」であった。これまでの自主行動計画頼みの対策では目標を達成できないことは、枠組み条約における「西暦2000年目標」の達成失敗で明らかとなっている。米国でも議論されているように、法的拘束力のある規制がなければ、京都議定書の目標達成はおぼつかない。

3.国民には冷静な議論が必要

 国民の一部には、米国抜きの京都議定書批准を求める動きがあるが、真に有効な地球温暖化対策を検討する上で十分なものとはならない。6月下旬から始まる一連の国際会合は、これまでの長い国際交渉の中で分水嶺となるものであり、交渉の実質的な成果をあげることが期待されている。日本政府が粘り強い交渉を続け、実質的な成果を得られるまで、国民は冷静さを保ちながらも、熱い支援を送りつづけることが求められる。拙速な政治決断を求めることは、有効な温暖化対策の実現を不可能にし、地球環境の保全に逆行するものである。また、日々の生活様式を見つめなおし、温暖化対策に資する具体的な行動を起こすことが求められる。

国民は、誰が守旧派なのかを十分良く知っている。日本の産業界のリーダーは、業界団体に依存する護送船団方式を止め、産業構造改革を恐れず、公共事業の既得権を守ることにしがみつかず、新たな省エネ・再生可能エネの産業を(米国を除く)世界と競争して起業することができるはずである。

 それこそが京都議定書を批准することが国内で持つ意味である。

この産業構造改革を進めるという観点からすれば、日本向けの特別扱いとしての「吸収源」「排出権市場」は産業界をスポイルし、将来の国際競争力を弱めるものであるとして、産業界みずから拒否すべきである。

以 上