CASA Letter No.34 APR.2001 特集COP6 Part2にむけて、より転載
早川光俊(CASA専務理事)
本年3月28日、ホワイトハウス及び国務省のスポークスマンは、アメリカ政府が京都議定書交渉から離脱することを会見で明らかにしました。
その理由は、(1)主要な途上国が削減・抑制目標をもたない不公平なものであり、(2)合意された削減目標を実施することは米国経済へ悪い影響を与えかねないこと、だとされています。また、地球温暖化についての科学的不確実性もその理由としています。
しかし、中国やインドなどの途上国が削減・抑制目標を持たないことはCOP3で京都議定書に合意する際に決着済みのことです。そもそも、地球温暖化問題はアメリカ、日本などの「北」の国々が引き起こした環境問題で、アメリカがこうした主張をすることは加害国として許されません。
また、地球温暖化対策が経済に悪い影響を与えるかどうかについても、3月29日、ノーベル賞受賞者8人を含む2500人のアメリカの経済学者が声明を出して、地球温暖化対策が必ずしも経済にマイナスの影響を与えないとの声明を発表しています。日本におけるCO2排出量削減の可能性を検討したCASAの「2010年地球温暖化防止シナリオ」でも、省エネなどの温暖化対策は2010年単年で差引き2兆5000億円ものコスト減になるとの結論になっています。
科学的不確実性の問題は、IPCC第3次報告書がその明白な答えとなっています。
そもそも、京都議定書には、交渉段階でアメリカが主張した排出量取引、クリーン開発メカニズム、吸収源などの算入などのほとんどが取り入れられています。それを決着済みの問題を持ち出して、京都議定書からの離脱を宣言することは、国際社会における責任を放棄するものです。
今回のアメリカの京都議定書からの離脱宣言によって、7月に再開されるCOP6の見通しがつかなくなった面もありますが、アメリカが議会の反対で当面議定書を批准する可能性がなかったことは、民主党のゴア氏が大統領でも同じだったと思います。私たちは、日本が京都議定書を批准することが議定書発効の鍵だと主張してきましたが、今回のブッシュ大統領の議定書離脱宣言で、日本政府が批准するかどうかに京都議定書の行方がかかっていることが誰の目にも明らかになってきました。
京都議定書の発効には55ヶ国と、目標をもつ国(附属書1国)の排出量の55%を超える締約国の批准が必要です。アメリカが附属書1国の排出量の36.1%、ロシアが17.4%、日本が8.5%を占めています。即ち、アメリカとロシア、日本が批准しなければ、議定書は発効しません。ロシアはホットエアーを売ることにより大きな利益が得られることから、いろいろな主張はしても議定書の発効に前向きで、問題は日本政府の対応です。COP3の議長国であり、先進工業国としてはアメリカに次ぐCO2の排出国である日本には議定書を早期に発効させる特別の責任があります。
CASAでは、アメリカのブッシュ大統領に、離脱宣言の撤回と議定書交渉に復帰するよう求める要請書と、日本政府に早期の批准を求める要請書を送付しました。
アメリカ合衆国
ジョージ・ブッシュ大統領 閣下
2001年4月10日
本年3月28日、ホワイトハウス及び国務省のスポークスマンは、「ブッシュ大統領は京都議定書を支持しない」旨を会見で明らかにした。
アメリカ政府が京都議定書に反対し、議定書交渉から離脱することは、交渉に参加している締約国だけでなく、世界の市民、将来の世代に対する重大な背信行為である。世界最大の温室効果ガスの排出国であり、世界の政治的なリーダーであるアメリカ政府が、京都議定書に反対し、交渉から離脱するとすれば、これまでの10年余にわたる気候変動枠組条約から京都議定書にいたる国際交渉を大きく後退させるものである。
また、アメリカ政府がすでに署名した京都議定書に反対し、これと異なる枠組みを主張するとすれば、国際政治における信義に反しその責任を放棄するだけでなく、国際法に反する行為と言わねばならない。
CASAは、環境NGOとして1990年の政府間交渉会議から交渉に参加してきた。10年にわたる困難な交渉プロセスに係わってきたものとして、アメリカ政府の今回の京都議定書不支持表明には、大きな怒りと失望を禁じえない。
今回のアメリカ政府の京都議定書不支持表明に、CASAとして強く抗議するとともに、以下のことをアメリカ政府に強く要求する。
(1)アメリカ政府は京都議定書不支持表明を直ちに撤回すること。
(2)アメリカ政府は、直ちに京都議定書の交渉プロセスに復帰するとともに、京都議定書を1日も早く発効させるために、早期の批准を議会に働きかけること。
内閣総理大臣 森 喜朗 殿
外務大臣 河野洋平 殿
環境大臣 川口順子 殿
経済産業大臣 平沼赳夫 殿
2001年4月10日
本年3月28日、ホワイトハウス及び国務省のスポークスマンは、「ブッシュ大統領は京都議定書を支持しない」旨を会見で明らかにした。
アメリカ政府が京都議定書に反対し、議定書交渉から離脱することは、交渉に参加している締約国だけでなく、世界の市民、将来の世代に対する重大な背信行為である。世界最大の温室効果ガスの排出国であるアメリカ政府が、京都議定書に反対し、交渉から離脱するとすれば、これまでの10年余にわたる気候変動枠組条約から京都議定書にいたる国際交渉を大きく後退させることになる。また、アメリカ政府がすでに署名した条約に反対し、これと異なる枠組みを主張することは国際法にも反するものである。
もし、アメリカが批准しない場合、日本政府の批准に京都議定書の帰趨がかかっていることは、その排出量からして明らかである。今こそ、日本政府は、地球温暖化防止京都会議の議長国として、京都議定書を早期の発効にむけてリーダーシップを発揮すべきである。
CASAは、環境NGOとして1990年の政府間交渉会議から交渉に参加してきた。今回のアメリカ政府の京都議定書不支持表明に、CASAとして別紙の文書を送付したが、日本政府に対しても、以下のことを強く要望する。
(1)地球温暖化防止京都会議の議長国として、京都議定書を早期に発効させることこそ地球温暖化を防止する確実な第一歩であること、日本政府も2002年までには京都議定書を批准することを、国際社会に表明すること。
(2)アメリカ政府に、京都議定書に反対し交渉から離脱することは、国際的な信義に反し、締約国だけでなく、世界の市民、将来の世代に対する重大な背信行為であるとの立場から、京都議定書不支持表明を直ちに撤回するよう強く働きかけること。
(3)COP6再開会合に向けて、「抜け穴」のない議定書が合意されるようリーダーシップを発揮すること。