本 文
・.ようやく環境省WGから温暖化対策税の制度設計案が提示された。温暖化対策加速化のため、今回の検討進展を前向きに評価したい。これを機に、環境省による本案や炭素税研究会による制度設計案(www.jacses.org参照)をもとに、環境省・財務省ほか各層で議論を加速化し、一刻も早い炭素税の導入、遅くとも2005年導入を実現すべきである。
・.しかし、本報告の内容は多くの課題を抱えており、夏に示される地球温暖化対策税制専門委員会の最終報告では、以下の点の改善が必要である。
1.〈税率〉: より高率の炭素税を打ち出すべき
炭素税は、課税面での温室効果ガス削減効果・価格インセンティブ効果を発揮させることが重要である。本WG案は炭素1トン当り3,400円の税率を推奨しているように見えるが、地球温暖化防止のためにはより高率の炭素税導入をうたうべきである(例えば、炭素税研究会は炭素1トン当り6,000円以上の炭素税を提案している)。
2.〈課税対象〉: 一律に炭素含有量に比例し課税する原則を明記せよ
税の公平性担保のため、炭素税は全ての化石燃料に炭素含有量当り同等に課税する必要がある。本WG案では排出量・消費量「等」に応じ課税、といったあいまいな表現がなされ、最終的に税の公平性を担保しない恣意的課税がなされる可能性を生じさせかねない。特定産業で使用する燃料をまるまる非課税にすることがあってはならず(ただし鉄鋼用原料炭、原材料は例外もありうる)、こうしたあいまいな表現は避けるべきである。
3.〈産業への軽減〉: CO2削減なくして軽減なし
本WG案は、産業への軽減を導入するなら基本的に何らかの条件付としていることは評価できる。しかし、一部の企業・産業に対し炭素税軽減措置を認める場合、温室効果ガス排出削減を達成することを「必須条件」とし、炭素税軽減の基準を明確化し、あってはならない無条件の減税を許してしまう表現のあいまいさを残してはならない。報告書の「諸般の状況に照らして」、成果をあげている「といえる」もの、成果をあげていると評価できる「と考えられる」、「期待できる」等のあいまいな表現は、避けなければならない。
4.〈税収使途〉: 減税オプションの詳細化と温暖化対策費オプションの基準の厳格化を
本WG案は、税収使途として減税に回す選択肢もごく短く表現されているが、その一方「仮定」「想定」などとして税収は温暖化対策に回すのが前提と誤解されかねない記述が極めて多数ある。また、税収を温暖化対策に使わない場合は税の価格インセンティブ効果だけで6%削減に必要な追加的排出削減をすべて達成しなければならないと読める記述があるが、税だけで必要な追加的削減量を全部達成しようと考えるのは常識的といえず、当然のことであるが、京都議定書の6%削減は様々な政策のポリシーミックスで実現すべきものである。
これらの問題ある表現を改め、税収を温暖化対策に活用する場合とそうでない場合をまずは2つの選択肢として並列に示した上で、一般財源・減税に回す選択肢の記述の比重を増やし、両者を適切に記述すべきである。
税収を温暖化対策に回す場合について「透明な使い方」に触れていることは評価できる。ただしその場合には必ず効果的な国内対策に使うべきで、国内排出削減にならない「京都メカニズム」と「森林対策」に使うことは反対である。「原子力や道路建設など地球温暖化以外の環境負荷が大きいものに使用されない」「温暖化対策を口実とした炭素税収の省庁間のばらまき・省益拡大につながらない」ための制度の明示も不可欠である。
5.〈現行エネルギー課税との関係〉: 温暖化防止に逆行する減税の阻止と温暖化防止に寄与する増税を
炭素税導入に際して、温室効果ガス排出増を招くエネルギー税の変更、すなわち、ガソリン税など既存エネルギー税の減税がなされてはならない。本WG案に、炭素税と既存エネルギー税の使途が重複する場合「課税面の調整を行う必要性も検討すべきではないか」との表現があるが、市場を歪め地球温暖化を加速するエネルギー税減税の余地を排する明確な記述とすべきである。なお、炭素税導入とともに、石炭課税強化など温暖化防止のための既存エネルギー税改革をさらに進展すべきである。
6.〈政策プロセス〉: 市民参加と透明性を
政府の税金の集め方・使い方に対する国民の不信感は、根深い。公正・適切な炭素税制度の構築・実現には、様々な意見をたたかわせた上で政策決定に至ることが重要であり、意思決定の中枢に市民が参画しその意思がしっかりと反映されるシステムを構築することが必須である。
以 上
【炭素税研究会】
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、持続可能社会研究会等のNGOメンバー、研究者、税理士、企業人等で構成。地球温暖化に対処する炭素税の早期導入に向け、研究・提言活動を行う。
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