意見書・プレスリリース
 

経済産業省の「石炭税導入」案(ただし、9月29日付朝日新聞報道による)に対する炭素税研究会「コメント」

2002年10月5日

経済産業省の「石炭税導入」案(ただし、9月29日付朝日新聞報道による)に対する炭素税研究会「コメント」

 9月29日付けの朝日新聞朝刊で、経済産業省は、『石油特別会計』及び『電源開発促進対策特別会計』の見直しの一環として、石油・天然ガス・液化石油ガスの輸入量に応じ課税してきた『石油税』を衣替えし、石油・ガス・石炭に対してCO2排出量を課税基準の一つとする『エネルギー環境税』(仮称)を創設する方針を固めた、と報道がされた。この件に関し、経済産業省からいまだ公式な発表はなされておらず、今回の新聞記事の出所および真偽は定かではない。しかし、本新聞記事のもつ意味/緊急性は極めて高いため、これをもとに、私たち「炭素税研究会」のコメントを以下に示す。

要 旨 
 本案は、私たちがこれまで強く要望してきた「石炭税の導入」を明確化した点に関しては、評価できる。
 しかし、「電促税の減税とセットにされていること」は問題である。「税収の使途として」地球温暖化対策に使うとしているが、「原子力発電への公的補助」の維持・拡大が意図されている可能性も考えられ、簡単に歓迎することはできない。環境の衣をかぶって、様々な問題が指摘されている「経済産業省所管の特別会計」が維持されるのではないか、と危惧される。
 これら問題点を解消するよう本案を改め、「石油税・電促税の税率維持」「原子力発電への同時課税および公的補助の削減・撤廃」「特別会計の将来的一般財源化」を実現しなければならない。また、本提案の検討・実現過程での「十分な透明性と市民参加の確保」が必須である。
 今回提案されている税は、既存のエネルギー税の極めて小規模なグリーン化にすぎず、内容的にも問題が大きいため、「エネルギー環境税」と呼ぶにふさわしくない。まして、価格上昇によってCO2排出削減を促すという、温暖化防止のためのあるべき「炭素税」とは全く別ものである。本税の議論とは別に、検討を急ぎ本格的な炭素税の早期導入を実現しなければならない。

本 文

<評価できる点>
1.石炭課税の導入(課税面)
 本案では、石炭を新たに課税対象としている。これは環境に配慮した課税面の改革として、私達がこれまで強く主張してきたことであり、きわめて重要である。

<懸念される点、および、必要な改善策>
1.石油への課税(課税面)
 本案では、新税の課税基準は「石油税からの移行部分」と「CO2排出量に応じた部分」の二本立てになるとのことだが、改革の結果、石油への課税率が現状とどう変わるのか明らかになっていない。ただ「電源開発促進税'も'税率を下げる。税収全体は約8500億円の現行水準を維持する」との記述からは石油などへの税を引き下げる可能性があるようにも読める。石油への税の引き下げは、特に増加が著しい民生・運輸部門のCO2排出増をさらに促す価格インセンティブを与える誤った政策であり、行ってはならない。「少なくとも石油への課税率を引き下げない」ことが重要である。

2.電力・原子力発電への課税(課税面)
 本案では、「石油税の衣がえ」は、電気料金に課税する「電源開発促進税(電促税)の税率引き下げ」とセットとされている。電促税減税は、電力使用を増加させるので、行うべきではない。
 特に、原子力発電は、環境負荷や廃棄に関するコストをほとんど負担しておらず、むしろ、例えば「原子力発電税」を創設するなど大幅に増税すべきものである。しかし、本案は、化石燃料課税の微修正にとどまっており、原子力課税に手を付けていない。これまで課税がなされてこなかった石炭に新たに課税を行う今回、原子力発電(あるいはウラン)にも、少なくとも石炭・石油税なみの課税を行い、火力発電に対し相対的に有利になる事態を防がなければならない。

3.国内温暖化対策への支援(使途面)
 本案では、CO2排出量に応じた課税分の使い道は温暖化対策や新エネルギー・省エネルギー対策に限定するとのことであるが、温暖化対策という名目のもと原子力発電への補助の維持・拡大がなされる可能性が高い。それを防ぎ、原子力発電への公的補助を削減し、CO2排出およびその他環境負荷の低減という観点から優れている適切な対策(自然エネルギー/省エネルギーなど)への補助を拡大しなければならない。

4.海外温暖化対策への支援(使途面)
 本案では「日本の政府や企業が海外で手がけたCO2排出削減の成果を日本に移転する事業への補助金などを拡充する」としている。しかし、海外削減手法である共同実施やCDMの本来あるべき姿をしっかりと議論しないまま、それらに補助金を出そうというのは問題である。議論が進んでいない現状では、京都メカニズムへの利用を基本的に許すべきではない。

5.決定プロセス
 以上の1〜4の問題から、経済産業省所管のまま、時代遅れで予算も余っている「石油特別会計」を「エネルギー環境特別会計」(仮称)に衣替えしつつ、環境・温暖化対策の事業を管理下におき権限維持・拡大を構想しているのではないか、東京電力問題で逆風が強まるなか原子力優遇策を維持・拡大しようとしているのではないか、と考えることもできる。
 こうした疑念をもたれないようにするためには、経済産業省自身が1〜4の問題を解消するべく本案を改めると同時に、その検討・実施プロセスを改善し、透明性と市民参加を確保するべきである。

6.炭素税の別途導入
 本案は、現行エネルギー課税の歪み(石炭には課税されていない)を正すだけで、エネルギー全体としては現行水準を維持するだけのものにすぎない。本案のままでは、CO2排出増が著しい民生・運輸部門のエネルギー消費量を削減することができず、環境対策として問題も大きく「エネルギー環境税」と呼ぶのにふさわしくない。まして、あるべき炭素税とは全く異なるものである。今、地球温暖化防止のために、石炭税とは別に、既存のエネルギー税に「上乗せ」し、価格上昇によってCO2排出削減を促す「炭素税」導入が緊急に必要である。その検討・導入を急がなければならない。

以 上

【炭素税研究会】
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、持続可能社会研究会等のNGOメンバー、研究者、税理士、企業人等で構成。地球温暖化に対処する炭素税の早期導入に向け、研究・提言活動を行う。
―連絡先―
【炭素税研究会事務局】
:「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 【担当】: 足立
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