Date: Sun, 05 Dec 1999 01:09:52 +0900
From: Aoki Masahiko <btree@pop06.odn.ne.jp>
To: aml <aml@jca.ax.apc.org>, keystone M <keystone@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 2156] ビエケス住民米軍基地を「追放」
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 「誰が何と言ってももう米軍の基地にはガマンできん」、とビエケス島の射爆
場を半年以上占拠していたプエルトリコ住民が、米軍に完勝したようです。ペン
タゴンと大統領は事実上ビエケスからの撤退を認めることになる決断を余儀なく
されました。
 国防長官は先週始めビエケスを「不法占拠」している反対派を強制排除して
(特殊部隊も使って)、実弾演習を再開することを決意したのですが、レノ司法
長官とFBI長官が猛反対「絶対ダメ。もうビエケスの状況は我々ではどうすること
もできないところに来ている。」と言われて、断念。(この話はニューヨークタ
イムスの報道
http://www.nytimes.com/yr/mo/day/news/national/puerto-vieques.html
による)

 国際情勢など外的な要因なしに、住民闘争と米軍との「直接対決」で住民の完
勝、米軍の完全追放という形で終わることは非常に希なことです。同じ次期に
「デッドライン」を迎えた沖縄普天間問題が連想されますが、プエルトリコの
「親米」知事が非妥協的に闘ったことは大きかったようですが、稲嶺「裏口」知
事との違いだけでない要素も別にあると思います。

 ともあれ米軍が「絶対不可欠、代替不可能」と言っていた施設を手放すことが
「できる」ということは、同様に「不可欠」な普天間基地の行く末を考える際に
日本人にも教えることが多い。

 金曜日に国防長官が発表したビエケス問題収拾提案(事実上これが政府の決定
になる。そして大統領も了承した)は以下の四点からなります(要旨)。
(1)ビエケスでの実弾演習は住民との合意がなされるまでは、模擬弾のみで行
う。
(2)訓練期間は現在の年180日から90日に減らす。
(3)5年の猶予期間の内に海軍は代替施設を見つけ、ビエケスでのすべての演
習を終了する。
(4)訓練の再開に際して、4000万ドルの「地域振興」費用を支払う(米政
府がでしょうね)。

 ああ「地域振興」の金・・・・日本人には余りにもおなじみの言葉がここでも。
これを発表した記者会見の場でも記者から「ニンジン」と嘲られたこの金も、し
かし基地をつなぎ止めることにはならないようです。この知らせを聞いた反対派
住民は、「即時完全撤退」でないと怒っているのです。カネ欲しさに魂と土地を
売ることは知事にもできないというのが現在のプエルトリコの世論のようです。

 確かに米政府は5年の猶予期間の内に、プエルトリコの人が「心変わり」して
くれることを期待しているのです。しかし、土曜日の朝に配達された長い長いビ
エケス問題特別記者会見の記録を読む限りの印象では、海軍はもはやそれも期待
していない。完全に打ちひしがれています。
この国防総省での記者会見の記録は、
http://www.defenselink.mil/news/Dec1999/t12031999_t1203asd.html
にありますが、私はいずれは米軍も撤退するが最初は懐柔策でごまかされると予
想していただけに、この「完勝」のニュースを大変驚いて読んだのですが、米政
府が「軍事クーデター」まで思い詰めていたとというのも意外でした。これは私
が日本の風土に慣れていて、住民の闘いというものを過小評価するように「教育」
されていたために起こった誤解でした。

 普天間「代替」基地の「決定」をめぐって、不勉強な私も新聞紙上で多くの
「専門家」のご意見を拝聴しました。いずれも沖縄米軍基地は「代替不可能」と
いう意見で一致していました。ところがビエケス問題のように「絶対不可能」が
可能になるのが現実です。普天間どころか嘉手納だって撤去することも「現実的」
な事なのです。日本という特殊な社会で「現実主義」に陥ることは多くの可能性
をあらかじめ放棄することになります。「専門」家の意見を聞くことは必要です
が、信じてしまってはバカを見ます。

 周辺事態法が成立した今、米軍が今1番気にしているのが、2001年3月3
1日に期限を迎える「特別協定」、つまり「思いやり予算」が継続されるかどう
かということです。日本の財政は火の車、こんな状態で世界に類を見ない「大変
気前のいい」(ペンタゴン)外国軍への支出を継続するということは国際常識上
考えられません。
 来年からはこの協定の「改定」の話が始まる。「うちもホンマにシンドイんで
そろそろこの辺で」と日本政府が切り出せば、米軍は基地問題でいくらでも譲歩
してきます。そのカードも切らずに、米軍の言い分ばかり「ご無理ごもっとも」
という神経が分かりません。

 一杯のバケツが臨界を起こし、一発の爆弾(初めてビエケスで民間人が死んだ)
がプエルトリコの怒りを臨界状態にした。この世の中何がきっかけになるか分か
りません。米軍には「名護がダメなら、北海道に陸軍を」と思い詰めている人も
いるらしい。結局は住民が主人公という当たり前の事実を思い出させてくれた今
回のビエケスの闘いです。
 

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   青木雅彦
  Aoki Masahiko
btree@pop06.odn.ne.jp
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