Date: Thu, 04 Nov 1999 23:06:38 +0900
From: Aoki Masahiko <btree@pop06.odn.ne.jp>
To: aml <aml@jca.ax.apc.org>, keystone M <keystone@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 2044] 佐世保で原潜事故マニュアル策定へ
MIME-Version: 1.0
Sender: owner-keystone@jca.ax.apc.org
X-Sequence: keystone 2044
Precedence: bulk
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

東風(こち)吹かば 放射能よこすな JCO
(下の句を募集しています)
 この事故の時、確か大阪で行われた新体操の世界選手権で選手だったかコーチ
かが被曝を恐れて帰国してしまったという事件がありました。しかしこの事故の
余波は大阪も越えて、西の端の佐世保にも及んでいるのです。以下の記事をご覧
ください。よく考えるとこれは首都圏の住民にも大いに関係のあることです。つ
まり首都圏の人は、東風だけでなく南風も警戒しなければならないからです。

>【長崎新聞11月3日】
>佐世保市が原潜事故で独自の対応策
>
> 米海軍原子力潜水艦の放射能事故対策について、佐世保市は2日、事故発生を想
>定した医療態勢や防護資材、機材の整備などを柱とする独自の対応策を、本年度
>末をめどにまとめる方針を明らかにした。
>
> 茨城県東海村の臨界被ばく事故や、ガイドライン関連法が想定する「周辺事態」
>の際に佐世保が原潜寄港地になるとした政府方針を受け、これまで未整備だった
>原潜事故対策について、佐世保原水協(山下千秋理事長)が、市側に避難マニュ
>アルを整備するよう申し入れたことに対して答えた。  

 1964年に米原潜が佐世保に初寄港して以来35年を経て、ようやく原潜事
故のマニュアルが策定されるようです。
 もちろんこれまでも原潜の入港の度に、海水のサンプリング調査はやっている
わけですが、メルトダウンとかの原子炉事故が起こったらどうするという問いに
は、「米軍を信頼する」として全く何もしてこなかったのです。原子力艦船の寄
港する他の2港,横須賀とホワイトビーチ(沖縄)についても同様です。
 上の記事の書き方では、JCO事故と周辺事態法を受けて、ようやく原潜は原
発であり事故の可能性は否定できない、という当たり前のことに気づいたという
ことです。

 これは過剰反応ではないのです。と言うのも、私の手元に大判で分厚い以下の
ような報告書があります。
『日本の港に停泊した軍艦における核事故−横須賀、佐世保、呉に対する想定事
故の定量的分析』(W.ジャクソン・デービス博士、1988年)
 これは今はありませんが「核事故をアセスメントする会」(代表:大石武一元
環境庁長官)が、海洋環境学の専門家であるカリフォルニア大学のデービス博士
に、日本の港で米艦の核事故(核兵器及び原子炉事故)が起こったらどの程度の
被害が予想されるかのシュミレーションを依頼したその回答です。
 こういうシュミレーションは多くの仮定を設けて計算するわけで、当然この報
告書にもそれが記されていますが、煩瑣になるので簡単に横須賀での事故の結論
部分だけを紹介すると、

横須賀に停泊中の原子力艦船の原子炉100メガワット(現代の原潜はもう少し大き
い?)が事故。南南西の風、風速1m/秒。
(1)短期的死者 24971人
(2)中期的死者 25555人
(3)長期的死者 26994人
 ここで(1)は事故直後の被曝が原因でで死亡する人、(2)は被災地に1週
間とどまったことが原因で死亡する、(3)は被災地に1年間とどまったことが
原因で死亡する人をいう。遺伝的障害による死者や海水の汚染等による死者は定
量化が難しいので除外している。
 合計7万人強、風向きは最悪(畏れ多くも千代田区一丁目一番地が風下被曝地
帯で塗りつぶされている)ですが、死者の算定には「控えめな」仮定を用いたと
のこと。

 この報告書は英語原文と日本語訳が付されていますが、純粋な報告書で必ずし
も一般向きではないのです。同じ内容をもう少しわかりやすくした『隠された核
事故』(梅林宏道著、創史社89年)の中にも解説付きで紹介されていますが、
この本も絶版かもしれません。

 まあ佐世保なら何とか避難計画も策定できるかもしれませんが、横須賀事故、
つまり首都圏では数千万人が風下になるのを避けて右往左往するわけで、史上最
大のパニックになってしまいます。しかも汚染地域にはすぐには戻れないのだか
ら何百万人の人がホームレスになってしまう。
 政府や自治体のとる解決策は2つしかありません。
(1)米原子力艦船(原子力空母も)の寄港を全面的に拒否する。
(2)事故は絶対に起こらないものとして何もしない。
 政治家は(1)は死んでも言わないということですから、現在の状態(2)を
続けていくのでしょうが、それじゃあ国民の「安全保障」は放棄している(運任
せ)ということで、そもそも米軍も自衛隊も要らないということです。

 この「デービス報告」そのものは「学術的」なもので政治的判断は示していな
いのですが、こういう研究結果からどういう実践を導くかは極めて政治的・イデ
オロギー的な問題になります。それは、例えば実際にこの想定事故が起こったら、
間違いなく原潜寄港だけでなく安保条約も終わってしまうことは明らかなことか
らも容易に分かるでしょう。ただし安保の廃棄を望む人たちも、この事故が起こ
ることは決して望んではいないでしょうが。

 佐世保市は具体的にどうするのでしょう。ご存じの方は教えてください。横須
賀・首都圏でも避難計画は立てられなくても、少なくとも原潜の入港を広く告知
して「覚悟」を住民に対して迫っておくというということはできるはず。ただ原
潜の横須賀寄港は80年代中ごろから急増して、最近はだいたい年中いると考え
ても間違いではないのですが。

************************
   青木雅彦
 btree@pop06.odn.ne.jp
************************



 
  • 1998年     3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 1999年     1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

  • キーストーンメーリングリスト 目次