Mime-Version: 1.0
X-Sender: kaymaru@mail.jca.apc.org
Date: Tue, 5 Oct 1999 20:36:47 +0900
To: aml@jca.apc.org
From: "MARUYAMA K." <kaymaru@jca.apc.org>
Subject: [keystone 1942] 日の丸・君が代:福島議員への政府答弁書
Cc: keystone@jca.apc.org, pmn@jca.apc.org
Sender: owner-keystone@jca.ax.apc.org
X-Sequence: keystone 1942
Precedence: bulk
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

 以下は、井上澄夫さんから届いた緊急報告です。「日の丸・君が代」法制化に関す
る福島瑞穂議員の質問と政府答弁書の解説。テキスト化は井上さんとその仲間たち。
福島議員のホームページにもまだ掲載されていませんが、全文公開については福島事
務所の了解が得てあるそうです。ご利用ください。(aml、keystone、pmnに同報)

福島議員のホームページ:
http://www.jca.apc.org/mizuhoto/

======================== ここから ========================================

 「日の丸」掲揚・「君が代」斉唱の強制に反対する全国の仲間たちへの緊急報告
 

  福島瑞穂議員に対する政府答弁書は、「日の丸」掲揚や「君が代」斉唱を強制する
者が、処罰されることもありうることを認めている!
 

            報告者=井上澄夫(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、東京都は
                      戦争協力をするな!平和をつくる市民連絡会)

            報告時=1999年10月5日
 

  去る8月9日、国旗国家法が成立して以来、「日の丸」掲揚・「君が代」斉唱の《
強制台風》が、全国で吹き荒れています。
 9月下旬、広島県呉市の広(ひろ)警察署が、管内の公立小・中学校で開かれた運
動会について、「日の丸」掲揚や「君が代」斉唱を実施したかどうかを、各教育委員
会に問い合わせ、各教委が実施状況を答えたこと(99年10月4日付『朝日』)や
、岐阜県の梶原拓知事が、9月30日、県議会で「国旗・国歌を尊敬できない人は、
日本国籍を返上していただきたい」と発言したことなどは、《強制台風》の猛威の一
端にすぎません。報告者に元教育労働者から寄せられた葉書には、「教員採用試験の
面接で『日の丸・君が代』について聞かれることは、今までもなかったわけではあり
ませんが、堂々とやりはじめたようです。」とあります。その種のことは、むろん許
しがたいことで、それぞれきちんと抗議すべきことですが、国旗国歌法の成立に勢い
を得て、いわば図に乗った動きといえるでしょう。
 ここで、報告者は、国旗国歌法の性格や、それと憲法第19条との関係などを考え
る上で、非常に重要な意味をもつと思われる公文書(政府見解)を紹介します。これ
は、福島瑞穂参院議員(社民党)の質問主意書と再質問主意書、およびそれに対する
二つの政府答弁書です。
  (インターネットで全文を紹介することについて、報告者は、10月4日、福島議
員の事務所から了解を得ました。原文は縦書きです。なお政府答弁書に「瑕疵(かし
)」という言葉〔傷、欠点のこと〕が出てきますが、原文では「瑕疵」に平仮名のル
ビがついています。)

  国会議員が、内閣に質問するために提出する質問主意書の直接の宛先は、国会法第
74条により、その議員が属する議院の議長です。ですから、福島議員の場合は参議
院議長に対して提出するわけです。政府はこれに対し、内閣総理大臣名の答弁書をつ
くり、議院の議長が、それを議員に届けます。したがって、政府答弁書は、公式の政
府見解であり、非常に重要な公文書です。
  福島議員は、本年(99年)7月21日、「国旗国歌法制化に関する質問主意書」
を提出し、7月30日、政府答弁書を得ました。しかし、同答弁は「きわめて不十分
な内容であり、中にはまったく答られていない質問もあるので」、8月5日、「国旗
国歌法制化に関する再質問書」を提出し、その結果、8月13日、つまり国旗国歌法
の成立直後、新たな政府答弁書を得たのです。

   一部マスメディアの「誤報」と、政府再答弁書の意味するもの

  福島議員の再質問書に対する政府の再答弁書について、一部マスメディアが流した
情報は、とんでもない「誤報」です。それを順を追って説明します。(以下において
は、質問主意書を単に質問、答弁書を答弁と略すことがあります。)
  最初の質問主意書の質問の四は、「法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付け
を行うようなことは、考えていない」という政府の答弁について「これはいかなる場
合においても、国旗の掲揚や国歌の斉唱が強制的に求められたり、かりに強制された
場合にも、その強制に従わなかったものが処分や処罰を受けたりすることはないもの
と理解してよいか」とたずねています。それに対し政府は、「政府としては、法制化
に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うことは考えていない。したがって、現
行の運用に変更が生ずることとはならないものと考えている。」と対応しました。こ
れは、およそ答弁とはいえず、問われたことから逃げるために、故意に曖昧な表現を
選んでいます。
  ですから、福島議員は、再質問において、具体的な場面を設定して、政府に迫りま
した。再質問の一は「法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うことは考
えていない」という政府答弁について、「これは、何人であれ、政府や地方自治体が
主催する式典等で日の丸掲揚や君が代斉唱を求められても拒否する権利を有している
という意味と理解してよいか。」です。三は「かりにこの法案が、日の丸掲揚や君が
代斉唱を義務付けるものであった場合、憲法第19条の『思想及び良心の自由は、こ
れを侵してはならない。』という規定に抵触すると考えるが、この理解に間違いない
か示されたい。」、四は「この法案成立後において、日の丸掲揚や君が代斉唱を強制
する者があった場合、その者の行為は憲法第19条の規定に抵触する行為であると考
えてよいか。」、五は「法案成立後に、実際に日の丸掲揚や君が代斉唱が求められる
現場で、これを拒否した人間が、式典等の主催者から退場させられたり、侮辱的な対
応をされた場合、退場をさせたり侮辱を行ったりした者に対する処罰等は運用上考え
られているか。処罰を考えていないとすれば、その理由は何か。」です。
  さて、再質問に対する政府再答弁は、これまた逃げに終始しています。しかしどう
しても逃げきれない部分があり、それが露出しています。そして、そここそが重要で
す。再質問の一について、政府は「お尋ねの『日の丸掲揚や君が代斉唱を求められて
も拒否する権利』ということの内容が不明確であり、仮定の上での答弁は差し控えさ
せていただく」と、とぼけました。
 三については「御指摘の点が憲法第19条に抵触するか否かについては、一概に結
論づけることはできない事柄であると考える。」と答えていますが、「憲法第19条
に抵触しない」と言い切っていない点に注目すべきでしょう。抵触することもありう
るわけです。
  四についても「御指摘の点が憲法第19条に抵触するか否かについては、個別具体
的に判断すべき事柄であり、一概に結論づけることはできない」とのべていますが、
ここでも「抵触しない」と明言していません。個別具体的になされる判断の結果「抵
触する」ことがありうることを排除できないからです。
  さらに五も、政府が逃げきれない問題を露呈しています。「一般的には式典等の主
催者が、その趣旨を踏まえ円滑に式典等が行われるよう配慮することは、主催者の責
務であり、それに協力しない者に対して必要な措置を採ることは、当然認められると
考えられるが、その対応が具体的処罰の対象となるかは個別具体的に検討すべきもの
であり、一概に結論づけることはできないものと考える」。
  この五について、一部マスメディアは、「協力しない者に対して必要な措置を採る
ことは、当然認められる」という部分だけ抜き出して伝えたのですが、再質問の趣旨
は、式典の主催者が「拒否した人間」を退場させたり、その人を侮辱したりした場合
、処罰されるかどうかを問うているのですから、再質問五への政府答弁の焦点は、あ
くまで、式典の主催者の「対応が具体的処罰の対象となるかは個別具体的に検討すべ
きものであり、一概に結論づけることはできないものと考える」という部分にありま
す。
 いうまでもなく「当然認められる必要な措置」という表現は問題で、その内容を政
府は具体的に示すべきですが、そこはあえて「不明確」にし、言葉を濁しています。
これは、「協力しない者」に対する脅しといえるでしょう。こういう部分だけ強調し
て報道するマスメディアの姿勢は、「日の丸」掲揚・「君が代」斉唱を強要する動き
に荷担するものといわざるをえません。
 しかし、このように「協力しない者」を脅しながらも、式典の主催者が「処罰の対
象にならない」と政府が言いきれないということこそ、凝視すべきです。それは、式
典の主催者の対応、態度によっては、「処罰されることがありうる」と政府が考えて
いることを暴露しています。憲法第19条との関係で、そのような事態が生じうるこ
とを、政府も想定しているわけです。
 そしてこの問題はおそらく、公的式典のありかたに限られないでしょう。「法制化
に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うことは考えていない」と、政府が繰り
返し表明せざるをえなかったのは、まさに憲法第19条との関係を危惧したからにほ
かならないでしょう。
  強要を可能にする義務規定が国旗国歌法にないことにより、今後、政府が、自ら、
あるいは地方自治体の行為によって、憲法第19条違反とされることを非常に恐れて
いることは明らかです。それは、政府の大きな弱点です。その意味で、福島議員への
政府答弁書は、今後、大いに活用できるのではないでしょうか。

  つい先日、10月1日、東京都が都庁で開いた都功労者の表彰式で、「君が代」の
斉唱が初めて行われました。そのとき、25年間、自治会長を努めた功績が認められ
、功労者に選ばれた練馬区のTさんは、「戦時中の隣組の反省から出発した自治会活
動だが、表彰式での『君が代』斉唱はその理念にも反する」という理由によって、斉
唱の間、会場から退席しました。これについて都知事室は「退席したいという人を引
き留めるわけにはいかない。式の進行の妨げにならない限り、淡々と進めるしかない
」とのべています(99年10月1日付『朝日』夕刊)。 石原慎太郎都知事は、9
月22日、都議会で来年8月15日の靖国参拝について「遺族の方々から請われ、満
足していただけるなら、喜んで参ります」と表明しました(99年9月23日付『産
経』)。そういう人物を長とする都も、Tさんの堂々たる退席に手の出しようがなか
ったわけです。
  以下に、福島瑞穂議員の質問書と再質問書、および政府の二つの答弁書を、全文掲
載します。

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質問第二四号

  国旗国歌法制化に関する質問主意書
 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
   平成十一年七月二十一日
                           福島瑞穂
    参議院議長 斉藤十朗殿
 

   国旗国歌法制化に関する質問主意書

 日の丸、君が代が国旗国歌として法制化されようとしているが、この法案の条文と
実際の運用面での取扱いについて疑問点があるので以下質問する。

一、 政府は国旗国歌に関する世論調査を一九七四(昭和四九)年一二月以降行って
いない。このときの調査によれば、「日の丸」を国旗としてふさわしいと思う人は八
四・一%、「君が代」を国歌としてふさわしいと思う人は七六・六%にのぼっていた
。しかし、最近のマスコミ各社の世論調査では、読売新聞で「日の丸が国旗として定
着している」七九%、「君が代が国歌として定着している」六三%、朝日新聞では「
日の丸に親しみを感じる」七九%、「君が代に親しみを感じる」六五%、毎日新聞で
は「日の丸に親しみ」七七%、「君が代に親しみ」六六%という結果になっている。
一九七四(昭和四九)年から二五年を経て、君が代・日の丸が国旗国歌としてふさわ
しいと考える人の割合は若干ではあるが減っていると考えられるが、この減少傾向に
ついて政府はどのように認識しているか示されたい。

二、 石垣一夫衆議院議員の質問主意書に対する答弁書では、一九七四(昭和四九)
年の政府世論調査から二五年を経た現在も新たな世論調査は必要ない旨答弁している
が、調査から四半世紀を経過した世論調査の内容が、現在も変わらないと政府は考え
ているのか。

三、 政府は、総理見解でも、委員会における答弁でも、「日の丸・君が代が国旗国
歌として国民の間に広く定着している」という趣旨の発言を行っている。世論調査も
行わず、マスコミアンケートに見られるような「日の丸・君が代」支持者の減少傾向
にもかかわらず、政府は何に基づいて「日の丸・君が代が国旗国歌として定着してい
る」と考えるのか。

四、 石垣一夫衆議院議員の質問主意書に対し、政府は「法制化に当たり、国旗の掲
揚等に関し義務付けを行うようなことは、考えていない。」と答弁している。委員会
質疑においても同趣旨の答弁が行われている。これはいかなる場合においても、国旗
の掲揚や国歌の斉唱が強制的に求められたり、かりに強制された場合にも、その強制
に従わなかったものが処分や処罰を受けたりすることはないものと理解してよいか。
 

五、 現在、学校現場においては、学習指導要領に基づく日の丸掲揚、君が代斉唱の
強制ともいえる指導が行われている。先の石垣一夫衆議院議員の質問主意書に対する
答弁書においても、「学習指導要領は、学校教育法及び同法施行規則の規定の委任に
基づいて、文部大臣が告示として定めるものであり、法規としての性質を有している
」と書かれている。「法規としての性質を有する」とは、ある程度の強制力を持つと
いう意味と理解してよいか。

六、 政府答弁をそのとおり解釈するならば、法律としての国旗国歌法案には強制力
はないが、告示にすぎない学習指導要領には強制力があるということになるが、この
解釈について政府の見解を示されたい。

七、 校長が自殺した広島県世羅高校の事件では、広島県教育委員会が日の丸掲揚、
君が代斉唱を徹底するよう求めていたと伝えられているが、学習指導要領に基づくな
らば、世羅高校は日の丸掲揚、君が代斉唱をする義務があったと政府は考えているの
か。

八、 国旗の掲揚、国歌の斉唱を強制しないとする国旗国歌法案が成立すれば、これ
まで学習指導要領等によって強制されていた学校現場での日の丸掲揚、君が代斉唱は
強制されなくなるのか。それとも強制されるのか。政府の見解を示されたい。

九、 もし法案成立後も学習指導要領に基づく指導が今まで通り行われる、つまりは
日の丸掲揚・君が代斉唱の強制が行われるのであれば、「法制化に当たり、国旗の掲
揚等に関し義務付けを行うようなことは、考えていない。」という政府答弁は嘘とい
うことになるが、いかがか。

 右質問する。
 

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答弁書第二四号

  内閣参質一四五第二四号
    平成十一年七月三十日
                     内閣総理大臣 小渕恵三
     参議院議長 斉藤十朗殿

参議院議員福島瑞穂君提出国旗国歌法制化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付す
る。
 

  参議院議員福島瑞穂君提出国旗国歌法制化に関する質問に対する答弁書

一について
  政府としては、昭和四十九年十二月に政府が実施した「年号制度・国旗・国歌に
関する世論調査」(以下「昭和四十九年の政府の世論調査」という。)と御指摘の報
道各社が行った世論調査では、質問事項が同一ではないことなどから、単純に比較す
ることには問題があると考えるが、御指摘の調査のほか、他の新聞社の調査では、日
の丸は日本の国旗と思う者の比率は九十パーセントを超え、君が代は日本の国歌と思
う者の比率は八十パーセントを超えるという結果が出ている。
  いずれにせよ、最近の世論調査の結果は、日の丸及び君が代がそれぞれ我が国の
国旗及び国歌として、国民の間に広く定着していることを示しているものと考えてい
る。

二について
  政府としては、長年の慣行により、日の丸及び君が代がそれぞれ我が国の国旗及
び国歌として、国民の間に広く定着しているものと考えている。

三について
  政府としては、昭和四十九年の政府の世論調査の結果や、政府として国旗及び国
歌の法制化の検討に着手する旨を表明して以降報道各社で実施された国旗及び国歌に
関する世論調査の結果からも裏付けられるとおり、日の丸及び君が代がそれぞれ我が
国の国旗及び国歌として、国民の間に広く定着しているものと考えている。

四について
  政府としては、法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うことは考え
ていない。したがって、現行の運用に変更が生ずることとはならないものと考えてい
る。

五から七までについて
  学習指導要領は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)及び同法施行規則
(昭和二十二年文部省令第十一号)の規定の委任に基づいて教育課程の基準として文
部大臣が告示として定めるものであり、法規としての性質を有している。各学校は学
習指導要領に基づいて、教育課程を編成し実施する責務を負うものである。国旗及び
国歌の指導についても、各学校は学習指導要領の定めるところに基づき、児童生徒を
指導する責務を負うものである。

八について
  国旗及び国歌の法制化は、長年の慣行により、日の丸及び君が代がそれぞれ我が
国の国旗及び国歌として、国民の間に広く定着していることを踏まえ、成文法にその
根拠を明確に規定するために行うこととしたものであり、法制化に伴い、学習指導要
領に基づく、学校におけるこれまでの国旗及び国歌の指導に関する取扱いを変えるも
のではない。

九について
  八についてで述べたように、学習指導要領に基づく、学校におけるこれまでの国
旗及び国歌の指導に関する取扱いを変えるものではない。
 

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質問第二七号

  国旗国歌法制化に関する再質問主意書
 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
   平成十一年八月五日
                           福島瑞穂
    参議院議長 斉藤十朗殿
 

   国旗国歌法制化に関する再質問主意書

 国旗国歌の法制化について七月二一日に提出した質問主意書に対し、七月三〇日に
答弁書を受け取ったが、答弁はきわめて不十分な内容であり、中にはまったく答えら
れていない質問もあるので、以下再質問する。

一、七月三〇日答弁書によれば「政府としては、法制化に当たり、国旗の掲揚等に関
し義務付けを行うことは考えていない」としている。これは、何人であれ、政府や地
方自治体が主催する式典等で日の丸掲揚や君が代斉唱を求められても拒否する権利を
有しているという意味と理解してよいか。

二、政府が、この法案の法制化に当たって、日の丸掲揚や君が代斉唱を義務付けるこ
とを考えないとする理由は何か示されたい。

三、かりにこの法案が、日の丸掲揚や君が代斉唱を義務付けるものであった場合、憲
法第一九条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という規定に抵
触すると考えるが、この理解に間違いないか示されたい。

四、この法案成立後において、日の丸掲揚や君が代斉唱を強制する者があった場合、
その者の行為は憲法第一九条の規定に抵触する行為であると考えてよいか。

五、法案成立後に、実際に日の丸掲揚や君が代斉唱が求められる現場で、これを拒否
した人間が、式典等の主催者から退場させられたり、侮辱的な対応をされた場合、退
場をさせたり侮辱を行ったりした者に対する処罰等は運用上考えられているか。処罰
を考えていないとすれば、その理由は何か。

六、日の丸掲揚や君が代斉唱の義務付けは考えていないという政府答弁に反して、学
校現場では現在すでに日の丸掲揚、君が代斉唱の義務化、強制が事実上行われている
。この義務化と強制は学校教育法に基づく学習指導要領及び地方公務員法に基づく職
務命令によって行われているという理解でよいか。

七、学習指導要領について、政府は学習指導要領には学校現場における教育内容や式
典の行い方等詳細にわたってすべてを規定するほどの法的拘束力をもつと考えている
のか。

八、一九七六年五月二一日の最高裁大法廷判決及び一九九○年一月一八日の最高裁第
一小法廷判決における判断では、学習指導要領の法的拘束力については大綱的基準と
いう考え方をとっている。これに関連して、以下の四点について政府の見解を示され
たい。

@ 学習指導要領には法的拘束力を有する部分と、有しない部分があるという判断は
間違っていないか。
A 大綱的部分でなく、細かな部分については法的拘束力を持たない部分があるとい
う判断は間違っていないか。
B 学習指導要領は地域及び教師の自主的教育の余地を残しているという判断は間違
っていないか。
C 学習指導要領は教師に一方的な教育内容を強制するものではないという判断は間
違っていないか。

九、地方公務員法に規定されている職務命令について聞くが、職務命令が、憲法第一
九条が侵してはならないとしている「思想及び良心の自由」を侵すものであった場合
、それでも職員は職務命令に従わねばならないのか。

十、政府は日の丸掲揚、君が代斉唱をめぐる学校現場の混乱を収拾するために、国旗
及び国歌に関する法律案を提出したと何度も答弁している。政府の立場からは、この
混乱は、日の丸・君が代が国旗・国歌とは認められないという教職員や学生、家族等
の存在によって生じていることになる。では政府は、この法案が成立すれば、この人
たちの考え方が変わると考えているのか。

十一、この人たちの考えが変わらなければ、学校現場の混乱は解決しないし、対立と
亀裂はさらに大きく深くなり、教育の現場に及ぼす傷もますます大きくなると考えら
れるが、そうなってもこの法案提出には意味があったといえるのか。

十二、それとも政府は、この人たちの考えを強引に変えようとしているのか。

十三、もしそうであれば、「法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うこ
とは考えていない」という答弁も、「現行の運用に変更が生ずることとはならない」
という答弁も嘘ということになるがいかがか。

 右質問する。
 

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答弁書第二七号

  内閣参質一四五第二七号
    平成十一年八月十三日
                     内閣総理大臣 小渕恵三
     参議院議長 斉藤十朗殿

参議院議員福島瑞穂君提出国旗国歌法制化に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付
する。
 

   参議院議員福島瑞穂君提出国旗国歌法制化に関する再質問に対する答弁書

一について
  お尋ねの「日の丸掲揚や君が代斉唱を求められても拒否する権利」ということの
内容が不明確であり、仮定の上での答弁は差し控えさせていただくが、この国旗及び
国歌に関する法律(平成十一年法律第百二十七号。以下「本法律」という。)には、
国旗の掲揚等に関し義務付けを行うような規定は盛り込まれておらず、政府としては
、現行の運用に変更が生ずることとはならないものと考えている。

二について
  今回の法制化の趣旨は、長年の慣行により、それぞれ国旗及び国歌として国民の
間に広く定着している日章旗及び君が代について、その根拠を成文法で明確に規定す
るものであることから、国旗の掲揚等に関し義務付け等を行わないこととしたもので
ある。
  政府としては、法制化を契機に、国民の間に日章旗及び君が代がそれぞれ我が国
の国旗及び国歌としてより一層定着することを期待している。

三について
  本法律には、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うような規定は盛り込まれていな
い。御指摘の点が憲法第十九条に抵触するか否かについては、一概に結論づけること
はできない事柄であると考える。

四について
  御指摘の点は、本法律の成立いかんによって何ら左右されるものではない。いず
れにせよ、御指摘の点が憲法第十九条に抵触するか否かについては、個別具体的に判
断すべき事柄であり、一概に結論づけることはできないものと考える。

五について
  御指摘の点は、本法律の成立いかんによって何ら左右されるものではない。一般
的には式典等の主催者が、その趣旨を踏まえ円滑に式典等が行われるよう配慮するこ
とは、主催者の責務であり、それに協力しない者に対して必要な措置を採ることは、
当然認められると考えられるが、その対応が具体的処罰の対象となるかは個別具体的
に検討すべきものであり、一概に結論づけることはできないものと考える。

六について
  学習指導要領は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)及び同法施行規則
(昭和二十二年文部省令第十一号)の規定の委任に基づいて教育課程の基準として文
部大臣が告示として定めるものであり、法規としての性質を有している。各学校は学
習指導要領に基づいて、教育課程を編成し実施する責務を負うものである。国旗及び
国歌の指導についても、各学校は学習指導要領の定めるところに基づき、児童生徒を
指導する責務を負うものである。また、公立学校の教員は、公務員として、地方公務
員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)等の法令や上司の職務上の命令に従って職
務を遂行しなければならない。

七及び八について
  学習指導要領は、教育の機会均等と全国的な一定の水準の維持のために文部大臣
が定める教育課程の基準であり、学校における教育内容に関する全国的な大綱的基準
として、法規としての性質を有することは、伝習館高校事件最高裁判決(平成二年一
月十八日)においても明確にされているところである。
 なお、各学校は学習指導要領に基づいて、教育課程を編成し、実施する責務を負う
ものであり、具体的な指導に当たっては各学校において創意工夫を加えることが必要
である。

九について
  地方公務員法第三十二条に規定する職務上の命令については、重大かつ明白な瑕
疵(かし)がある場合、すなわち、当該職務上の命令が無効である場合を除き、職員
はこれに従わなければならないものと考える。

十から十二までについて
  今回の法制化の趣旨は二についてで述べたとおりであるが、成文法に根拠がない
ことをもって日章旗及び君が代を我が国の国旗及び国歌として認めない意見が国民の
一部にあることも事実であり、今回の法制化を契機に、国旗が日章旗であり国歌が君
が代であることが極めて明確になるものと考えられる。
  また、今回の法制化によって学校教育における国旗及び国歌に対する正しい理解
がさらに進むものと考えられるが、法制化によって学習指導要領に基づく国旗及び国
歌の指導に関する取扱いを変えるものではない。

十三について
  既に述べたとおり、今回の法制化の趣旨は、長年の慣行により、それぞれ国旗及
び国歌として国民の間に広く定着している日章旗及び君が代について、その根拠を成
文法で明確に規定するものであり、本法律において、国旗の掲揚等に関し義務付けを
行うような規定は盛り込んでいない。
  なお、学校教育における国旗及び国歌の取扱いについてはこれまでも述べたとお
りであり、政府としては、現行の運用に変更が生ずることとはならないと考えている

======================== ここまで ========================================
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