Date: Thu, 23 Sep 1999 23:00:44 +0900
From: Aoki Masahiko <btree@pop06.odn.ne.jp>
To: keystone M <keystone@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 1906] Re:  F16戦闘機炎上事故
MIME-Version: 1.0
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X-Sequence: keystone 1906
Precedence: bulk
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

On Tue, 21 Sep 1999 22:11:04 +0900
You wrote:

>           [aml 13995][keystone 1884] 北海道上の国町低空飛行 続報
>
> 確かに昨年七月に起きた三沢空港でのF16戦闘機炎上の事故報告書の地図の改撃(爆
> 撃)目標は小学校校舎そのものをさしてはいない。
>
> 文書の解釈はそれぞれあろうが、今回の政府の答弁は「暴言」
>
> 米軍三沢基地のF16戦闘機が、北海道の上の国町の大崎小学校周辺(大崎地区内約6
> 0世帯)を目標に模擬爆撃訓練を予定していた件について、防衛施設庁の西村市郎次長
> は17日、「(米軍の事故報告書に)『対地攻撃』ということばは出てくるが(小学校
> 周辺が)目標だったとは断定できない」「低空飛行の際は地上を確認しながら飛ぶ。飛
> 行ル−トの設定上、目標を置いたとも考えられる」

 この米軍報告書に掲載されている地図が、報告書を分析して公表した「リムピー
ス」のホームページ
http://www.rimpeace.or.jp/
にあります。

 高度経済成長の前までは、日本の田舎で空からでも目立つ立派な建物と言えば
お寺と学校だけでした。米軍の F-16は北朝鮮のダムや山岳地帯の対空ミサイル基
地を目標にして訓練を行っているのでしょう。低空飛行訓練の日本の山間部で
「実際」の目標に近いのはこの2つしかない。お寺は罰当たりだし(失敗墜落す
るとその場で埋葬してもらえる便利さはあるが−仏教でよければ−)、山寺はや
や小さい。小学校を「目標」にするのは、軍の立場からは自然だと思います。そ
もそも、みなさんお気づきのように日本ではだいたい軍事基地の隣には学校があ
ります。
 しかし「狙われる」側からすると物騒だしうるさい。暢気に君が代斉唱もでき
ない(何しろ巌が砕けてさざれ石になるような騒音ですから)。文部省は調査に
乗り出すべきでしょうが、外務省が立ちはだかるでしょう。どうしても米軍が止
めないと言うなら、訓練時には事前に学校(や教育委員会)に通報させて、「本
日は爆撃休校」という制度を認めるべきでしょう。
 
 「米軍は訓練ルートを明かすはずはない」としたり顔で言う先生もおられるで
しょうが、例えばイタリアでは今年から米軍はイタリア当局に対して、Webページ
で低空飛行機をリアルタイムで知らせることに合意している。この合意は、
http://www2.odn.ne.jp/btree/teiku/Itus.htm
で見てください。要するにホスト国が主権を行使する気概があるかどうかという
ことです。「安保堅持」のお題目も結構ですが、日本はむしろ特殊だということ
分かってますか?
 日本でも、当該自治体にパスワードを教えて米軍のホームページのある場所に
アクセスすれば低空飛行の状況が地図で確認できるようなシステムと合意を作る
ことは容易です。自治体の職員はインターネットで情報を得たらすぐに住民に警
報を流す。
「空襲警報!空襲警報!本日13時00分頃、北北東より米軍F/A-18 2機
高度 150mで当町に来襲のおそれあり。住民は直ちに家畜を固定し、防空壕に避難
せよ。消防団は所定の場所に非常待機せよ。繰り返す。米軍機来襲の・・・」
 まあ、こんな具合にやれば、騒音に驚いて木から落ちるなどの不慮の事故は少
なくなります。

>  ヒドラジンについては、災害対策担当軍曹が証言。
> 軍曹は事故後約5分で現場に到着。「ヒドラジン対策チ−ム」を指揮。
> 呼吸障害を起こさないように完全防備し、「ヒドラジン試験装置」でテスト。ヒドラジ
> ンが検出された場合は、アンモニアで中和するなどの対策が取られる。
 そして墜落に備えて、「ヒドラジン対策」の防毒マスクを各戸に配布しておく。
 あっさり米軍が訓練を中止してくれれば、こんなことに知恵を絞る必要はない
のですが、ジジコー支配の日本ではそれを言い出すのはタブーのようですので。
住民の命を守る一時避難的なアイデアです。

 それにしても日本にいるF-16は事故が多すぎるような気がします。空軍のホー
ムページある事故のカウンターは、墜落などの派手な事故だけですので全容はつ
かみにくい。これは、米国内の事故と比べると、日本で事故を起こしても外務省
などが庇ってくれるため、より責任を問われることが少ない。つまり甘やかされ
ているためにだらけて事故が多いのだろうと思っていましたが、それだけではな
さそうです。
 最近今年の5月に出された米GAO(会計監査院)の報告書
GAO
May 1999
MILITARY OPERATIONS
Impact of Operations Other Than War on the Services Varies
GAO/NSIAD-99-69
(Operations Other Than War(OOTW)というのは日本で言う「平和維持活動」です
が、この場合はボスニアやイラクへの派兵も含めています)
を見ていたら、OOTWに行った軍隊は士気や技量が低下する場合がある。空軍は特
にそうであるというというようなことが書いてあります。ご存じのように、三沢
からはF-16部隊がイラクの「飛行監視」に派遣されています。緊張感が乏しいフ
ライトでパイロットの技量が落ちるようです。この報告書に添えられている空軍
の評価表です。Homeの基地とSouthern Watch(三沢のF-16も派遣された)での訓
練内容の質の比較です。OOTWは明らかに「可」以下です。

Table 2: Comparison of the Quality of Training Opportunities at Squadrons Home
Station Versus in Operation Southern Watch for F-16 Pilots
a Training to this event in groups of four aircraft is a critical combat task.
Source: Air Combat Command.
Quality of Training Opportunities
Critical combat event    Home station  Southern Watch

Night precision weapon employment  Good   Poor
Medium-altitude employment   Good   Poor
Air strike control    Good   Poor
Four aircraft a air-to-ground employment Good   Limited
Four aircraft a air-to-air employment  Good   Limited
Tactical navigation    Good   Limited
Maverick missile employment   Good   Poor

 このGAO報告書は、
http://www.access.gpo.gov/su_docs/aces/aces160.shtml?/gao/index.html
から、検索IDのGAO/NSIAD-99-69を入力して手に入れてください。

 空軍によると(この報告書内で引用)パイロットがOOTWから戻って、技量を回
復するのに1から3ヶ月を要するそうです。イラクの上を飛んでフラストレーシ
ョンをためて(「ああ今日は息子の誕生日なのに俺はこんな砂漠の上にいる。オ
ドリャー爆弾でも落としたろか!」)、技量の低下したパイロットが、我々の頭
の上を低空飛行するというのは、やっぱりコワイことです。事故らないほうが不
思議。外務省はこのことを知ってる?

> 外務省では、飛行は、国際民間航空機関や国内の航空法に規定される最低高度水準を尊
> 重して行われたとの米国大使館から回答を得たとした。
 「高度水準」だけでなくパイロットの「水準」も調べないといけないのですが、
そういう意識はなさそう。
 

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   青木雅彦
 btree@pop06.odn.ne.jp
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