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Subject: [keystone 1904] コソボ/ウラン弾
Date: Wed, 22 Sep 1999 11:38:13 +0900
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仲田です。

コソボでの劣化ウラン調査の報告です。
別のMLに投稿されたものですが、藤田さんの了解をもらってあります。

9月18日午後3時より 慶応大学日吉第二校舎204番教室で、エントロピー学会
月例会でも、藤田さんのコソボ報告がありました。その概略を原発井戸端会議・神奈
川のミニコミ誌「I*do!」10月号に掲載します。
「I*do!」8月号には、藤田さんが敦賀二号炉の冷却水喪失事故について、報告
しています。
 
 

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8月21日から9月2日まで、コソボとセルビアの現状を見てきました。重要なボイン
トのみ緊急に報告します。(藤田祐幸)

(1)コソボでの放射線異常は検出されませんでした
 劣化ウラン弾が多量に打ち込まれたと言われているコソボ自治州で放射能測定を行い
ました。測定地点は州都プリシュチナ市内、周辺の農村地帯、激しい爆撃が繰り返され
た空港周辺、および、破壊された戦車の周辺および内部でした。
 我々は6台の破壊された戦車を見ましたが、地雷に対する安全が確保されていないた
め、4台の戦車のみ測定しました。
 放射線量(ガンマ線)はどこもバックグランドのレベルで,異常は検知されませんで
した。少なくとも村に戻った難民の子供たちに当面の被曝の恐れがないことを確認でき
たことは幸いなことでした。
 測定したのは極めて限定された地域で、全体の状況を把握したわけではありません。
戦車に命中したウラン弾は瞬時に燃え尽きて微細な粒子となって環境に拡散します。し
かし、命中しなかったウラン弾は不発弾として地中深く突き刺さったままでいるため現
状では放射能汚染になっていないためかと思われます。地中で腐食し環境に漏れ出てく
るには時間がかかるのではないかと思います。

(2)ヴィンチェの核科学研究所の爆撃は誤報でした
 セルビアのベオグラードの近郊にあるヴィンチェ核科学研究所が爆撃され、多量の放
射能が環境に放出された、あるいは、される恐れがあるという、マケドニア経由の情報
が一時流れました。しかし、同研究所は無傷でした。これも安心情報です。

(3)劣化ウラン弾の実物を見てきました
 上記ヴィンチェの研究所に、ユーゴ軍がコソボ自治州の境界付近のBujanovac で採取
したという二発の不発の劣化ウラン弾が保管されていました。弾丸の中心を貫く劣化ウ
ランは直系16ミリ、長さ96ミリ、重さ292 グラムの金属ウランで、サーベイメーターを
近づけたところ5マイクロシーベルト程度のガンマ線を出していました。ベータ線はも
っと強いということです。なお、通常値は0.07マイクロシーベルト程度ですので、百倍
弱というところでしょうか。

(4)パンチェボの恐るべき環境汚染
 ベオグラードの郊外のパンチェボにはバルカン最大にしてユーゴ唯一の石油コンビナ
ートがあります。NATO軍はこのコンビナートに集中的な空漠を行いました。その結
果、大量の化学物質が大気とダニューブ(ドナウ)川に流出しました。
 ここには大きく三つの施設があります。石油精製工場、石油化学工場、化学肥料工場
です。その全てが激しく破壊されました。石油精製工場は規制がかかり内部の視察はで
きませんでしたが、その他の二つの工場では工場長が状況を説明してくれました。流出
した化学物質は次の通りです。
  アンモニア           200トン 大気中およびダニューブ川へ
  水銀                8トン 土壌およびダニューブ川へ
  液体塩素             20トン 大気中へ
  VCM(塩化ビニールモノマー)1200トン 大気中へ
  EDC(二塩化エチレン)   1400トン ダニューブ川へ
  腐食剤(caustic)       3000トン ダニューブ川へ
  塩酸(33%)         800トン ダニューブ川へ
 以上が工場側が把握している化学物質のリストです。この量は、セベソやボパールの
事故に比較しても最大規模の化学災害になるのではないかと思います。しかもNATO
による人為的な環境災害です。工場長は僅かな爆弾で最大規模の化学戦争の実験を行っ
たとNATOを激しく非難していました。
 特に化学肥料工場の壊滅的打撃はユーゴの農業に決定的な打撃を与え、今後アメリカ
の穀物産業が、人道的援助の名目で潤うことになるのでしょうか。

(5)UNEPを信ずるな
 国連環境調査団(UNEP)のチームとベオグラードのホテルで出会いました。一週
間の調査を行うと言っておりましたが、我々がコソボで数日を過ごして戻るとすでに姿
はありませんでした。パンチェボの工場長にかれらは真面目な調査を行ったかと聞きま
すと、激しく首を振ってノンと答えました。UNEPの20人程の専門家は大勢のマス
コミを引き連れてやって来た。半日で帰って行った。工場側に対して資料の提供を求め
ることも、事情の説明を求めることななかった。9月中に報告書ができるということだ
が、何が書かれているか問題だ、とかれは話していました。
 チェルノブイリ事故後のIAEAの調査団や広島のABCCを思い起こさせるもので
す。かれらはNATO(もっとはっきり言えばアメリカ)の意を受けて最新兵器の効力
の調査を行っているのではないかと、私は思います。

 今回の調査の様子はTBSの報道特集(日曜日午後6時台)で放映されます。多分十
月になってからになると思います。日程が決まり次第報告します。
 なお、「環境と戦争・セルビア・コソボ最新報告」として
 9月18日午後3時より 慶応大学日吉第二校舎204番教室で、エントロピー学会
月例会として報告します。参加費500円です。
 10月11日には名古屋中京大学でも同様の報告を行います。これも詳細が決まり次
第掲載します。
 

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仲田博康
nakada_h@jca.apc.org



 
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