Date: Fri, 25 Jun 1999 20:16:43 +0900
From: Masahiko Aoki <btree@pop06.odn.ne.jp>
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Subject: [keystone 1601] 民主党「安全保障基本政策」
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 新聞報道などでご存じのとおり、民主党が昨日「安全保障基本政策」を公表し
ました。
http://www.dpj.or.jp/focus/focus05.html
で全文を読むことができます。
 何しろ、自民党に憧れている人から社会党時代を懐かしむ人まで同居している
党ですから、こういうイデオロギー問題をまとめるのは難航するというのは分か
るのですが、どうもはっきりしない部分が多すぎるのです。

 せっかくですので、ここでは私が特にこだわりたい2,3の点をあげて一部紹
介に代えたいと思います。

<憲法9条>
>憲法制定以後、第9条の解釈については国会や学界における論争において 様々な考
>え方が示された。しかし現時点において重要なことは半世紀にわたる国会の議論の
>結果、1. 外国から違法な侵害を受けた場合の個別的自衛権の行使まで放棄したも
>のでないこと  2. 現在の自衛隊が憲法違反の存在でないことの二点については、
>国民の大多数の間に定着した憲法認識となっているという事実である。
 「国民の大多数」は、自衛隊は憲法違反だが「やむを得ない」と考えているの
ではないでしょうか。問題はこの日本人の現状追認主義に政治が甘えていていい
のかということなのでは。

<有事法制>
 読売新聞などにバカ受けだったのがこの部分ですが、具体的にどういう事項を
指しているのか分からないのです。

>  3. 緊急事態法制

>自衛隊が出動するような緊急事態が発生した時の自衛隊出動にあたっての要
>件・手続については、自衛隊法が規定しているところであるが、出動した後の
>自衛隊の活動のルールについては、法律の規定がほとんど存在していない。現
>状のままでは、日本に対する直接侵略などの緊急事態において自衛隊の活動が
>円滑に行われないことで国民の生命・財産に対する侵害が拡大するか、また
>は、自衛隊が超法規的措置を取らざるを得ない可能性がある。このためあらか
>じめ緊急事態における法律関係について十分な議論を行い法制化しておくこと
>が重要である。具体的には、 1.緊急事態において、日本に対する武力攻撃
>などに効果的に対処できるようその活動の根拠を与えるとともに、 2.この
>ような緊急事態においても自衛隊などの活動が、シビリアン・コントロールの
>下にあり、国民に対する必要以上の権利制限とならないよう、国民の権利、と
>りわけ憲法上認められた基本的人権・表現の自由等を保障することである。

 防衛庁の「有事法制中間報告」でも法制は「ほぼ整備されている」という認識
なので、「出動した後の自衛隊の活動のルールについては、法律の規定がほとん
ど存在していない。」というのは例えばどこを問題にしているのか?「戦車も赤
信号で止まらないといけない」という防衛官僚でも失笑するあのバカ台詞ではな
いでしょうね。「具体的には」,以降が全然具体的でないので、単に有事立法を
制定しないとというムード作りにしかならない。
 当たり前のことですが、「有事」に完璧に対応できる法律なんてできっこない。
だいたい予想できないことが起こるのを「有事」というのですから。現行法でも
(例えば周辺事態法)基本的人権が冒される恐れがあるのですから、まずこれを
どう防ぐかから考えていく必要があるのでは。

<日米安保>

 民主党のこの文章には「日本の主体性」という口にするのも恥ずかしい節があ
り、
>従来の日米安保体制は重要な意思決定を米国に委ねるという点で、真の意味で
>の同盟関係とは言いにくい状況にあった。今後日本のとるべき態度は、日本の
>国益を十分に踏まえつつ米国との緊密な対話・協議を行う姿勢である。日米両
>国の国益は当然のことながら常に一致するとは限らない。
と言いつつ、すべてアメリカのイニシャティブで進められた周辺事態法について
は、
>さきに日米間で合意した新ガイドラインは、我が国の平和と安全を確保するた
>めに我が国の米軍に対する平素、日本有事、周辺事態における日米防衛協力に
>ついて定めており、民主党はその必要性を認識している。
となるのは何故?

 米軍基地については以下のように述べてあり、現代国語の要約問題として「筆
者の言いたいことを10字でまとめよ」と問われれば、「米軍基地は縮小する」
という答えになるのでしょうが、こんなに持って回った言い方になるのは、現代
の米軍基地の規模・態勢を適切なものと考えているかどうかということに答えよ
うとしないからです。

> 4. 米軍基地

>在日米軍基地の態様、規模については、不断の見直しが必要である。特に、戦
>後50年余が経過している今日、なお、沖縄に米軍基地が集中していて、多くの
>負担と犠牲を強いている状況にある。民主党は、沖縄の米軍基地の整理・縮小
>のため、国内外への移設を含め積極的に推進していく。SACO合意の目玉となっ
>ている普天間海兵隊基地については、沖縄県民の意見を十分に踏まえつつ、そ
>の移転について早急に結論を出すよう日米両国政府に働き掛けていく。さらに
>民主党は今後の米軍基地の整理縮小をより推進していく立場から、SACOIIの検
>討も必要と考える。
>
>将来、朝鮮半島情勢が安定した場合に、現在の在韓米軍の役割がその存続の是
>否も含めて大きく見直されることが予想され、その際に在日米軍を含めた東ア
>ジアの米軍の縮小・再配置が必要となろう。朝鮮半島安定後の極東における米
>軍のプレゼンスのあり方や、アジア太平洋地域の平和と安定を確保するための
>拠点として在日米軍基地をどのように位置付けるべきか中長期的な視点に立っ
>て基本的な検討が必要である。

 現在は日本の外務大臣すら、聞き覚えであっても「人間の安全保障」という概
念を口にする時代です。民主党は与党になりたいから「現実的」な政策を出した
つもりかもしれませんが、野党なんだからもっと広い視野でこの問題を考えて欲
しかったというのが個人的な感想です。
 繰り返しになりますが、有事立法制定には与野党そろって(自民党は署名集め
までやった)のコーラス(金切り声?)。ハモっているとは言えなくても主旋律
はそろっている。これは怖い。人間はいかに過去から学ばないかを学ばせてもら
ってる今日このごろです。
 

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     Masahiko Aoki
     青木雅彦
     btree@pop06.odn.ne.jp
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