Date: Sat, 10 Apr 1999 00:03:36 +0900
From: Masahiko Aoki <btree@pop11.odn.ne.jp>
To: aml@jca.ax.apc.org, keystone@jca.ax.apc.org
Subject: [keystone 1293] ユーゴ爆撃:DUは使われたのか?
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X-Sequence: keystone 1293
Precedence: bulk
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 ユーゴ空爆での劣化ウラン弾(DU)使用について、国防総省とユーゴ報道機関
との間に食い違いがあります。
 ペンタゴンは最新のニュースブリーフィングで問題のA-10攻撃機について以
下のように(ビデオを見せながら)説明しています。
http://www.defenselink.mil/news/Apr1999/t04081999_t0408asd.html

DoD News Briefing
Tuesday, April 8, 1999 - 2:35 p.m.
Captain Mike Doubleday, DASD PA
Also Participating;  Major General Charles F. Wald  and  Rear Admiral
Thomas R. Wilson of the Joint Staff

        Major General Wald:  This was yesterday.
        The next one will be an A-10 aircraft with a Maverick electro-
        optical guided missile on a bridge.  This was the day before
        yesterday.  It looks a little bit cloudy as you're coming in,
        hazy.  As it gets closer you'll see the bridge start to become
        more and more clear.
 つまり、A-10は通常弾頭のマーブリックミサイル(ミサイルについたカメラ
画像を見て誘導)を使っていると。この後もA-10の説明は出てきますが、当然
と言えば当然ですが、劣化ウラン弾を使っているとは一言も言っていません。

 しかし一方、
 Yugoslav state news media have referred to "radioactive bombs" being
 launched by NATO (report broadcast on MSNBC, April 1).
というニュースもあり、このユーゴのテレビ局(ラジオ局?)が4月1日に流
した「放射性爆弾」は劣化ウラン弾のことだという説もあります。このユーゴ
での放送についてご存じの方はおられるでしょうか。
 スコットランドのSunday Herald Glasgow紙の4月4日号はアメリカの環境
保護団体のUS Military Toxics Projectsの「トマホークは弾頭部分に重しと
してDUを使っている」という指摘を紹介しています。Military Toxics
Projectsのホームページは、
http://www.miltoxproj.org/
です。ただ現在のところコソボでのDU問題の報告はここにはありません。
 このProjectsなどがまとめたDUの資料集と報告" DU Case Narrative "の最
新版が、
http://www.miltoxproj.org/action/ducasenarr3.html
からPDFファイルとして(840Kb程度)ダウンロードできます。沖縄の劣化ウラ
ン弾「誤射」事件なども紹介されているDU問題の百科的なものです。
 

 ところでこの上記ニュースブリーフィングは、「周辺事態法」論議に見逃せ
ない論点がいくつか出ています。ユーゴ爆撃に関して日本に引き付けた報道が
ないので、ここでは2点だけ指摘しておきます。

◆後方支援について
 このブリーフィングで、軍の広報担当は、なぜベオグラードの橋や電話局を
攻撃するのかと聞かれて、これらは軍の重要なインフラだからと明快に答えて
います。確かに民間人だけでなく戦車も橋を渡る。コソボでの軍の動きを止め
るために「後方」の軍民共有の施設を攻撃する。実はこの攻撃、非戦闘員の保
護を定めたジュネーブ諸条約に違反する恐れ(アメリカは批准してない)があ
るのですが、軍事的な観点からは「常識」に属する行為です。
 日本では「戦闘行為の行われていない」地域での軍に対する協力は安全だと
か言って、米軍への後方支援や「後方地域支援」(新ガイドラインで登場した
日本独自の概念)を積極的に行おうとしているのですが、今回のベオグラード
爆撃の米軍の論理では、日本の橋やNTTが攻撃されてもしょうがないというこ
とです。日本の国道でも米軍基地をつないでいる「軍用」のものがありますし、
NTTの回線は米軍も使っているのですから。

◆米軍基地の使用について
 今回のユーゴ空爆でイタリアのAviano基地が最前線拠点として使われている
ことは報道されているのですが、それ以外にはNATO諸国のどの基地から出撃し
ているのか全く明らかにされていません。このブリーフィングにこんなやり取
りがあります。

        Q:      General Wald, I know we're not just operating from
        Aviano.  Could you tell us where else American flights are
        coming from?
        Major General Wald:  Right now I'm not going to talk about
        specific bed-down locations, but I will tell you it's obvious
        they're flying from not only Italy, but Europe as well and
        some other areas.
        Q:      Germany and Britain?
        Major General Wald:  Right.
        Q:      How about the newest NATO allies?  Is anybody flying
        out of Hungary?  The Czech Republic?
        Major General Wald:  We'll not talk about that at this time.

 聞かれても答えない。「新顔」のハンガリーやチェコの基地からも出ていっ
ているのかについては「現時点ではお話できない」。報復の対象になるなどを
恐れるからです。

 それに反してというか、これに比べると日本は開けっぴろげです。新ガイド
ラインでは、米軍基地はどうぞ御自由にお使いくださいというだけではなく、
民間や自治体も協力させる。いったん戦闘が始まれば、日本の米軍基地から出
撃していることは、これでは隠しようもない。
 

 この日本の「おおらかさ」が、絶対的な安心感、つまり当面の仮想敵である
「不審船」を派遣した某国には日本を攻撃する能力が全くないという確信から
出ていることは疑いないし、その読みは確かに間違っていないでしょう。しか
しいつまでも「弱いものいじめ」だけで国際社会を渡っていけるかどうかにつ
いては疑いがあります。

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     Masahiko Aoki
     青木雅彦
     btree@pop11.odn.ne.jp
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