Date: Wed, 31 Mar 1999 18:40:01 +0900
From: Masahiko Aoki <btree@pop11.odn.ne.jp>
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Subject: [keystone 1256] 自衛隊初の「海上警備行動」に抗議
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 以下の抗議文は、28日の横須賀での定例デモの際に横須賀基地に対して手渡
されたものということです。
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                 自衛隊初の「海上警備行動」に抗議する!

海上自衛隊自衛艦隊司令殿
横須賀地方総監殿

                                              非核市民宣言運動・ヨコスカ
                                                      月例デモ参加者一同
                                      横須賀市本町3ー14 山本ビル2階
                                                    TEL/FAX 0468-25-0157

                                                    1999年3月28日

◆海上自衛隊の「海上警備行動」の発令に抗議する

 能登半島沖の「不審船」に対し、3月24日、午前0時50分、自衛隊発足以
来初めての「海上警備行動」が発令されました。これにより、武器使用は海上保
安庁の巡視艇の20ミリ機銃から、海上自衛隊艦船に装備されている最大の艦砲
である5インチ砲での警告射撃と、対潜哨戒機P3Cによる150キロ爆弾の投下へ
とエスカレートしました。
 国会では「周辺事態法」の審議が開始されています。自衛隊関係者ですら「あ
まりにもタイミングがよすぎる」という今回の自衛隊の「実力行使」に、私達は
大きな危機感をもたざるを得ません。
 「海上警備行動」は横須賀の自衛艦隊司令部から発令されました。また自衛隊
地方総監部はこの件に関連して、新ガイドライン関連法の早期成立を強調する発
言を行っています。本日の月例デモの参加者として、私たちは両者に対し抗議の
文書を提出します。

◆不審船警備は保安庁の任務
 海上保安白書によれば、日本領海内で確認されている「不審船」は、この5年
間の平均では、1年間で454隻という数になります。こうした「不審船」に対
し、海上保安庁は「当該行動の中止を要求し、あるいは警告の上退去させるなど
の必要な措置を講じ」ると白書(99年版・73頁)は書きます。
 日常的に行われているこうした「不審船」への対応と比較すると、今回の日本
政府の対応には、政治的な意図を感じない訳にはいきません。巡視艇が攻撃され
た訳ではなく、確認されている違法性は、艦名の詐称と停船命令無視という今回
の「不審船」に対し、自衛隊が出動すること自体が、明らかな過剰反応と言わざ
るをえません。人命や財産の保護のために「特別な必要がある場合」にのみ実施
できる「海上警備行動」の要件すら満たしていないのです。

◆「深追いしない」ことの意味

 保安庁の能力では、高速の「不審船」に対応できないからこそ自衛隊が出動す
るのだと、政府は説明しますが、ここに大きな落とし穴があります。
 保安庁の「深追いしない」あるいは「力ずくで押さえこまない」という対応は、
起きた事態を、次のより深刻な段階に事態を持ち上げない賢明な選択なのです。
今回の追跡でも、最終段階で船舶そのものへの砲撃をためらわせたのは、そのこ
とによって新たな事態が生まれてしまうことへのおそれでした。このことの意味
を冷静に考えてください。
 自衛隊の実力行使は、起きた事態を、さらに抜きさしならぬ「脅威」へと拡大
するだけです。問題の本質的な解決にはなんの貢献もしないことを、私達ははっ
きりと伝えたいと思います。

◆外交努力こそが解決の道

 高速の「不審船」に、かってきままな行動をとられたままで良いのかという議
論があるでしょう。私達も、そうした状況を放置したままでいいとは考えていま
せん。しかし、それこそは、外交の仕事であるべきです。「不審船」が日本政府
が言うように北朝鮮の所属だとすれば、北朝鮮と国交がないという現実を直視す
ることに始まって、日本政府が外交レベルで取るべき手段はたくさんあるはずで
す。
 今回、日本政府はウラジオストックの日本領事館を通じて、ロシア国境警備局
太平洋地域管区司令部に「不審船」の追跡要請を行い、3隻のロシア警備艇が実
際に出動しました。ロシアがソ連を名乗っていたころ、海上自衛隊の仮想敵はソ
連の太平洋艦隊であったことを思い出してください。かつては仮想敵に位置した
ロシアの警備艇に政府は協力要請を行っているのです。このことが私達に教えて
いるのは、「脅威」は政治が作り出しているという事実です。ここに軍事が割り
込んで、どのような展望が描けるのでしょうか。

◆周辺事態法の条件作り

 「不審船」を追尾した護衛艦隊所属の護衛艦「みょうこう」と「はるな」は、
当初「たまたま訓練中で付近にいた」と説明されていました。しかし、実際には、
22日の午後3時に舞鶴基地を、舞鶴地方隊の「あぶくま」とともに出港してい
ます(3月27日・東京新聞)。統幕会議の情報本部のレーダー基地が「不審船」
からの電波をつかんでの出動でした。保安庁と自衛隊による「追撃劇」が始まる
前に、こうした準備時間があったことは、何を意味するでしょうか。
 早い段階から「不審船」の動きをつかんだ政府は、周辺事態法の成立するため
の環境整備のために、「不審船」を最大限に利用した、というのが私達の判断で
す。
 実際、自衛隊の現場からも、この機をとらえた発言が続いています。たとえば
坂部邦夫横須賀地方総監は「法案の早期成立と関連法の検証の必要性を強調」
(神奈川新聞3・26)し、自民党内からも「関連法の成立を急ぐ必要がある」
(山崎拓・衆院ガイドライン特別委員会委員長)と強硬発言が続いています。ま
さに政府にとっては「追風」(朝日・3・25)という状況が作られつつありま
す。
 しかし、こうした「力による解決」が、より大きな脅威を作り出し、解決を遠
ざけ、自衛官をより困難で危険な場所へ送り出すだけであることは、歴史的にも
明らかになっていることです。だからこそ私達は、一切の軍事力を持たない生き
方を選んだのです。
 韓国の中央日報(3・25)は「冷静に対応し、軍備拡大をしないように望む」
と書きました。金大中大統領はだからこそ、「太陽政策」をとっているのです。
自衛隊の軍事行動を許す訳にはいきません。
 海上自衛隊自衛艦隊司令の「海上警備行動」の発令と、横須賀地方総監部の関
連法案の成立発言に、かさねて抗議します。

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     Masahiko Aoki
     青木雅彦
     btree@pop11.odn.ne.jp
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