Date: Fri, 26 Mar 1999 11:15:00 +0900
From: 加賀谷いそみ  <QZF01055@nifty.ne.jp>
Subject: [keystone 1230] <周辺事態法案>愛媛県知事へ質問書
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         《愛媛からの報告》
         ◇報告者:玉ぐし勝訴記念集会実行委員会事務局
         ◇報告時:1999年3月26日
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 3月25日、玉ぐし勝訴記念集会実行委員会は、加戸守行(かと・もりゆき)愛媛
県知事に「周辺事態法に基づく愛媛県の『協力』に関する質問書」を提出しました。
安西賢誠(あんざい・けんじょう、愛媛玉串料違憲訴訟原告団長、真宗大谷派僧侶)
など同実行委員会のメンバー6名が県庁を訪れ、知事に面会を求めたところ、知事室
において直接、加戸知事に質問書を手渡すことができました。しかし、加戸知事は、
「外交・防衛は国の専管事項」という、議会での答弁と同様の発言をくりかえしまし
た。質問書は、文書での回答を4月15日までに求めており、訪問団はそう要求した
のですが、それについて知事の確約は得られませんでした。
 この行動については、「玉ぐし勝訴記念集会実行委 周辺事態法案で県に質問書提
出」と、4月26日付『愛媛新聞』紙上で紹介されました。

(玉ぐし勝訴記念集会実行委員会は、愛媛玉串料違憲訴訟の弁護団・原告・支援者で
構成されています。1997年4月2日に最高裁大法廷で勝訴判決を得たことを記念
し、判決の意義をくりかえし確認し、この国に「政教分離の原則」を定着させるため
に、毎年4月2日に記念集会を開催することを目的として、昨夏結成された市民グル
ープです。)
 

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 愛媛県知事 加戸 守行 様

      周辺事態法に基づく愛媛県の「協力」に関する質問書

 いま国会では、衆議院に「日米防衛協力のための指針に関する特別委員会(ガイド
ライン特別委員会)」が設置され、「周辺事態に際してわが国の平和及び安全を確保
するための措置に関する法案(周辺事態法案)」など3法案が、審議されています。
 

 「周辺事態法案」は、その第9条第1項で、「関係行政機関の長は、法令及び基本
計画に従い、地方公共団体の長に、その有する権限の行使について必要な協力を求め
ることができる」と規定し、また、同条第2項は、「国以外の者に対して、必要な協
力を依頼することができる」としています。これは「周辺事態」という「有事(戦時
)」に際し、地方自治体や民間(企業、住民)が、米軍の行なう戦争に協力させられ
ることを意味します。

 この点にかかわって政府は、本年2月3日付で、「周辺事態」の際、地方自治体や
民間に「求め、又は依頼する」米軍への協力例10項目を「政府文書」として策定し
、公表しました。(同「政府文書」を本質問書の末尾に添付します。)

 「政府文書」の文言には、抽象的で不鮮明な表現が多く、そのこと自体問題ですが
、「協力」の内容がそれら10項目に限られず、「事態ごとに異なる」と明記されて
いることは、さらに重大な問題です。3月18日の衆議院「ガイドライン特別委員会
」で、野田毅自治大臣は、さらなる協力例として「自治体の施設や土地の提供、貸与
も考えられる」と答弁しました。しかも「周辺事態法案」には、この「政府文書」の
内容は明記されず、「協力」の内容は政令で定めるとされていますから(第12条〔
政令への委任〕)、「協力」の内容は事実上、無限定・無制限なものになると考えら
れます。

 本年2月1日、衆議院予算委員会で、野呂田芳成防衛庁長官は、米軍への協力につ
いて「自治体の長は、一般的な協力義務としては、協力するのが当然」と答弁し、さ
らに管理者の判断に従わない地方公務員については「管理者が責任をとらせる」と答
えています。政府が自治体や民間に「求め、又は依頼する」協力なるものは、実は政
府による戦争協力の強要・強制にほかならないことを明らかにしています。このよう
な政府の姿勢は、日本国憲法第92条のいう「地方自治の本旨」に明らかに抵触し、
「地方自治の自立性」を踏みにじるものです。この国が非武装国家でありつづけるこ
とを原理として定めた日本国憲法の下に生きる私たちは、いかなる戦争協力も拒否す
ることを保障されており、それはまた、そのような住民によって構成されている地方
自治体にとっても同じことです。
 

 1997年6月、日米両政府が「ガイドライン(日米防衛協力のための指針)見直
しに関する中間報告」を出したときにはすでに、在日米軍が要求している支援項目の
一つとして、松山港の使用があがっていることが報道されていました。それは、米海
軍が松山港で燃料を補給する、あるいは、同港のクレーンや埠頭などを使用するとい
うものでした(97年5月27日付『読売新聞』)。当然、住民の間に不安や反発が
広がりましたが、今日に至るも、港湾の管理責任者である県知事からは何の説明もあ
りません。

 さらに、今年2月23日付『朝日新聞』は、94年、朝鮮半島での緊張が高まった
とき、米軍が松山港の使用を日本政府に要望していたことを伝えました。それは第二
次朝鮮戦争の勃発を想定した上での動きでした。「周辺有事」の際、米国政府が行な
う戦争に、愛媛県民がいやおうなく協力させられることを、現実の問題として生々し
く痛感させられ、県民は大きな衝撃を受けました。そのような事態が県民の安全や経
済活動に深刻な影響を及ぼすと予想されるため、疑問、不安、憂慮、反発の声がいっ
そう高まっています。県民の生活と安全を守ることに責務を負う県は、ただちに政府
に正確で詳細な情報を求め、県民に対し具体的な説明を行なうべきですが、やはり、
そのような動きはまったくなされていません。これでは、戦争への不安と県に対する
不信が広がるばかりです。
 

 本県には、米軍基地はありませんが、米軍機の低空飛行訓練のルート下にあります
。米軍機の低空飛行訓練は騒音をまき散らし、県民の生活を脅かしていますが、問題
はそれだけではありません。米軍機の訓練中の事故も後を絶たず、1988年6月2
5日には、米海兵隊普天間基地所属の大型ヘリコプターが、伊方原子力発電所から約
1キロの地点へ墜落し乗員7人が死亡するという事故が起きました。また1994年
10月14日には、岩国基地へ向かう米軍機の高知県早明浦ダム上流への墜落事故な
どが発生しました。当時の伊賀貞雪県知事が外務省に対し、「原発上空飛行禁止と、
低空飛行訓練中止の米軍への働きかけ」を要請したのは、当然のことですが、低空飛
行訓練はなおつづいています。

 松山空港については、在日米軍岩国海兵隊航空基地が、同空港への進入管制権をも
っているため、愛媛県は運輸省に対して進入管制権の返還を要望しています。しかし
、その要望は実現しておらず、愛媛県が安全な運航のために十分な対策を講じてきた
とはいえません。

 県民はこのような現状を深く憂慮してきたのですから、この度、政府が自治体や民
間に具体的な戦争協力を求めてきたことに対し、いよいよ不安をつのらせるのは当然
です。
 

 「周辺事態法案」による戦争協力は、県民の生活を戦時体制下に組み込むことであ
り、それが、重大で深刻な影響を県民生活に及ぼすことは、いうまでもありません。
同法案は、それ自体が憲法第九条に違反するものであり、私たちは、県民はもちろん
愛媛県も戦争協力は断じてなすべきではないと考えます。

 そのような思いに立脚して、以下の質問と要求を提出いたします。是非ともこの質
問書に対して、4月15日(木曜日)までに、文書にて回答を提示されますよう強く
要望いたします。

                               
                     
               質問と要求

1.2月3日付で策定された「政府文書」は、「周辺事態」に際し、政府が自治体の
長に対して、自治体が管理する港湾の米軍による使用を「求める」としています。ま
た米海軍は松山港の使用を要求していると報道されています。政府による自治体への
協力「要請(求める)」がきわめて強権的・強圧的であることは、すでに指摘したと
ころですが、「周辺事態法案」に対する全国の各自治体の反発が顕著であることから
、政府は、小淵首相を初めとして、今国会で「自治体協力は強制するものではなく、
拒否した場合、制裁的な措置がとられることはない」と繰り返し答弁しています。強
制の法的根拠はどこにも存在しないのです。
 とするなら、自治体は「地方自治の本旨」(憲法92条)に基づき、「地方公共の
秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持する」ため(地方自治法
第2条第3項・1)、政府の協力「要請」を正々堂々と拒否することができるのです
。その重い事実を前提としてうかがいます。
 愛媛県が松山港の使用を求められた場合、県はそれを拒否しますか、受け入れます
か。受け入れるとするなら、その理由は何ですか。

2.米海軍による松山港の使用が、漁業、船舶会社、港湾関係者、同港付近の住民の
生活にどのような影響を与えるか、県は調査していますか。すでに調査しているなら
、その結果を明らかにしてください。まだの場合、県として早急な調査を行なう意思
があるかどうかお答えください。

3.米軍艦が寄港する場合、乗組員である米軍兵士が、松山市などを休養地とする事
態も想定されます。その場合、米軍兵士によって事故や犯罪が起こされる危険性があ
ることは、これまでの幾多の事例が明らかにしています。しかも過去の事例は、その
ような場合、被害者に不利な状況が生じることを示しています。そうした事態を、県
はどのように考えていますか。

4.米軍艦は、最近、各地の民間港湾に「親善」あるいは「補給」を名目として入港
していますが、米軍艦が松山港など県内の港に入港を求める場合、県はそれを拒否し
ますか、受け入れますか。受け入れるなら、その理由は何ですか。

5.「政府文書」は、「周辺事態」に際して、政府が自治体の長に、自治体が管理す
る空港の施設の米軍による使用を「求める」としています。松山港に隣接する松山空
港は、在日米軍岩国基地の補助空港として使用される可能性があると考えられます。
空港の使用を求められた場合、県はどう対応するのでしょうか。明確にお答えくださ
い。

6.愛媛県は、1988年3月に、非核三原則の堅持を誓った「非核平和県宣言」を
発しています。米軍艦は核登載の有無を明らかにしないのですから、県が寄港を拒否
することは当然のことだと思いますが、拒否の意思があるかどうか、明確にお答えく
ださい。

7.「政府文書」は、「建物、設備などの安全を確保するための許認可」を協力項目
例としてあげています。「政府文書」のいう「建物、設備」とは、愛媛県の場合、具
体的に何を指すとお考えでしょうか。

8.「政府文書」は、「地方公共団体に依頼する協力項目例」として、「人員及び物
資の輸送」をあげています。政府は国会で、そこでいう人員・物資に、武装した米兵
や武器・弾薬が含まれると答弁していますが、そのような輸送への協力は、明らかに
兵站支援活動であり、軍事行動の一環です。県としては拒否するのが当然と思います
が、この点についてどうお考えでしょうか。

9.「政府文書」は、「公立病院への患者の受け入れ」を協力項目例としてあげてい
ます。県は県立病院に負傷米兵を受け入れるのでしょうか、拒否するのでしょうか。
県立病院は県民の健康な生活を保障する重要な施設であり、そこに米兵を受け入れる
ことによって、一般人の患者の受け入れを拒否したり、すでに入院治療中の患者を追
い出したりという事態もありえます。県としての対応を明確にしてください。

10.「周辺事態法案」を撤回するよう政府に求めることが、いまこそ求められていま
す。地方自治をにない、それに責任を負う県民として、私たちは、愛媛県が国に対し
て鮮明な同法案の撤回要求を行なうことを求めます。さらに、日本国憲法のもと国際
平和を希求する私たち県民は、戦争を行なうための準備ではなく、近隣諸国との友好
を深め、戦争が起こるのを未然に防ぐための努力をこそなすべきと、愛媛県が国に対
し、提言することを求めます。
 この点について県の意思を明確にしてください。
     1999年3月25日

                  「玉ぐし勝訴記念集会」実行委員会

 安西 賢誠・西嶋 吉光・東   俊一・奥村 悦夫・水口  晃・
  萩野 美枝子・中川 創太・山崎 幾右衛門・臼井  満・山田 新太郎・
 高田 義之・作田 和夫・今川 正章・松尾 幸弘・草薙 順一・
  田中 慈照・薦田 伸夫・奥田 恭子

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        《資料》 政府文書(文中の法案は「周辺事態法案」)

  国が国以外の者に対して求め、または依頼する協力の内容については、事態ごとに
異なるものであり、あらかじめ具体的に確定される性格のものではなく、以下のもの
に限られないが、例えば次のような例が想定される。

    1 地方公共団体の長に対して求める協力項目例(法案第9条第1項)

     ○地方公共団体の管理する港湾の施設の使用
     ○地方公共団体の管理する空港の施設の使用
     ○建物、設備などの安全を確保するための許認可

    2 国以外の者に対して依頼する協力項目例(法案第9条第2項)

     (1)民間に対して依頼する協力項目例
     ○人員及び物資の輸送に関する民間運送事業者の協力
     ○廃棄物の処理に関する関係事業者の協力
     ○民間病院への患者の受け入れ
     ○民間企業の有する物品、施設の貸与

     (2)地方公共団体に対して依頼する協力項目例
     ○人員及び物資の輸送に関する地方公共団体の協力
     ○地方公共団体による給水
     ○公立病院への患者の受け入れ



 
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