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Date: Mon, 15 Mar 1999 10:39:04 +0900
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From: "M.Shimakawa" <mshmkw@tama.or.jp>
Subject: [keystone 1182] 「インターネットが市民運動を変える」ACT原稿
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 島川です。

 『ACTー市民の政治ー』92号(アクト新聞社)に短い文章を書きました。
  私が原稿に付したタイトルは「市民運動とインターネット」でしたが、印刷
 されたものでは、編集部により何かたいそうな題になっています。(^^)

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 21世紀ー情報文化時代
 インターネットが市民運動を変える

                          島 川 雅 史

  ここ数年のインターネットの普及には目覚しいものがある。大手企業や大学では
すでに基本的なインフラとなっており、大きな組織に属さない個人でも、全国に設
立されたプロバイダ(インターネット接続会社)やそのアクセスポイントに電話を
つなぐことによって、手軽にインターネットの世界へ参加することができるように
なっている。インターネットというメディアは、「新しいものブーム」という段階
を過ぎて、いかにこれを着実に使いこなすかという、内容の展開が問われる時代を
迎えている。

  市民運動の場面でも、インターネットは様々に使われている。市民運動が、行政
補完的な官製ボランティアではなく、権力批判的な指向性を持つものであるとすれ
ば、インターネットはまさに運動に適したメディアである。古来、メディアは政治
権力や社会経済的支配層が占有するものであった。情報化社会といわれる現代にあっ
ても、マスメディアというものは資金面ひとつを取っても経済的・社会的な支配の
側のみが設立し得るものであり、テレビ電波の許可制など政治権力とのつながりも
深い。これに対抗する側では、情報伝達においてはミニコミという名の紙の媒体に
頼るところが大きかったわけである。

 さまざまな運動体の発行するミニコミは、オルタナティブの側の運動と「対抗文
化」の形成に大きな役割を果たしてきたが、頁数や部数という数量的・資金的な限
界は、運動と対抗文化の広がりにとって、先ず制約となるものであった。また、多
種類少部数というミニコミの性格は、異なる分野ではもちろんのこと、同一のイッ
シューを追及する運動の内部でも、隣は何する人ぞという類の、コミュニケーショ
ンの困難をもたらすことにつながっていた。地域の遠隔という要素が入れば、この
困難には更に大きなものがあった。

  インターネットというメディアは、この種の閉塞・閉鎖性を一気に打開する可能
性を持つものであった。核戦争時の被害対策として構想されたインターネットは、
独立した各単位を結ぶ分散型の「ネットワーク」をその特質とするものである。こ
こに、地域を越え、国境をさえ越えて、それぞれの運動情報・ミニコミをつなぎ大
きな情報ネットワークを形成することが、容易に実現し得ることになった。

 インターネット発祥の国アメリカでは、このシステムの構想者の意図を超えて、
「対抗文化」の側での利用とネットワークの形成が進められた。それは、少ない資
金と労力でそれぞれの運動を有機的に結ぶためには、インターネットが最適の手段
であったからである。電子メールは世界規模での双方向のコミュニケーションを可
能にし、加入者への一斉同報機能であるメーリングリストを使えばリアルタイムの
情報交換や全員討議が可能になった。電子会議室に蓄積された情報は拠点相互に転
送されて「情報の共有」を促進した。WWWという方式が生まれてからは、ホームペー
ジでの情報発信と相互リンクがより容易な手段として広まり、運動のネットワーク
も拡大している。

  アメリカでは、さまざまなイッシューの運動が、平和運動のPeace-Netや環境運動
のEco-Net、女性運動のWomen'sNetなどに結集し、それがまたIGCという大きなネッ
トワークの構成要素となっている。さらに、IGCはイギリスのGreenNetをはじめ世界
63カ国の運動をネットワークするAPC(Association for Progressive Communications)
の構成単位となっている。

 日本においても、1997年にAPCの日本ノード設立を目指して運動体や個人の出資に
よってJCA-NETが設立され、現在は市民運動の日本における一大通信拠点となってい
る。日本におけるメーリングリストやホームページ活用の具体例、またAPCネットワー
クなどについては、筆者も参加した小倉利丸・栗原幸夫編『市民運動のためのイン
ターネット』[社会評論社]や民衆のメディア連絡会編『市民メディア入門』[創風社
出版]を、またJCA-NETについては安田幸弘『市民インターネット入門』[岩波ブック
レット]を参照していただければ幸いである。

  ※JCA-NETはパソコン教室やホームページ教室も開催している。
   JCA-NET事務局
    Tel 03-3291-2875
    E_mail office@jca.ax.apc.org
    URL http://www.jca.ax.apc.org/
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                                    島川雅史  mshmkw@tama.or.jp
                                               mshmkw@jca.ax.apc.org
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