Date: Wed, 28 Oct 1998 15:33:00 +0900
From: 加賀谷いそみ  <QZF01055@nifty.ne.jp>
Subject: [keystone 766] <三沢基地>飛行訓練再開容認
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これは、パロディではありません。
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機体がボロいから事故ったんじゃないかという話もありましたが(確かに新しいのを配
備したがってはいる)

三沢基地が飛行訓練再開/鈴木重令市長が容認

 航空自衛隊三沢基地の航空機事故が相次いでいる問題で、防衛庁の大越康弘運用局長
、航空幕僚監部の大串康夫副長らは26日、三沢市役所を訪れ、市と市議会に原因究明
の中間報告を行い、現在中止している第三航空団の飛行訓練再開に理解を求めました。
 防衛庁側からの原因究明の中間報告(非公開)によると、F4については高度約10
00メートルを飛行中に機影が消失したこと以外、調査中で明らかにされなかった。当
日のF1は2機編隊で、教官機が後方から追っていた。夜間に艦隊を攻撃することを想
定し、敵に気付かれないよう150メートルの低空を飛行。2機は前後斜めに接近して
おり、攻撃後は斜め上空に旋回した。その際接触した可能性があるため、空自側は再度
同じ状況でF1を飛行させ検証する方針。

 鈴木重令市長は「(防衛庁側の対応に)100パーセント満足ではない。市民、県民
に対する最低限のことだが、責任ある立場の人が来た。」などとして、F4EJ改戦闘
機の墜落後、半月以上飛行訓練を中止していることから「訓練をしないことで同様の事
故が起きる恐れもある。(再開に)やぶさかではない」と容認する考えを伝え、一度に
全機でなく、段階的な飛行再開を要請しました。
                 (河北新報 1998年10月27日火曜日 より)
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低空飛行について秋田県の軍事評論家、佐藤裕二さんの解説です。

◇なぜ低空をとぶのか

 第二次大戦後、科学技術の進歩、とくに電子技術、自動制御技術やロケット技術の進
歩によって、対空レ−ダ−・システムや対空攻撃兵器は著しい発達をし、高精度、高速
、長射程のパトリオット・地対空ミサイル(SAM)や一人で操作できる携帯用赤外線
追尾ミサイル・ステンガ−なども開発され、もはや高空でも低空でも安全には飛べない
状況になってきた。
 また、レ−ダ−に補そくされないように低空を飛んでも、低空ではやはりSAMの餌
食になるので、山間部では谷間を縫うように飛行し、平野部では超低空を高速蛇行飛行
をせねばならない。

 爆撃機も低空で高速飛行ができ、レ−ダ−に探知されないステルス性をもったB−1
やB−2が開発されたし、湾岸戦争では緒戦で夜間飛行可能なステルス攻撃機F−11
7が活躍した。
 また、中東その他の紛争地域のTV実況中継で、しばしば攻撃機が後方に花火のよう
なものを放出しながら飛ぶ模様がTVで見られるが、これはフレア−と言い、ジェット
機の高温の排気ガスを狙う赤外線追尾ミサイルの「おとり」である。F−16も30発
のフレア−を搭載できる。あるいは逆に、先手を打って出来るだけ低空を高速で飛びな
がら、これらのレ−ダ−や地上のSAMを攻撃目標とする訓練を行っている。

 元三沢司令官のロ−バ−大佐は「低空飛行の攻撃目標は、あとで演習の評価ができる
ように橋やレ−ダ−サイトであった」と述べ、単なる低空飛行訓練ではなく、低空攻撃
訓練飛行であることを認めているが、彼の言う目標の橋やレ−ダ−基地は、SAM陣地
を制圧した後のことで、それらの目標に到達する前に地上に隠れたSAMにやられる可
能性が大きい。だから三沢のF−16の低空飛行の主要目的はSAMで、いわば後続攻
撃部隊「露払い」が任務の一つであろう。

 三沢米軍の基地新聞「ノ−ザンライト」に、帰投したF16からビデオカメラを取り

す写真が載っていたが、多分出発前に航空写真でとった小さな板の目標を設定して、そ
れをガンカメラで攻撃し、あとでそれを評価するのであろう。
 北海道でもしばしば小さなサイロめがけて米軍機が急降下するのを見たという話があ
ったが、低空飛行の目標は上空からは見えにくい、神社の鳥居や個人の住宅の車庫とか
、とんでもないものが目標になっているのかもしれない。

 なお、低空飛行は高空と異なり燃料消費率が高い。1万メ−トルの高空では毎時約1
トンの燃料しか食わないが、高速での低空飛行では、毎時3トンの燃料を消費するとい
われる。F−16の胴体タンクの燃料は約3トン、両翼のバイロンに取り付ける補助タ
ンクはそれぞれ約1トン。したがって、低空飛行だけの場合は、せいぜい1時間半位し
か飛べない。

◇なぜ低空飛行訓練をやめないのか

 低空飛行は事故が多く、しかも死亡事故が多い。時速700キロ以上の高速で起状の
ある地形を高度300メ−トル位で飛行するのは、容易なことではない。三沢の航空自
衛隊二宮司令官は「飛行訓練は、常時継続しないと技量が低下し、かえって危険性が増
す。飛行することが安全確保のために重要だ。」といっており、また三沢の支援戦闘機
F1のパイロットは「100メ−トルの低空を700〜800キロの高速で、しかも山
を避けながら飛ぶ。車を時速200キロで飛ばす感覚。神経集中が必要。この感覚は1
週間も操縦桿を握らないと狂ってしまう。」(91年5月25日東奥日報)と述べてい
る。
 それは、秋田方面に低空飛行をしてきたF16がようやく日本海に出たときのかれら
の行動をみると良くわかる。いきなり2千メ−トル位まで急上昇したり、急反転したり
、男鹿レ−ダ−基地に向け急降下してみたり、狂ったような飛び方をした後、さっさと
三沢に引き返す。まさに20分の超緊張から解放された彼らの姿をみることが出来る。

 このように低空飛行は危険だから、天気の悪い時、低空に雲が少しでもある時は絶対
行わない。
 低空飛行時の安全のために、統合低高度警報システム(LAWS)や赤外線前方監視
装置、地形追従レ−ダ−などからなるランタ−ン・システムなどが装備されたとしても
、超低空では地形起状に対する即応性に問題があり、また低空で人間がそれらを操作せ
ねばならず、それが操縦ミスにつながる事故も多い。
結局低空を高速で安全に飛ぶには、人間の目と操縦桿を握る手の微妙な操作(一種の勘
)に頼るほかはない。

 以上からパイロットの「勘」を維持するために、低空飛行の訓練はF−16にとって
欠くことの出来ない訓練の一つであることが分かるであろう。だから、その訓練の中止
を求める事は、F16の存在意義を認めないということに通じる。

 このことは、ちょうど空母艦載機にNLP(夜間着陸訓練)に対する中止要求と同じ
である。空母への着艦は、時速約250キロの艦載機が、3、5度(陸上飛行場では2
、5度)の角度で進入し、甲板上に約12メ−トル間隔に張られた4本のワイアに、機
体後部に下げたフックを引っ掛け、2秒間で停止するという手順だが、夜間悪天候の時
、数メ−トルも揺れる空母に着陸するのは容易なことではない。しかも操作はすべてパ
イロットの感でやるしかない。

 だから空母が港に入って、空母への離発着が出来なくなっても、陸上の滑走路を空母
の飛行甲板に見立ててNLPを欠かすことができない。海軍の規定で40分のNLPを
4回こなさないと、空母にもどれない事になっている。
 NLPを止めることは、空母にとってその存在を否定されることを意味する。ちなみ
に空母が一日訓練を休むと1億円以上の運用費をフイにすることになる。

 以上のように軍事的にみれば、米軍がF−16の低空飛行や空母艦載機のNLPをや
めることは、日米安保があり、基地がある限り決してないであろう。

◇ 戦闘機に安全性を求める矛盾

 地上攻撃も行うF−16や自衛隊のF−4EJファントム、F−1のような戦闘機は
、低空飛行訓練は欠くことができない。低空飛行は操縦が危険なだけでなく、高空を飛
行している場合と違い、機体が故障しても判断や処理の時間がなく、故障即墜落となる

 三沢基地では、ここ数か月の間にF16のほか自衛隊の戦闘機F1、F4EJなど4
機が墜落、5人のパイロットが命を落としており、行政もマスコミも米軍、自衛隊に対
して安全確保を強く要求している。しかし、それによって米軍や自衛隊が安全に気をつ
け、危険な空中戦や低空飛行や夜間飛行の訓練などを止めるようなことはあり得ない。
なぜなら、米軍や自衛隊など軍にとっての安全とは、「空中戦で敵幾に撃ち落とされな
いという意味の安全」である。敵と遭遇した時の最も安全な対処は逃げることだろうが
、戦闘機は危険を冒して相手を撃ち落とすのが任務である。危険を回避したら自分が落
とされる。だから日常的な訓練も危険な条件で訓練を行わなければ訓練にならない。し
たがって、当然事故も多くなる。

 例えば、戦闘訓練状況で再出撃するさい、整備時間を半分で切り上げて飛び立つ、つ

り意識的に整備不完全で飛び立つ訓練も行っている。それに、戦闘機の設計思想は、安
全性を犠牲にした性能第一主義である。戦闘機はハ−ドの面でもソフトの面でも危険性
をはらんでいる。米軍は全世界で約2、000幾のF−16を運用しているが、これま
で232機(約13飛行隊)が墜落し、62人のパイロットが死亡、巻き添えをくって
36人が死亡している。

 しかし、私たちの要求は「住民にとっての安全」であり、軍の安全の考え方とは根本
的に相違がある。墜落事故によって直接被害を受ける可能性のある住民は、行政の軍に
対する安全要求によって、事故がなくなるような錯覚を起こしてはならない。戦闘機が
いるかぎり、事故は続くのである。


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