Date: Sun, 18 Oct 1998 22:42:00 +0900
From: 加賀谷いそみ <QZF01055@nifty.ne.jp>
Subject: [keystone 746] 男鹿レ−ダ−基地
To: aml@jca.ax.apc.org, keystone@jca.ax.apc.org
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 秋田県男鹿市には、バッジシステム(自動防空警戒管制組織)の一翼を担う航空自衛
隊男鹿レ−ダ−基地(空自第33警戒群加茂分屯地)があります。男鹿でいちばん高い
山の本山(715、2M)山頂には、短距離3次元レ−ダ−(J/FPSV、360度回転)
や奥尻レ−ダ−基地向けパラボラアンテナ(直径約10M)2基と、その峰続き1キロ
南の毛無山(645M)には、遠距離3次元レ−ダ−(J/FPSV、半固定・ウラジオス
トック方向向け)、三沢向け対流圏散乱波通信用パラボラアンテナ(直径約18M)2
基、対空送信アンテナ(19本[チャンネル]、内5本は米軍専用)を取り付けた高さ
約20Mの鉄塔があります。さらに南500M先には、対空受信アンテナ群を設置した
高さ約20Mの鉄塔と、佐渡レ−ダ−基地向けの直径約10Mのパラボラアンテナ2基
、県内向けパラボラアンテナ(秋田空港・航空自衛隊・救難隊向け・下部に隊舎向け)
が設置されている鉄塔があります。一時(95年)本山付近に敵のレ−ダ−攻撃ミサイ
ルをさけるためのギマン電波を出す模擬電波発射装置と思われる船舶用レ−ダ−が設置
されましたが、まもなく撤去されたとのことです。
 10月11日の日曜日、レ−ダ−基地の観察に行ってきました。空自の総隊演習が1
3日までの予定だったようですが、すでに撤収したらしく、何の気配もありませんでし
た。ふもとの「航空自衛隊」の表示から7キロ程先に隊舎(CMP)が見え、その先4
キロ程行くとNTTのアンテナがあります。その付近の本山と毛無山の分岐点に表示板
があって、本山方向を指してOPS(レ−ダ−運用)、毛無山を指してRX(レ−ダ−
情報通信:解析)・TX(送信)と記されています。そこから1キロ内に各施設があり
ます。
 道路はもともと林道でしたが、今は防衛庁も一緒に管理していて、そのせいか道路が
前より大分よく整備されています。でも、数年前から途中から車両止めがされるように
なって、それが行くたびに裾の方に下がってきていています。防衛庁と秋田県と男鹿市
の連名で、自衛隊施設の保全、車両による事故防止、男鹿国定公園の自然保護のためと
車両侵入禁止の理由が書いてあります。側溝が「自然にやさしい」V字溝になっていま
すが傾斜が急なので小動物には障害でしょう。車両は台数をセンサ−でカウントし、防
衛庁から委託されたらしい人が何人かで車のナンバ−をチェックしています。徒歩で行
くと道路の測量をしていました。自衛隊車や移動通信車のために舗装するのかもしれま
せん。途中、光ファイバ−ケ−ブルが埋められているマンホ−ルがいくつもありました
。今はわざわざ山に登らなくても、半地下に造った鉄筋コンクリ−ト2階建てといわれ
る局舎が隊舎内にあらたに造られ、そこに機器類をおき、それを光ファイバ−ケ−ブル
で隊舎内の運用局舎に結び、そこで一連のシステムを監視、操作ができるようになって
います。その大きさはわかりませんが、隊舎のそばにこの工事の際掘り出した土が、台
地のようになっていて、高さは3、4M程、広さは車が3〜40台以上はとめられるく
らいありますから、かなり大きいか、コンクリ−トの壁が厚いかだろうと想像しました

 鉄塔にはそれぞれ監視カメラと夜間照明とスピ−カ−がついていて、カメラが首をふ
りふり私たちを迎えてくれました。施設はフェンスで囲まれていますが、その内側には
数メ−トルおきにセンサ−がたてられていて侵入者を拒否していました。前に行ったと
きは車でついてきて、ああだこうだと言われましたが、その方が会話ができてまだ人間
味がありました(今回も車の追跡は感じましたが接触はありませんでした)。それぞれ
の施設に何人かは配置されているはずですが、人の姿が見えないハイテク施設は、SF
小説の宇宙管理都市のような不自然な静寂感があり、見えない威嚇を伴って不気味でし
た。
 工事の際の資材置場などに使われた空き地が何か所かありますが、その中には、銃座
もあるようです。93年に始まった新システム施設の換装工事が進行中に、基地防空隊
の配置計画が噂されました。同隊は三沢にはすでに配備・配置されており、訓練や有事
のさい男鹿にやってくるということで、昨年も予備自衛官と共に訓練に来たとのことで
す。同隊が来るとなれば、短SAM(短距離地対空ミサイル)や携帯用地対空ミサイル
、バルカン砲などの兵器も配備されるだろうと言われていました。この整備計画は東西
の冷戦構造が崩壊する前に計画されたとのことですので、武器の配備はされませんでし
たが、いつでも設置できる場所を用意だけはされているということでしょう。当時の司
令官は「対岸を含め大規模戦力を有する国は現実に存在する。戦力は行使能力を持ち、
一定の意思が伴うと威力となって恐怖を与える。われわれは威力が迫って来ることを常
に想定し、防御する上で負けない力を備えなければならない」と説明していました。今
その脅威を日本がまわりの諸国に与えようとしていることを、彼らは現在どう考えてい
るのか聞いてみたいです。 新世代レ−ダ−の建設が93年に完成してから続いていた
付属施設の工事も監視カメラを備えて終わったらしく、昨年から大きな変化はないよう
ですが、三沢基地向け送信所(半地下)の上の盛り土に3本、佐渡向け送受信施設付近
の地上に4本、アンテナが新しく取りつけられていて、その用途は不明です。
 男鹿レ−ダ−基地の自衛隊員は約200人から最終的には3分の1に削減され、所属
も警戒群から警戒隊に「格下げ」されるそうです。削減された隊員はAWACS要員と
して浜松に移されています。AWACSの司令官は米軍ではないかとも言われています
ので、日本の自衛隊は、将来「米軍所属日本部隊」てなことになるのかなあと自衛官の
身の行く末を思いました。
 レ−ダ−のある本山は男鹿でいちばん眺めのすばらしい所です。良質の山菜も豊富な
場所です。海からの冷風が、植性を豊かにし、貴重な植物もあります。私たちは、すい
かのいちばんおいしいところを防衛庁にがぶっと食べられたようなものです。基地の中
に三角点があって、「愛される自衛隊」では三角点を踏みたいという山の愛好家の要望
を快く承知したそうですが、本来ならそんな「許可」をもらわなくても自由に自然を満
喫できるはずなのです。武骨な危険施設がいつか撤去され、山が私たちの生活の中に戻
って来ることを夢見ています。武器を壊すための税金ならみんな喜んで納めるでしょう。
                     


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