Date: Fri, 28 Aug 1998 16:03:47 +0900 (JST)
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From: kameyama@agr.u-ryukyu.ac.jp (KAMEYAMA, Norikazu)
Subject: [keystone 579] Re: 共産党「安保廃棄を凍結」
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比嘉明子さん MLの皆さん  亀山統一です。
 先に、私の意見を述べた立場上、御返事を。なお、あくまでも、これらの意見は私
個人のもので、共産党さんの意見でも、私の所属する日本科学者会議沖縄支部の公的
意見でもありませんので、お断りします。

>>  国民に緊急の課題として選挙の時に提示して、選挙結果でも、その後の世論調査な
>> どの結果でも、国民多数の要求として支持された課題の実現に全力を尽くすのが、民
>> 主的な議会制度の道理ではないでしょうか。
>
> 民主的な議会制度なら安保の問題こそが緊急の課題だと
> いう気持ちなんです。

> 今回の選挙は、ようするに経済的な問題が争点になってて
> 安保は票にならないから争点にはならなかったんでしょう。
> それはわかります。
> むずかしいのもわかります。

 比嘉さんの言われるとおり、そこが今の日本の問題なのではないかと思います。
 民主的な議会制度と言いつつも、小選挙区制の下で、国民の意思と衆議院の議席配
置はかけ離れています。今回の選挙で、参議院は随分国民の意思分布に近づいた配置
にはなりました。それでも、現在、安保廃棄を求める勢力は、共産党の20数議席と、
島袋さんなどの一部の無所属議員に限られています。
 世論調査でも、安保がいらないのではないかとの意見が5割に達したこともありま
したが、現在では、3割前後の状態です。この下で、国会で安保破棄の勢力を過半数
にするような選挙結果が、今後急きょ現れることはないでしょう。
 私も、科学者運動や市民運動に参加するものとして、やはり、国民多数に、安保の
問題を緊急最重要の課題として理解してもらうような大きなねばり強い運動が必要に
なっていると感じます。
 そのような、さまざまな運動の成果と、国会の選挙結果が相俟って、世論の多数も
、国会の多数も「安保廃棄」を進めるようになったときに、初めてそれが実現できる
というのが、民主的な代議制の限界でもあるし、素晴らしい点でもあるのではないで
しょうか。
 こんご、そのような運動と選挙結果が実を結ぶ現実的な可能性ははっきりとありま
すし、そうしなければならないと思います。

 各党の公報やビラを読みなおしてみましたが、少なくとも、共産党やシマブクさん
は安保の問題を争点にし、政策に掲げていました。しかし、他の政党で安保破棄を言
う政党はなかったし、共産党が単独多数になっていない現状がありますし、恐らく次
の選挙でも、安保破棄の政党や無所属候補が直ちに過半数にはならないでしょう。
 そのとき、安保に関わる問題で要求を実現できなくとも、その他の重要課題で、大
同団結によって自民党政治の根本路線のひとつを変革できるのだとしたら、それに傾
注することは、国民に公約実現の責任を負う政党として重要な責務だと思います。

> 安保反対の思いをこめて共産党に投票した人は確実に失望し、
> 離れていくんではないでしょうか。

 それは、共産党さんの今後の活動次第ではないでしょうか。いま、どのような政党
の組み合わせでも、安保を廃棄するような政府を作ることはできないのが残念な現状
です。それでも、共産党も参加して消費税減税などを実現するために連合政権を作る
ことができたとすれば、経済や財政・福祉問題ではかなりの前進が、具体的に実現で
きるでしょう。
 しかも、そのような連合政権でも、与党である共産党が努力して、基地問題の解決
(海上基地の押しつけを止めさせるとか、安保や地位協定などを改正できなくとも、
それらを厳格に適用させれば、事前協議などを厳格に行わせる、日米合同委員会を民
主的に運営するなどによって、安保や地位協定にも違反している現状の基地自由使用
の実態とか思いやり予算とか、事件事故の被害者の正当な補償などが実現できること
になるでしょう。
 一方で、政党とは単に議会においてのみ活動するわけではありませんから、各地の
運動において、引き続き、基地や安保の問題のための取り組みを続けることはなんの
障害にもならないでしょう。実際これは当然続ける方針なのだそうですし。
 このような立場を共産党がとったとして、安保反対の思いを込めた人たちが、その
努力を評価するか、「転落した」と評価するかの問題なのだと思います。
 もちろん、共産党が政党として、安保容認の立場に変わるというのであれば、これ
は、いま彼らが提起した方針と全く異なってくるのですから、別の問題ですし、まあ
、解党は必至でしょうね。

> 「安保反対を凍結」というでっかい見出しが
> 各新聞をおどっていたことが、世の中にどれだけのインパクトを
> 与えたかが心配なんです。
> 今ここでわざわざこれをいう必要があったんでしょうか。

> これで、安保のおかげで基地をおしつけられる沖縄の問題が
> 「沖縄問題」に特殊化されて人々の関心が失われていかない
> ことを願います。

 一部の新聞では、これは意図的なのではと疑われるほど、『国民要求を実現する、
課題を明確にした連合政権に参加する場合、与党として政権においてめざす課題から
「安保廃棄を凍結」する』ということと、社民党のように、『党の政策として「安保
廃棄を凍結」する』ということが、混同されるような報道になっていたと思います。
 でも、新聞の報道態度を簡単に変えさせることはできないですし、新聞の事実を誤
解させかねない問題報道というのは、今回に始まったことではないと思います。

 その上で、今回の問題に戻ってひとつ補足すると、安保の問題というのは、他の問
題から独立した純粋軍事的問題(+そのための政治問題)ではないと言うことです。
 アメリカの世界戦略のために、日本を軍事的のみならず、政治的、経済的、財政的
にアメリカ政府の言いなりにさせることが、今のアメリカの基本戦略であって、その
ために安保があり、その安保を、今のアメリカの必要に対応させるために新ガイドラ
インを作ったわけですよね。
 その具体的な現れが、消費税増税や医療費負担の引き上げや、介護保険制度など、
福祉の切り捨て、大学民営化や学校教員の削減などの教育切り捨てなのではないでし
ょうか。これらは、国民に大変な負担を強いる、すこぶる評判の悪い政策ですが、自
民党がこれだけ議席を減らしてまで強行するのも、そこまでしてまで、別のことに予
算を使う必要があるからです。それは、アメリカの有事に全面協力(参戦まで)する
日本の軍事支出と、アメリカの要求する「経済の自由化」(金融ビックバンなど)に
対応するため+アメリカのバブルを支えるための銀行を中心とした大企業への税金注
入などです。
 その意味では、経済問題と安保の問題は深く結びついています。
 沖縄の問題は、客観的には決して特殊な地域的問題ではありませんし、沖縄対ヤマ
トという構図のみの問題でもありません。そして、現実に、国民多数が注目する、今
回の消費不況や大増税の問題と、安保の問題はこれだけ深く結びついているのですか
ら、私たちが、きちんとした運動を作っていくことができれば、沖縄の問題は、本土
の要求と結びついて、現在の政治課題の中心に位置づけられることは必然的です。
 そのようなもとで、自民党政治の経済政策を変革する政府を作ることができれば、
安保や沖縄の問題にも、大きな肯定的影響を与えることができることでしょう。
 
 

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日本科学者会議沖縄支部 事務局
亀山統一  kameyama@agr.u-ryukyu.ac.jp
phone&fax. 098-895-8794(琉大森林保護研直通)
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