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Date: Fri, 07 Aug 1998 23:03:52 +0900
To: keystone@jca.ax.apc.org
From: Masahiko Aoki <btree@pop1.osk.3web.ne.jp>
Subject: [keystone 523] Re: 劣化ウラン弾報告書(湾岸戦争)
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At 04:58 98/08/07 +0900, MARUYAMA K.さん wrote:
>  湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾に関する詳細な報告書が出ました。
>  The Office of the Special Assistant for Gulf War Illunesses(湾岸戦争症候
> 群特別援護局?)による中間報告。1998年7月31日付。目次を見て分かるよう
> に劣化ウラン弾に関する集大成のような資料で、図が44葉、文献が314、全部ダ
> ウンロードしたら10メガ以上になりました。さらに、文献から関連資料にリンクが
> 付いています。「戦争は最大の環境破壊」だということがよく分かります。
> http://www.gulflink.osd.mil/du/index.html
>
>  しかし、結論は次のように結ばれている。懲りない奴。
> The report's bottom-line conclusion, based on a comprehensive review of
> available data and a science-based methodology, is that exposures to DU's
> heavy metal (chemical) toxicity or low-level radiation are not a cause of
> the undiagnosed illnesses afflicting some Gulf War veterans.
> =================================================
> Environmental Exposure Report
> Depleted Uranium in the Gulf

 しかし実際には、この報告書をまとめるに当たってきちんと検査されたのは、戦車
の中にいてまともに友軍の劣化ウラン弾を食らった33人の兵士だけなんです。湾岸
症候群の患者は10万人ですから。
 それでも、ほんの2年くらい前までは、劣化ウラン弾の危険性を指摘する市民運動
を「単なるプロパガンダ」と呼んでいたペンタゴンが、ここまでの報告書を出さない
といけないほど追い詰められたのは、情報公開法FOIAを活用して丹念に劣化ウランの
害を取材して公表した市民運動の力が大きいです。

 しかしこの報告書は10Mですか・・政府が情報を隠すのには日本式とアメリカ式が
あり、前者はひたすら「そんな文書はない」と言い張る隠蔽型。後者は情報の洪水に
溺れさせて、肝心な情報を見えなくさせてしまう「過ぎたるは」型。私は報告書その
ものでなくそれに関する国防総省のリリースだけを見ましたが、
>No. 412-98
> (703)695-0192(media)
> IMMEDIATE RELEASE
> August 4, 1998
> (703)697-5737(public/industry)
> DOD RELEASES DEPLETED URANIUM ENVIRONMENTAL EXPOSURE REPORT
がこの報告の概要を説明しています。
 また湾岸戦争症候群調査委員会の最高責任者(肩書きSpecial Assistant for
 Gulf War Illnesses)のDr. Bernard D. Rostkerが記者会見(長い!)で質問に答
えていて、これは参考になります。
>DoD News Briefing
>Tuesday, August 4, 1998 - 1:30 p.m. (EDT)
 どちらも
http://www.defenselink.mil/news/
からすぐに検索できます。

 日本の新聞でこの報告書を伝えたのは毎日だけで、8月5日付け
><劣化ウラン弾>
>「有毒物質」と確認 戦場汚染も−−米国防総省
の記事です。これは毎日新聞のホームページの過去記事で読めます。

 上のBriefingでRostkerは、劣化ウラン弾は湾岸症候群の原因でないと強調してい
ます(それはそのはずで、もしそうなら賠償金だけで米軍が倒産してしまう)が、彼
が「エアロゾル状になって撒き散らされたウランの見積もりが多すぎる」と論争的に
挑んでいるのは、今年の3月に公表された米民間3団体(Military Toxics
 Project, Swords to Plowshares, National Gulf War Resource Center)の
Case Narrative   Depleted Uranium(DU) Exposures(Last Update:March 2,1998)
報告を念頭においているのでしょう。この報告書は、さながら劣化ウラン弾問題の百
科事典の観があります。これは主要な部分が
http://www.gulfweb.org/ngwrc/CaseDU/default.htm
で手に入ります。

 湾岸症候群の原因追求も大事なのですが、私が興味があるのは、日本の劣化ウラン
弾。一番身近なものは、米軍の艦船に標準搭載されているファランクス(機関砲)が
使うそれです。これが日本に撃ちこまれることは考えにくいのですが、あり得るのは
艦船の火災で撒き散らされること。
 私の知る限り、アメリカで色々出ている劣化ウラン弾の報告書は、ほとんどが陸軍
、つまり戦車が被弾した時のケースだけです。海軍の艦船の事故(または兵器庫の火
災)のシュミレーションの報告はあるのでしょうか。もしご存じの方は教えてくださ
い。

 先日今年の日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞奨励賞が、毎日新聞東京本社外信部の
一連の劣化ウラン弾問題の報道に対して送られました。これにケチを付けるつもりで
は全くないのですが、私は同紙のこの一連の記事をフォローしていて、日本の(在日
米軍)劣化ウラン弾がほとんど取り上げられなかったことに大いに不満でした。ヨコ
スカの浦郷弾薬庫や広島の秋月弾薬廠など、劣化ウラン弾が貯蔵されているのがほぼ
確実な基地へダメ元で突撃取材して欲しかったのですが。日本の報道機関は、刑事特
別法とかMSA秘密保護法とかを気にし過ぎているのでは。報道機関も法律は遵守しな
ければならないのですが、法治国家の一番の基本は憲法ですから、全てこれを基準に
取材してほしい。
 ところで上のJCJ奨励賞の受賞理由が「・・劣化ウランの毒性、危険性などを明ら
かにし、 一連の報道で米軍に劣化ウラン弾を沖縄撤去させ、・・」とあるのですが
、客観的にこれは事実なのでしょうか?
 

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      青木雅彦
      Masahiko Aoki
      btree@osk.3web.ne.jp
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