Date: Fri, 22 Jun 2001 01:45:52 +0900
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Subject: [keystone 4033] <千葉>教科用図書選定資料公開
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千葉県の取り組みを紹介します
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 千葉県では、6月6日に県教委から市町村教委に伝えられた「教科用図書選定資
料」が14日に公表されました。これはそれぞれの教科書を「内容」「組織・配
列」「表現」「造本」の各点からその特徴を記したものです。
 千葉県の「選定資料」はあらかじめ項目をたてておいて、それぞれの項目につ
いてすべての教科書の特徴を記述する形式になっていますが、「内容について」
という項目は、学習指導要領中の新しく挿入された内容から適当にかいつまんで
文章表現しています。
 その中の扶桑社版の教科書については、まず最初に「わが国の歴史に対する愛
情を深め、国民としての自覚を育てるように配慮している」と記述されていま
す。まさに「つくる会」が主張している内容をそのまま書き出したものであり、
県教委自らが憲法と教育基本法の理念を蔑ろにしている姿勢を表すものです。

 「子どもと教科書千葉ネット21」(千葉ネット)では6月20日、千葉県教委が
発した「教科用図書選定資料」への公開質問状を提出しました。
 扶桑社版にのみ「特徴的」だとしている「国に対する愛情」とは何なのでしょ
うか。県教委自らによって明らかにさせたいと思います。
 2月頃の産経新聞に、「県教育長が、教科書採択にあたっては、愛国心を基準
に採択すると語った」と報道されました。これについて問いただしたとき、県教
委指導課主幹は、学習指導要領の全文を読み上げて発言内容について釈明しまし
た。県教委では、6月13日の委員会議で「憲法と教育基本法の理念に基づいて教
科書の採択を行なうこと」を求めた請願を不採択にしています。千葉ネットで
は、県内のすべての市町村教委にも同趣旨の請願を提出しています。
 7月2日以降文書での回答があるそうです。公開質問状は初めてのことなの
で、その対応をいかにするかも含めて取り組みたいとのことです。

 また、5月末、千葉県総合教育センターが主催する公開講義の中に、「つくる
会」副会長の高橋史郎氏の講演が計画されていることが判明しました。高橋史郎
氏は、教育基本法「改正」を積極的に主張している「新しい教育基本法を求める
会」(会長・西沢潤一)の事務局長も務めています。石川県教委では6月に予定
していた研修会での高橋氏の講演について、別の講師に変更したとのことです。
しかし、同センター側は「つくる会」の幹部だったことを知らなかった、講演日
は8月28日で、採択を終了していることを理由に変更はしないとしてきました。
その後、朝日新聞の全国版に報道されたこともあり、市民や教育関係者から、抗
議や講師変更の申し入れの声が大きく寄せられています。それでも教科書問題に
は触れないこと、採択を終えていることを理由に変更はしないとの態度をとりつ
づけています。
 この件に関して、千葉県高教組が再三申し入れを行っていますが、さらに講師
変更を求める要求書の提出を予定しています。
                     子どもと教科書千葉ネット21
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                公開質問状
                        2001年6月20日
千葉県教育委員会教育長様
                      子どもと教科書千葉ネット21

「新しい歴史教科書をつくる会」が編集し、扶桑社が出版した教科書が国の内外
を問わず大きな注目を集めています。それは「政府の行為によって再び戦争の惨
禍が起こることのないようにすることを決意し」「いずれの国家も自国のことの
み専念して他国を無視してはならない」とした日本国憲法の理念を捨て去る内容
となっているからです。政府自身も、この間、教科書問題について、「近現代の
歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮」を定めた、いわ
ゆる「近隣諸国条項」を確定しています。しかし、扶桑社版教科書は、多くの修
正を加えて、検定を「合格」したとはいえ、教育基本法や「国際的公約」の精神
から大きく逸脱したものになっています。このことが国の内外に、大きな怒りを
呼び起こし、日本政府への批判や再修正の要求となって現れているのです。
 こうした状況の中にあっては、過日、県教育委員会が市町村教育委員会に発し
た「平成14年度使用教科用選定資料」には、大きな問題点が含まれていると指
摘せざるを得ません。そこで公開質問状を提出しますので、27日までに、文書
にてご回答ください。
 
              記

[1]歴史的分野について
1. 「内容について(1)教科への適合」では、他の教科書とは異なり、扶桑
社版教科書のみ「わが国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる
ように配慮している」と指摘しているのは何故ですか。理由を説明してくださ
い。
2. 上記1に該当する部分すべての文書表現および頁を具体的に示してくださ
い。
3. 「内容について (4)生徒への適合」では、扶桑社版教科書にのみ
「様々なエピソードをもとに人物を生き生きと描くことによって、歴史上の人物
への興味・関心が高まるように配慮している」と記述されています。どのような
歴史上の人物をどのように扱うかについては、学問上様々な議論があり、非常に
難しい問題です。なぜ「歴史上の人物への興味・関心が高まる」ことが、「発達
段階や興味・関心・能力に適合し、問題追求の能力、態度の育成に配慮」するこ
とになるのか、説明してください。
4. 「表現(1)発達段階への配慮 文章が平易で理解されやすく、記述の分
量が適切であるか」では、扶桑社版教科書について「文字が大きく読みやすい」
と記述されていますが、これがなぜ「文章が平易で理解されやす」くなるので
しょうか。むしろ扶桑社版教科書には「気韻生動」「八咫烏」等、「平易」とは
程遠い表現が多いと思われますが、このことについてどのように考えますか。

[2]公民的分野について
1.「内容について (1)教科への適合」では、他の教科書とは異なり、扶桑
社版教科書にのみ、「全般にわたって『公民』の意味が繰り返し記述されてお
り、国土と歴史に対する理解と愛情を深めるよう工夫されている」と指摘してい
るのは、何故ですか。理由を説明してください。また、該当する文章表現および
頁をすべて具体的に示してください。
2.「内容について (2)内容の精選、(3)時代への適合」では、扶桑社版
教科書について「時事的な課題を取り上げ」「今日的な課題について考えるよう
な学習」と記述されていますが、こうした課題として取り上げられている題材と
は何か、具体的にあげ、どういう観点から取り上げているのか説明してくださ
い。

以上

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<参考>教科用図書選定資料
【扶桑社】
内容
(1) わが国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てるように配
慮している。
(2) 近代史以前の世界史は日本史との関連を考慮して、また、現代史の一部
は公民的分野との関連において精選が図られている。
(3) 環境問題や人権問題等の今日的課題についての説明がある。
(4) 様々なエピソードをもとに人物を生き生きと描くことによって、歴史上
の人物への興味・関心が高まるように配慮している。
(5) 歴史への関心が高まるように、特設ページを設け地域の歴史調査の方法
が具体的に例示されている。
(6) 総合的な学習等で活用できるように課題の設定の仕方や学習方法が例示
されている。

組織・配列
(1) 説明的記述が多い構成となっている。人物史が重点的に扱われている。
(2) 近現代史を重視するとともに、人物学習を重点的に扱い、特に古代史に
おいては神話を扱っている。
(3) 自主的な学習を促すような調べ学習も示している。

表現
(1) 文字が大きく読みやすい。
(2) 資料は、カラーで見やすい。

造本
(1) 印刷が鮮明である。
(2) A5版、装丁、製本がしっかりしている。
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                        2001年6月22日
千葉県教育委員会教育長様
                      千葉県高等学校教職員組合
                      中央執行委員長 

        8月28日公開講義の講師変更についての要求書

 貴千葉県総合教育センターが主催する今年度の公開講義に、高橋史朗氏が講師
として参加されることについて、以下の理由で抗議の意を表明すると共に、講師
の変更を要求いたします。
 現在、学校現場を含め県内各地では、小中学校で来年度より始まる新教育課程
で使用する教科書採択の議論の最中にあります。特に今年は、「新しい歴史教科
書をつくる会」が、憲法の理念を否定し、侵略戦争を美化するような、歴史・公
民教科書を作成し、この教科書の採択の行方が注目されています。このような折
に、「新しい歴史教科書をつくる会」の副会長であり、自身がこの教科書の監修
もしている高橋史朗氏を講師として、県総合教育センター主催の公開講義が開催
されるということは、教科書採択についての、県教育委員会の公正・中立性が問
われることになります。 
 さらに、高橋史朗氏は、「新しい教育基本法を求める会」の事務局長もしてお
り、教育基本法「改正」を積極的に主張しています。本来、憲法・教育基本法の
理念に基づき、子ども一人ひとりの人格の完成をめざして教育条件の整備に取り
組むべき県教育委員会が、その基本的理念を否定する論を展開する人物を講師に
招き、教員を集めるとは、県教委の見識が問われます。
 いかに当日の講演テーマが、教科書や教育基本法とは異なったものだとして
も、上述の高橋史朗氏の立場や理論が変わるものではありません。また、開催日
の8月28日は、採択決定後ですが、それ以前から参加者を公募しており、総合
教育センター主催の講義に高橋史朗氏が講師として参加する事実は、採択期間に
明らかにされているのです。
 石川県教育委員会は、研修会の講師として予定していた高橋史朗氏を別の講師
に差し替えています。千葉県総合教育センターにおいても、速やかに講師を変更
されることを要求いたします。



 
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