Date: Sat,  9 Jun 2001 00:43:07 +0900
From: 加賀谷いそみ<QZF01055@nifty.ne.jp>
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Subject: [keystone 3979] 財界好みの教育改革
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 「教育改革3法案」の審議が、5月29日から始まり、毎日のように委員会が開
催されています。しかし「法案の中身に突っ込んだ論争はみられなかった」(日
経5月29日)ようで、まず法制化ありきという「国家戦略」のようです。
読売などでは、審議経過は一切報道せず、「14日にも衆議院を通過する見通し」
(6月8日)と安直に述べていますが、「高度な政治判断」に決着が付いたというこ
とでしょうか。

【法案】
■地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案
○教育員会委員のうちに保護者が含まれるように努めることを規定する。(第4
条関係)
○校長のリーダーシップの発揮の観点から、県費負担教職員の人事について、校
長の意見をより一層反映させる。(第38条関係)
○指導が不適切な教員を免職した上で、引き続き当該都道府県の教員以外の職に
採用することができることを規定する。(第47条の2関係)
○公立高等学校の通学区域に係る規定を削除し、通学区域の設定を当該高等学校
を所管する教育委員会の判断に委ねることとする。 (第50条関係)

■学校教育法の一部を改正する法律案
○小学校、中学校、高等学校等において、社会奉仕体験活動、自然体験活動等の
体験活動の充実に努めるものとする。(第18条の2関係)
○小学校及び中学校の出席停止について、性行不良であって他の児童生徒の教育
に妨げがあるときに命ずることができる。(第26条関係)
○大学、大学院へ、対象分野を問わず、いわゆる「飛び入学」ができる(第56条
及び第67条関係)

■社会教育法の一部を改正する法律案
○  家庭教育に関する講座等の実施及びその奨励を,教育委員会の事務として明
記(第5条第7号(新設))
○  青少年に社会奉仕体験活動,自然体験活動等の機会を提供する事業の実施及
びその奨励を,教育委員会の事務として明記
(第5条第12号(新設))
○  国及び地方公共団体が社会教育行政を進めるに当たって,学校教育との連携
の確保に努めるとともに,家庭教育の向上に資することとなるよう必要な配慮を
行う旨を規定
(第3条第2項(新設))

【法案資料】
▽文部科学省報道発表 
http://www.sta.go.jp/b_menu/houdou/13/02/010226.htm
 2001/02/27  地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法
律案
http://www.sta.go.jp/b_menu/houdou/13/03/index.htm
 2001/03/09  社会教育法の一部を改正する法律案について
 2001/03/09  学校教育法の一部を改正する法律案の概要
 
 これら法案には、教育を受ける権利を持つ側と「全体の奉仕者」としての責務
が求められる教員の心身を拘束する内容にもかかわらず、判定基準やその人権に
対する法的責任の所在が曖昧なこと、社会教育の条件整備、地方行政の運営につ
いても、先の学校評議員制度も含めて、行政の「不当な支配に屈することなく、
国民全体の対し直接に責任を負う」ことに対する保障の裏付けがないなど、教育
基本法の根本理念の一つである「教育の機会均等」を揺るがす内容が多く含まれ
ています。
 衆院文部科学委員会には、今回の法案提出に「抵抗勢力」からの請願が山積み
され、委員はその束を文部科学省に突きつけ、教育関係者への「指導・助言」が
足らないと不満をぶつけていますが、問題提起して世論を喚起するのは議員の役
目で、思い通りにならないからといって官僚に八つ当たりするのは筋違いの暴挙
です。文部科学省とて、これ以上学校から子どもたちや教員を選別排除し、その
一方で不服従の子どもたちが増えれば、はたして改革の根幹をなす「公教育」そ
のものが成り立つかどうかといった不安な思いもあるでしょう。
 
−−−−−−−−−−−
 指導力不足の教員の配置換えなどを盛り込んだ「地方教育行政組織・運営法改
正案」など「教育改革3法案」は29日午後、小泉純一郎首相も出席した衆院本
会議で趣旨説明と質疑を行い、審議入りした。会期末まで残り1カ月。
 3法案は、地方教育行政組織・運営法改正案のほか、奉仕活動の充実や問題を
起こす子どもを出席停止にする要件の明確化などを入れた「学校教育法改正
案」、家庭教育の充実をはかる「社会教育法改正案」。
遠山敦子文部科学相は趣旨説明で、指導力不足の教員の転職や教育委員会の活性
化など、教育改革の必要性を強調。小泉首相も同様の考えを示す。民主党など野
党側は、教員を指導力不足とする要件などをただす予定。
 (共同5月30日)

 小泉純一郎首相は「今国会に提出した法案の成立に全力を尽くす」と表明。随
所に独自の教育観を交えて教育改革でも「小泉カラー」の発揮に努めた。ただ学
級崩壊や不登校などの問題を抱える教育の現場をどう立て直すのかといった具体
論は乏しかった。
 「子供のころ、自分が楽しむと同時に公のために尽くすことに喜びを感じる
『公私相半ばできる人間』が望ましいとよく言われた。人格向上が教育の一つの
大きな目標だと思う」
 野党席をみながら「教育改革でも協力できる点は協力してほしい」と秋波を
送った。
 公明党の西博義氏には「若くして学べば壮にして為(な)し、壮にして学べば
老いて衰えず、老いて学べば死して朽ちず」と答弁。江戸時代の儒学者、佐藤一
斎が年代ごとに勉学の大切さを説いた言葉を首相流に解釈して語ったもので、教
育問題への関心の強さをアピールした。
 政策の各論に入ると、安全運転に終始。独自の見解を示したのは高校の通学区
廃止に絡んで「入学者選抜の多様化を促していく」と表明した程度。森喜朗前首
相が意欲を燃やした教育基本法の見直しについては「中央教育審議会等で幅広く
国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得ていきたい」と政府の公式
見解を棒読みした。
 野党側に慎重論が強い出席停止措置でも「他の児童、生徒の教育を受ける権利
を守るために必要ではないか」と政府の既定方針に沿って答えた。
 教育基本法の改正問題などで野党側の質問が重なったことに加え、官僚出身の
遠山敦子文部科学相が簡潔に答弁したため、2時間40分を予定していた本会議の
質疑は約30分早く終了。法案の中身に突っ込んだ論争はみられなかった。
 (日経5月9日)

 自民党の大島理森国対委員長は8日午後、国会内で民主党の赤松広隆国対委員
長と会談し、教育改革関連3法案を今国会で成立させることを前提に今後の段取
りを協議、3法案のひとつである学校教育法改正案について週明けから修正協議
に入る方針を確認した。
 与党は、国会終了直後に参院選を控え、会期延長は行わない方針。このため今
国会で成立させる法案は、東京都議選が告示される15日ごろまでに衆院を通過
させる必要があると判断、審議を加速させる
(共同6月8日)

 これまでの与党側と民主党の非公式な調整では、修正の内容について、高校二
年から大学への「飛び入学」が安易に行われることがないよう、受け入れる大学
は大学院があり研究体制が充実している大学に限定すること奉仕活動について
は、生徒に強制ではなく自発的に取り組む意識を持たせるため、「ボランティア
活動」という表現を盛り込むことで一致しており法案は一部修正のうえ、今の国
会で成立する見通しとなりました。
[NHK2001-06-08-18:07]

▽衆議院 文部科学委員会議録(高市早苗委員長)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/index_kaigiroku.htm
 文部科学委員会(ビデオ収録時間)
  5月29日(15分)
  5月30日(5時間 55分)
  6月1日 (3時間 09分)
  6月5日 (5時間 25分)
  6月6日 (5時間 22分)
    6月8日 (3時間 40分)
▽衆議院請願一覧
http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/index_seigan.htm

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 教育関連法案は、「21世紀日本の構想懇談会」や「教育改革国民会議」の提
言をうけた教育改革という形をとっていますが、これらの機関が御用をうけたま
わった先は、教育現場の教員や、子どもたち、その保護者などではなく、財界で
す。経済3団体である経済同友会、経団連、日経連は21世紀の経済のグローバル
化に対処できる労働者に作りなおすために様々な提言を繰り返してきました。そ
れを結集したのが、財界政策を政治政策に結びつけるためのバイパス機関として
設けられた「21世紀日本の構想懇談会」や「教育改革国民会議」の提言です。
(経団連と日経連では、2002年5月の完全統合を目標に2000年9月から作業を本格
化)
 
 1960年代から1970年代の高度経済成長期の大量生産時代には、企業が平等に成
長するために「平等主義」が有効でした。それが90年代にはいると「多様性」が
求められ、今までの均一な労働力は使い物にならなくなってきました。さらに経
済のグローバル化で対外競争は激化し、それにうち勝つためには、財閥再建をも
視野に入れた労働力の効率的管理の徹底が必要不可欠となってきました。そこで
経済界の労働政策の基本として出されてきたのが、全労働力のうち、企業の中枢
でフル活用できる高度専門技術者としてのエリート三割は金をかけて育てるが、
使い捨て労働者には金をかけず、その不遇も「自己責任」と思い込ませ従属さ
せ、無抵抗で「生きられる力」を身につける「教育事業」の推進です。
 
 同時にそれが文部省いうところの「新学力観」です。
 日本国憲法制定後の1947年3月に公布された教育基本法、学校教育法によって
同年4月から新学制、六・三制教育が始まりました。明治憲法下での学制との大
きな違いは、教育の機会均等、男女共学でした。そのもとで学区制がしかれ、地
理的格差がなくなり、高等教育の普及も確保されました。しかし間もなく「経済
大国」を「誇り」とする日本政府の教育政策は、1950年代以降財界の経営方針に
と転換され、教育関連法も、一貫して教育基本法ではなく財界の経営理念に則っ
て策定され、改定されてきたといえます(1953年/中央教育審議会設置  教育の

治的中立確保に関する法案・教育公務員特例法改正案公布)。そのため「個人の
尊重」「真理と平和を希求する人間の育成」「普遍的で個性豊かな文化の創造」
をめざす教育の普及徹底を実現するにはほど遠い、弱肉強食の財界向け教育関連
法になっていきました。これが大きな障害となって、日本国憲法に基づいた「民
主的で文化的国家を建設」し、「世界の平和と人類の福祉」への貢献を実現する
ための「教育の力」は育まれないまま今日に至っているのです。そして教育基本
法のもとではあるまじき差別がはびこり、日本の教育は流動的な経済情勢に振り
回され、制度疲労を起こすたびに子どもたちから痛ましい犠牲者を排出してきま
した。

 文部科学省では「教育の自由化」を強調します。「自由化」(民営化)の動き
は、70年〜80年代の石油ショック(1973年10月第4次中東戦争、1980年イラン・
イラク戦争)などで景気低迷が続き、財政改革の名の教育・福祉財源の引き下げ
策として出てきています。
 さらに1990年頃からこの国の経済環境が急激に悪化し、日本的システムや慣行
では現実の社会変動や世界標準(グローバルスタンダード)に対応できないとし
て、橋本内閣のもとで1996年、六大構造改革(行政改革・財政改革・社会保障改
革・金融システム改革・経済構造改革・教育改革)が提案されました。この「新
しい器に魂を入れ」(橋本氏)、今年1月に、中央省庁が一府十二省庁に再編さ
れ(「中央省庁等改革関連法」2001年1月6日施行)、「小さな政府」の象徴であ
る強権省庁「内閣府」が誕生し、国は防衛・外交に専念し、教育・福祉は地方分
権一括法(2000年4月施行)で自治体に「自己責任」として押しつけました。教
育の「スリム化」(政府教育財源の削減)「自由化」(教育の機会均等の空洞
化)もその一環です。そして「アジア共円圏」の野望を再び掲げ、財界と一体と
なって、教育関連法案を矢継ぎ早に出して国民に一気飲みさせ、体力・気力を消
耗させた上で、アジアへの侵略国家たるに見合う教育方針を確立するために教育
制度を自由化して国民から教育の自由を奪い、教育基本法を撤去するというの
が、一連の教育関連法案改定のねらいです。

 趣旨説明の際、小泉首相は明治維新の原動力となったといわれている、江戸時
代の儒学者佐藤一斎(1772〜1859)著の処世訓「言志四録」(げんししろく:
「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋(てつ)録」四書の総称)の一節
を取り上げて「教育改革」に気勢をあげていました。この現代語訳は今もビジネ
スマンがよく座右の書としています。また長寿の秘宝でもあるそうで、「弱者で
はない老人」のお一人の中曽根康弘議員も愛読されているらしく、石原都知事と
の会談でそれがうかがえたことがあります。そこら辺からの受け売りでしょう。
 某国の大統領が訪日した際、「途上国ではよくあるが、日本のような国で内閣
支持率が80%を超えるのはすごい」と、小泉フィーバーに驚いていたとのことで
すが、ちなみにそのパフォーマンスを教授したのは「21世紀日本の構想」懇談
会です。同会は提言の中で「『言力』の内容は、情報力であり、構想力であり、
それらをもとにした提案能力と表現力である。それによって議論し決定させる力
であり、実施に向かって人や組織を動かす力まで含まれるかもしれない。これら
をいかにして培うかが問題である。」として「言力政治(ワード・ポリティク
ス)の強化」を説いています。小泉首相はたぶん、同時に財界の「要諦」でもあ
るこの「言力政治」の期待に応えようと涙ぐましい努力をされているのです。し
かし「基礎知識」の乏しい付け焼き刃の言語力では、声を張り上げ情緒に訴える
しかすべがなく、アジテーションと揶揄されるのもむべなるかなといったとこ
ろ。これ憂慮して「実力」を養おうと立ち上げたのが首相直属の機関としての自
民党「国家戦略本部」らしいのですが。

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▽社団法人経済同友会(代表幹事:小林 陽太郎・富士ゼロックス会長)
(1989年「新しい個の育成」、1991年「『選択の教育』を目指して」、1994年
「大衆化時代の新しい大学像を求めて」を提言)
1995年4月 報告書「学校から合校(がっこう)へ」
 これまでの学校を、基礎・基本と日本人としてのアイデンティティの教育を主
とする「基礎・基本教室」=『学校』にスリム化し、その『学校』の周辺に、異
年齢の子どもで組織される「体験教室」と「自由教室」を配置し、全体を緩やか
なネットワ−クとして統合し、そこに企業を含む教員以外の社会の多様な人々が
参加する新しい学びの場をつくろうというもの。1991年3月、文部省指導要録改
善調査研究者会議発表の「小学校及び中学校の指導要録の改善について」の中に
「新学力観」(児童・生徒の自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質
や能力を重視する考え方。関心・意欲・態度の評価を重視)として取り入れられ
る。提言は第15期中央教育審議会(95年4月発足)が1996年7月にまとめた中間
答申にも反映された。横山英一・日教組委員長(当時)が「『合校』の現実化す
すめたい、刺激的な経済同友会の提唱」(「季刊教育法103号」)と評価。日教
組では「二一世紀ビジョン委員会最終報告」を発表。
1997年3月24日 提言
「学働遊合(がくどうゆうごう)」のすすめ −いつでも学び・働き、その楽しさ
を感じられる社会を目指して、企業は意識を変え、行動する−
http://www.doyukai.or.jp/database/teigen/970325.htm
1999年4月8日 提言
創造的科学技術開発を担う人材育成への提言
  −「教える教育」から「学ぶ教育」への転換−
http://www.doyukai.or.jp/database/teigen/990408.htm
「学校(特に大学(院))と企業は、意欲と能力ある人には、学び・働くための
門戸を開く。」「一人一人は自らの価値観と能力を明確にしながら、それぞれの
分野で競争していくことが求められる」「(遊びの中で)『自分達のルールを守
ろうとする気持ち』が、そのまま社会でのルールを尊重する意識に結びつく。」
「意識改革後の社会は、さまざまな生き方があり、人々がそれを認めあっている
社会である。」

▽社団法人 経済団体連合会(会長:今井敬・新日本製鐵会長)
1996年3月26日
創造的な人材の育成に向けて〜求められる教育改革と企業の行動〜
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/pol083/index.html
2000年3月28日
グローバル化時代の人材育成について
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2000/013/honbun.html

▽日本経営者団体連盟(会長:奥田 碩・トヨタ自動車株式会社取締役会長)
日経連では、雇用、人事、賃金、組織、能力開発、福利厚生、労使関係のあり方
について、1995年5月『新時代の「日本的経営」−挑戦すべき方向とその具体策
−』として報告書を発表。労働者を「長期蓄積能力活用型グループ」(正社
員)、「高度専門能力活用型グループ」(契約社員や派遣)、「雇用柔軟型グ
ループ」(臨時、パート)に雇用・賃金形態を分類。99年4月には「新時代の労
使関係の課題と方向」という報告を発表し、労働者に「エンプロイヤビリティ」
=雇用される能力にも自己責任を持たせる政策を発表。(「エンプロイヤビリ
ティ」は、経済同友会が97年に発表した「雇用システム改革にむけた行動指針」
で、労働者を「成果・実績」主義に基づいて管理する雇用形態として提起された
もの。)
奥田碩会長「『変化への挑戦』ためらうな」

▽21世紀日本の構想懇談会(座長・河合隼雄国際日本文化研究センター所長)
1999年3月30日、故小渕元首相の私的諮問機関として設置。2000年1月18日最終報
告を小渕首相(当時)に提出。初等・中等教育は教育内容を五分の三程度まで圧
縮し、義務教育は週三日に−などを提言
http://www.kantei.go.jp/jp/21century/houkokusyo/index2.html
21世紀日本の構想
日本のフロンティアは日本の中にある―自立と協治で築く新世紀―

▽教育改革国民会議(江崎玲於奈座長)
http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/index.html
 2000年3月27日、小渕首相(当時)の私的諮問機関として発足。200年12月、教
育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−を提出。「教育基本法の見直し
について」は「各方面で様々な議論が行われることを希望する。」にとどめる。
 「抜本的な教育改革を議論」「戦後教育改革とは何ぞやという原点に立ち返っ
て、戦後教育について総点検することが必要」−小渕恵三首相
 教育基本法の「見直し」を視野に(4月11日参院本会議代表質問)「教育基本
法の見直しを含め、『教育は何のためにあるのか』『学校は何のためにあるの
か』を率直に問い直し議論すべき時期にきている」(4月14日第二回会合)−森
首相
 しかし、森首相(当時)が目指す教育基本法の改定が当面棚上げされる見通し
となり、文部省では151回通常国会に提出する教育改革関連法案には教育基本法
改正案を盛り込まないことを決め、「教育改革推進本部」を設置し、教育基本法
改定を文相の諮問機関「中央教育審議会(中教審)」にはかり、時間をかけて検
討することにした。今後、参院選後に向けて、中教審や教育改革国民会議の地方
公聴会などで同法改定の環境整備に取り組む方針。
 2000年4月4日 文部省に教育改革推進本部(本部長中曽根弘文文相)を設置。
教育改革国民会議の方策を、中央教育審議会の審議を経ずに分掌を裁定で具体化
も可能。
これにともない佐藤禎一事務次官を本部長とする教育改革推進本部(1996年7月
設置)は廃止。
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2001/01/06
中央省庁再編で、旧文部省と旧科学技術庁が統合し、文部科学省が発足。
初代文部科学大臣には町村信孝衆議院議員(元文部大臣)が就任。大臣官房、生
涯学習政策局、初等中等教育局、高等教育局、科学技術・学術政策局、研究振興
局、研究開発局、スポーツ青少年局、総括官の1官房7局1官及び文化庁の編
制。審議会は省庁計23から中央教育審議会、科学技術・学術審議会、文化審議会
を中心に8に再編。

2001/01/19
 中教審の30人の委員を発表。会長には慶応義塾大学の鳥居泰彦学長(64)。統
計審議会や産業構造審議会の委員も務めている。平均年齢は五十九歳、女性は九
人。任期は二年間。
 第1期中央教育審議会委員 2001年1月31日発令
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gaiyou/010201.htm#mei
bo
(うち教育改革国民会議メンバー▽今井佐知子▽梶田叡一▽木村孟▽田村哲夫▽
森隆夫▽山下泰裕)

2001/01/19
 文部科学相の私的懇談会「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会」が報告
書をまとめ文部科学相に提出。中・高校で習熟度別指導や少人数指導を積極的に
取り入れることを提言。小学校英語教育については、「総合的な学習の時間」に
おける英会話学習の目的を「外国の生活や文化など異文化に触れたり、慣れ親し
んだりすること」と位置づけ。今後の小学校英語教育教科化については今後の検
討課題とした。

2001/01/22
 小中学校の教員免許を取得する際に学生に義務付けられている「介護体験」の
受け入れ施設から、「学生の態度が悪い」など苦情が相次いでいることから、文
部科学省は各大学や短大に、学生への事前指導の徹底を求める通知を出した。さ
らに「体験中の学生に著しい問題があって、施設利用者に不利益を与えるおそれ
がある場合には、体験の中止もあり得る」としている。介護体験がない場合は教
員免許を取得できない。
 小中学校の教員を目指す学生に対しては、1997年の教育職員免許法の特例法で
「障害者や高齢者らに対する介護や介助、交流など」が必要とされ、盲・ろう・
養護学校か社会福祉施設で7日間の介護体験が義務付けられた。

2001/01/25
 文部科学省は、首相の私的諮問機関である「教育改革国民会議」による提言を
具体化するため「21世紀教育新生プラン」をまとめた。主な柱は、少人数授業
と習熟度別学習の促進、奉仕活動・体験学習の充実、大学への「飛び入学」の拡
大、公立高校の通学区を教育委員会の判断で撤廃できる、教員の人事異動などに
校長の意見重視、適性を欠く教員の配置転換制度の創設−など。具体的措置とし
て「地方教育行政の組織および運営に関する法律」「社会教育法」「学校教育
法」を改定。町村信孝文部科学相「スピーディーに改革を実施したい。国民の幅
広い理解がないと成就しないので、全国各地に出向いて説明したい」
 教育基本法については、町村信孝文部科学相「(通常国会に提出した)法案の
審議が進まないうちに(中央教育審議会教育基本法改正を)諮問すると『まず教
育基本法を』となって(法案が)先送りされてしまう。六月中旬、下旬には法案
成立も見えてくる(ので、国会の審議状況を見ながら、早ければ六月中旬にも中
教審に改正を諮問したい)」「(教育改革国民会議が提言した十八歳以上の奉仕
活動についても中教審で)ぜひやってもらいたい」
<参考>文部科学省「二十一世紀教育新生プラン」(1月25日発表)
   http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/21plan/index.htm
*教育改革国民会議が、中間報告で「義務付けを検討」としたが、内閣法制局か
ら「憲法一八条の奴隷的拘束の禁止に反する」と「待った」が掛かったため、最
終報告で「義務付け」という言葉を外した経緯がある。

2001/01/28
東京で開催中の日教組の教育研究全国集会に参加した教師を対象に、共同通信が
実施したアンケートで、奉仕活動に七七%が、出席停止には六一%が反対した。
*「昔は徴兵があった。いまの日本で考えられないならば、社会のために一定の
期間だけ個々人が働いてもいい。高校の一年間ぐらいを国家、社会のために奉仕
する期間に充てる」(森喜朗前首相1973年)

2001/01/29
文部科学省「幼児教育の振興に関する調査研究協力者会合」(座長・近藤充夫東
洋英和女学院大教授2000年2月発足)が「幼児教育の在り方」についての最終報
告書「地域の幼児教育のセンターとしての子育て支援機能を活用し親と子の育ち
の場としての役割、機能を充実する」。▽道徳性の芽生えを培う教育の充実▽
「チーム保育」の導入▽幼稚園教員の資質の向上▽幼稚園終了後の「預かり保
育」の充実−が必要と指摘。

2001/01/31
第百五十一回国会(会期:2001年1月31日〜 6月 29日) 森首相施政方針演説
基礎学力の向上ときめ細かな指導のための少人数指導等の実施、教員として十分
な適格性を有しない者の教員以外の職への円滑な異動、授業妨害やいじめへのき
ちんとした対応、家庭教育の充実、奉仕活動や体験活動の促進、教育委員会の活
性化、子どもたちの体験活動や読書などを振興する「子どもゆめ基金」の創設、
大学改革の推進など、直ちに取り組むべき改革を実行するため、学校教育法や公
立学校の学級編制、教職員定数の標準などに関する法律の改正など、一連の教育
改革関連法案を提出してまいります。

2001/02/01
 文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」(中教審)の1回目の総会。
 会議を原則として公開することを決めた。町村信孝文部科学相「先日公表した
教育新生プランの実現が最大の課題だが、まだ問題は残っており、この中教審で
議論してほしい」。鳥居会長「改革をしていかないと日本は生き残れない。教育
改革の任務は大事だ」。
 中央教育審議会 
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/index.htm
  2001/04/12 文部科学大臣諮問理由説明
  1   青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について
  2   今後の教員免許制度の在り方について
  3   今後の高等教育改革の推進方策について
  4   子どもの体力向上のための総合的な方策について

2001/02/02
町村信孝文部科学相が、報道陣との懇談で、小中学生の不登校(登校拒否)につ
いて「戦後教育の欠陥だと思うが」とした上で「はき違えた個性の尊重、はき違
えた自由が不登校を生んでいる」と発言。
教育改革国民会議が提言した十八歳以上の奉仕活動については、個人的アイデア
として「自衛隊体験入隊とは言わないが、もうちょっとソフトなプログラムをい
くつも作れるだろう」
、また奉仕活動の時期については「高校卒業は3月のままにして、大学を9月入
学にすればいい。その半年間に奉仕活動ができないか。大学の部分だけ省令を書
き直せばすむ。しっかり奉仕活動をした人には投票権を18歳まで引き下げるこ
ともいい」と述べた。
*文部科学省によると、国、公、私立の小、中学校で、99年度に30日以上欠席
した「不登校」の小学生は26,047人、中学生は104,180人の計13万227人。91年度
の調査開始以来、増加し続け最多を記録。同省は公式見解で「不登校はどの児童
生徒にも起こり得る。いじめ、教師への不信感など学校生活上の問題が起因して
登校拒否になる場合がしばしばある」とし、カウンセラーの配置やフリースクー
ルへの出席を指導要録上の「出席」扱いに認めるなどで対応。

2001/02/04 共同通信のアンケート 文部科学相の諮問機関、中央教育審議会
(中教審、鳥居泰彦会長)
 教育基本法改正について、委員の多くが「見直しの是非から論議すべきだ」
と、慎重な姿勢。十六人が回答。「まず見直しの是非について議論すべきだ」九
人、「改正が必要」四人(うち「時代に適合しなくなっている」七人、「今の基
本法では教えられることに限界がある」三人、「改正は必要だが拙速は避け、こ
の中教審で結論は出さなくてもいい」一人)、「改正の必要ない」一人(「基本
法は時代を超えた教育の理想を表現している」)、「ほかにやることがある」一
人。無回答十四人「よく考えながら議論に参加したい」「答える時期にない」。
審議にかける時間については「一年前後」が七人で、「年内に答申」は三人。見
直す点については「国際社会との共生」十一人、「伝統・文化」七人、「生涯学
習」六人、「家庭での教育」四人、「道徳教育」「自己犠牲による全体への貢
献」各三人。「奉仕活動」二人、「愛国心」ゼロ。

2001/04/02
森喜朗首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」(江崎玲於奈座長)開催
 提言を具体化した文部科学省の「二十一世紀教育新生プラン」や国会に提出し
た教育改革六法案などについて議論。首相は約三十分で途中退席。二十六人いる
委員のうち出席したのは十五人でこれまでで最低の出席率。新たな提言に向けた
取り組みや次回会合の日程についても検討されないなど、退陣間際の政権を象徴
するかのようなさびしい会議となった。江崎座長「提言の進ちょくを見届けたい
が、新しいテーマも示されず、今後のことは何も決まっていない」

2001/06/05
 自民党に国旗掲揚普及議員連盟発足。森喜朗前首相が会長に就任。国旗掲揚を
さまざまな場に広げることを目的とし、本会議場など国会内や周辺のほか、地域
社会での普及をめざす。

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【公立中高一貫教育】
1997年、中央教育審議会の第一小委員会(座長・河野重男東京家政学院大学長)
が、公立校に中高一貫教育を導入することを提言。六年制中等学校の新設も含め
て検討。六年制中等学校は、中曽根内閣時代の臨時教育審議会の一次答申に盛り
込まれたが、実現しなかった。
1998年06月05日 公立学校への中高一貫教育導入を柱とした学校教育法改正案を
参院文教・科学委員会は4日賛成多数で可決、5日の参院本会議で可決、成立。
1999年度から実施。
1998年11月06日 有馬朗人文相は、高校入試について、選抜の際の学力試験や調
査書(内申書)の義務付けをやめ、面接など他の方法での合格者決定ができるよ
う同月中旬に学校教育法施行規則を改正する方針を表明。2000年春の入試から可
能。(1997年6月中教審答申で多様な選抜方法を導入することを提言)

【飛び入学】
1997年07月30日 文部省(当時)が、数学、物理の分野で飛び抜けた才能を持つ
生徒が十七歳で大学に入る「飛び入学」制度を導入するため、31日付で学校教育
法の施行規則を改正し大学入学年齢制限を緩和、1998年度の大学入試から17歳の
受験を認めるようにすると発表。中央教育審議会(文相の諮問機関)が6月の二
次答申で制度導入を提言したのを受けた措置。千葉大が次年度入試からの制度導
入を表明。

【小中校の選択の弾力化】
1998年09月21日 中央教育審議会の小委員会(座長、河野重男・東京家政学院大
学長)が、小中学校の通学区域や学校選択について「保護者や住民の意向に配慮
し、地域の実情に応じて弾力的に運用する」よう求める提言を答申に盛り込むこ
とを決め、答申。
(学校教育法施行令「市町村の教育委員会は就学すべき学校を指定しなければな
らない」)

【地方分権】
1998年09月21日 中央教育審議会(会長・根本二郎日経連会長)が、小中学校の
学級編成や教職員配置の弾力化、教育長の任命承認制度の廃止、民間人登用も含
めた校長の任用資格見直し、校長の権限の拡大(職員会議は「校長が主宰」、主
任制は「校長を支えるスタッフ」など)、学校評議員制の導入などを盛り込んだ
答申を有馬朗人文相に提出。地方分権を背景に、文部省主導の教育から地方の主
体的行政への転換を要請。「四十人学級」を都道府県の裁量で独自に少人数化す
ることも可能。中教審の席上で、地方教育行政に携わってきた委員が「国が基準
を決め、地方が特殊性を加味してきたこれまでのやり方に問題があったのか」と
分権の提言に疑問を呈した。
2000年01月21日 文部省は「学校評議員」を配置する制度の創設や、校長の任用
資格を大幅に緩和することなどを決め、学校教育法施行規則改正の省令を告示。
私立学校でも法人の判断で適用できる。
(学校評議員)
文部省ニュース2000/1  http://www.monbu.go.jp/news/00000405/
学校教育法施行規則等の一部改正について(学校評議員等関係)

【生涯学習】
1971年  中央教育審議会(「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための
基本的施策について」答申)で、生涯教育の観点から全教育体系を総合的整備を
指摘
1987年 臨教審最終答申「学校中心の考え方を改め、生涯学習体系への移行を主
軸とする教育体系の総合的再編成を図っていかなければならない」
1988年 文部省に生涯学習局設置
1990年 「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(生涯
学習振興法)」公布
1996年 7月19日 中央教育審議会答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方
につ        いて(第一次答申)」
       8月27日  教育課程審議会発足。学習指導要領の改定を諮問
   12月20日 地方分権推進委員会勧告(教育長の任命・承認制度の廃止な
ど)
1997年 1月27日 文部省、規制緩和で通学区域弾力化を通知
    6月11日 教員免許特例法成立(小中教員免許取得に介護体験を義務付
け)
    6月26日  中教審第二次答申「飛び入学」や中高一貫教育を提言
       9月30日 町村文相「今後の地方教育行政の在り方」を中教審に諮問

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▽法制局 http://www.clb.go.jp/
今国会(第151回)での内閣提出法律案(件名)
http://www.clb.go.jp/bk_law/151/index.htm
▽第151国会 衆議院議案一覧
http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/index_gian.htm
▽参議院 第151回国会本会議投票結果
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/vote/151/vote_ind.htm



 
  • 1998年   3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 1999年   1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 2000年   1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 2001年   1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

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