Date: Wed, 11 Apr 2001 00:23:21 +0900
From: 加賀谷いそみ<QZF01055@nifty.ne.jp>
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Subject: [keystone 3780] <教科書検定>日本政府孤立
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X-Sequence: keystone 3780
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

 大使召還(summon)というのは、国交断絶も覚悟に入れた、時には首脳らに
とっては政治生命をもかけた外交措置です。たびたび起きた教科書問題でも一
時召還の事態にまで及んだことはかつてありません。他の外交問題で一時召還
はありましたが、日韓の間で正式召還は一度もなく、今回の一時召還も金大中
政権では初めてです。日韓が過去にないほど良好な関係になっている今、友好
関係を危機的状況に陥らせた日本政府が「一時帰国」などと読み違え、教科書
問題に関する内外状況の「分析」を誤れば日本の孤立は決定的なものになりま
す。
 
 教科用図書検定調査審議会1998/11 答申では
我が国や郷土の歴史、文化、伝統に対する理解と愛情を深めるとともに、広い
視野に立ち、異文化を理解し、これを尊重する態度や異なる文化をもった人々
と共に協調して生きていく資質や能力を育成することを一層重視する必要があ
る。(これからの教育内容の改善の方向 )
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/toushin/981101.htm#1-1
とあります。しかし検定では前述だけが強調され、後述についてはまったく無
視されたため、「協調して生きていく資質や能力を育成」する事ができない、
歴史・公民教科書が検定を通りました。
 政府が「これまで我が国政府は、昭和57年の官房長官談話において、日韓
共同コミュニケや日中共同声明における認識にはいささかの変化もないことを
確認し、また、平成7年の内閣総理大臣談話において、我が国の植民地支配と
侵略によって多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対する多大の損害と苦
痛を与えた事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表
明しているが、こうした認識は、文部科学大臣としてもいささかも異なるもの
ではない。(文部科学大臣談話)」と繰り返した釈明は、全くの詭弁であった
ことが検定結果によってあきらかになったということです。
 2001/04/03 平成12年度 教科書用図書検定結果に関する大臣談話
 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/04/010402.htm

 また3日の談話で文部科学大臣は「『近隣諸国条項』についても十分配慮の
上実施した」としていますが、検定意見には「近隣諸国との歴史の扱いに配慮
すること」とされた社会科の検定基準(近隣諸国条項)は直接適用されません
でした。公民・歴史とも検定調査審議委員に同条項関係行政機関である外務省
関係者がいなかったのです。すなわち「近隣諸国条項」は反故にされた検定
だったのです。さらに政府自民党ではこれでも飽きたらず、教科用図書検定調
査審議会委員を選ぶ最終的な権限は文部科学大臣にありますが、人事について
の案件を国会同意人事案件にしてはどうかという意見まで出ています。
 
 文部科学大臣は、検定基準に則ったとしきりにおっしゃいますが、学習指導
要領や教科書検定基準が同法に抵触するという認識からか、大臣が第一に遵守
すべき教育基本法については、一言も触れません。

教育基本法
 「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設し
て、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実
現は、根本において教育の力にまつべきものである。
 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する
とともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す教育を普及徹底
しなければならない。」

 審議委員も、扶桑社の参入に翻弄されて、他の教科書にもいろいろ取り落と
しがあったようで教科書問題は中学社会科教科書に止まらないようです。また
文部科学省内にも検定結果に良心が痛む人もいるかもしれません。しかし歴史
改ざん勢力が経済界に広く深く居座り、その影響力は次世代経営者にまで浸透
してしまった今、ここまでアジア諸国との友好関係が危機に瀕しているにもか
かわらず、これら勢力をよりどころとしてきた政府自民党は、検定の撤回もで
きず危機管理の責務も捨ててしまっています。
「遠くの親戚より近くの他人」といいますが、この状況を「遠くの親戚」はど
んな風に眺めているでしょうか。

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(報道記事は、外電を含む4/3〜4/10)

  外務省は7日までに、中国、韓国両政府が再修正など厳しい要求を突き付け
ていないことから、懸念された両国との外交問題への発展は当面回避できたと
判断。
 ただ、これで中韓両国の世論が収まるかどうかは予断を許さず、しばらくは
世論の動向を注意深く見守る方針。
 「検定のプロセスが公表され、(近隣諸国条項などに基づき)きちんと検定
されたことが理解された」(首脳)と分析。

 韓国政府は、史実を歪曲した日本の歴史教科書検定通過問題と関連し、崔相
竜(チェ・サンリョン)駐日大使を10日に「政務協議」という名目で、一時召
還させる。
「協議が終了すれば再び帰任させる」としているが外交通商部(外交部)の任
晟準(イム・ソンジュン)次官補は9日、「日本の歴史教科書が検定を通過し
た後の日本国内の動向と関連し、報告を受けたり対策を協議したりするため、
崔大使を一時帰国させる」とし、「崔大使は、日本の歴史教科書の最終分析作
業に基づいて立てられる政府指針が決まり、それを伝えるまで、韓国に滞在す
る」と述べた。  
崔大使の一時帰国は、事実上の「大使召還」を意味するもので、崔大使は帰国
後、韓国政府が十日にも発足させる教科書問題の対策班にも加わる予定。崔大
使がかなりの期間にわたって帰任しないものとみられる。
 町村信孝文部科学相は九日午後、「事態を冷静に見つめながら、韓国政府と
意思疎通を図りながら対応していきたい」と述べ、検定制度などについて韓国
側の理解を求めたいとの考えを示した。
 町村氏「修正された教科書を見てもらえれば、以前に(韓国側が)示してい
た懸念は大部分が杞憂(きゆう)になるのではないか」
 外務省の川島事務次官「きょう午後、韓国大使館から電話で、大使が一時帰
国することについて連絡を受けた。福田官房長官が検定の決定を受けて今月三
日、『この問題が極めて良好な日韓関係を壊すことがあってはならないし、そ
うならないことを期待している』などとしたコメントを出しているが、これに
沿って引き続き理解を求めという以外にはない。検定は国が特定の歴史観を確
定するために行ったわけではなく、日本の立場は『痛切な反省と心からのおわ
び』を表明した村山総理大臣談話のとおりだ」

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 政府は3日、「教科書の歴史認識や歴史観が政府の考え方と一致するものと
解されるべきものではない」という官房長官談話を出して、中国や韓国の理解
を求めた。 
3日、官房長官談話
検定制度について「明らかな誤りやバランスの欠如などの欠陥を指摘し、修正
を求めることを基本としている。学習指導要領や『近隣諸国条項』を含む検定
基準に基づき、厳正に行われてきた」と説明。政府の歴史認識は、「アジア諸
国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」とする95年8月の村山首相談
話と変わりはないと強調。

 河野洋平外相は4日午前の衆院外務委員会で、中学歴史教科書の検定問題に
ついて「検定手続きは完了しており、これから変わることはない。教科書採択
の権限は公立学校では教育委員会、私立学校では校長にあり、外務省として介
入することは全くあり得ない」「『近隣諸国条項』を含む検定基準に基づき厳
正に検定が行われた」「落ち着いて話をするのが大事だ。両国との良好な関係
を維持するため、できる限り説明する」などと述べた。
 自民党の下村博文、民主党の伊藤英成両氏に対する質疑。

 扶桑社の教科書はそれぞれ「新しい歴史教科書」「新しい公民教科書」と名
付けられた。
「つくる会」側の市場シェアの目標は10%。現在中学歴史教科書のシェアは
東京書籍が41.2%。東京書籍を含めた4社が90%以上を占める。教育委
員会の「逆転採択」などにより目標どおり10%のシェアを確保した場合、扶
桑社教科書の普及率は4位となる可能性も指摘されている。

中学校用教科書見本の展示予定時期
      4月中旬以降・・・・国語、理科、英語、保健体育、技術・家庭
      5月初旬以降・・・・数学
      5月中旬以降・・・・書写、音楽
      5月下旬以降・・・・社会、美術

 採択地区は、政府の行政改革委員会の意見などに従い細分化の傾向。一九九
五年度の四百七十八地区から五百四十三地区(三日現在)に増加。
 同省は、教員の投票で事実上採択が決まる「学校票」制度などは、廃止する
よう通知。各教委が採択権者として自らの責任で判断するよう周知徹底してい
る。同省「採択権は教委にあるが、実際に使う教員が調査にあたるのは当然
で、教員の関与をなくす考えはない」
 「新編日本史」(現・最新日本史)は検定合格したものの採択が振るわず、
二〇〇一年度に使用するのは公私立の十九校、約二千七百部。

 今回の検定では、小学校で九教科百五十五点、中学校で九教科百五点が合
格。小学理科の二点はいったん不合格になり、再提出で合格。
 文部科学省では、検定合格した教科書の目録と出版社の編集方針をまとめた
趣意書を市町村教委などの採択関係者に送る。出版社では、見本本を同様に送
付。平均で三市程度からなる採択地区ごとに、教員による下調べの後、校長や
教員、保護者らで構成する選定委員会で審議。その結果をもとに各教委が採択
する教科書を決定する。今回は小中同時の大検定で製本部数も多く、6月末頃
には、採択区の動向が決まると予想される。

 国旗や国歌に関しては、小学社会で「どの国でも大切にあつかわれていま
す」という表現に検定意見を付け「大切にあつかわなければなりません」と義
務的なニュアンスを強調
 日本書籍では申請時の中学公民教科書で、欄外に99年に国旗・国歌法が制
定されたことを記述。続けて、「この法律は、思想・良心の自由に反するとい
う意見もある」と説明。文部科学省はこの記述に、「程度が高すぎる」などと
する検定意見を付けた。このため、同社は「この法律が学校行事などに強制さ
れることをあやぶむ声もある」と差し替える案を提示。同省は「一般に法律は
強制力を持つものであり、法律の強制をあやぶむという文章はおかしい」と指
摘。最終的に記述削除。同省教科書課「法の強制力は一般論として言った。君
が代を歌うことなどを強制するという意味ではない」

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 中国の陳健・駐日大使は三日、記者会見し「扶桑社の教科書は少なからぬ修
正が加えられたものの、侵略の歴史を美化する反動的立場は変わっていない」
として、検定合格させた文部科学省に「強烈な不満」と遺憾の意を表明。教育
現場が同教科書を採用しないよう求めた。中国国内でも外務省、教育省スポー
クスマンがそれぞれ「実際の行動をもって平和的発展の道を歩み続けるよう求
める」批判談話を発表。

 3日、全国人民大会の李鵬委員長は、人民大会堂で高村法務大臣一行と会
見。会見中、歴史認識に関して言及した李委員長は、「歴史認識は日中政治問
題の土台となるものであり、日本政府は充分にこの問題に重視し、対応してほ
しい。『日中共同声明』、『日中平和友好条約』、『日中共同宣言』の原則を
遵守し、『歴史をかがみとし、未来を志向する日中関係を築く』の共通認識の
下、慎重に且つ穏当にこの問題を処理していきたい。21世紀、両国における
あらゆる障害を排除し、これからも健全な日中関係を継続させ、安定した発展
を望む。」と語った。これに関して高村法相は、「日本政府は、引き続き『日
中共同声明』等の精神に基づき、前村山富市首相の談話を尊重していく。」と
述べた。
 

 韓国与野党は3日、日本中学校教科書の歴史歪曲に対して非難し、政府に対
策作りを促した。韓昇洙(ハン・スンス)外交通商部長官、新千年民主党(民
主党)の李洛淵(イ・ナクヨン)、自民連の鄭鎮碩(チョン・ジンソック)政
調委員長は政府与党会議を行い、「日本の歴史歪曲に強力かつ効果的な対策を
準備することにした」と李委員長が明らかにした。
 政府は3日、歴史教科書の検定結果について深い遺憾の意を表明し、教科書
問題が周辺国家との外交関係の根元を揺るがす事がないよう、根本的な防止対
策を設けることを日本政府側へ強力に促した。 日本政府に公式的に再修正を
要求する案を検討。
 
 在ソウルの市民団体は三日、記者会見で激しく非難。日本の市民団体と連携
し、一部教科書の不採択に向けた運動を展開すると表明。

  韓国で4日、元「従軍慰安婦」や支援者らのグループが、ソウルの日本大
使館が入居するビル前で抗議集会や署名活動。大使館に抗議声明を手渡す。韓
国最大の仏教宗派である曹渓宗も同日、教科書による「歴史わい曲」是正を求
める声明を発表した。日本大使館にはこの日朝、教科書検定の結果に抗議する
電話が3本。
 大韓民国独島郷友会は午後2時、ソウルの塔洞(タプコル)公園(旧・パゴ
ダ公園)前で約100人の市民が参加したなか、「日本の独島(ドクト、日本
名・竹島)強奪陰謀および歴史教科書歪曲粉砕韓民族決議大会」を行った。

 韓国教員団体総連合会(韓国教総)は4日、日本教科書の歴史歪曲批判のた
めの特別授業方案を発表。全国教職員労組も毎月発行する『私たちの子供』5
月号に、小学5〜6年生を対象にした「共同授業案」を載せることにした。
 
 韓国政府は4日、大統領府・首相室・外交通商部・教育部の関係者が出席し
たなか関連省庁会議を開いて対応策を話し合い、まずは崔大使に日本政府の高
官と接触して強い遺憾の意を表明させることにした。さらに、崔大使を一時召
還する方針も検討。しかし、日本政府に対し遺憾の意を強く表明することは表
明するが、その他の韓日外交問題とは関連付けないという原則を定めた。専門
家らは「日本が韓国に及ぼす影響力を政府が意識し過ぎた消極的な措置」と批
判。

 韓国の韓昇洙・外交通商相は4日、寺田輝介駐韓大使を呼び、日本の中学歴
史教科書の検定結果に対する評価をめぐり「韓日両政府間に相当な距離があ
る」との認識を示し、日韓関係が悪化することへの憂慮を表明。

 中国の唐家セン外相は4日午前、北京の中国外務省に阿南惟茂駐中国大使を
呼び、「新しい歴史教科書をつくる会」が主導し、発行された中学教科書が検
定に合格したことについて「歴史問題に対する日本の立場に疑問を感じざるを
得ない」と批判。

 中国の陳健駐日大使は4日、外務省に川島裕事務次官を訪れ抗議。「日本政
府は1982年の『近隣諸国条項』や1995年の『村山談話』の精神にもとづいてこ
の問題に対処すると繰り返し説明してきたが、史実を歪曲し、アジアの被害国
民の感情を侮辱したこのような教科書が、あろうことか検定で合格してしまっ
た。」「歴史問題に関する日本政府の立場に疑問を感じざるを得ず、日本が効
果的な措置を取り、影響を解消する」よう要望。

  全国人民代表大会(全人代)外事委員会の責任者は4日、談話を発表。
日本の国益にとっても、アジア及び世界の平和や発展にとっても、日本は青少
年に対して正しい歴史観に基づいた教育を行うべきであり、どんな形であろう
とも軍国主義勢力が再び台頭することを許してはならない。そうしてこそ、中
日間の友好は絶えず深まり、日本はアジアや国際社会から信任、尊重され、国
際社会で自己の力を発揮することができる。
 南京市の史学界や教育界、法学界、南京大虐殺の生存者代表らは4日午前、
南京大虐殺遇難同胞記念館で座談会を開き、「つくる会」主導の教科書の歴史
を改ざんした記述を非難した。

 中国の中日友好協会の責任者は4日、日本の歴史教科書の検定結果を受け
て、書面による談話を発表。
   我々は、日本政府が歴史を尊び、苦労して築き上げた中日間の友好関係を
大切にし、教科書の誤りを徹底的に正し、実際の行動を持って中日友好関係の
大局を守るよう望んでいる。また、日本の野党や市民団体が、歴史を否定し、
侵略戦争を美化するこうした行為を非難し、中日友好の大局を守ろうと次々と
アピールを出したことに対して、敬意を表する。

 韓国と北朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の国会は4日午後(現地時
間)、日本の歴史の教科書問題に対し、共同で強力な対応策を推進することに
した。国際議会連盟(IPU)の総会(キューバ)で、中国の代表団と共同記者
会見。
これに先立ち韓国の代表団はこの日午前、IPU総会の第一分科委員会(国際法
遵守分野)に、「過去の恥ずべき人権侵害の歴史に対する、徹底した反省と記
録こそが、人権侵害を防止する効果的な手段であることを確信する」という内
容の決議案を提出。

  台湾外交部は5日、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史教科書に
ついて「歴史のわい曲は許されない。日本政府が事態を正視して、速やかに教
科書の内容を修正し、相互の信頼関係に影響しないようにすることを望む」と
抗議の意を表明。駐日代表を通じて日本側に伝えた。

  韓国国会で最大議席を有する野党ハンナラ党は5日、日本製品の不買運動
を呼びかけた。与党の新千年民主党(総裁・金大中大統領)も日本に再修正を
求める国会決議の採択に向け準備を進め、6日に党4役会議を開くほか、民主
党と共同歩調をとる自民連は「教科書問題での超党派的対応」を呼びかけ。
 朝食祈祷会(会長、金泳鎮議員)所属の与野党議員らは抗議声明を発表し、
民主党の金泳鎮(キム・ヨンジン)議員、金敬天(キム・キョンチョン)議員
とハンナラ党の朴世煥(パク・セファン)議員、黄祐呂(ファン・ウリョ)議
員などが、日本を抗議訪問する予定。これとともに、日本の各県ごとに組織を
置く民間機構である韓日親善協議会と共同で、史実歪曲教科書の不採用運動を
展開する。これに先立ち6日に台湾を訪問し、台湾立法院議員らと共同対応方
案を議論する。
ハンナラ党の初・再選議員の会である未来連帯(共同代表、南景弼・金富謙議
員)は、「駐日大使召還と汎国民抗議団派遣、日本文化開放延期などを検討せ
よ」と促した。
国会の教育委議員16人も「2002年ワールドカップ共同開催を控え、不幸な事態
にまで発展するのではないかと心配せざるを得ない」と声明を出した。
 韓国政府は慎重な姿勢。与野党や市民団体などが強く迫る、日本政府への再
修正要求についても「日本が応じる気配はなく、その場合、韓国の対日感情は
一層悪化する」
 外交通商部当局者は5日、「韓日新時代のためには教科書問題と全体の外交
懸案を関連づけることは望ましくないし、非現実的だ」「しかし、いくつかの
懸案は連係する方案を検討中だ」と話した。同当局者「日本が教科書修正に全
く誠意を見せない場合、日本の安保理常任理事国入りに反対するという政府の
立場を非公式的に伝達する方針だ」
  政府が現在検討中の方案は▽抗議使節団の派遣▽市民団体と連携した検定
教科書の不採択運動▽日本の政・官界高位関係者らに対する崔大使の遺憾伝達
−−など

   朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の朝鮮中央通信は5日、日本の教科書
検定結果について「内外の強い抗議にもかかわらず右翼団体がつくった歴史教
科書を検定で公式通過させた」「朝鮮やアジア諸国などに対する耐え難い冒と
く、公然たる挑戦だ」などと非難。

  ベトナム外務省報道官は5日、日本の「新しい歴史教科書をつくる会」が
検定を合格した問題について「日本は過去について正しい認識を持つべきだ。
近隣諸国との友好的な関係のために必要なことだ」と述べた。

 日本の歴史教科書問題で、中国の新華社通信は5日、「21世紀になっても
日本の右翼勢力はかたくなに軍国主義をよみがえらせようとしている」という
人民日報評論員論文を発表。人民日報は5日付で、全国人民代表大会(国会)
や中日友好協会の談話を掲載。また、「つくる会」の教科書が南京大虐殺の史
実をあいまいにしているとして、南京の学界、教育界から非難の声があがって
いると伝えた。

  韓国政府は6日、日本教科書対策チームを設立、日本政府に対し、史実をゆ
がめた教科書の是正を求めていくと新華社ソウル支社が伝えた。 同関係者
は、韓国は4月中にも日本の歴史教科書を厳しく検査し、その後日本政府に対
して修正を要請する、具体的内容を正式に発表する。 政府はまた、対策班傘
下に歴史専門家などからなる諮問機構を設け、「韓日歴史教科書の共同制作」
「韓日歴史専門家の交流」「韓日歴史専門家討論会の開催」なども、長期的な
観点から検討する。
 外交通商部(外交部)の韓昇洙(ハン・スンス)長官「中国との共同対処は
現在としては考慮していないが、日本の態度をみて検討したい」

6日、蔚山(ウルサン)市で開かれた3・1万歳運動を再現する行事で、参加
者らが日本の教科書の模型を燃やした。

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の朝鮮中央通信は7日、来年から使用さ
れる日本の中学校教科書に「北朝鮮による日本人ら致疑惑」の内容が初めて取
り上げられることを批判。
  朝鮮民主主義人民共和国外務省は7日、声明を発表し、右翼団体が編集した
中学歴史教科書を日本政府が検定で合格させたことを強く非難し、日本政府に
対し、犯罪行為の歪曲と美化をただちにやめるよう求めた。「日本政府は歴史
問題について極右勢力と同様の観点と思想を持ち、侵略の歴史を美化し、極右
思想を広めようと企んでいる」

 韓日議員連盟の韓国側会長団(会長、金鍾泌自由民主連合名誉総裁)は9
日、緊急会議を開き、日本の歴史教科書史実歪曲に対する抗議表明のため、来
月4日から6日、ソウルで開かれる予定だった定期総会を無期延期することを
決めた。

 韓国政府は、ジュネーブで開催中の第57回国連人権委員会に教科書問題を提
起することも検討。政府当局者「先月19日に開幕され今月27日まで開かれる予
定の国連人権委員会・女性人権議題の討議の際、鄭義溶(チョン・ウィヨン)
ジュネーブ代表部大使が、日本の歴史教科書に従軍慰安婦の記述が削除された
ことなど、史実歪曲に対する遺憾の意を表明し、誠意ある措置を求めるだろ
う」「歴史教科書問題を取り上げることができる各種の国際会議でも、韓国の
立場を明確にし、再修正を求める方針だ」。

 ジュネーブで開かれている第57会期国連人権委員会で2日「女性に対する暴
力」特別報告者のラディカ・クマラスワミさんの報告書が公表された(文書番号
E/CN./2001/73)。45頁にわたる今年の報告書でも冒頭の「要約」と国別事例の
「日本」の項で「慰安婦」問題を取り上げ約1頁を割いて「日本政府は道義的責任
を認めたにもかかわらず、法的責任を受け入れ被害者に賠償を支払うことを拒
否している。特別報告者の96年の勧告を実施する試みもなければ、人権小委員
会の特別報告者が行った勧告を実施する試みもない」と厳しく日本政府を批
判。「アジア女性基金」(「国民基金」)の現状や日本国内での裁判の判決と米国
ワシントン地裁への提訴、昨年12月の「女性戦犯国際法廷」開催などを情報とし
て提供している。同報告者が日本の「慰安婦」問題を取り上げたのは今回で4回
目で、とくに96年に朝鮮・韓国・日本での調査を踏まえ、日本政府に対し法的
責任の確認、調査と資料公開、被害者への文書での謝罪、個人賠償、責任者処
罰、教育の強化などを勧告した。
(参照http://www.unhchr.ch/)

 ソウルYMCA、韓国婦人会、韓国青少年連盟など40余の社会・宗教団体からな
る「過消費追放汎国民運動本部」(事務総長、朴讃星)は9日、ソウル市内中
心部にあるタプコル公園前で集会を開き、日本商品の不買キャンペーンを始め
ると宣言した。
 韓国教員団体総連合(韓国教総)はこの日から一線の学校で日本の歴史歪曲
の実像などを教える特別授業を始めた。教総は今月14日まで、全国の小・中・
高校別に特別授業を実施する。教総は、日本歴史教科書の史実歪曲を糾弾する
1000万人署名運動とともに、社会・市民団体と連帯した日本商品不買運動を続
ける方針。
 市民団体の活貧堂(ファルビンダン・団長、洪貞植)はこの日、ソウルの陽
川区木洞(ヤンチョング・モクドン)にある国際郵便局で、日本の天皇、首
相、文部大臣、自民党総裁の4人に短刀、味噌玉、粉トウガラシ、あか擦りの
タオルなどの小包を発送した。「韓国人たちの憤怒」(短刀)、「信じられな
い日本の友好政策」(味噌玉)、「歴史歪曲は北東アジアにおいての平和共存
を妨げる行為」(粉トウガラシ)、「軍国主義のあかを洗い落とすように」
(あか擦りのタオル)の意味。

9日、スイス・ジュネーブで「女性に対する暴力」をテーマに開かれた国連人
権委員会で、従軍慰安婦や日本の歴史教科書歪曲問題をめぐり,日本は教科書
問題と従軍慰安婦の問題は別だという主張を展開し、韓国や朝鮮民主主義人民
共和国(北朝鮮)と意見が対立した。

韓国国会は10日、本会議の対政府質問で、日本の歴史教科書歪曲に対する政府
側の対応を「消極的」「低姿勢」と位置づけ、強力な対策を要求。
政府は歴史教科書に対する最終分析が出る20日、日本側に教科書の再修正を正
式要求する方針であると伝えられた。11日には「日本の歴史教科書歪曲対策
班」を構成することにした。また、日本が歴史教科書問題をどう解決するかに
よって、日本が積極的に進めている国連安保理常任理事国進出問題など、強硬
対策を外交的カードとして活用するための本格的な検討作業に取り掛かるとし
ている。
 
外交通商部の任星準(イム・ソンジュン)次官補は「2002年W杯が開催される来
年まで教科書問題が長期化するとは思わない」とし、「韓日関係は中日関係や日
朝関係とは別問題であるため、教科書問題に対して中国や朝鮮民主主義人民共
和国(北朝鮮)と共同で対応することは検討していない」と述べた。また、教科
書問題を日本大衆文化の追加開放や日本が求めている国連安全保障理事会の常
任理事国入りと関連付けることに対しても否定的な立場を表明した。
 任次官補は「日本の国連安保理常任理事国進出問題を外交カードとして使え
ないか」なという議員の質疑に対し、「中国と協力して使えると思う」「現在
日本は、アフリカなどを相手に常任理事国進出に向けたロビー活動を行ってい
る。しかし、常任理事国である中国が拒否権を行使する可能性があり、中国の
顔色をうかがっている」「今日駐日韓国大使を一時帰国させるなど、政府レベ
ルで対応策を取っている。政府は、今後さらに強い外交措置を取る考えだ」な
と説明している。
 任次官補は会見で、「日本の歴史教科書問題は韓日友好関係の根本を揺るが
す重大な事案」であるとし、これに対し「国民的な憤怒」が形成されつつある
という要旨をもって韓国の立場を伝えたとしている。

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日韓共同宣言(1998年10月) 抜粋
 2、両首脳は、日韓両国が二十一世紀の確固たる善隣友好協力関係を構築し
ていくためには、両国が過去を直視し相互理解と信頼に基づいた関係を発展さ
せていくことが重要であることにつき意見の一致をみた。
 小渕総理大臣は、今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓
国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を
謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫(わ)びを述べた。
 金大中大統領は、かかる小渕総理大臣の歴史認識の表明を真摯(しんし)に
受けとめ、これを評価すると同時に、両国が過去の不幸な歴史を乗り越えて和
解と善隣友好協力に基づいた未来志向的な関係を発展させるためにお互いに努
力することが時代の要請である旨表明した。
 また、両首脳は、両国国民、特に若い世代が歴史への認識を深めることが重
要であることについて見解を共有し、そのために多くの関心と努力が払われる
必要がある旨強調した。

 6、両首脳は、冷戦後の世界において、より平和で安全な国際社会秩序を構
築するための国際的努力に対し、日韓両国が互いに協力しつつ積極的に参画し
ていくことの重要性につき意見の一致をみた。両首脳は、二十一世紀の挑戦と
課題により効果的に対処していくためには、国連の役割が強化されるべきであ
り、これは、安保理の機能強化、国連の事務局組織の効率化、安定的な財政基
盤の確保、国連平和維持活動の強化、途上国の経済・社会開発への協力等を通
じて実現できることにつき意見を共にした。
 10、両首脳は、以上の諸分野における両国間の協力を効果的に進めていく
上での基礎は、政府間交流にとどまらない両国国民の深い相互理解と多様な交
流にあるとの認識の下で、両国間の文化・人的交流を拡充していくことにつき
意見の一致をみた。

◎金大統領は歴代韓国大統領としては初めて「過去」について言及せず日本側
に「配慮」を示した。8日には、小渕首相と会談し、首相は韓国国民に対し、
植民地支配へのおわびと反省を表明、これを金大統領は評価した上で今後韓国
政府としては、過去の問題を持ち出さないとした。両首脳は、その後日韓共同
宣言に署名、公式文書に韓国への謝罪の意が明記されるのは初めてであり、歴
史認識にたいする区切りとした。
しかし、日韓共同宣言には、戦後補償とくに従軍慰安婦問題にはふれなかった
ことにたいし、元「慰安婦」らは落胆した。



 
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