Date: Sun, 25 Mar 2001 15:58:48 +0900
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Subject: [keystone 3728] 自衛隊の災害派遣は、治安出動
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  反戦エッセイ 37
 
  自衛隊の災害派遣は、治安出動である

           井上澄夫(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)
               
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  昨年9月3日、石原慎太郎・東京都知事が主導して強行した「ビッグレス
キュー東京2000〜首都を救え〜」(東京都総合防災訓練)は、なお記憶に
生々しい。同訓練には、陸・海・空三自衛隊から7100名が動員された。し
かしあの事態を、「兵隊ごっこ」が好きな石原都知事のパフォーマンスという
レベルだけでとらえるべきではない。自衛隊にとって「ビッグレスキュー」
は、藤縄統合幕僚会議議長を統裁官とする「第1回統合防災実動演習」であっ
たが、そもそも防衛庁・自衛隊にとって、同演習は、どのような意義をもつも
のだったのか。

 「ビッグレスキュー」を演出したのは、石原都知事の〈軍事顧問〉である志
方俊之(しかた・としゆき)元北方総監である。陸上自衛隊は五つの方面隊
(北部・東北・東部・中部・西部)に分かれている。方面隊とは、戦前風にい
えば、軍管区である。志方は、北海道を管轄する「陸軍」のトップだった。退
役し大学教授になった彼を、石原が都の参予に起用し、自衛隊中心の「防災」
訓練を実現させたのである。
  志方は、防衛庁の月刊広報誌『セキュリタリアン』で、看板スターである。
「ビッグレスキュー」における彼の役割は、表向きは「知事主導の計画」を、
防衛庁・自衛隊に呑ませることだった。しかし、実は志方自身が演習を「プロ
デュース」したのだから、彼がやったことは、防衛庁・自衛隊の意とするとこ
ろを実現することだったのである。
  一般にはなじみのない『Jレスキュー』という雑誌のVOL1に、志方が
「史上最大の防災訓練」と題する論文を寄せている。『Jレスキュー』は、兵
器マニア対象の本を刊行しているイカロス出版が、今年2月に発行し始めた
「消防・防災・レスキューをテーマとする新カテゴリーマガジン」で、自衛隊
ベッタリのこういうメディアに書くとき、気分はなお陸上自衛隊最高幹部であ
る志方の〈本領〉が発揮される。

 しかしそのことに触れる前に、『セキュリタリアン』の昨年2月号に寄せた
彼の論文「自治体と自衛隊」で、自衛隊の災害派遣に関する彼の考えを見てお
こう。
 〈冷戦後、自衛隊の役割は多様化したと言うが、国家防衛という本来の役割
は依然としてその中核にある。すなわち、敵と戦い勝利する「有事の役割」で
ある。〉
  他方、自衛隊の「平時の役割」は、第一に「抑止力」としての役割、第二に
国連平和維持活動や国際的な緊急援助活動への参加であり、第三が「災害対応
力」としての役割である。1995年に起きた阪神・淡路大震災への出動は
「自衛隊ならではの力量を発揮した災害派遣」である。そして都の総合防災訓
練について、こうのべている。
  〈訓練では出来たことでも実際の災害時には出来ないことが多い。したがっ
て、訓練で出来なかったことが、災害時に出来るはずはない。都民は警察や消
防だけではなく自衛隊にも大いに期待している。有事に弾が飛び交う戦場で勝
利するはずの自衛隊にとって、平時の災害派遣など朝飯前のはずだからだ。〉

  志方は、こういう発想によって実現した「ビッグレスキュー」を総括し、
「今後の課題」として、『Jレスキュー』で次のことを挙げている。
  〈震災時に「避難民が集まるスペース」と「救援部隊が展開するスペース」
の両方を確保するために、日頃からどのように区分けしておくかと言う課題で
ある。何もしないと、公園や学校など広場というスペースに被災者が集まって
くることは避けられない。/指定されたスペースには、救援部隊が空から到着
するまでの数時間だけ被災者が入らないように、しっかりとした金網で囲んで
おいてスペースを確保できるようにしておかなければならない。〉
  〈自衛隊が装備しているのと同じ災害対策用器材を予め決められた防災基地
用の広場に備えておくことである。その資器材は、かつて使ったことのある即
応予備自衛官も使用可能である。もし、そのコンテナー(収納庫)の屋上にS
といった大きいマークを付けておけば、自衛隊はこれを目当てに空から降りる
ことができる。〉

  まさに、語るに落ちたということだ。自衛隊がいつでも出動できるように、
日頃から場所を空けておけという。治安出動の拠点確保であろう。災害時、そ
こに被災者が入り込まないよう、金網で囲めという。鉄条網でも張り巡らすつ
もりか。
 先に触れた『セキュリタリアン』で志方は、東京で大地震が起きれば、首都
機能がストップするから、その場合の救援活動は「国家機能の危機」の救援で
あり、「自衛隊が全力で出動しても決しておかしくはない」とのべ、だから
「日常は規制されている自衛隊の行動権限を、災害時の特例として緩和した
り、新しいシステムとして準備すること」が必要だと言う。首都で大震災が発
生したら、自衛隊は治安出動して、思いのまま振る舞うつもりなのだ。 新防
衛大綱に顕著なように、自衛隊にとって、大規模な自然災害は、テロリズムと
同様、「民生の安定」を破壊するものである。自衛隊の災害派遣は、あくまで
治安出動であることを、肝に銘じよう。

           ◎松下竜一氏発行『草の根通信』2001年3月号への寄稿



 
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