Date: Mon, 15 Jan 2001 18:29:08 +0900
From: "MAEDA,Akira" <maeda@zokei.ac.jp>
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Subject: [keystone 3492] 戦争犯罪の成立要素(4)
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前田 朗@歴史の事実を視つめる会、です。
1月15日

1)「戦争犯罪の成立要素」の最終回です。今回は第八条第二項のeで、これも
非国際的武力紛争に関するものです。

**********

第八条第二項e

第八条第二項e(i)  戦争犯罪としての文民攻撃

要素
1 実行者が、攻撃を指令した。
2 攻撃目標が、民間住民または敵対行為に直接参加していない住民個人であっ
た。
3 実行者が、民間住民または敵対行為に直接参加していない住民個人を攻撃目
標とすることを意図していた。
4 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

第八条第二項e(ii)  戦争犯罪としてのジュネーブ諸条約の特定の徽章を用いる
物または人の攻撃

要素
1 実行者が、ジュネーブ諸条約によって保護されていることを証明する明白な
徽章またはその他の方法を国際法に従って用いている一人以上の人、一つ以上の
建物、医療施設、輸送またはその他の対象を攻撃した。
2 実行者が、その証明を用いている人、建物、医療施設、輸送またはその他の
物を攻撃目標にする意図をもっていた。
3 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

第八条第二項e(iii)  戦争犯罪としての人道的援助または平和維持活動に関与
する人員または物への攻撃

要素
1 実行者が、攻撃を指令した。
2 その攻撃目標が、人道的援助または国連憲章に従った平和維持活動に関与す
る人員、施設、物資、部隊または車輌であった。
3 実行者が、その人員、施設、物資、部隊または車輌を攻撃目標にしようと意
図した。
4 その人員、施設、物資、部隊または車輌が、武力紛争に関する国際法におい
て民間人または民用物に与えられる保護を与えられていた。
5 実行者が、その保護を決定づける事実条件を知っていた。
6 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

第八条第二項e(iv)  戦争犯罪としての保護された物への攻撃(60)

要素
1 実行者が、攻撃を指令した。
2 その攻撃目標が、宗教、教育、芸術、科学もしくは慈善の目的に使われる建
物、歴史的遺跡、病院または病者および傷者を集合させている場所で、軍事目標
でないものであった。
3 実行者が、その宗教、教育、芸術、科学もしくは慈善の目的に使われる建
物、歴史的遺跡、病院または病者および傷者を集合させている場所で、軍事目標
でないものを、攻撃目標とすることを意図した。
4 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

(60)一九四九年のジュネーブ諸条約で特に保護された人のその場所での存
在、または法と秩序を維持する目的で保持されている警備隊の存在は、それ自体
では、軍事目標の場所であることを示さない。

第八条第二項e(v)    戦争犯罪としての略奪

要素
1 実行者が、一定の財産を専有した。
2 実行者が、財産を所有者から奪い、または、その私的利用のために専有する
ことを意図した(61)。
3 専有が、その所有者の同意なしに行われた。
4 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

5 実行者が、武力紛争の存在を決定する事実条件を知っていた。

(61)「私的利用」という語句の使用によって示されているように、軍事的必
要によって正当化される専有は、略奪の罪にあたらない。

第八条第二項e(vi)-1 戦争犯罪としての強姦

要素
1 実行者が、実行者の性器を被害者の身体のいずれかの部分に、わずかであれ
貫通させる行為や、なんらかの物体や身体の他の部分を被害者の肛門または生殖
器に貫通させる行為によって、人の身体に侵入した(62)。
2 その侵入が、その人または他の人に対して、暴力の恐怖、強迫、拘禁、心理
的抑圧、権限濫用によってまたは強制的状況を利用して引き起こされたような、
実力、実力の威嚇、強制によって行われた。または、その侵入が、真の同意を与
える能力のない人に対して行われた(63)。
3 実行行為が、非国際武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

(62)「侵入」という概念は、ジェンダーに中立な幅広い意味をもつ。
(63)生来的に、後天的に、または年齢のために能力がない場合、人は真の同
意を与えることができないと理解される。この註は、ICC規程第八条第二項
e?3、5、6の同じ要素にも適用される。
 

第八条第二項e(vi)-2  人道に対する罪としての性的奴隷制(64)

要素
1 実行者が、一人以上の人を買う、売る、貸す、交換することにより、または
その人から同様の自由を剥奪することにより、所有権に伴う権能の一部または全
部を行使した(65)。
2 実行者が、その一人以上の人を、性的性質の行為に従事させた。
3 実行行為が、非国際武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
 

(64)この犯罪の複雑な性質のために、その実行には複数の犯罪者が共通の犯
罪目的の一部として関与するものと認められる。
(65)この自由の剥奪には、ある場合には、一九五六年の奴隷制補足条約で定
義されたように、強制労働を課すことや、人を奴隷状態に置くことが含まれると
理解される。また、この要素で述べられた実行行為には、特に女性と子どもの人
身売買も含まれると理解される。
 

第八条第二項e(vi)-3  人道に対する罪としての強制売春

要素
1 実行者が、一人以上の人に対して、暴力の恐怖、強迫、拘禁、心理的抑圧、
権限濫用によって、または強制的状況を利用して、実力、実力の威嚇、強制によ
って、性的性質の行為に従事させた。または、真の同意を与える能力のない人に
性的性質の行為に従事させた。
2 実行者または他の者が、その性的性質の行為と引き換えに、またはその行為
と関連して、金銭その他の利益を手にしたり、期待した。
3 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

第八条第二項e(vi)-4  人道に対する罪としての強制妊娠

要素
1 実行者が、いずれかの民間住民の民族構成に影響を与える意図、または国際
法のその他の重大な違反を行う意図をもって、一人以上の妊娠した女性を監禁し
た。
2 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

3 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

第八条第二項e(vi)-5  人道に対する罪としての強制不妊手術

要素
1 実行者が、一人以上の人から、生物学的な再生産能力を剥奪した(66)。

2 実行行為が、関係人の医療措置や療養措置によって正当化されず、または真
の同意なしに行われた(67)。
3 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

(66)剥奪とは、永続的な効果をもたない出産統制措置を含むことを意図して
いない。
(67)「真の同意」には偽計によって得られた同意は含まれないと理解され
る。

第八条第二項e(vi)-6  人道に対する罪としての性的暴力

要素
1 実行者が、一人以上の人に、暴力の恐怖、強迫、拘禁、心理的抑圧、権限濫
用によって引き起こされたような、実力、実力の威嚇、強制によって、または強
制的な状況を利用して、または真の同意を与える能力のない人に、性的性質の行
為を行い、または、性的性質の行為に従事させた。
2 実行行為が、ジュネーブ四条約共通三条の重大な違反の犯罪と比較できる重
大なものであった。
3 実行者が、実行行為の重大さを決定づける事実状況を知っていた。
4 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

第八条第二項e(vii)  戦争犯罪としての子どもの利用、徴用、募集

要素
1 実行者が、一人以上の人を軍隊に徴用もしくは募集し、または、一人以上の
人を敵対行為に積極的に参加させるために利用した。
2 その一人以上の人が、一五歳未満であった。
3 実行者が、その一人以上の人が一五歳未満であると知っていた、または知る
べきであった。
4 実行行為が、非国際武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定する事実条件を知っていた。

第八条第二項e(viii) 戦争犯罪としての一般住民の移住

要素
1 実行者が、一般住民の移住を命令した。
2 その命令が、関係民間人の安全、または軍事的必要によって正当化されなか
った。
3 実行者が、その命令を出すことによるその移住に影響を与える地位にあっ
た。
4 実行行為が、非国際武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

第八条第二項e(ix)  戦争犯罪としての偽計による殺害または傷害

要素
1 実行者が、彼らが武力紛争において適用される国際法の諸規定のもとで保護
を与えられ、または与えられると思わせた一人以上の人の信用もしくは信頼を招
いた。
2 実行者が、その信用または信頼を裏切る意図であった。
3 実行者が、その人を殺害または傷害した。
4 実行者が、その人の殺害または傷害に、その信用または信頼を利用した。
5 その一人以上の人が、敵側に属していた。
6 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
 

第八条第二項e(x)  戦争犯罪としての宿泊所の拒否(訳語?)

要素
1 実行者が、生存者がいなくなるであろうと宣言し、または命令した。
2 その宣言または命令が、生存者がいなくなるであろうことを基準に、敵側を
威嚇し、または敵対行為を行うために、下された。
3 実行者が、その宣言または命令が出された従属軍に実効的な指令または監督
をする地位にあった。
4 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
 

第八条第二項e(xi)-1  戦争犯罪としての切断(傷害)

要素
1 実行者が、一人以上の人に、特に永久的に損傷を与え、または身体器官を永
久的に傷害しもしくは取り去ることによって、切断した。
2 実行行為が、その一人以上の人の死、またはの身体的もしくは精神的健康を
に重大な危険を引き起こした。
3 実行行為が、関係人の医療、歯科医療もしくは療養によって正当化されず、
または、その人の利益のために行われたものではない(68)。
4 その一人以上の人が、敵側の権力の掌中にあった。
5 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

6 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

(68)同意があったことは、この犯罪の抗弁にはならない。この犯罪が禁止し
ている医療手続きは、関係人の健康状態によって必要とされない手続き、かつ、
その手続きを行う側と同じ国民で、かつ自由を剥奪されていない人に、同様の医
療条件のもとで適用される一般に承認されている医療基準に合致しない手続きで
ある。この註は第八条第二項e(xi)-2の同じ要素にも適用される。

第八条第二項e(xi)-2  戦争犯罪としての医学的もしくは科学的実験

要素
1 実行者が、一人以上の人に医学的もしくは科学的実験を行った。
2 その実験が、一人以上の人の死を引き起こした、または、重大な身体的もし
くは精神的な健康または完全性への危険を生じさせた。
3 実行行為が、関係人の医療、歯科治療もしくは療養によっては正当化され
ず、または、その人の利益のために行われたものではない。
4 その一人以上の人が、敵側の権力の掌中にあった。
5 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

6 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。

第八条第二項e(xii)  戦争犯罪としての敵側の財産の破壊または接収

要素
1 実行者が、一定の財産を破壊または接収した。
2 その財産が、敵側の財産であった。
3 その財産が、武力紛争に関する国際法で破壊または接収から保護されてい
た。
4 実行者が、その財産の地位を決定づける事実条件を知っていた。
5 破壊または接収が、軍事的必要性から正当化されなかった。
6 実行行為が、非国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。

7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。



 
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