Date: Fri, 25 Aug 2000 14:33:22 +0900
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Subject: [keystone 3009] 銀座に戦車が走る?
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 発信者=井上澄夫
   (やめて!東京都による「防災」に名を借りた自衛隊演習・実行委員会)
  発信時=2000年8月25日

〔備考: 本稿は、急きょ書き下ろしたもので、掲載メディアは未定です。
「ビッグレスキュー」反対運動のためにご活用いただけるなら、ありがたく思い
ます。〕

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    暴走都知事の「戦車偏愛症」を考える

 9月1日号『週刊朝日』に、「都知事・慎太郎が銀座に戦車を走らせる?」と
題する記事が掲載されている。9月3日に予定されている「ビッグレスキュー東
京2000〜首都を救え〜」(東京都総合防災訓練)の際、石原都知事が〈とに
かく〉銀座に戦車を走らせたくてたまらず、ずいぶん奔走したというハナシであ
る。
 〈ある都庁関係者が明かす。「実は石原知事は今回の防災訓練で、銀座に戦車
を走らせるつもりだったのです。/石原知事は昨年、ブレーンの一人に真顔でこ
んな話を持ちかけたという。「おい、東京都に戦車を走らせることはできない
か。考えてくれ」/あるメディアのインタビュー中に、突然、「銀座に戦車を走
らせる。パラシュート部隊も降下させるからな……」と話し始め、記者を唖然と
させた〉などという内容である。

 実はこのハナシ、筆者にとっては、さして驚くことではない。石原氏は、都知
事就任からそれほど時が経たぬうちに、〈陸海空の「三軍」を使った災害時の合
同大救済演習〉について「実戦に近い演習をしたい。相手は災害でも、ここでや
るのは市街戦ですよ。」とのべ(99年8月号『VOICE』)、今年になってから
は、あの4月9日の「三国人・治安出動要請」発言の前に、「不法入国の外国人
による大略奪が新宿とか池袋で起きるかもしれない。それに対処するデモンスト
レーションとして戦車とか装甲車で街を封鎖する訓練もしてほしい」と、3月号
『正論』で発言し、右派メディアの雄たる同誌の大島信三編集長から「戦車なん
ていったら、マスコミがうるさいですよ」とたしなめられている。
 だから、『週刊朝日』が、都庁関係者の「7月ごろまで親しい知人や都職員に
『戦車を出せる方法はないか。だれか知恵を貸してくれよ』と声をかけていまし
た」という証言を新たに紹介しても、そうだろうなと思うのみである。

 だが、石原都知事が、「銀座に戦車を走らせる」ことにこれほどこだわってい
る以上、それを単なる「戦争ごっこ」好きとして一笑に付すわけにはいかない。
 戦車はもともと大変重いものである。大地震が突如発生したとして、その重い
戦車をどうやって被災地まで運ぶのか。普通の道路を戦車が集団で走れば、道が
ギタギタにこわれてしまうだろう。神奈川(であったと思う)で製造された戦車
を北海道に運ぶために、いくつもの部品に分解して運んだという話を聞いたこと
があるが、それは納得のいく話だ。

 しかもこれは、とりあえず「災害派遣」の話であるから、そもそも被災地の道
路は寸断されているはずだ。戦車がいくら妨害物を乗り越える力を持っていると
しても、目的の被災地に着くまでに要する時間は、半端なものではあるまい。た
とえば、私が住む東京都練馬区にある陸上自衛隊練馬駐屯地から戦車が列をなし
て銀座に向かうとして、それが〈救急〉にならないことは明白である。まして小
型空母「おおすみ」に戦車を積んで、被災地近くの港に運び、最近北海道で訓練
したように、ホーバークラフトで陸揚げして、それから目的地に向かうなどとい
う手順を踏むとすれば、それはいったい何をやっているのであるか。

 さらに根本的な問題がある。かりに戦車群が迅速に銀座に到着できたとして、
そもそも「戦車は銀座で何をするのか」。石原氏は「地震で歩道橋やなんかが
落っこったら、戦車でなければ越えられない」と語っているが(99年12月号
『新潮45』)、そのような場合必要なのは、戦車ではなく、練度の高い消防レ
スキュー隊であろう。で、再び繰り返そう、「戦車は銀座で何をするのか」。誰
かに向けて砲門を開くのか。災害救助だからそんなことはしないというなら、ハ
イ、石原さん、答えてごらんなさい、「戦車は銀座で何をするのか」。

 「ビッグレスキュー」では、実際には、どうやら戦車は登場しないらしい。し
かし銀座には装甲車が出てきて、道路の障害物を除去するという。9月3日に
は、銀座の中央通りは封鎖されることになっているから、石原氏の「戦車とか装
甲車で街を封鎖する」という“夢”は、一部実現するのである。だが、道路の障
害物の除去には、日頃訓練を積んでいる消防署員や、ビル・家屋の解体などの専
門職の人々が最も適しているだろう。なぜ装甲車でなければならないのか。

 ここで十分な考察に値するのは、石原都知事と防衛庁それぞれが使用する言葉
の違いである。都総務局災害対策部の文書には、銀座会場の項に「道路障害物除
去」とのみある。装甲車の登場・活躍を大宣伝したいのは石原知事だが、自衛隊
の準機関紙『朝雲』8月24日号には、銀座での訓練の一つとして「陸自の装甲
ドーザーによる道路啓開」とある。ドーザーはブルドーザーのことだから、つま
り陸上自衛隊は、装甲したブルドーザーを使うのである。
 装甲車といえば、ひたすら戦争の臭い、軍事色が濃くなり、装甲ドーザーとい
えば、いかにも自衛隊が「災害派遣される」というニュアンスが強くなる。もっ
とも、衣の下に、文字通り鎧(よろい)がはみ出ている。道路の障害物を取り除
くのに、なんで装甲が必要なのであるか。これはハイ、元北方総監で石原都知事
の軍事顧問(都参与)の志方俊之(しかた・としゆき)さんか、防衛庁制服組
トップ、統合幕僚会議議長の藤縄祐璽(ふじなわ・ゆうじ)さん、答えてみなさ
い。

 いや、話が少々本論からそれた。つまり、一口にいえば、石原知事は、できる
だけ軍事演習色の強い訓練であることを強調したいのだが、防衛庁は大規模な出
動の実績をしっかり残すことが目的で、出動の大義として、「災害派遣」の看板
を大いに目立たせたいのである。
 もっとも、だからといって、防衛庁が「ビッグレスキュー」に治安(出動)訓
練をひそかに忍び込ませていないと断定できる証拠はない。防衛庁は、治安(出
動)訓練を否定するが、彼らのいうことを信用してはならないことは、戦前の歴
史が雄弁に証し立てている。防衛施設庁の大規模な汚職を隠しつづけた防衛庁幹
部の最近の犯罪例も、十分疑いの根拠になるというものだ。

 先述の『週刊朝日』は、今年4月の会見(都庁での定例記者会見であろうか)
での発言として、石原氏の「軍としての発動を提示すれば(暴動の)抑止力にな
ると思うし、市民の信頼感も醸し出されると思う」という発言を紹介している。
これは、彼の4月9日の陸上自衛隊第一師団を前にした発言と軌を一にし、昨年
8月号『VOICE』での「合同大救済演習は、北朝鮮(ママ)とか中国に対する威
圧にもなる。やるときは日本はすごいことをやるなっていう」という発言とも符
合する。

 防災訓練であるはずの「ビッグレスキュー」における「相手」は、石原知事に
とっては、実は災害ではない。「相手」は、在日韓国・朝鮮人を初めとする外国
人であり、彼らと「内通する」日本人であり、はたまた朝鮮民主主義人民共和国
や中国なのだ。だからこそ、彼は戦車にこだわるのであるが、そのこだわりにお
いては、戦車は間違いなく砲門を開く。
 8月18日に公表された「ビッグレスキュー東京2000の実施細目につい
て」には、「自衛隊の総合的な機動力を大規模に展開して、都民が安心感を抱く
ことのできる訓練を実施する」とある。7100人の自衛隊の大展開が「市民の
信頼感を醸し出す」という石原都知事の思い込みは、「ビッグレスキュー」反対
運動の盛り上がりによって、打ち砕くしかあるまい。

 彼の「戦車偏愛症」は、彼の幼児性の発露であろうが、彼にとってそれは「憂
国の情の奔出」であろう。したがって、はた目にいかに奇妙にみえようと、彼は
自らの「戦車偏愛症」をむしろ誇りとし、今後もそれにこだわりつづけるだろ
う。「今年がダメなら、来年があるさ」。「戦車偏愛症」はまた、軍事力を崇拝
する「好戦病」をその根っことし、その「好戦病」は民族排外主義と一体であ
る。

 暴走都知事の「戦車偏愛症」は、8月15日の彼の靖国神社参拝が大いに支持
されたように、多くの支持者、ファンを持つ。その事実をはっきり見据えて、
「ビッグレスキュー」の危険性をわかりやすく暴露し、それを中止に追い込も
う。
 



 
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