keystoneML2000/06

From: "NAKADA hiroyasu" <nakada_h@jca.apc.org>
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Subject: [keystone 2815] 準備書面３
Date: Wed, 28 Jun 2000 22:38:16 +0900
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三　「適正かつ合理的」の要件の不存在
　１　本件各土地を提供する客観的必要性の不存在
　　　本基地内において強制使用認定がなされた各土地の使用状況等は次のとおりであるから、各
　　土地を米軍基地のために提供する客観的必要性は存在しない。
（一）沖縄市字森根石根原359（使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号１）について本
　土地に関する使用認定申請目的は「保安緩衝地帯用地」であり、現状としては、荒地、広葉
　樹林になっている。
　　　　保安緩衝地帯とは、航空機の運行に伴なう安全を図るために、建造物等の高度制限がなさ
　　　れる区域のことをいう。ところが、本土地は、本基地の側面東方一キロメートル以上の場所
　　　に存在し、本土地と滑走路の間には建物も存在しているのであるから、保安緩衝地帯として
　　　使用する必要性が全くない。普天間飛行場内の土地のうち、1962年6月30日に返還された、
　　　滑走路の延長線上で且つ着陸帯の北端から約300メートルの位置に存在する土地や、1963
　　　年8月15日に返還された、着陸帯側面西方約170メートルの位置に存在する土地と対比し
　　　ても、その必要性が存在しないことは明らかである。
（二）沖縄市字森根石根原361－2（使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号２）につい
　て
　　　　本土地に関する使用認定申請目的は「駐車場敷地」であるが、現状としては、駐車場だけ
　　　ではなく、広葉樹林や建物敷地となっており、沖縄電力株式会社が使用する電力線およびそ
　　　の支線、沖縄県企業局が使用する送水管、管理道路、導線が存在する。
　　　　本土地は、米軍兵およびその家族が使用する駐車場のために必要として使用認定申請がな
　　　されているのであるが、このような目的のために「強制」使用認定をする必要はない。すな
　　　わち、米軍兵、特にその家族が使用するための駐車場であれば、①その建設用地を駐留軍の
　　　用に供することと日米安全保障条約第一条に掲げる目的遂行との関連性が低いのに対し、②
　　　駐車場自体が周辺地域に与える影響が小さいことから、基地周辺の土地を任意に提供しても
　　　らって建設し得る可能性が高いので、本土地を強制的に収用する必要はない。
　　　　また、本土地については、使用認定申請目的外に使用されている点（使用実態が異なるだ
　　　けでなく、使用者についても米軍ではなく沖縄電力株式会社や沖縄県企業局という日本法人
　　　が使用している）で、著しい違法がある。
　　（三）沖縄市字森根石根原395（使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号３）について
　　　　本土地に関する使用認定申請目的は「駐車場敷地」であるが、現状としては、駐車場だけ
　　　ではなく、沖縄県企業局が使用するポンプ室、送水管、電柱、支線が存在する。
　　　　本土地の強制使用認定には、使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号２の土地と同様
　　　の問題がある。
　　（四）沖縄市字森根石根原362（使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号４）について
　　　　本土地に関する使用認定申請目的は「場内管理道路敷及び浄水池敷地」であるが、現状と
　　　しては、沖縄県企業局コザ浄水場となっており、沖縄電力株式会社が使用する電力線および
　　　その支線、沖縄県企業局が使用する送水管、管理道路、導線、貯水タンクが存在する。
　　　　使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号２の土地と同様の問題がある。
　　（五）沖縄市字森根伊森原272（使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号５）について
　　　　本土地に関する使用認定申請目的は「家族住宅敷地」であり、現状としては、住宅、道路、
　　　マンホール等が存在する。
　　　　使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号２の土地と同様の問題がある他、住宅の高層
　　　化を進めればその敷地面積が激減するので、強制使用をする必要は、さらに低い。
　　（六）沖縄市字森根角石西原191（使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号６）について
　　　　　本土地に関する使用認定申請目的は「家族住宅敷地」であり、現状としては、住宅、道
　　　路、高圧ボックス、街灯等が存在する。
　　　　使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号５の土地と同様の問題がある。
　　（七）沖縄市字白川白川原382－1（裁決取消請求事件訴状添付物件目録番号２）について
　　　　本土地に関する使用認定申請目的は「家族住宅用地」であるが、現状としては、荒地とな
　　　っており、沖縄電力株式会社が使用する電力線およびその支線が存在する。
　　　　　本土地の強制使用認定には、使用認定取消請求事件訴状添付物件目録番号２の土地と同
　　　様の問題がある。
　２　強制使用によって失われる利益
　　（一）本件強制使用以前の違法状態
　　　　本基地は、沖縄戦が始まる前の1943年に旧日本軍が地主の同意を得ずに強引に接収した。
　　　その後、1945年4月、米軍が旧日本軍から武力で接収した。この違法は著しく大きく、こ
　　　の違法状態を解消する必要は極めて高い。
　　（二）街作り、都市計画上の被害
　　　　沖縄市の市域面積4899万平方メートルのうち、嘉手納飛行場、嘉手納弾薬基地、泡瀬通
　　　信施設、キャンプ瑞慶覧等の米軍基地が1762万平方メートルと36パーセントを占めている。
　　　北谷町では米軍基地が町の面積の57パーセントを、嘉手納町では83パーセントを基地が占
　　　めている。
　　　　これらの市町では、基地がある故に、狭溢な場所に相当数の人々が住居や店舗を構えるこ
　　　とを余儀なくされている。地区内に走る生活道路は4メートル未満がほとんどで、迷路状に
　　　伸びており、袋地も多数存在する。市で認定されている道路も少なく、緑地やオープンスペ
　　　ースも乏しい。住宅地においては、全体的に排水風通しが悪く、火災、浸水、水害、日照、
　　　通風、採光等の不良、自動車交通の不便等様々な被害が存在している。
　　（三）軍事基地がある故の基地被害
　　　（１）騒音
　　　　　本基地には、Ｆ１５Ｃ戦闘機やＫＣ１３５Ｒストラトタンカー空中給油機等の常駐機に
　　　　加え、空母艦載機や国内外から飛来する航空機によって、タッチ・アンド・ゴーなどの飛
　　　　行訓練や、低空飛行、住宅地域に近い駐機場でのエンジンの試運転が絶え間なく行なわれ
　　　　ているため、騒音は激しく、正常な日常生活はもとより、疲労の過重、聴力の異常、授業
　　　　の中断等、周辺住民に看過できないほどの甚大な被害を与えている。
　　　　　また、通常の訓練の他、臨時的に行なわれるＯＲＩ演習（運用即応観察）や定期的に行
　　　　なわれるローリー演習（現地運用態勢訓練）などの演習期間中の騒音は一段と激しく、本
　　　　基地の周辺住民は、激しい騒音禍に悩まされている。
　　　　　この騒音については、裁判所においても、「本件航空機騒音等によって、原告（周辺住民）
　　　　らは、その暴露されている騒音等の量や態様による程度の差こそあれ、会話妨害、電話、
　　　　テレビ等の聴取妨害、これらに伴う家庭の団らん、趣味生活及び職業生活の妨害、学習、
　　　　読書等の精神作業の妨害、睡眠妨害といった種々の基本的生活利益の侵害を被っており、
　　　　また、本件航空機騒音等を直接の原因として、あるいは、生活妨害、睡眠妨害等の被害に
　　　　起因して、いらだちや不快感等の精神的被害を被っていることが認められる。」として、周
　　　　辺住民の損害であると判断され、その損害が受任限度を超える違法なものと判断されてい
　　　　る（那覇地裁沖縄支部判決平成6年2月24日・判例時報1488号20頁～、福岡高裁那覇
　　　　支部判決平成10年5月22日・判例時報1646号3頁～）。
　　　（２）航空機事故
　　　　　本基地においては、沖縄の日本復帰以前にも、大型航空機が墜落し、校舎、住宅等に多
　　　　大な損害を与えるだけでなく、多数の死傷者をも出した事故が相次いで発生していた。そ
　　　　れに引き続き、右復帰以降も、本基地に所属する航空機の墜落事故が、本基地内および沖
　　　　縄本島周辺において多数回発生している。
　　　　　墜落事故以外にも、本基地の所属機や本基地に飛来している航空機等による物品等落下
　　　　事故、着陸失敗、緊急着陸、空中接触等の事故が多発しており、住民を絶えず不安に陥れ
　　　　ている。
　　　　　このように、本基地周辺および本基地に離発着する飛行機の飛行コース下の住民は、常
　　　　に航空機事故の危険にさらされているのである。
　　　（３）ＰＣＢ漏出事故
　　　　　本基地内の土地がＰＣＢに汚染されていた事実が、米下院軍事委員会環境回復審議会に
　　　　よって作成された太平洋基地視察報告書（1991年4月作成）に記載され、1992年2月14
　　　　日、本基地報道部が右事実を認めた。
　　　（４）油流出事故
　　　　　本基地周辺においては、沖縄の日本復帰以前にも、周辺地域への油流出事故がたびたび
　　　　発生していた。また、右復帰以降も油流出事故が続発し、周辺住民に不安を与えている。
　　（四）小括
　　　　以上により、本基地にかかる強制使用認定には「適正かつ合理的」の要件が存在しない。

第六　キャンプ瑞慶覧

一　基地の概要（甲Ｆ1号証・基地対策室「沖縄の基地」69頁以下。及び北谷町発行「基地と北谷
　町」50頁以下参照。）
　１　所在地等
　　キャンプ端慶覧は、沖縄本島中部の北谷町、宜野湾市、沖縄市など、3市・1町・1村（5自治
　体）にまたがる面積約640万平方メートルの広大な基地である。
　２　駐留部隊等
　　本基地には、在沖アメリカ海兵隊基地司令部、第1海兵航空団司令部が置かれ、海兵隊の中枢
　機能を有している。そして、地上戦闘部隊では、第3海兵遠征軍の第3海兵師団傘下の第12海
　兵連隊、航空部隊としては、第1海兵航空団傘下の第17海兵航空支援群、後方支援部隊として
　は、第9旅団役務支援軍の中の上陸支援大隊、整備大隊などが駐留している。海兵隊の中枢機能、
　実戦部隊、後方支援部隊が駐留する海兵隊の主要基地である。特に、地上戦闘部隊である第12　海
　兵連隊は、155ミリ、105ミリ、8インチ砲などを有する砲兵部隊で、県道104号線越え実弾射
　撃演習を実施していた部隊として知られ、日本本土の演習場に出向いて演習をする時以外はこの
　基地内に駐留している。
　３　施設等
　　本基地は、大きく分けて、海兵隊基地司令部のあるバトラー地区、第58信号大隊が所在する
　バクナー地区、米軍住宅が所在するプラザ地区、兵器・機材整備施設及び各隊舎が所在するフォ
　スター地区から構成されている。基地内には、司令部事務所、兵舎の他、家族住宅、小学校、高
　校、消防署、体育館、陸上グラウンド、野球場、劇場、ボウリング場、ゴルフ場などの娯楽施設、
　銀行、郵便局、教会、放送局、ショッピングセンター、などありとあらゆる施設、設備が存する。
　４　使用認定及び裁決対象土地の位置
　　甲Ｆ2号証の写真１（基地全体図）の「赤丸」の部分が、契約を拒否し、使用認定の対象とさ
　れている19筆の土地である。更にこの内の五筆（認定取消事件訴状並びに裁決取消事件訴状の
　各物件目録に記載された五筆）が本件訴訟の対象土地である。
　　以下、右「認定取消事件訴状添付のキャンプ瑞慶覧の物件目録の物件番号１」を、単に「物件
　１」のように略する（認定取消事件と裁決取消事件の対象土地は、キャンプ瑞慶覧の場合は同一）。
　なお、被告の今回の使用認定対象土地を個別に検討していくと、訴訟対象外の物件（非原告の物
　件、並びに原告の訴訟対象にしていない物件）においても、極めて問題のある認定がある。そこ
　で、被告の訴訟対象物件の使用認定の杜撰さを示す重要な間接事実として、これら訴訟対象外の
　土地（以下単に、「訴外物件」という）についても指摘するものとする。
二　駐留部隊からみた違法性（必要性の要件の不存在その一）
　－必要性の要件の「駐留軍」の使用とは言えず、「駐留目的」の範囲内とも言えない。
　　キャンプ端慶覧は、前記の様に、在日米軍の中でも、取り分け、海兵隊の中枢機能、実戦部隊、
　後方支援部隊が駐留する海兵隊の主要基地である。海兵隊は、いわゆる殴りこみ部隊として戦闘
　地域に投入される攻撃的部隊であり、日本防衛とは無関係であり、更に、今や「極東条項」の範
　囲を大幅に越えて世界の紛争地域に投入されるものとして日米安保条約をも逸脱することがより
　明白となった部隊である。このような部隊の駐留目的のために所有者の土地を強制的に使用する
　ことは、特措法1条、3条の規定する提供目的に著しく違反し、重大な違法がある。
三　基地形成の歴史から見た違法性（適正且つ合理的の要件の不存在その一）
　－適正且つ合理的の要件の、強制使用以前の違法状態を解消しないままの強制使用である。
　　本基地付近は、第二次世界大戦の米軍の上陸地点であったため、上陸と同時に米軍に占領され、
　ここに沖縄侵攻のための拠点基地が構築され、それが終戦後も引続き米軍の物資集積所やモータ
　ープール等として使用された。
　　住民が収容所から一部の地域に帰還が許されたのが1946年10月であった。しかし、住民が許
　された居住地域は、戦前の集落地や田畑などの良好地ではなく、居住には最悪の傾斜地や谷間の
　狭い土地であった。平野部の良好な土地は、米軍に囲い込まれたままであった。
　　さらに、1954年7月には、宜野湾市伊佐浜の土地が、地主はもちろん県民の激しい反対闘
　争（これが、島ぐるみ闘争に発展していった）にも拘わらず、武装米兵とブルドーザーによって
　強制接収され、本基地は急速に拡張され現在に至っている。
　　このような違法な軍事占領と、強制接収によって奪われて作られた基地について、右違法を解
　消しないままなされようとしている本件強制使用には重大な違法がある。
四　街づくりや経済振興への障害（適正且つ合理的の要件の不存在その二）
　－適正且つ合理的の要件の「街づくり、都市計画上の被害」が甚大である。
　１　北谷町では、現在でも56・7パーセントを占める米軍基地が街づくりや経済振興の上で大き
　な障害となっている（第10回公開審理記録「くさてぃ」）。
　　　前記の通り、住民が米軍により居住を許された地域は、宅地としては最悪の傾斜地や谷合で、
　　現在でも、墓地と住居が混在し、家屋を改築しようにも建築確認がおりず、道路が狭くて消防
　　署や救急車が通れない地域となっている。
　　　また、基地があるために、住民要求に応える公共用地の確保が困難となっている。北谷町に
　　は終戦直後小学校が2校あったが、1校は町内ではなく、隣接した沖縄市の中の傾斜地を削っ
　　て建てられた。他の1校も小山を削り取った狭い地域に建てざるを得なかった。
　２　北谷町策定の「第三次振興計画基本構想」においても、以下の様に述べられている。
　　　即ち、北谷町の土地利用状況をみると、総面積132万6000平方メートルの約57パーセン
　　トに及ぶ嘉手納飛行場、キャンプ端慶覧などの広大な米軍基地があり、そのほとんどが平地で、
　　国道58号線の利便性に富む地域に集中している。これらの米軍基地の存在は、行政区の分断
　　など、町の生活環境に与える影響だけでなく、道路網の整備改善など、地域開発や産業振興の
　　上からも大きな障害となっている。
　３　北谷町は、戦前は9割近くが農家で、純農村地帯であった。しかし米軍は基地構築のため、
　　農地のほとんどを沿岸の海底から削り取った砂利で埋めつくし、二度と農業ができないように
　　してしまった。めぼしい産業の発展も望めないまま、軍作業、あるいはバーやレストランなど
　　の飲食店、貸住宅など、基地依存経済のパターンにはめ込まれていってしまったのである。し
　　かし、最近ではハンビー飛行場、メイモス射爆場跡地の返還があり、企業誘致によって、北谷
　　町の西海岸一帯は、沖縄中部地域の新しい商業住宅地域として生まれ変わろうとしている。
　　　このような状況から見た時、キャンプ端慶覧が返還されれば、より一層の発展が望めるとし
　　て基地土地所有者のみならず町民、行政が強くこれを望んでいるのである。
　　　以上述べた様に、街づくり、経済振興の大きな障害になっている米軍基地に土地を提供する
　　ことはその土地利用の「適正かつ合理的」の観点からもこれに著しく反しており、右要件を欠
　　く違法がある。
五　付近住民への権利侵害－環境汚染等（適正且つ合理的要件の不存在その三）
　－適正且つ合理的の要件の内、環境汚染などの基地被害があり、かつ、原状回復が困難なことよ
　り土地所有権の侵害の程度も著しい。
　１　キャンプ端慶覧では、1997年2月、同基地内の土地が高濃度ＰＣＢで汚染されていること
　　が発覚し、住民の健康、海岸、漁場への汚染の懸念が広がった。その前年11月にも同じ地域
　　で油もれ事故が起きている（沖縄タイムス記事）。
　　　このような環境汚染は、同基地内ではこれまで繰り返し起こっている（北谷町発行「基地と
　　北谷町」107頁以下の「復帰後の米軍基地からの環境汚染」一覧表参照）。
　２　特措法3条の適正かつ合理的の要件は、提供を受ける米軍にとっての適正かつ合理性のみな
　　らず、その強制使用が付近住民へ重大な被害を与え、あるいはその危険性がある場合はそれを
　　も検討事由として判断されなければならない。この点からした時、度重なる環境汚染を繰り返
　　している基地のための強制使用には特措法3条の要件を欠く違法がある。その違法性は重大で
　　ある。
六　広大な遊休地及び娯楽施設の存在（適正且つ合理的要件の不存在その四、必要性の要件の不存
　在その二）
　－適正且つ合理的の要件の内、「土地の非代替性」がなく、かつ、必要性の要件の駐留目的と手段
　の関連性がないかあってもその程度が極めて低い。
　１　本基地内の本件強制使用対象地の周りには、広大な遊休地、及び、広大な娯楽施設が存在す
　　る。
　２　甲Ｆ2号証の写真10は、訴外物件の伊志嶺所有の784番地の土地付近の航空写真である。
　　真ん中付近に陸上グラウンドがあり、その回りに野球場が四面も取られている。これ以外にも
　　本基地内には有名な泡瀬ゴルフ場の他、劇場、ボウリング場などの広大な面積を占める娯楽施
　　設がある。
　　　これらを整理縮小すれば、仮に、米軍基地の存在がどうしても必要であるという立場に立つ
　　場合においても（私たちはその立場にたたないが）、必要な基地施設のための土地は、現在の広
　　大なキャンプ端慶覧の数分の一、あるいは何十分の一で済むのである。
　　　そうすれば、基地の集約化等によって、原告らの本件訴訟対象土地についてもこれを強制使
　　用してまで提供する必要性はなくなり、原告らの先祖伝来の土地をその意に反して強制使用す
　　る必要性は全くない。
　３　甲Ｆ2号証の写真11、12は、いずれもキャンプ端慶覧内の司令部建物付近の写真である。
　　甲Ｆ2号証の写真13は、キャンプ端慶覧の全体の航空写真である（左下付近が本基地。写真
　　１を参照）。これによっても、本基地内には、広大な遊休地が存在することが明らかである。
　　　広大な遊休地や、前記の広大な娯楽施設が周囲にあるのであるから、代替地はいくらでもあ
　　る。当該土地でなければならない必要性はないか、あったとしても極めて低い。このような場
　　合、本件各土地の強制使用は、適正かつ合理的な要件を著しく欠く重大な違法がある。
七　米軍家族用住宅敷地、売店敷地（適正且つ合理的の要件の不存在その五、必要性の要件の不存
　在その三）
　－適正かつ合理的の要件の提供方法の非代替性を欠き（強制使用という方法によることなく任意
　契約で住宅地を取得する方法がある）、提供土地の非代替性もなく、必要性の要件の駐留目的と提
　供手段との間の関連性がないかあっても著しく低い。
　１　甲Ｆ2号証の写真６（米軍住宅と芝生）は、基地のフェンス越しに、基地内の米軍住宅を撮
　　影したものである。広い緑の芝生のなかに、ゆったりと住宅が建てられている。写真の左には
　　アメリカ兵の子供のための遊具（ブランコ）が写っている。
　　　写真７（住宅地区航空写真）は、物件５の新垣萬徳所有地付近の写真で、同人の土地は、写
　　真の下のＵ字型道路の東側あたりに存する。
　　　写真８（新垣万徳土地図面）で明らかな様に、面積3404平方メートル、約1010坪の広大な
　　新垣萬徳土地の中に、米軍家族用住宅は、2軒と、建物が一部かかっているのが2軒あるだけ
　　である。平均すれば、3軒分、1軒平均約330平方メートル＝100坪の広大な敷地が米軍家族
　　のために提供されている。
　２　一方、甲Ｆ2号証の写真９（基地外の住宅航空写真）、及び写真13（基地全体図航空写真）
　　を見れば明らかな様に、幹線道路（国道）をはさんで、基地外には、狭い地域に県民がひしめ
　　く様に小さな住宅を建てて住んでいる。基地内の芝生の庭に囲まれた住宅と比較した時、フェ
　　ンスの内と外との格差は、残酷なほどに、明瞭である。これは、米軍が地元住民のふくよかな
　　田と住宅地を奪い取り、基地に囲い込んだためである。
　　　物件１の新垣善春所有の951番の土地は、地目が「宅地」となっていることからも分かる様
　　に、同人の家族の住む自宅の跡地である。このように、土地所有者から先祖伝来の住まいを奪
　　い取り、住民を狭い傾斜地の土地に追いやりその居住権を奪いながら、広大な敷地の中にゆっ
　　たりとした米軍家族のための住宅が建てられている。
　　　このような土地利用は、適正かつ合理的の要件を著しく欠く。
　３　また、そもそも家族用住宅地は、軍事目的の遂行とは直接関係がない施設の用に供するもの
　　であり、それは、どうしても必要であるなら民間の契約によって取得、賃借するなどして調達
　　するならともかく、特措法に基づいて、強制的に使用することは許されない。なぜなら、日本
　　国と極東の平和と安全の維持に寄与するための駐留軍の用に供するためという、特措法1条、
　　3条規定の提供目的を逸脱するものだからである。仮に、広義の提供目的の範囲内にあるとい
　　う立場に立つとしても、そのための必要性は前記の如く他に広大な遊休地等がある中では、極
　　めて低いと言わざるえず、適正かつ合理的とは到底言えない。このようなもののために、所有
　　者の意思に反して強制使用することには重大な違法がある。
　　　同様に、売店の敷地として使用されている新垣善男所有の933番地の土地（訴外物件）も
　　同様に特措法規定の提供目的を逸脱し、かつ、必要性、適正かつ合理的の要件を著しく欠いて
　　いる。
八　教会用地
　－必要性の要件の目的と手段の関連性がなくあっても著しく低く、また、提供目的が憲法20条
　の「政教分離原則」に違反して認められない。
　　　訴外物件の照屋征四郎所有の11234番地の土地は、教会用地とされている。
　　　教会は、駐留軍の用に直接供するためのもとはいえない。
　　　また、那覇防衛施設局が教会用地として強制使用するということは、国が教会用地のための
　　使用権取得対価たる補償金を支出すると言うことである。日本国憲法20条の定める「政教分
　　離原則」は、国が宗教の活動のために財政上の支出をすることを禁じているものであり、本件
　　強制使用は右憲法に反する。憲法違反は使用認定に重大な瑕疵があり無効となる場合の典型例
　　である。このように、訴外物件とはいえ、本件対象土地と同様に使用認定された土地について
　　のこのような問題の存在は、本件一連の使用認定がいかにずさんなものであるかをよく示す重
　　要な間接事実である。
九　フェンス近くの土地（適正且つ合理的の要件の不存在その六）
　－適正且つ合理的の要件の、必要最小限の範囲でない。
　１　甲Ｆ2号証の写真14及び写真15は、訴外物件である新垣進市所有の839番地の土地付近の
　　慨略図及び航空写真である。この土地のすぐ東側の至近距離に、基地のゲートがある。
　　　このゲートの外側も元基地であったが、順次返還をしてきて現在にいたっている。基地のフ
　　ェンスが国道から西に引っ込んでいるのはこのことを示している。ゲートの外側には、レスト
　　ラン、幼稚園、学習塾等の多くの民間建物が多数建てられ、有効利用されている。
　　　この土地も現在駐車場とされているが、駐車場用地にできる土地は基地内にはいくらでもあ
　　ることは言うまでもない（一部道路敷となっているが、道を少しカーブさせれば済む）。ゲート
　　をほんの少し、西に動かせば、この土地は、一等地としてすぐに有効利用できるのである。
　２　照屋征四郎所有の6番地（訴外物件）、19番地（物件２の訴訟対象物件）、352番地の土地（訴
　　外物件）も、基地境界のすぐ近くにある。
　　　このように、本件一連の使用認定は土地を強制使用される原告他との関係で十分その必要正
　　当を吟味してなされたものとは到底考えられない。
一〇　特措法三条の要件違反についての整理
　１　以上の点を特措法3条の要件から検討した場合、強制使用が「必要性」、「適正かつ合理的」
　　の要件を満たすためには、少なくとも、
（一）日米安保条約上の規定された（制約された）駐留目的のための駐留軍の用に供するためで
　　あること、
（二）駐留目的との関係で、基地施設用土地として提供の必要性があるとしてもそれがどの程度
　　なのか、
（三）当該土地でなければならない必要性がどの程度なのか（代替性があるか否か、その程度）、
　　特に、強制使用しなければならないほどの高度の必要性があるのか、を十分吟味しなければ
　　ならない。
　　　なぜならば、憲法上の私権制限の際の大原則である「必要・最小限の原則」からした時、右
　　必要性の程度が極めて高い時にのみ、それが、特措法上の必要性の要件を満たし、かつそれが
　　「適正かつ合理的」と言えるのである。
　　　これらから考えた時、家族用住宅、娯楽施設、売店、教会は、提供目的を著しく逸脱してい
　　る。また、必要性の要件や適正かつ合理的の要件からも著しく逸脱している。
　２　これに対して、米兵が長期間沖縄に駐留するためにはこれらの施設が必要であると被告は主
　　張するかもしれない。
　　　しかし、土地所有者から強制的に、家族の生活の場であるその先祖伝来の自宅や、生活の手
　　段である田を奪い、フェンス外のせまい土地に追いやってその生活を犠牲にしながら、米軍兵
　　の娯楽施設を初めとする快適かつ文化的な生活のためにはどうしても必要であるというのは、
　　あまりにもバランスを失した解釈であり、特措法3条の定める、強制使用してまでの高度の「必
　　要性」あるいは「適正かつ合理的」の要件を欠くものであり違法である。
　３　東京地裁東宝劇場事件判決からみた本件使用認定の違法性
　　　駐留軍の用に供するために劇場を強制使用することが認められるか否かが争われた事件にお
　　いて、東京地裁29年1月26日判決は、「単に駐留軍が当該物件を使用することを希望し、ま
　　たは便宜とすれば足るというのではなくして、安全保障条約第1条の所定の目的をもって日本
　　国に駐留するアメリカ合衆国軍隊が日本国に駐留するについて当該物件を使用する客観的な必
　　要性がある場合でなければならない。」と判示した。これは当然のことである。
　　　しかし、被告の本件使用認定は、厳密に当該土地を必要とする理由があるのか、その程度は
　　どの程度か、代替地はあるのかなどと言う検討を厳密にしたものでは全くない。
　　　被告が現実にやっていることは、まさしく「単に駐留軍が当該物件を使用することを希望し、
　　または便宜とす」るということをほとんど唯一の理由として、駐留軍の言うがままに強制使用
　　をしようとしているものである。既に述べたように、広大な遊休地を抱え込みながら、現状あ
　　る基地を維持したいと言う基本的な考えのもとに継続使用としての強制使用を求めているのが
　　実態である。そうでない主張するのであれば、被告は、個々の土地ごとにその具体的強制使用
　　の必要性を明らかにすべきである。
　　　また、前記事件で被告は「人間生活にとって娯楽乃至慰安が必要不可欠なものであることは
　　他言を要しない所であるから、駐留軍が駐留する以上駐留軍軍人のための娯楽供用施設もまた
　　必要にして欠くべからざるものと言わなくてはならない。従って特措法3条の所謂駐留軍の用
　　に供することが適正かつ合理的である土地等とは単に直接駐留軍の軍事上の目的に供せられる
　　ものに限らず劇場その他駐留軍の人々の娯楽乃至教養のために必要なる物件をも含むものであ
　　る。」として、劇場、ＰＸ（売店）等に利用されることを適法であるとも主張していた。右判決
　　は、結論において、このような主張を排斥した。
　　　この点からみても、本件各使用認定は、適正且つ合理的の要件を欠く。

第七　普天間飛行場

一　基地の概要
　１　施設が所在する宜野湾市の状況
　　普天間飛行場が所在している宜野湾市は、沖縄本島の中部に位置し、中南部を結ぶ交通路の重
　要な位置にある（甲Ｇ1、3号証）。面積は、19・37平方キロメートル、人口82、891人（1995
　年国勢調査）、人口密度4、279人／平方キロメートルとなっている。同市における米軍基地は、
　普天間飛行場4・81平方キロメートル、キャンプ瑞慶覧1・60平方キロメートル、陸軍貯油施設
　〇・〇2平方キロメートルの3施設が存在し、これらの施設を合計すると6・43平方キロメート
　ルで、同市の全面積に占める割合は実に33・2パーセントとなり、人口密度は6329人／平方キ
　ロメートルとなっている。特に普天間飛行場は、周辺の密集地に囲まれて市の中央部に位置する
　ことから（甲Ｇ1、3号証）、基地から発生するさまざまな被害や、調和のとれた計画的な街づく
　りの面でも大きな障害となっている。
　２　施設の現状及び任務
　　宜野湾市の中央部に位置するこの施設は、第3海兵水陸両用部隊の第1海兵航空団隷下第36　海
　兵航空群のホームベースとなって、ヘリ部隊を中心として約六〇機余の航空機が配備されている
　ものと考えられ、在日米軍基地でも岩国と並ぶヘリコプター基地となっている（甲Ｇ2号証）。
　　右施設は、他の在沖米海兵隊施設と異なり、在沖米海兵隊基地司令部の管理施設外となってお
　り、普天間航空基地隊によって管理運営され、駐留各部隊の後方支援活動体制をとっている。こ
　のため施設内には、滑走路（長さ約2、800メートル×幅46メートル）、格納庫、通信施設、整
　備・修理施設、部品倉庫、部隊事務所、消防署があるほか、ＰＸ、クラブ、バー、診療所等の福
　利厚生施設等の設備が存在する。
　　第36海兵航空群は、この施設に各中隊を配置し、上陸作戦支援対地攻撃、偵察、空輸などの
　任務にあたる航空部隊として同基地で離着陸訓練を頻繁に行っており、また、北部訓練場、キャ
　ンプ・シュワーブ、キャンプ・ハンセン等の訓練場では空陸一体となった訓練も行っている。ま
　た、昭和53年1月、キャンプ瑞慶覧のハンビー飛行場の返還に伴い、東側に格納庫、駐機場、
　その他付帯施設の代替施設が建設された。
　３　主要建物及び工作物
　　基地施設の建物としては、基地司令部、第36海兵航空群司令部、格納庫、管制塔、整備修理
　施設、部品倉庫、兵舎、消防署、診療所、体育館、クラブ、教会等がある。
　　基地施設の工作物としては、滑走路（2、800メートル×46メートル）、燃料タンク、アンテナ、
　プール等がある。
　４　駐留部隊等
　（一）管理部隊名・・・普天間航空基地隊
（二）使用部隊名・・・普天間航空基地隊司令部、第1海兵航空団第36海兵航空群、第18海兵
　　　　　　　　　　　航空管制群、第17海兵航空支援群Ａ分遣隊、第262海兵中型ヘリ中隊
　　　　　　　　　　　米海軍口径測定事務所、海軍調査部、その他
二　使用目的からみた違法性（「必要性」の要件の不存在）
　１　普天間飛行場は、在日米軍基地でも岩国と並ぶ有数のヘリコプター基地として、在日米軍の
　海兵隊施設の中核的役割を担っている。
　２　ところで、海兵隊の主な役割であるが、同部隊は、独自の航空機で相手陣営を攻撃しながら、
　上陸部隊をヘリコプター等で相手方へ深く進入させるための水先案内をし、相手方の最前線で専
　ら攻撃・侵略をその本来的任務としている軍隊である。
　　このような事実から鑑みても、我が国の防衛とは無縁であり、従って、安保条約の駐留目的を
　逸脱している存在としかいいようがないのである。とするならば、このような海兵隊施設のため
　に原告らの重要な財産である土地を強制使用に付することは、「駐留軍」の使用や、「駐留目的」
　の範囲内とはいえず、使用認定の「必要性」の要件を欠く重大な違法があり到底認められるもの
　ではない。

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仲田博康
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