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Subject: [keystone 2814] 準備書面2
Date: Wed, 28 Jun 2000 22:37:01 +0900
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第三 キャンプ・シールズ

一 基地の概要
 1 所在地等
  キャンプ・シールズは、沖縄市の東部に位置する面積70万1000平方メートルの基地である(甲
 C1、2、3号証)。
 2 駐留部隊、施設等
  本基地は、海軍機動建設大隊等が使用し、管理事務所、機械工場、隊舎、家族住宅のほか、ソ
 フトボール場、バレーボールコートなど娯楽施設が設けられている。
 3 使用認定対象土地の位置
  甲C4号証、同5号証にAとして図示された土地が使用認定の対象とされている土地である。
二 使用する土地の不特定による違法
 1 原告島袋善祐所有地が地籍不明地であることについて
  原告島袋善祐所有地は、地籍不明地であり、地籍不明地は本来強制使用手続を行い得ないもの
 であるから、本件使用認定は取り消されるべきである。
  (一)編さん地図の未確認
    防衛施設局長は、位置境界明確化法に基づく位置境界明確化作業の一環として作成された
   編さん地図をもとにして、原告島袋善祐の所有地を特定しているが、原告島袋善祐は、編さ
   ん地図を確認して同意していない。
    防衛施設局長は、原告島袋善祐が編さん地図確認書へ押印した旨主張する。確かに編さん
   地図確認書の署名欄には島袋善裕との記載がされ押印されているが(甲C6号証)、この署名
   押印は偽造されたものである。
    なぜなら、同書には、「島袋善裕」と「裕」の字が誤って、署名されているからである。人
   が自己の氏名を誤って署名することはおよそありえず、誤字に気がつけば指摘するから、こ
   の署名捺印は、本人が不在のときに他人の手によってなされたものであることが明らかであ
   る。
  また、編さん地図確認書をもとに、現地で地主立会のもと作成された現地確認書に原告島
   袋善祐は署名捺印していない(甲C7号証)。
  (二)位置境界明確化作業について
    地籍調査は、本来国土調査法に基づき実施される。同法は、公図の存在を前提として、地
   籍調査資料に基づき「現地において関係土地所有者らの立ち会いのもとに各筆の土地につき
   その土地の所有者、地番、地目及び境界に関する調査を行う」ことを基本としていたため、
   沖縄戦の戦禍により公図・公簿が消失し、現況のほとんどが変形した沖縄県においては同法
   に基づいて調査を実施することがきわめて困難であった。そこで、沖縄県については特別法
   位置境界明確化法を制定し、現地における調査・確認という手法によらずに、「土地所有者の
   集団合意」による手法によって地籍確定することとしたのである。
    同法は、関係所有者全員の協議により各筆の土地の位置境界を確認すべきことを定めてい
   るのであるから、関係所有者の中に一人でも地図編さん図に同意しないものがいれば、その
   地図編さん図は何ら意味を持たないものとなる。土地の位置境界は、土地所有者の権利に関
   わるものであるから、他の者が、土地の位置境界について全員合意していたからといって、
   その結論を強制することができないのであり、関係所有者全員が合意しなければ法律的な意
   味を持たないのは当然のことである。
  (三)防衛施設局長の主張に対する反論
    防衛施設局長は、原告島袋善祐以外の所有者が地図編さん図に合意していることを理由と
   して、原告島袋善祐の所有地は特定可能であり、強制使用することが可能であると主張する
   が、前述のとおり、原告島袋善祐以外の地主が、「現地確認書」に押印しているとしてもそれ
   は、法的には全く意味のないものである。
    また、防衛施設局長は、原告島袋善祐が、「返還の時期を明示すれば、いつでも押印する。」
   と述べたとし、このことは、「当該土地の位置境界について、何ら異議がないとする意思表示
   である。」という。しかし、原告島袋善祐は、軍用地を返還しない限り、地籍明確化作業に協
   力できない旨を述べたに止まり、地図編さん図に問題がないという趣旨ではない。
    加えて、防衛施設局長は、原告島袋善祐が沖縄県収用委員会の裁決に従って支払われた補
   償金を受領し、争っていないことを土地が特定されていることの理由として挙げているが、
   原告島袋善祐の所有地が強制収用されたことに間違いはないのであるから、補償金を受領す
   るのは当然であり、補償金を受領したからといって位置境界について争わない趣旨ではない。
    確かに、これまで収用委員会は、地籍不明地について強制使用認定したのであるが、その
   認定は不適法なものであった。過去において誤った判断が何度なされたとしても、それが誤
   ったものである限り、その判断に基づいて、土地が特定されるものではない。
    従って、原告島袋善祐の土地は、地籍不明地のままなのである。
  (四)土地の特定の必要性について
    米軍用地収用特措法4条1項及び同法施行令1条は、収用(使用)認定申請書に「使用し、
   又は収用しようとする土地等の調書及び図面」を添付することを義務づけ、同法施行規則2
   条は、右「土地調書」の様式を定め、「収用しようとする土地等の所在、種類、構造、形状、
   用途並びに所有者及び関係人の氏名及び住所」を記載するものと定める。
    これらの規定から明らかなように、米軍用地収用特措法は、土地収用法と同様に防衛施設
   局長に対し、収用(使用)認定の申請に際し、対象土地の所在、種類、構造、形状、用途、
   土地所有者、関係人の住所氏名等を記載することによる土地の特定を義務づけている。
    このように法、施行規則、施行令等が、収用認定申請に土地の特定を義務づけているのは、
   土地の収用に際して適正手続を保障するためである。
    憲法31条の適正手続の保障は、行政手続きにも及ぶのであり、土地の強制収用は、憲法
   の保障する財産権(29条)の最も重大な制限であることに照らせば、土地を強制収用しよ
   うとするときは事前の告知、弁解、防御の機会を与えられなければならない。弁解、防御を
   行うためには対象土地について特定がなされていることが大前提であって、これがなければ
   弁解、防御を行うことは不可能である。
    地籍不明地においては、対象土地の位置境界及びその所有者が不明なのであって、弁解・
   防御の機会を与える適正手続を行う前提を欠いている。このような土地について強制使用を
   することは許されない。
  (五)結論
    以上のとおり、本件使用認定は、強制使用できない土地についてなされたものであり、取
   り消されるべきである。
 2 原告島袋善祐所有地の特定の誤りについて
  防衛施設局長は、原告島袋善祐の所有地を誤って特定して使用認定申請をしており、このよう
 な申請に基づく使用認定は取り消されるべきである。
  (一)原告島袋善祐所有地の特定の誤りについて
    防衛施設局は、甲C4、5号証の土地Aを原告島袋善祐の所有地と主張するが、原告島袋
   善祐の所有地は甲C5号証に土地Bとして図示された土地であって、使用認定申請は、原告
   島袋善祐の所有地の特定を誤っている。
    原告島袋善祐所有地は、戦前から、お茶を栽培する茶畑として使用されていた。
    沖縄戦でほとんどの土地が現況を変えた中で、同地は幸いにも戦後も現況を残し、原告島
   袋善祐の家族は戦後も右土地でお茶を栽培していた。
    1948年ころ、米国海軍政本部指令第121号「土地所有権関係資料蒐集に関する件」等に
   基づく、土地所有権認定事業の中で地図が作成されたが、原告島袋善祐の土地は、沖縄戦の
   前後で現況が変わらず、戦後もお茶を栽培していたため、この土地所有権認定事業の当時、
   土地委員が原告島袋善祐の所有地の形状・位置を確認することは、比較的容易であった。
    当時は測量技術も不十分で、基地内立ち入りができなかったという事情もあったため、同
   地図は、現地復元力を有するほどのものではなかったが、土地の配列、地番、形状、所有者
   については正確に記載されたものである。
    この地図によると、原告島袋善祐の所有地は、山林に隣接して存在する(甲C8号証)。
    この山林は現在も存在し、原告島袋善祐の所有地を特定する目安になるところ、原告島袋
   善祐の所有地として裁決申請されている土地は、この山林から相当遠く西側に離れて存在す
   る土地であり(甲C4、5号証の土地A)、土地の特定を誤っていることは明らかである。
    また、原告島袋善祐は、戦後も同地を耕作していたため、自己の所有地及びその周囲の状
   況についてかなり正確に記憶しているところ、原告島袋善祐の記憶によれば、同人の所有地
   は、南側を流れる比謝川の流れが北西から西北西に変わる地点、地図甲C5号証のC地点の
   ほぼ真北に位置していた。C地点の真北には雑木林の境界があり、原告島袋善祐の土地につ
   いての記憶が正確なものであることがわかる。
    1977年5月15日午前零時をもって、公用地法が効力を失い、米軍が原告島袋善祐所有地
   を使用する権限がなくなり、不法占拠状態になったことから、同月18日、原告島袋善祐は、
   キャンプ・シールズに立ち入り、自己の所有地を耕作した。当時の写真からも、山林に接し
  て原告島袋善祐所有地が所在することがわかる(甲C9、10号証)。
    以上のように、原告島袋善祐所有地は、防衛施設局が使用認定申請にあたって示している
   位置には存在しないのであって、起業者は、土地の特定を誤って使用認定申請をしているこ
   とが明らかである。
  (二)過去の裁判例について
    福岡高等裁判所那覇支部平成8年3月25日判決は、原告島袋善祐所有地として収用裁決
   申請されている土地について、(1)原告島袋善祐を除く土地所有者が確認済みであること、
   (2)本件土地について原告島袋善祐名義で登記がされていること、(3)使用手続がされて
   いるのと同一の範囲内で過去二回にわたり使用裁決がされたこと、(4)裁決で原告島袋善祐
   が同地の所有者と認定されたこと、(5)原告島袋善祐が補償金を受領し、不服を申し立てな
   かったことなどの事実にかんがみると、「本件土地と隣接土地との境界を同隣接土地所有者
   の同意にかかる境界と認定して本件土地の位置を特定し、その所有者を原告島袋善祐である
   と認定した上、地積図原図を基にして実測平面図を作成し、その結果を現地において復元し
   て確認するなどして土地・物件調書となるべき図書及びこれに添付するべき実測平面図を作
   成したことには、一応の合理性が認められるというべきである。」と判示しているものである。
(1) 原告島袋善祐以外の土地所有者が確認済みであることは、何ら法律的な意味を持たな
いことは、前述のとおりである。
    また、(2)本件土地について原告島袋善祐名義で登記がされていたとしても、そのことは、 
   原告島袋善祐の所有地の存在を示すのみで、位置境界の確定とは無関係である。
(3)使用手続がされているのと同一の範囲内で過去において何度使用裁決がされても、そ
その使用手続きが誤っている限りは、その誤った使用裁決に従って土地の位置境界が確定す
るものではない。
(4)裁決手続において同地の所有者が原告島袋善祐と認定されても、その裁決により位置
境界が確定するものではない。
    原告島袋善祐の所有地が強制収用されることには間違いがないのであるから、補償金を受
   領するのは当然であるが、(5)補償金を受領することは、所有地が強制収用されたことを意
   味するに止まり、このことによって位置境界が確定されるものではない。
    右判決も、土地調書等の作成について「一応の合理性が認められる」と判示するのみであ
   って、土地調書どおりの権利関係が認定されたものではない。
    右判決に挙げられたような事実はいくら積み重ねられても、そのことによって、裁決申請
   どおりの権利関係が認められるというものではなく、なお、土地調書、物件調書の記載事項
   が真実に反していることを立証する余地はあるのである。
  (三)土地の正確な特定の必要性について
    先にも述べたように、土地を強制収用するにあたって適正手続を保障するためには対象土
   地について正確な特定がなされていなければならない。対象土地の特定が不正確なまま手続
   が行われたのでは、弁解をすることができず、対象土地の一応の特定がされていたとしても、
   それは、適正手続の保障の根幹を欠くことになる。
    よって、対象土地の正確な特定を欠く使用認定は、取り消されるべきである。
三 駐留部隊から見た違法性(「必要性」の要件について)
 原告島袋善祐所有地の使用は、「駐留軍」の使用とは言えず、「駐留目的」の範囲内とも言えない
 のであって、必要性の要件を欠き、違法である。
  キャンプ・シールズは、海軍機動建設大隊等が使用しているところ、海軍機動建設大隊の任務
 は、兵舎、飛行場、港湾、道路、通信施設、病院などを建設したり、補修したりすることである。
  平時には、沖縄の各基地の修理、補修などを行っているが、その主要な任務は、有事の際、海
 兵隊が展開した地域に兵舎等の施設を建設することであり、湾岸戦争では、5000人の海軍建設部
 隊が現地に送られ、4万2000人の海兵隊員が居住できる基地10か所のほか、道路、通信施設な
 どを建設した。
  これは、日本の防衛とはかけ離れたものであり、世界の紛争地域に投入されるものとして日米
 安保条約をも逸脱するもので、このような部隊の駐留目的のために所有者の土地を強制的に使用
 することは、特措法1条、3条の規定する提供目的に著しく違反し、重大な違法がある。
四 利用状況から見た違法性(「適正且つ合理的」の要件について)
  原告島袋善祐所有地及びその周辺は、清涼飲料水を保管する倉庫や空き地となっているのみで
 あって、原告島袋善祐の所有地を使用することは必要最小限の範囲内とはいえず、基地機能との
 関連性も薄い。
 1 原告島袋善祐所有地周辺の利用状況について
   防衛施設局長は、倉庫及び駐車場敷地として原告島袋善祐の所有地を使用認定申請している。
   確かに、原告島袋善祐の所有地として使用認定申請された土地には、その一部に簡易な造り
  の倉庫が建てられているが、その倉庫内にはコーラやセブンアップなどの清涼飲料水が保管さ
  れているに過ぎず、それ以外は、空き地が広がっているのみである(甲C11、12、13号証)。
  かような土地の使用は、非代替性の要件を欠いており、適正且つ合理的な土地の使用とは到底
  いえない。
   なお、実際の原告島袋善祐の所有地(甲C5号証の土地B)は、単なる空き地となっている
  のみであり(甲C13号証)、その使用が非代替性の要件を欠き、適正且つ合理的でないことは
  なおさらである。
 2 基地機能との関連性
   また、周辺には、ソフトボール場やバレーボールコートなど、使用認定申請書には記載され
  ていないスポーツ施設が建てられているが(甲C3号証)、右施設は、本来の海軍機動建設大隊
  等の機能とは関連性が極めて薄い施設であって、原告島袋善祐の土地を含む周辺土地一帯の使
  用は、大隊の機能とは関連性が極めて薄い。
 3 まとめ
   以上のとおり、原告島袋善祐所有地の周辺は、大量の清涼飲料水の保管及びスポーツ施設と
  して使用されているか若しくは空き地になっているのであって、米軍の基地機能に不可欠のも
  のとして使用されているものではない。
   従って、この土地を強制収用することは必要最小限の範囲を大きく逸脱しており、適正かつ
  合理的の要件を欠き、違法である。
 
 

第  四      ト  リ  イ  通  信  施  設

一  基地の概要
  (甲D1号証・沖縄県総務部知事公室基地対策室作成「沖縄の米基地」122頁)
  1  所在地等
    (一)  所在地    読谷村(字渡具地、字古堅、字大湾、字大木、字楚辺)
    (二)  面  積    1、979千m2 
                                                            単位・・・千m2 
   市町村名  国有地  県有地  市町村有地  私有地      計
   読 谷 村   149    〇    5    1、824     1、978
   嘉手納町                    〇      〇
   合  計    149    〇    5    1、824     1、979
    (三)  地主数    867人
    (四)  年間賃借料    1、110百万円
    (五)  主要建物及び工作物
      〔建  物〕
          部隊事務所、兵舎、機材倉庫、教育センター、売店、食堂、ランドリー、映画館、
        消防署、郵便局、図書館、診療所、教会、銀行、体育館、ボーリング場等
      〔工作物〕
          アンテナ、野球場、プール、海水浴場(トリイビーチ)、テニスコート等
    (六)  基地従業員  338人(MLC  329人、IHA  9人)
  2  駐留部隊等
    (一) 管理部隊名    米陸軍第10地域支援群
    (二) 使用部隊名    第10地域支援群司令部セクション、第一〇地域支援群司令部中隊、
     第1特殊部隊群第1大隊、その他
  3  使用認定及び裁決対象土地の位置関係並びに本件訴訟の対象土地
      甲D2号証(基地全体図中)の「赤丸」の部分が契約を拒否し、使用認定の対象とされてい
  る4筆の土地である。この内の2筆の土地(中頭郡読谷村字楚辺字東16、及び201番)が収
  用委員会において裁決申請の対象となり、さらにその中の読谷村字楚辺字東16番の1筆が本
  件訴訟(認定取消及び裁決取消)の対象土地である。以下、本件訴訟において対象となる右1
  筆の土地を単に本件土地とする(乙44号証の3、乙45号証の3)。尚、本件土地の位置関係は、
  乙第44号証の3添付の土地概略図3中に「使用しようとする土地」1として示されている。
二  本件土地を含むトリイ通信施設は安保条約の目的を逸脱した基地であり、必要性の要件の「駐
 留軍」の使用とは言えず、「駐留目的」の範囲内とも言えない。
  1 トリイ通信施設は、米陸軍司令部が管理する総面積197万9000平方メートルの基地で、情報
  の収集・分析を主な任務とする情報通信基地として使用されているとされる。
     トリイ通信施設は、海軍通信保安群ハンザ基地司令部が管理使用する楚辺通信基地との間を約
  2・5キロメートルの地下ケーブルで接続され、楚辺通信基地で傍受された情報をトリイ通信施
  設内の施設にて解析する機能と役割を担うとともに、空軍諜報軍(AFIC)空軍第6990電
  子保安中隊がトリイ通信施設内に設置された通信設備を利用して北朝鮮、中国の電波情報を収
  集する機能と役割を果している(1987年当時、那覇防衛施設局は、陸軍通信隊が通信施設を使
  用していると説明していたが、現在は同隊による使用はない。「情報公開でとらえた沖縄の米
  軍」参照)。
      しかし、同情報は専ら合衆国の軍事戦略・外交戦略として使用され、「日本国の安全」のため
  に使用されることはない。その意味では、本来トリイ通信施設は、安保条約で合意された施設
  (基地)提供目的、すなわち、「日本国の安全」のために提供施設(基地)を米軍に使用させる
  という実質的な目的に違反するものである。
      このように、「日本国の安全」と本質的に関わりのない基地機能のために米軍が提供施設(基
  地)を使用することについては、本来日米合同委員会において個別の施設(基地)を提供する
  際に、安保条約及び日米地位協定の目的・精神に沿って厳しくチェックされなければならない
  ものである。しかし、残念ながら日本政府は国民の立場に立ってこのようなチェックを行わず、
  アメリカ合衆国の言うがままに要求された施設(基地)を米軍に提供している。
      しかし、日米地位協定に基づく施設(基地)提供の現実が右のようなものであるとしても、
  米軍用地収用特措法3条の適用にあたっては、「駐留軍の用に供するため土地等を必要とする
  場合」という要件を安保条約及び日米地位協定の趣旨に従って厳しく解釈しなければならない。
  何故なら、同法は国民の財産権を侵害するものであり、法にもとづく公共の福祉と財産権の保
  障とが調和することが求められているからである。
  2  右機能を有していたトリイ通信施設であるが、現在日米間のSACO最終報告により、楚辺
  通信基地が2000年までにはキヤンプハンセンへ移設されることが合意され、また、後述のと
  おりトリイ通信施設内の通信アンテナ塔も破損した状況のまま放置され、現在使用されている
  様子がなく、現在においては、通信基地としての機能を有しなくなっている。
      現在トリイ通信施設を使用しているのは、主にグリーンベレーと呼ばれる米陸軍特殊作戦部
  隊(第1特殊部隊群第1大隊、約392名)で、日本に駐留する米陸軍の中で唯一の陸軍戦闘部
  隊とされる部隊である。
      米陸軍に特殊作戦部隊が誕生したのは、1952年4月10日、ノースカロライナ州フォートブ
  ラッグ「心理作戦センター」においてである。1957年6月24日には、第1特殊作戦部隊が沖
  縄に配置され、同年同部隊のチームがベトナムに派遣され南ベトナム陸軍兵士の訓練にあたり、
  61年11月には特殊部隊が南ベトナムに投入され、南ベトナム「民間不正規戦闘防衛隊」の募
  集訓練に当たっている。米陸軍特殊部隊は、61〜65年にかけて80以上のキヤンプを南ベトナ
  ムに設置してさまざまな任務と役割を果たした。その作戦行動はなぞに包まれていたが、元特
  殊部隊軍曹三島瑞穂氏の著書「グリーンベレーD446」において、ベトナム軍幹部を捕虜にす
  る等の生々しい実戦体験に基づいたその活動の一端が報告されている。ベトナム侵略戦争当時、
  沖縄には5000人を越えるグリーンベレー部隊がいたが、ベトナム侵略戦争の終結とともにグ
  リーンベレー部隊はいったんは沖縄から撤退した。
      ところが、1984年、レーガン政権の軍拡政策のもとで再び米陸軍特殊部隊の1個大隊がト
  リイ通信施設に配属されて現在に至っているものである。
  3  トリイ通信施設に配属された第1特殊作戦部隊群第1大隊は、91年の湾岸戦争の際、空中給
  油機、海兵隊と共に沖縄から出撃してイラク攻撃に参加し、97年のプノンペン武力衝突の際に
  は、米太平洋軍の特殊作戦司令部の指揮の下にタイのウタパオ基地に派遣され展開している
  (「星条旗」の報道)。
      このように、米特殊作戦部隊は他国に進出して作戦を展開する部隊であり、「侵略部隊」とし
  ての本質を持つものである。
      米国防報告は、「アメリカは、アメリカの利益を守るためにさまざまな緊急事態作戦に備えて
  おかなければならない。それらの作戦には、とりわけ、比較的小規模の戦闘作戦、多国間平和
  活動、麻薬対策、テロ対策、制裁の執行、非戦闘員の救出、人道的支援と災害救援活動が含ま
  れる。」とするが、これらの様々な任務に対応するのが米特殊作戦部隊の任務であり、同部隊は
  「国の最高レベルの統轄下におかれており、戦略的性格の任務を旨としている。」(ラング著「特
  殊部隊」)。
      91年度会計における特殊部隊報告によると、「第一の主要な任務は、外国内部防衛であり、
  第二の任務は特殊偵察であった。また、直接行動を遂行する能力を維持しなければならなかっ
  た。」とのことである。
      これらの米特殊作戦部隊の性格・任務からして、同部隊は安保条約及び日米地位協定の定め
  る目的を逸脱するものであることは、明らかと言える。
      米陸軍特殊作戦部隊がアメリカの利益と軍事戦略のために行動する軍隊であり、日本の平和
  と安全のために活動する軍隊でないことは、その活動実態から明らかであるが、このことは作
  戦指揮系統からも裏付けられるものである。
      すなわち、トリイ通信施設の米陸軍第1特殊部隊第1大隊は、統合特殊作戦軍(フロリダ州
  マクデイル空軍基地)−太平洋特殊作戦軍(ハワイ州キャンプスミス)−第1特殊部隊第1大
  隊(トリイ通信施設)という指揮系統で指揮をうけ、在日米軍の作戦指揮を受けていない。ま
  た、作戦統制以外の兵たん行政上の指揮は、第四特殊作戦支援軍(ハワイ州フォートエイファ
  ー)から受け、会計処理の指示は「原隊」の陸軍第一特殊作戦軍(ノースカロライナ州フォー
  トブラッグ)−第1特殊部隊(ワシントン州フォートルイス)から受ける。
      いずれも、在日米軍司令部の指揮を受けないものであり、その地位・性格は安保条約及び日
  米地位協定の目的を逸脱した特殊なものである。
  4  以上のように、トリイ通信施設の機能・役割は、いずれも安保条約及び日米地位協定の目的
  を逸脱するものであり、このような基地維持のために国民の財産権を強制的に使用することは、
  特措法1条、3条の規定する提供目的に著しく違反し、重大な違法性がある。
三  本件土地の強制使用は、「適正かつ合理的」な土地利用とは到底言いえない。
  1  トリイ通信施設は、米軍施設が所在する地域とかつてアンテナが所在していた黙認耕作地域
  とに大別されるが、原告所有の本件土地は黙認耕作地域に所在する土地である。この黙認耕作
  地域は、もっぱらアンテナを設置するための用地として使用されてきたものであり、直接アン
  テナ塔が設置されない土地については電磁障害除去地として使用されてきた地域である。
      ところが、現在では黙認耕作地内の通信塔が使用されておらず、破損したまま放置されてお
  り、施設との間のケーブルも切断されている。すなわち、右原告の土地を電磁障害除去地とし
  て使用する必要性は存しなくなったものである。しかし、那覇防衛施設局長の申請した本件強
  制使用の理由は、あくまで「電磁障害除去地」としての土地使用であり、同使用理由は現時点
  においては全く根拠のないものであるから、本件使用認定及び使用裁決は取消されるべきもの
  である(尚、被告において現在も右通信塔が使用されており、本件土地を電磁障害除去地とし
  て使用する必要があると主張するのであれば、その事実を本件訴訟において積極的に明らかに
  するべきは当然のことである)。
  2  また、仮に黙認耕作地域のアンテナ塔が使用されているとしても、本件土地を強制使用する
  ことは、本件土地の「適正かつ合理的」使用とは到底言えないものである。すなわち、原告池
  原の本件土地が所在する黙認耕作地域は、県道6号線の南西に位置し、楚辺、大木、大湾、古
  堅、渡具知の各部落に取り囲まれた地域で市街地域としての開発が強く望まれる箇所である。
      このような黙認耕作地域に所在する原告池原の本件土地の「適正かつ合理的」な土地使用方
  法は、軍用地としての使用を中止して土地を返還し、民間地域として再開発することであり、
  決して軍用地として使用することではない。
      よって、本件土地については、米軍用地特措法3条の「適正かつ合理的」要件が存しないも
  のである。
四  以上により、本件土地の使用認定は違法として取消を免れず、さらに右使用認定を前提として
 なされた使用及び明渡裁決についても違法のものとして取消されるべきものである。

第五 嘉手納飛行場

一 基地の概要
 1 所在地等
   嘉手納飛行場(以下、「本基地」という。)は、沖縄市本島中部の沖縄市、那覇市、北谷町、
  嘉手納町の2市2町(4自治体)にまたがる面積約1995・3万平方メートルの広大な基地であ
  る。
 2 駐留部隊等
   本基地に駐留する部隊は、F15イーグル戦闘機による第18航空団が中心であり、極東に
  おける米軍航空団の最前線部隊となっている。また、本基地は、ベトナム戦争時や湾岸戦争時
  には米軍の前線基地となった。
 3 施設等
   本基地には、幅90メートル、長さ3600メートル(オーバーランを含めると4000メートル)
  のメイン滑走路、幅60メートル、長さ3650メートル(オーバーランを含めると4000メート
  ル)のサブ滑走路の2本の滑走路がある。
   本基地には、F15イーグル戦闘機が54機、空中給油機、早期警戒機、輸送機、救難ヘリ
  コプター、汎用機、輸送機等々、合計100機以上の航空機が常時存在するため、極東最大の米
  軍基地となっている。
   また、本基地には、滑走路以外にも、管制塔、ターミナルビル、格納庫、司令部事務所、事
  務所、兵舎、家族住宅、幼稚園から大学までの学校、スーパーマーケット、映画館、教会、劇
  場、銀行、診療所、野球場、ゴルフ場等の娯楽施設があり、9000人以上の米軍人軍属と家族が
  居住している。アメリカ合衆国嘉手納町と言われる所以である。
二 「必要性」の要件の不存在
 1 次に述べるとおり、本基地の使用実態は「極東」の範囲を逸脱したものであり、日米安保条
  約の定める「駐留目的」の範囲内とはいえない。従って、「必要性」の要件を欠くものである。
 2 そもそも、在日米軍が日本の安全、日本の防衛とは無関係にアメリカの国益を基準に行動す
  る軍隊であるということ、また、「極東」の範囲を逸脱した目的を有しているということはアメ
  リカ政府、軍関係者から再三言明されてきたところである。1995年3月に発表された米国防
  総省の「日米安全保障関係報告書」も、次のように述べている。
   「日本に駐留する米国の陸、海、空軍および海兵隊は、アジア、太平洋におけるわれわれの
  防衛第一線を支えている。これら部隊は遠くペルシャ湾に至るまでの広範な局地的、あるいは
  地域的、さらには地域を越えた突発事態に対処できる態勢を整えている」(邦訳「世界週報」
  1995年4月1日号71頁)。
 3 本基地についても、第18航空団仕官ジェフリー・クレーバー准将(当時)が、本基地の機
  関紙「カデナ・ショーグン」1993年9月10日号において、次のように述べ、本基地使用の実
  態が「極東」の範囲を逸脱していることを認めている。すなわち、「われわれは戦闘機、給油機、
  空輸機、救護機、ヘリコプター、空中と地上設置のレーダー・システム、加えて、機動と展開
  を要求される支援、兵站と医療基礎施設の混成部隊を保持している。そして、合衆国の国家利
  益と西太平洋における地域的同盟諸国の利益にかかわる支援に部隊を動員する。出動し、戦い
  をして勝利する体制を整えている空の最高のチーム(である)」(大城朝助「米新戦略に直結す
  る沖縄」『赤旗』評論特集版1995年12月25日号15頁)と述べているのである。
 4 本基地の使用実態が「極東」の範囲を逸脱していることを最もわかりやすい形で明らかにし
  たのは、湾岸戦争であった。すなわち、1991年1月17日に始まった湾岸戦争の『砂漠の嵐』
  作戦では、1月末段階で50万人余の米軍が、ペルシャ湾周辺に集結した(米国防総省発表)。
  在日米軍基地からは1万5000余人、そのうち沖縄からは8000人以上の米兵が中東へ出動し
  た。在沖米軍基地は、湾岸地域への兵員、武器、弾薬、その他の物資等の輸送のために、本基
  地をはじめ普天間基地、牧港補給基地、那覇軍港、ホワイト・ビーチ、レッド・ビーチ、天願
  桟橋など全ての米軍基地が24時間体制で動いたのである。
   1990年8月7日夕方から翌8日にかけて、完全武装の米兵が多数C130輸送機に乗り込
  んで、本基地から中東へ出撃した。米国防報告によると、この日は『砂漠の嵐』作戦の第一段
  階第一日目と位置付けられている。8月8日にはE3空中早期警戒管制機(AWACS)2機
  が本基地から中東へ飛び立っていくのを、大城保英たちは監視行動の中で目撃している(第7
  回公開審理における意見陳述)。その後も本基地からの発進は続く。9月9日には大型輸送機C
  5ギャラクシーが大量の物資を満載して、相次いで中東へ発進した。9月28日には本基地の
  909空中給油中隊、第376組織整備中隊が湾岸戦争の任務に参加した(『カデナ・ショウグン』
  報道)。1991年1月11日には、第12海兵隊第2砲兵大隊が嘉手納からユナイテッド航空機
  747やC5ギャラクシーで中東へ飛び立った(約340人)。この週に2250人〜3340人の兵員
  が沖縄から中東へ出撃している(『星条旗』報道)。その他、梅林宏道氏の『情報公開法でとら
  えた沖縄の米軍基地』によると、空軍からは353人の空中給油部隊、81人の空輸支援関係要
  員、44人の第400弾薬整備部隊員が湾岸に派遣されている。弾薬整備要員は約9800トンの弾
  薬を嘉手納から湾岸に運んだと言われている。また、湾岸戦争に協力するために、アメリカ本
  国やグアムの米軍基地に嘉手納から派遣された兵員もいる。
   また、上記資料によれば、本基地に残った部隊も、いろいろな後方活動で湾岸戦争を支援し
  ている。本基地の補給部隊は200万ドル相当の科学戦争用の防御装置や軍服などを湾岸へ送
  り、多くのF15戦闘機の部品が湾岸に送られ、1991年前半までは本基地内では部品不足にな
  ってしまったのである。
 5 湾岸戦争以外の場面においても、マヤゲス号事件で海兵隊が本基地からC141輸送機でタ
  イへ出撃する(一1975年)、P3対潜哨戒機部隊がイラン革命、米大使館員の人質事件で、イ
  ンド洋のディエゴ・ガルシアに派遣される(1979年)、イランでの人質救出作戦に特殊作戦部
  隊のMC130が4機出動し、そのうちの1機が撃墜される、国連憲章に違反して、米軍独自
  のイラク攻撃に本基地のKC135が参加する(1996年)、海兵隊員300名がソマリアへ向け
  て本基地を出発する(1992年)など、本基地から極東以外の地域に飛び立った事実は多数存す
  る。
 6 以上により、本基地の使用実態が安保条約の駐留目的に反していることは明白であるから、
  基地関係の8筆の使用認定は駐留目的の範囲を超えるものである。従って、右使用認定は、「必
  要性」の要件を欠く。
 
 

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仲田博康
nakada_h@jca.apc.org



 
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