名護の沢田です。送るつもりだった文章を送ります。今日の行動については２日後
くらいに報告します。
名護で“平和の樹"運動が26日、心へ届け女たちのネットワークなどの呼びかけで始
まった。鉛色の空の雲の間からこの日久しぶりに蒼い空がにっこりと顔を除かせた。太
陽が笑顔でやんばるの大地を照らし、樹木は緑に染まりながら笑顔で道行く人々に挨
拶していた。
昨年12月の“受け入れ表明"そして反対協の“リコール宣言"と99年は慌ただしく年
の瀬を迎えた。2000年は年初から“市長選挙"へ向かって反対、賛成両派の激しい争い
で進むかに見えた。しかし、候補者選定の難航などによりリコール運動は膠着状態に
陥った。リコール署名受任者の数だけは日増しに増えるものの、候補者選定が難航、い
つ、リコール署名が始まるのか分からないまま、いたずらに時間だけが流されていっ
た。2月8日、岸本陣営は5800人を集めて激励会を行った。この席で岸本市長は、リコール
以前やリコール直後の辞任はありえないことを示唆した。それから1月近くの時間が流
れたが、依然、膠着状態から運動は脱していない。今、リコール運動は危機にたたされて
いると言っても言い過ぎではないだろう。膠着状態という鉛色の空気が名護の街全体
を包む中で焦燥感が人々の上に黒い帳のようにのしかかっている。そして、沖縄県あげ
ての“サミット"の宣伝がそれに追い打ちをかけるように人々の心の中を暗くする。
しかし、活路のない危機などというものは存在しない。無数の人々の多様性に裏打ち
されたプラクシスだけがこのクライシスを打開するだろう。声なき声があぶくのよう
に消えては起こり、そして、それがおおきな民衆の運動の奔流をつくりだすだろう。
26日始まった“平和の樹"運動もそうしたプラクシスに他ならない。ちょっぴり気
取ったデザインをした名護市役所の前に集まった女性たちは前日までに集められたハ
ンカチを手に通り行く人々にハンカチを渡しそれぞれの想いを書いてもらっていた。
小学生たちの一団が通りかかると笑顔でなにやららくがきめいたことをハンカチに書
いてくれた。ジュゴンという文字と絵のはいったハンカチがこの日無数にできた。かわ
いいジュゴンもあれば恐ろしい姿をしたジュゴンもある。辺野古の海に住んでいる
ジュゴンの心が子供たちに伝わり子供たちの手を通してジュゴンが意志表明している
かのようだった。名護の市役所前はけっして人通りの多いところではないが、この日だ
けで百数十枚のハンカチに人々の想いが描かれた。市役所前に飾られた“ハンカチの
樹"は名護の市民の心を写しだしているかのように太陽のキラキラ光る光りにに照ら
し出されていた。
午後4時、太陽が西に傾くころ、市役所前に集まった20数名の男女は道ジュネーを始
めた。無表情な顔をした警察官が無表情なまなざしで道ジュネーを見ていた。道ジュ
ネーの一行はシュプレヒコールもなく、たんたんと先導車の訴えるマイクの声を先頭
に歩いた。オキマートの前では何人かの主婦が笑顔で手を振っていた。鉛色の空気のあ
ちらこちらに裂け目が走り揺れた。名護十字路の付近では道行く高校生たちが好奇心
旺盛な眼でこちらを見つめていた。ちらしが手から手へと渡され、その眼は笑ってい
た。車の群れからもこの間聞くことのなかった“がんばれ"というクラクションが時々
聞こえた。
夕闇の紫色のカーテンがあたりを包むころ、冷たい風が吹き出した。冷たいがやさし
い風に抱かれながら26日の行動は終わった。重たい鉛色の空気があたりを支配してい
る名護の街だがこの鉛色の空気は必ず晴れるときがくるだろう。15年期限使用問題、軍
民共用空港の問題ではすでに政府のメッキは剥がれおちかけている。明日は北部振興
策の“夢"の微睡みから人々は醒めるだろう。活路のない危機は存在しない。明日の勝
利を信じてたたかおう。 沢田春彦