Date: Wed, 23 Feb 2000 12:16:18 +0900
From: 加賀谷いそみ<QZF01055@nifty.ne.jp>
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 この国はいかなる戦力も持たない国だという簡単なことも、国家は武力を持つ
のが世界の常識だと思いこんでいるもんだから、こんがらがって、憲法のはなし
になると自分もわからない人もわからない結論になってしまいます。そしてわか
りにくいのは憲法のせいだと言いがかりをつけます。私たちの間では、そんな井
の中の蛙のはなしは「お、また学者先生のご高説が始まったぞ」と、よせられて
終わりになりますが、社会的地位を持っていたり、有識者といわれる人がいう
と、そんなんでも「なんとか平和主義者」などといろんな肩書きがちゃんとつく
んだそうです。

  だからマスコミが問題提起したいことまではわかるが、何をいいたいのかさっ
ぱりわからない記事を書いても、自衛権は憲法で認められると「解釈」して平和
を説く憲法問題の専門人でもお金になるんです。でも、前に自衛隊は合憲だと
いった政党がドブにおちたりしたから、政治家だとそんなことを言ったらどうな
るか私は知りません。

 国の分け方はいろいろですが、米軍基地を置く国と、置かない国があります。
アメリカは、米軍基地のない国をしばしな「無法国家」といい、基地を置いてく
れる国を「隣人」といいます。
 世界に今、平和憲法を持つ国が二つあります。象徴天皇制国日本と共和制国コ
スタリカです。

軍事基地も軍隊もありませんが、コスタリカの憲法は自衛権を認めています。一
度も発動されることなく今日にいたっています。それでもアメリカは手も足も出
せないらしく、コスタリカを「無法者」と呼んだというはなしは聞きません。日
本は米軍基地を置いて世話をし、自らも武器を大量に買い込んでいます。でもこ
の国は国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使を永久に放棄して
いますから、自衛隊が軍艦や戦闘ヘリで出かけて示威行動をすると憲法違反にな
ります。まして、威嚇射撃などはとんでもないことです。この国は武器を買って
も使い道がない国です。

 「軍隊のない国コスタリカ」「青春の夢見る沖縄」(ともに草の根出版会)な
どの著者早乙女勝元さん(67)はドキュメンタリー映画「沖縄発・コスタリカ」を
企画。監督は中田新一さん。
 1995年10月21日、宜野湾市の海浜公園で開かれた「少女暴行事件を糾弾
し、地位協定見直しを要求する県民総決起大会」(10・21県民大会)で「軍隊
のない平和な島を返してください」と訴えた仲村清子(すがこ)さんがリポーター
を務める。今年10月に完成、来春には公開の予定。制作費には約四千万円が見
込まれている。当初の費用は早乙女さんが私財を投じた。映画製作のための委員
会が、一口一万円の制作協力金を公募する。
早乙女さん「半世紀の平和を支えてきた憲法の危惧を憂える。戦力不保持の意味
を問い直す作品にしたい」「二十一世紀の日本の焦点は、沖縄にあると思ってい
る。二十一世紀の展望につながるものを作りたい」
(朝日00/01/04 沖縄タイムス00/01/18)

熱帯雨林の中米コスタリカは、コーヒーとエコツーリズムで有名な中米の国。全
世界の動物の5%(鳥類は10%)が生息しているなど、地球上の生命の種の約三〇%
が存在するといわれ、国土の四分の一を自然公園に指定するなど自然保護を重
視。1970年代から環境を守りながら観光するエコツーリズムの先進国とし
て、自然保護や人材育成に取り組み、観光は現在、農業生産をしのぐ、国の最も
大きな産業となっている。
国民の生活費は4人家族で平均4〜5万円(300〜800ドル)。世界的には
発展途上国と位置づけられていますが、中米では最も豊かな市民生活が営まれて
るといわれています。
しかし、国家財政は苦しく、それに大国の経済援助が拍車をかけている面もあり
ます。
国家の例にもれず不正もあれば、泥棒もいる「普通」の国です。

早乙女勝元編「軍隊のない国コスタリカ」、他年表などより

人口 367万人(98年) 首都 サンホセ(32.4万人=96年) 
共和制 1院制(議席数57,任期4年)
面積 5.1万キロメートル(九州の約1.4倍)
公用語 スペイン語
住民 白人と混血95%、黒人3%、先住民2%
一人あたりの国民総生産 2640ドル(97年)
            <日本 3万7850ドル(97年)>
教育予算 国家予算の30%(日本 7.9%=99年度)
失業率 5.7%(97年)
平均寿命 男74歳、女79歳(98年)<識字率(非識字率5.2%=95
年)とともにラテンアメリカ第一位)
警察、海上警察、国内治安関係費  5900万ドル(97年)
   国民一人あたりの負担額   約11ドルを維持
                (約1500円程度、日本の国防費負担は米
軍分も含めて一人約4〜5万円、軍人恩給分除く)
   警察、国境警備、沿岸警備 計5500人(河北00/01/19)
   哨戒艇7隻、セスナ機4機、自衛小火器など
 

   1492年 コロンブスが中央アメリカの島に到達
1821年 スペイン領から独立
1823年 中米連邦に参加
   1838年 連邦解体
   1898年 米西戦争(アメリカとスペイン)
   1946年 日本国憲法公布(47年5月3日施行)
1948年 分離独立 第二次共和制 (国連総会で世界人権宣言採択)
  大統領選に端を発した内乱で推定約2000人が犠牲となる。
  11月 ホセ・フィゲレス国民解放戦線代表(革命評議会議長)「今日かぎ
り、コスタリカ政府は、常備軍を全敗する」「軍隊はしばしば独裁体制によっ
て、国民を力ずくで抑圧してきたが、われわれは、民主的な話し合いの道を選
ぶ。従って政権維持のための武器はもういらない。不要なものは今日限りとす
る。この兵舎はこれから教育省のものと変わり、博物館へ改造します」(式典演
説)
「閣議は48年11月25日、9時間の討議の末、軍備を廃棄するとのエドガ
ル・カルド国防・公安相の提案を受け入れた」(閣議議事録)
1949年11月 新憲法公布 平時の武装放棄を宣言。緊急時には国会の承認
を経て(国会の3分の2の同意)、徴兵制と交戦権を復活できるとした。大統領
の再選禁止、選挙裁判所の発足などの国政改革。派兵の義務に応じられないこと
を条件に、米州相互援助条約に加盟。現在にいたるまで自衛権復活の発議なし。
   1950年 朝鮮戦争(日本警察予備隊令公布)
   1954年 日本 防衛庁設置法・自衛隊法公布
   1956年 国連総会で日本加盟を承認
   1959年 キューバ革命
   1962年 キューバ危機
1975年8月 コスタリカ・リモン港に海上自衛隊練習船が旭日旗をなびかせ
公式訪問(デモンストレーション)。折しもバナナの出荷時のため、停泊中の自
衛艦1隻を移動するようコスタリカ政府が要請。憤慨する日本に「さよう、バナ
ナは生き物。1日も早く積み出さないといけないが、軍艦は腐らないので
は・・・」
   1979年 ニカラグア革命

1983年11月17日 ルイス・アルベルト・モンヘ大統領による「恒久的、
積極的な非武装中立宣言」

1986年  国民解放党(PLN)のオスカル・アリアス・サンチェス大統領
が就任。
       「コスタリカを引き続き軍事紛争の外に置くとともに、外交など
の政治的手段によって、中央の兄弟たちが殺されていく現状打開に、私は全力を
あげる」(就任演説)。自国の警備力の縮小から取りかかり、中立外交を堅持
し、中米紛争解決に積極的なイニシアチブを発揮

       国連総会でのアリアス大統領演説「私は、武器を持たない国から
きました。私たちの国の子どもたちは、戦車を見たことがありません。武装した
ヘリコプターや軍艦どころか、銃でさえ見たことがありません。子どもたちの親
や祖父は若い子どもたちに、昔、学校に特別な建物があって、それが要塞として
使われていた話をします。(略)私はわずか数年の間に外国からの25万人の難
民を保護した国からきました。男が、女が、そして子どもたちが、暴君から、希
望のない悲惨な状況から、また同胞の暴力から逃れて、コスタリカの自由と平和
の中に保護を求めて、私たちの国にきます。このような難民は、わが国の人口の
10%にのぼり、その多くはニカラグア人です」
  (ニカラグアの他、エルサルバドル、キューバ、グアテマラ、パナマ、ホン
ジュラスなどから年間4万人以上を受け入れた=87年度)

1987年  アリアス大統領がノーベル平和賞受賞  (中東和平合意成
立。)
       女性の権利の擁護、教育の普及、軍縮を目的とした個人的なアリ
アス財団を設立。タンザニアの六万人の兵士を四万人に減らし、非戦闘員に再教
育をほどこすなどで活躍。
      1988年 中米のコスタリカで開かれた国際自然保護連合の総会
で白保の海の保護を決議
1990年  キリスト教社会連合党(PUSC)のカルデロンを大統領に選出
1994年  PLNのフィゲレス(父はホセ・フィゲレス国民解放戦線代表)
を大統領に選出
1995年  公務員8000人の削減、教員年金制度の見直し、消費税(販売
税)を10%から15%引き上げなどの財政改革案に市民が反発。教師による全
国的なストで、約75万人の生徒が自宅待機となり、ほとんどの学校がマヒ状態
となる。市民、労働者、大学生らが支援集会。消費税は1年半後に13%に下げ
るという条件付きで可決。生活必需品100品目以上非課税。
1998年2月  PUSCのミゲル・アンヘル・ロドリゲスを大統領に選出
         (経済企画相、中央銀行総裁などを歴任した実業家で、94
年の大統領選ではフィゲレス大統領に敗れる)
1999年 ラムサール条約締約国会議を開催
 

◆コスタリカ共和国憲法(1949年) 第12条
○常備軍としての軍隊の保有を禁止する
○公の秩序の監視と維持のために必要な警察力を保有する
○全(米)大陸間の協定により、あるいは国民の防衛目的によってのみ軍隊を組
織することができる。いずれの場合も軍隊は文民権力に従属し、個別的であれ、
集団的であれ、いかなる示威行為も(戦争)宣言も行うことはできない

◆中学生用社会科教科書「新しい憲法のはなし」(文部省)
 そこで今度の憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二
つのことを決めました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をする
ためのものは、いっさいもたないということです。これから日本には、陸軍も海
軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは「すててし
まう」ということです。しかしみなさんは、けっして心細く思うことはありませ
ん。日本は正しいことを、他のくによりさきにおこなったのです。世の中に、正
しいことぐらい強いものはありません。
 もう一つは、よその国と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相
手をまかして、自分のいいぶんをとおそうとしないということを決めたのです。
おだやかにそうだんして、きまりをつけようというのです。なぜならば、いくさ
をしかけることは、けっきょく、じぶんの国をほろぼすようなはめになるからで
す。また、戦争とまでゆかずとも、国の力で、相手をおどすようなことは、いっ
さいしないことにきめたのです。

◆国連憲章
日本は80番目の国連加盟国(1956年12月18日)
 1981年国会答弁「国際法上、国家は集団的自衛権を持つ。わが国も主権国
家として当然、それを有しているが、しかし憲法第九条に照らしてその行使は許
されない」

 国連憲章第51条 「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力
攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な
措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではな
い」

 国連憲章第52条 「この憲章のいかなる規定も、国際の平和及び安全の維持に
関する事項で地域的行動に適当なものを処理するための地域的取極又は地域的機
関が存在することを妨げるものではない」(同1項)



 
  • 1998年     3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 1999年     1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 2000年     1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

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