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X-Sender: kaymaru@mail.jca.apc.org
Date: Tue, 25 Jan 2000 20:00:33 +0900
To: keystone@jca.ax.apc.org
From: "MARUYAMA K." <kaymaru@jca.apc.org>
Subject: [keystone 2309] Re: 「自衛隊生徒」
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Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

At 11:25 PM +0900 00.1.24, 加賀谷いそみ  wrote.
> 3月に入隊する陸海空「自衛隊生徒」<3年後に通信教育などで高校卒業資格取
> 得可能>の一次採用試験が1月5日全国一斉に行われた。受験者数1万892人
> (昨年度1万1633人)。受験倍率は30.3倍(昨年度32.3倍)
> 陸自7748人(昨年度8092人)、海自1470人(同1692人)、空自
> 1674人(同1843人)。

> 受験者のほとんどは、高校中退者でしょう。警察も非行歴のある子どもたちに
> 「根性をいれかえてこい」と受験を勧めることもあるでしょうし。しばらく自衛
> 隊にぶち込んでおけば、町中をうろつく数も少なくなって「治安」が守れると。

 上記の表現は気になりますが、それはさておき、「自衛隊員になる」ということで
思い浮かぶのは、 「自衛官合祀拒否訴訟」のこと。

 ご存じと思いますが、この訴訟は、公務中に亡くなった「自衛官が、隊友会の申請
によって護国神社に合祀されたのに対し、その妻が、合祀申請の取り消しと、宗教的
人格権の侵害に対する慰謝料の支払を求め、国と隊友会を相手取って訴訟を起こし
た」というもの(『憲法判例を読みなおす』から一部引用、74頁)。一審・二審は
原告勝訴。しかし、最高裁大法廷は、14:1で「宗教上の人格権」を退けて、原告
の逆転敗訴(88年6月)。現在でも妻の意思に反し、亡夫は護国神社に祀られたま
まだという。

 以下、『週刊金曜日』第277号から引用。

========================= 49頁 =========================
 ……合祀されていたのがわかって、すぐに山口地連に抗議の電話をしました。その
とき電話口に出た援護係長は、「ご主人は自分のために亡くなられたのではなく、国
のために死なれたんです。そういう方を護国神社に祀ってあげるのは当然なんです」
……。「われわれは、現職の自衛隊員に誇りを持たせ、士気を鼓舞するために奮起し
て祀ったんです」
 自衛隊は、隊員の士気高揚のために夫を英霊にして護国神社に合祀申請したんで
す。夫の死の利用ですね。
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 なお、亡くなったのは1968年、合祀申請は4年後です。

 以下、関連した話。『日本国憲法 平和的共存権への道』から一部引用。

=================== 157〜158頁 =========================

 事故死した少年兵に「二階級特進」と勲八等瑞宝章を贈った思想

星野 ……、この護国神社合祀訴訟にかかわって注目したいのは、一九六八年七月二
日、横須賀にある陸上自衛隊少年工科学校の少年兵十三名が、渡河訓練中に水死する
という痛ましい事故が起こった際のことです。(中略)政府や防衛庁は世論の批判を
おそれて、責任者の……を、「業務上過失致死」の疑いで逮捕し、起訴した。ところ
がそれに対し、自衛隊幹部の間では、このような行為が責任を追及されるのなら、ま
ともな訓練や演習はできないとして、反発したということです。
 さらにこの件で注目したいのは、十三名の犠牲者に対して政府・防衛庁がとった措
置です。なんと二階級特進に加え、勲八等瑞宝章を贈ったのです。犠牲者と遺族の方
にはたいへんお気の毒だけれども、教官の「業務上過失致死」ということになれば、
法的には事故死ということになり、バスの運転手の過失により乗客が死亡したのと本
質的には同じです。ただ相違するのは、公務中の死だということだけです。とするな
ら、数百万円の補償は当然であるとしても、二階級特進や勲八等瑞宝章を贈って“名
誉の死”とするのは、どう考えても不合理です。
 にもかかわらず、二階級特進や勲八等瑞宝章を贈ったのはなぜか。その事実が意味
するところは、その死は不名誉どころか、名誉の戦死に該当するという判断があるか
らです。すなわち、少年兵たちは、上官を絶対に信頼し、その命令に服従して、生命
の危険もかえりみず訓練に励み、その結果、殉職した。これは軍人精神の精華であ
り、もって名誉の戦死に該当するとの思想によるものです。そのように判断しなけれ
ば、二階級特進や勲八等瑞宝章を贈ったことの意味を解し得ないからです。(以下
略)
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 非国民の私としては、「お国のために」というのは気持ち悪い。ましてや、死んだ
後も「お国のために」利用されるなんてね。

> 自衛隊に入っても、良心にさしさわるような仕打ちを受けたら、さっさと逃げて
> きてください。たくさんの市民がその勇気をたたえるでしょう。

 以下も『日本国憲法 平和的共存権への道』からの引用ですが、ちょっとほっとす
るところ。
======================= 31〜32頁 ====================

星野 ……、自衛隊法の罰則の最高刑が七年間の懲役ですね。それに対し、日米安保
条約第六条にもとづく刑事特別法(刑特法)では、機密探知は10年以下の懲役です
からね。(中略)……、自衛隊法には死刑はないんです。しかし、死刑の威嚇がなけ
れば人は殺せないでしょう。

古関 敵前逃亡罪という規定も、自衛隊法にはないですね。

星野 防衛出動命令が下った場合の脱走罪はあるけれども、平時の脱走罪はない。そ
れは、兵役義務がないからです。死刑の問題ですが、古くはアメリカ合衆国憲法や、
また第二次大戦の日本の同盟国で同じ敗戦国のイタリア共和国憲法では、ちゃんと死
刑廃止を規定しています。ただ、戦時における軍法ではその限りではないと規定して
いる。戦時の兵隊には死刑があるんです。というのは、死刑の威嚇がなければ戦場に
行かない。七年以下の懲役なら“別荘”に入っておったほうがいいもの。七年たった
ら出てこられるんだからね。自分も殺されないし、人を殺すこともないんだから。
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参考文献:

・『憲法判例を読みなおす』(樋口・山内・辻村) 日本評論社
 ISBN4-535-51180-2 1999年(改訂版)
http://www.trc.co.jp/trc/book/book.idc?JLA=99010172

・『日本国憲法 平和的共存権への道』(星野安三郎・古関彰一)高文研
ISBN4-87498-185-2 1997年
http://www.trc.co.jp/trc/book/book.idc?JLA=97004514

・合祀拒否した自衛官の妻 中谷康子さん25年の闘い(田中伸尚)
 『週刊金曜日』第277号(1998年7月17日)48頁

・『自衛隊よ、夫を返せ!  合祀拒否訴訟』(田中伸尚)社会思想社
 現代教養文庫 ISBN4-390-11272-4  1988年
http://www.trc.co.jp/trc/book/book.idc?JLA=88029691

・『自衛隊の周辺事態出動』(小西・片岡・藤尾)社会批評社
 ISBN4-916117-33-6 1998年
http://www.trc.co.jp/trc/book/book.idc?JLA=98040093

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 MARUYAMA K.  kaymaru@jca.apc.org
 2GO GREEN (JCA-NET)
 http://www.jca.apc.org/~kaymaru/2GG_JCANET.html



 
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