9.ホロコースト展について  赤羽大会実行委員長
 今年になって日本国内の十ケ所において「ホロコースト展」とい う展示会が開催されました。京都市や堺市の教育委員会、NHKの大 阪放送局・京都放送局、朝日・毎日・読売などの新聞社、関西テレ ビや読売テレビなどのたくさんの後援を受け、スタンドファームと いう名前の事務局が主催でした。

 この展示会は第二次大戦中にヒットラーによって大量虐殺された 人々を取り上げています。ユダヤ人の大量虐殺は有名ですが、普段 あまり問題にされない「非ユダヤ人で虐殺された人々」に焦点を当 てており、興味深い展示会になっています。

 ところが、展示会のパンフレットを見ますと「ホロコーストの忘 れられた犠牲者たち」と書かれ、副題に『ナチ暗黒時代、信念に生 きた人々の記録』とあります。そして展示会の内容を見ますと、ど うやら、信仰を守り兵役を拒否して虐殺されたエホバの証人を取り 上げた展示会になっているのです。

 調べて見ますと、東京と大阪のスタンドファーム事務局の住所は エホバの証人の集会場である王国会館でした。電話をかけて確認し ました。事務局は王国会館の中に設置されています。また、知り合 いの女性が「奉仕の僕(しもべ)」をしているエホバの証人と話し た時に、彼がホロコースト展を開催しているのは「ものみの塔」で あることをはっきり認めたそうです。

 アメリカではすでに「ものみの塔」が同様のホロコースト展を行 っています。日本でも遂に開催された、ということになります。第 二次大戦中に、「ものみの塔」の教えに忠実に従い、戦争参加を拒 否して虐殺されたエホバの証人がたくさんいたことは事実です。大 変悲惨な歴史上の出来事です。尊い命がたくさん奪われたことは私 たちも知っておかなければならないことです。私たちも、そのこと に関して非難や反論をしているのではありません。

 問題は、なぜ「ものみの塔」はこのような展示会を開催したのか、 ということです。しかも、堂々と「ものみの塔」やエホバの証人の 名前を出すことをせずに、スタンドファームというダミー会社を使 って行ったのか、ということです。

 展示会の後援に名前を列ねている教育委員会、新聞社、テレビ局 は、いずれもこの展示会の影の主催が「ものみの塔」であることを 知りませんでした。そして、その事実をお話した所、どこでも「も し知っていたなら、後援をすることはありませんでした。今後は良 く調べて後援するようにします。」という返事でした。

 「ものみの塔」はホロコースト展を利用し、信仰を守って殉教し たエホバの証人を美化することによって、エホバの証人のイメージ アップを図っているのでしょう。歴史的事実を公開するだけであれ ば、主催者を隠す必要はないはずです。正体を隠し、ダミー会社を 使って公共機関の後援を受けなければならない本当の理由は、 「も のみの塔」が事実を隠しているからです。

 エホバの証人の虐殺があったことは事実ですし、当時の「ものみ の塔」が『エホバ神の教え』『聖書の教え』として、「証人の戦争 参加を否定していた」ことも確かです。しかし、「ものみの塔」の 指導者たちのナチスドイツに対する姿勢が一貫して反対の立場であ ったのか、と言うと、そうではないのです。

 「ものみの塔」がヒットラーに宛てた手紙などの資料が残ってい ます。その手紙によると、初めの頃の「ものみの塔」は、ナチス政 策の支持を明らかに表明しているのです。それは、ナチスドイツ国 内で書籍の販売を続けさせてもらうためでした。ナチス反対の姿勢 を公に表明するようになったのは、ヒットラーが「ものみの塔」を 拒絶してからのことです。

 つまり、信者に対しては「戦争拒否は神の教えである」と指示し ながら、裏ではヒットラーに取り入ろうとしていたのです。神の教 えであるとする「戦争拒否の姿勢」も、首尾一貫していないのです。 全ては組織を守るため、ナチスの支配下でも書籍を販売し、利益を 得るためでした。

 当時、兵役を拒否すれば殺されることは、誰でも分かっていまし た。「ものみの塔」にとっては、兵役を拒否して証人が虐殺される ことよりも、組織を守ることの方が大事だったのです。

 ほとんどのエホバの証人はこの事実を知りません。今回のホロコ ースト展でも、ヒットラーとの裏取り引きのことは一切触れられて いません。「ものみの塔」が実名を隠して、ダミー会社を使って展 示会を開催しなければならないのは、このような隠さなければなら ない事実があるからなのです。

 「ものみの塔」の指導者たちとヒットラーの関係については、イ ンターネットの情報で詳しく見ることができます。1994年のFree Minds Journal 5,6月号に掲載された「敵と寝る―ものみの塔の流 儀」という記事(コレット・グルックス著)がインターネットに載 っています。当時のいきさつが詳しく書かれていますので、興味の ある方はご覧になって下さい。

 雑誌社の許可を得て、英語で書かれているこの記事を友人に翻訳 してもらい、資料としてお手元に配りました。後でじっくりと目を 通して下さい。ナチスドイツと妥協しようとした「ものみの塔」の 指導者たちの姿が良く分かっていただけると思います。

 一般の展示会は、東京や大阪などの大都市で初めに開催し、評判 が広まった所で地方に出ていくのが普通です。ところがホロコース ト展の最初の開催は青森県弘前市でした。

 どうやら、弘前市の有力者でエホバの証人を援助している人がい るのか、あるいはエホバの証人の有力者がいるのではないかと思い ます。地方都市の弘前市で開催し、実績を作ってから後援を募り、 東京や大阪に進出したと考えられます。

 展示会とシンポジウムの開催場所と日時は次の通りでした。

1月20日 弘前市中三デパート
1月22日 弘前大学創立50周年記念(みちのくホール)シンポジウム
6月 2日 長崎市長崎プリックホール
7月 8日 東京都文京区文京シビックセンターアートサロン
7月14日 東京都小平市小平市民文化会館
7月20日 東京都多摩市パルテノン多摩ギャラリー
8月 3日 東京都中央区労働スクエアー
8月 5日 東京国際フォーラムホールDでシンポジウム
8月12日 大阪国際会議場
8月18日 大阪市住之江区ワールドトレードセンター
8月26日 京都市下京区京都タワー

 東京で開催された時は、千代田区教育委員会も後援に入っていま した。後援をするようになったいきさつを伺いに行った時には、す でに何件かの問い合わせがあったそうです。その時の担当者の話し は次のようなものでした。

 「4月の初め頃に『平和について考える』シンポジウムを8月に 開催したいが、『東京国際フォーラム』を会場としてお借りできな いか、という依頼でした。内容をお聞きすると良い内容でしたので お貸ししました。その時点では展示会の話しはありませんでした。 その後、ご覧になった方からお電話をいただき、エホバの証人の関 係したものであることが分かりました。私ども教育委員会では特定 の宗教を後援したりすることはできませんので、早速取り消しをお 願いしました。まだ後援の取り消しがされていないのですね。申し 訳ありませんでした。再度取り消しを申し出ますので……。」

 この話から、会場を借りる時に正体を隠していることはもとより、 展示会のことも伏せていた事が分かります。また、後援取り消しの 依頼に対して、迅速な対応もしていないようです。

 大阪国際会議場の責任者との話では、何となくうさん臭い団体だ と思っていた、という感想が聞かれました。スタンドファームという名前は聞いたことがないので、調べていた所だったそうです。ま た、NHKやテレビ、新聞社など、後援が多すぎるので、かえってお かしいと思っていた、ということでした。

 お話しに伺った教育委員会の方々からは、エホバの証人の子供た ちを教えたことがあるが、運動会や歌に参加できなくて可哀相に思っていた、という意見がたくさん聞かれました。 また、会場を貸した担当の方々からは、エホバの証人の危険性や実態について詳しく教えて欲しい、という依頼もありました。

 いずれの方々も、正体を隠して後援を依頼してきたことに対して驚いておられました。このような手口はカルト宗教の統一教会がよ く使う方法です。

 今回の「ホロコース卜展」開催の経緯を調べてみて、次のような事実が判明しました。

1)用意周到で綿密な計画

 大都市から始めるのではなく、弘前市(協力者がいる可能性あり)で実績を作ってから東京や大阪に進出するという 方法をとっている。

 スタンドファーム事務局というダミー会社を使って、実際の主催が「ものみの塔」であることを隠している。このような手口はカルト教団で主に用いる手法であり、一般の宗教団体では使いません。

 展示会に参加する証人たちに対して、エホバの証人であることが ばれないように「会場内では兄弟、姉妹と呼び合わないように」 という指示が出されていました。また、会場の案内係の証人たちに も「身分を明かさないように」と、指導がされていました。

 これらはすべて、「ホロコースト展」の主催者とエホバの証人とは無関係である、と見せたいための手段です。「ものみの塔」はこのような手口を使って、明らかに一般の見学者やマスコミを欺こうと しているのです。

2) スタンドファーム事務局の住所は?

 東京と大阪の事務局の住所を調べると、王国会館の住所でした。王国会館の中に事務局があります。

 電話で問い合わせると、受話器を取っても、向こうからは「はい」 というだけで、名乗ることをしませんでした。「スタンドファーム事務局 ですか?」と尋ねると、初めて「そうです、エホバの証人の方です か?」という返事が返ってきました。できるだけ正体を隠そうとす る様子がうかがえます。いかにも「ものみの塔」のダミー団体であ ることを示す対応ではないでしょぅか。

3) 事務局の資金源が不明

 展示会の会場はほとんどが第三セクターが管理している施設でし た。施設の利用料金もかなり高額なはずですが、展示会の入場料は 無料でした。会場使用料や運営費はどこから捻出しているのでしょ うか?「ものみの塔」から資金がでていることは間違いないと思わ れます。

4) スタンドファーム事務局の失敗

 用意周到に準備した展示会でしたが、手抜かりもありました。事 務局は後援が多いほど良いと考えているようですが、かえって怪し まれたことがありました。普通の展示会では後援は二つ三つしか付 けないそうです。十以上も後援を付けるのは異常だそうです。

 会場係の信者への、展示会の教育がなされていませんでした。ホ ロコーストのことを聞いても、係の人は内容をほとんど知りません でした。また、千代田区教育委員会のように、虚偽の申請で会場を 借りるようなことがあれば裁判事件になる可能性もあります。配慮 が足りなかったと言えるでしょう。

5) 歴史的事実の無視

 ドイツのエホバの証人はホロコーストによって大勢虐殺されまし た。彼らはエホバ神による復活を信じて死んでいきました。今回の 展示会は信仰を守った美談として取り上げています。しかし「もの みの塔」の本部である統治体の人々が、手紙を送り、ヒットラーに 取り入ろうとしていた事実は隠されているのです。

 ホロコーストの犠牲となったエホバの証人たちは、このような統 治体の実態を知らずに死んでいきました。組織の犠牲となったので す。そして、現在の証人たちにもこの事実は隠されたままです。

 展示会を開催し、殉教の死を遂げた証人たちを美化することによ って、イメージアップを図り、組織の拡大に利用しているのです。 これは死者に対する冒涜ではないでしょうか。

 今年の展示会は終了しましたが、来年も開催される可能性があり ます。私たちはこの点を考慮して、今後も次のような対策を取って いきたいと思います。

1)今回のホロコースト展を後援した団体やマスコミに対して説明 を行い、今後の後援をしないようにお願いする。また、調査や 抗議行動を、今後も継続して行う。

2)個人が所属している教会・被害者団体の枠を越えて、横の連絡 の徹底と一致を図る。今まで以上に協力や団結が必要。反対運 動ももっと組織化する必要がある。

3)しかし、各個人の啓蒙活動も大切。活動を続けていきましょう。

 今回のホロコースト展において、「ものみの塔」は正体を隠して 後援を募り、展示内容を偽って会場を利用しました。まさにカルト 集団が使う手口を、「ものみの塔」も使ったのです。これは「もの みの塔」がカルト宗教であることを、自ら証明したことになります。

 今後も、「ものみの塔」の隠された実態を多くの方々に伝えてい きましょう。組織に騙されている証人の方が、一人でも多く、救出 されることを願っております。


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