エホバの証人問題研修・交流集会(3/11)
報告

    


 3月11日午後1時より江東区東大島文化センター(都営新宿線東大島駅より下車徒歩五分)で実施。参加者は50名前後。遠くは鳥取県からもインターネットの情報を見て参加された方がおり,問題を抱えるご家族,関係者の方々の切実たる思いと,求めを,改めて覚えた集会であった。
 以下,当日の内容について次第に沿って,まとめたものを,簡単にご報告させていただきます。
1.開会挨拶・日程説明( 事務局の坂東氏より、この学習会の持たれる意義とその位置付け、草刈裁判への支援と、第6回の被害者集会との関連など簡単に報告) 
一部:研修会(1:10〜4:30)

2.マインドコントロールの世界から家族の元へ( 二例 )
1) Hさん
2) H’さん(編集者注:おふたりともイニシャル同一ですのでこのように表現させていただきました)
3) 質疑:救出ポイントの解明  
 Hさん,H’さん,お二人共,家族を助けたいという一心で,ものみの塔の組織に急速に近づいていったが,組織の教えを受けるほどに,また,エホバの証人としての自分を確立するほどに,家族との溝が深まり,亀裂を生じていくという,矛盾した現実の中に立たされていた。
 ご主人様の熱心かつ健気な気持ちに大きく心が揺り動かされ,同時に心から笑えなくなっている自分を客観視することができた時に,本心に立ち返る思いが芽生えた。
 その後,ご主人様やカウンセラーの先生と積極的に話し合うことにより,ものみの塔の間違いに気がつき,組織を離れる事ができた。
 お二人共,マインドコントロールの凄まじさを,まざまざと証言し,最後まで諦めないで問題に立ち向かっていったご主人様の愛により,今在る幸いを語ってくださいました。

3.救出不成功を振り返って ( 二例 )
1) Aさん(山形)
2) Bさん(埼玉)
3) 質疑・討論・検討・助言
 問題を抱える家族の方々に対して,自分の経験が,なんらかのお役に立てれば幸いであるという尊いお気持ちから,救出に至らなかった経緯を,集会の場で具体的に話してくださいました。
 救出を考えるケースについて,まず何よりも重要なことは,救出に取り組む家族全員が,同じ問題意識を持つこと。そのために,できる限りの働きかけをすることの必要性と,身内や友人など協力者を確保することの重要性についても再確認されました。

4. 2/29 最高裁「輸血拒否」裁判の判決について  
 中澤 啓介 大野キリスト教会牧師
 患者の宗教上の信念に基づく自己決定権を権利として,初めて認める判決を最高裁が下した事について,医療現場でのインフォームド・コンセント(充分な説明に基づく同意)の定着を促す判決と評価するのが,今日の日本における社会的潮流であることは否めない。
 しかし,ものみの塔の教えによるマインド・コントロールの結果としての輸血拒否であるという背景を知る我々にとって,この問題を今一度,整理しておく必要がある。
 問題点として,
* ) 聖書は輸血を禁じていると解釈するのはものみの塔だけである。 
 組織の機関紙などで,輸血のマイナス面を殊更に強調する一方,信者に対して,他の聖書解釈を学んだり,教団に批判的な文献など,外部の情報に触れたりする事を禁じている。又,教団自らも,外部からの批判や公開討論の申し入れなどに,全く応じない教団の体質・姿勢
* ) 教団と信者の関係において,信者個人の自由意思による真の自己決定が成されていない点(はじめから,輸血を拒否するという,一つの選択肢しかない中での    “自己決定”である点)
* ) 患者が子供の場合や,緊急の場合で本人の意思が確認できない時はどうするのか等,今回の判決でも,依然と問題は残されたままであること 
 更に,今回の判決により、救命を第一としてきた医療現場において、エホバの証人の診療を拒否するケースが多発することが予想され、これまで医者の判断による輸血により,命を助けられる余地も残されていたエホバの証人の信者は,今後はそれすらも行われなくなり,更に危険な立場に追いやられる事になる。この現実を,証人を家族に持つ者,関わりを持つ者にとって,見過ごす訳にはいかない事,また,この判決を短絡的に捉えて,ものみの塔の主張する輸血拒否の正しさが認められたのだ・・という認識が一人歩きする危険性があること,そのためにも,我々一人一人が,広く社会に対して,啓蒙していくことの重要性についても解説された。

 5. 「マインド・コントロール」について
            東京理科大:心理学  服部 雄一講師
 服部先生は,心理学の専門分野から,ものみの塔のカルト性,マインド・コントロールについても,研究を重ね,この日は,主に,カルトの用いる「二元論」について,お話された。
 カルトのテクニックとして,「孤立させるプログラム」と「二元論」がある。
 「孤立させるプログラム」について,
 ものみの塔は常に信者個人に,家族,友人,組織以外の情報,学校,職場,PTA,自治会などのコミュニティ−,政府機関との関わりを断つ教えを用意している。
「二元論」について----->   全てのことを,善(エホバ,組織,救い・・etc)と悪(サタン,滅び,不正,不品行,恐怖心,不安・・etc)の二元論で判断させる。その結果,思考停止になる。「二元論」を用いると,人の価値観を変えることができる。
 信仰と夫,信仰と子供,信仰と仕事・・etc, 他方を捨て,一方を選ぶ決意。
 組織へのアプローチの段階での二元論を順に追っていくと・・
 集会出席〜夫を捨てる〜子供を捨てる〜家族を捨てる〜社会を捨てる〜命を捨てる(具体的には輸血拒否の教えを受け入れる)“社会を捨てる”という段階で,組織に対する価値観は最高値を示す。  又,「二元論」は,あくまでも“自己決定”をしていると本人に思わせてしまうので,この「二元論」から離れることは容易ではない。 (たちの悪いものである・・。)
「二元論」により,信者は常に“忠誠心のテスト”を強いられる。
「二元論」を打ち破るには,いろいろな角度からの情報を与え,別の道(三番目の選択肢)を提供すること。 その際,本人と組織は一体化しているので,組織を否定してはならない。組織を否定することは,本人をも否定することになる。
 服部先生の興味深い講義に対し,フロアから,質問や活発な意見交換がなされた。

6.救出カウンセラー裁判の現状・報告
           神戸 西舞子バプテスト教会 草刈定雄先生    
 ご本人の草刈先生より,裁判支援の感謝と裁判の現況報告,並びに,救出の状況とお働きの報告をいただく。又,来る4月29日,神戸にて行われる,『ものみの塔救出カウンセラー支援全国ネット』一周年記念大会のご案内も,合わせていただいた。草刈裁判も,いよいよ本格的となり,まもなく証人尋問,今年の秋頃には,第一審の判決が下りると思われる。引き続き,皆様のご支援を心よりお願い申し上げる旨,司会者よりあり。  

 その他
『エホバの証人の悲劇』 『エホバの証人〜引き裂かれた家族』(新刊)の著者である林俊宏氏より,エホバの証人関係の本を全国の図書館に購入し,置いてもらえるような呼びかけ,働きかけの依頼と,救出の方法の検討と,リハビリのための専門的なカウンセラー分野の開拓の必要性を述べられた。
 最後に,オウム真理教家族の会会長、 長野県南信増野エホバ対策委員会事務局長, 飯田・下伊那地区エホバの証人による被害者救済の会代表, 全国被害者集会実行委員会事務局長の方々が,坂東氏より紹介された。また,新刊書籍の案内(以下に記載)をもって,一部の研修会終了となった。
    『パンドラの塔』中澤啓介著;新世界訳研究会発行
    『エホバの証人〜引き裂かれた家族〜』林俊宏著;日中出版発行
    『偽りの楽園〜エホバの証人だった自衛官の妻の独白〜』稲津麻美著;
        恵友書房発行

二部:参加者交流会(4:30〜7:00)
 全体会の時間が少しづつずれ込んだため、十分な交流時間が取れませんでした。そのような観点からすると、交流を楽しみに参加された方々には、欲求不満が残ったかもしれません。最初は会場の都合で、二つに分かれて交流会が持たれました。被害者の夫たちを中心とする会と,その他の家族の被害者を抱える方の会でした。夫たちの交流会は、会場の都合もあり,御互いの自己紹介と,今後の連絡の取り合いと相互の励まし会いを確認し、短時間で散会しました。他の家族を中心とする交流会は、自己紹介から始まり、悩んでいる問題を出し合い、かなり自由な雰囲気で,活発な意見交流が展開されました。このような形で不充分さを残しながらも、マインドコントロールに対して、愛情に裏打ちされた人間と人間との心の交流が継続されてゆけば、たとえ時間はかかろうとも、ものみの塔に勝利する展望は、開かれていくことが確認されました。交流会終了後も,参加者はあちらこちらで交流を深めておりました。また、草刈先生が寸暇を惜しんで、献身的に参加者の相談に乗っておられる姿が印象的でした。皆さん、特に今回お会いできなかった方々には、「今年の全国被害者集会でお会いしましょう!」と訴えさせていただいて、ご報告の終了とさせていただきます。


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