林 俊宏


 今年も被害者全国集会を迎えました。この問題を明らかにしどのように立ち向かうのかを考える必要があると思い、開催を呼びかけました。私は「エホバの証人の悲劇」の作者です。元妻が証人でこの問題で30年以上の関わりがあります。三人の娘とは離婚後、一度も会っていません。家庭の絆が引き裂かれております。どうしてこの問題が起こるのか、自分の体験も踏まえ、考えていこうと思います。
私が実行委員長を引き受けて四年目になります。読者からは反響という形で寄せられています。エホバの証人の問題は続いています。今日は「エホバの証人の問題がなぜ起こるか」というテーマで続けます。エホバの証人でなかったら起きなかった問題は多いでしょう。エホバの証人が原因で起きる家庭破壊、離婚、自殺が頻発しています。エホバの証人であるから、あるいは周りにエホバの証人が多くいるから、なぜそうなるのかが目下の関心事です。エホバの証人はけしからんということが指摘されます。辞めてしまった冷たいとか、いろんな理由で排斥になるケースがあります。
 これは人権侵害ではないかと言う人もいます。法務省に問い合わせたところ、「人権侵害」であると回答があったそうです。それは一般社会でもありうることです。会社組織の中から抜け出た人に対して感情的に冷たくする傾向があります。会社組織に来なくなった人に冷たくする傾向があります。だからエホバの証人に限らないという気がします。
二月には証人からマスコミ各社にエホバの証人の実態について問題を投げかけた人がいます。アメリカではものみの塔が裁判に負けて賠償金を払わないといけません。そのため献金が執拗にはげしく圧力をかけられていると訴えています。大震災のときも献金を集めましたが、それらの金の流れは非常に不透明です。
 いかなる教団でも金銭の問題は付きまとう課題で、公開しないのは良いことではありませんが、ものみの塔に限りません。それは組織の体質の一端であり、それがすべてだとは言い切れません。それがものみの塔の本質ではないと考えます。
 ものみの塔の教義の一部である「輸血拒否」の教義はつかみにくい問題です。推定で年間に世界で千人の人が犠牲になっているようです。英国BBCの番組に中で幹部がそのように証言していました。専門家のデータと人口比(0.1%)を勘案すると、千人になります。
 4月19日付けの読売新聞では二年前の青森での事件を報道していました。女性信者が手術を受けたところ大量に出血をしました。家族に輸血の許可を求めたところ、家族はそれを拒否し、死亡したそうです。医療関係者に大きな衝撃を与えました。現在、札幌での学会では輸血拒否への対応が論議されているそうです。今回の事件では女性は輸血拒否の意思表示をしていません。重要な問題となっています。弁護士の中ではどの段階で意思表示を認めるか、論争の的になっています。輸血拒否は忘れ去られた問題ではなく、極めて大きな影響を与え続けています。
 児童虐待の問題は再三、指摘されています。1990年代のエホバの証人の子どもたちは現在では二十代か三十代になっています。その人たちは厳しいしつけを受け、厳しく苦しい人生を送らされています。
 輸血拒否や児童虐待も問題の一部です。氷山の一角です。エホバの証人の問題は独特のものです。 社会全体がエホバの証人の問題に向き合わなければなりません。
 その実態は、小冊子を配り、信者希望者を勧誘し、その教義を広めることです。世界で800万人がそのバブテスマを受けてます。十万の会衆があります。直近の「ものみの塔」誌は209言語で4297万冊、「目ざめよ!」誌は99言語で4152万冊発行されています。日本では21万人の証人がいます。研究生を入れると31万人になります。それはキリスト教教会の礼拝出席者数を上回っています。雑誌を一部50円で買い上げて無料で配るとして、一人が5部ほど買い上げて配ると、組織には一ヶ月当たり5億円の収入が入ります。また、王国会館は3500か所あり、その半分が協会のものです。そうすると数千億円以上の資産を所有していることになります。非常に大きな影響力を有し、強固な経済基盤を持っています。世界中では毎年200万人位、増加しています。
 この問題の解決策は、エホバの証人の実態を広く知らせて、これ以上被害者を増やさないこと。危険な実態を知らせて、エホバの証人に近づかない、問題に巻き込まれないための啓蒙活動が必要です。
 保護説得は難しくなっています。自力脱会をどのように目指せばいいでしょうか。危険性を証人にわかってもらうこと。それには、どのように証人とコミュニケーションをとっていくかが大切になります。読者から手紙が来ました。その人は1975年から2011年まで証人でした。排斥され、脱会しました。ハルマゲドンの予言にうんざりしたし、仲間のことばの暴力を受けたし、仲間とその未信者との離婚について不愉快な目に遭ったなど。体力と精神が限界に達し長老を怒鳴りつけました。そして排斥になりました。
 こうした脱会者がいるということは、解決へのひとつの手がかりになるのではないかと考えております。 

------------------------------------------------------------------

目次へ戻る